いじめ?俺には関係無いな   作:超P

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久しぶりの妹ちゃん。

ちょっと忘れてたので出します。


どうしようもないだろうな。

 

 

部活

 

「じゃあ今日はここまで!解散!」

 

「「お疲れ様でしたー」」

 

咲「…………はぁ」

 

 

今日も部活が終わり、うんざりする時間が始まる。

 

最近は大会も近いので、6時頃まで学校に残る事が多い。

だから早く家に帰らなくていいんだけどね。

私達中学生は部活がおわるとまっすぐ家に帰らなければならない。

…………偶に寄り道もするが。

 

だが私の場合は違う。

 

学校から帰ると、父を迎えに行かなければならない。

兄が家を出て行ってからというもの。

 

私の家は変わってしまった。

 

 

 

 

 

 

父が連れてきた女性は子供嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

あの頃は私もまだ小学二年生で、お兄ちゃんが受けてきた仕打ちがどんなに酷いものかを知らなかった。

料理とは自然と出てくるものだと思っていた。

だから朝も昼も夜も、誰が作っていたのかなど考えもしなかった。

 

掃除は汚れてからするものだと思っていた。

実際は毎日汚れていたのに。

 

誕生日は祝われて当然だと思っていた。

兄が祝われたところは見た事が無いが。

 

 

 

「……………はぁ」

 

 

自然と溜息がでてくる。

 

兄といればまだ気が楽になる。

このどうしようもないモヤモヤを分かち合えるのだから。

だが兄とは学校が違う。

 

父が私を私立の女子中学に入れたばっかりに。

兄から聞いた話ではもう一人の兄も同じ中学にいるらしい。

 

…………………こればかりは本当に父を恨む。

 

 

 

 

 

 

 

今日もまた、父のところへ行く為に電車に揺られ、会社の前まで向かう。

 

父はあの女の人とあまり上手くいってない。

そこから精神をやられてしまい、誰かがいないと挙動不審になってしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

会社前

 

 

咲「………………遅いな」

 

 

既に8時を回っている。

 

 

浩太「ごめん!遅れちゃって!」

 

咲「もう!遅いよお父さん!」

 

浩太「ごめんね?会議が長引いちゃって………」

 

 

会議が無い事も知っている。

こんな遅い時間まで会議がある筈がないと、昔に兄が言っていた。

 

父は会社のかなりいいスポットにいる。

 

どこかで誰かと遊んでいたのだろう。

今の今まで会議をしていたと言うならネクタイも緩んでいるはずが無い。

ベルトも一つ穴を通していない。

朝はすべて通したのに。大方予測はつくけど……………不潔だ。

 

 

 

浩太「咲!どこかで飯でも食べていくか?」

 

 

名前で私を呼ばないで欲しい。

不快な気持ちで一杯になって、つい嫌味を言ってしまう。

 

 

咲「今日はあの人がご飯つくってるんでしょ?」

 

あの人が今日もいない事は知っているのに。

 

 

浩太「……………母さんは今日用事があるらしいんでな」

 

 

父もあの人が他男のところへ行っているのを知っている。

だけれどその事は言わない。

私が中学生っていうこともあるとは思うけど、1番は自分のプライドの為だ。

再婚相手が堂々と浮気をしてるなんて実の娘にばれたら恥ずかしいどころの話ではすまない。

 

 

咲「…………またか」

 

浩太「だ、だから今日は父さんとご飯を食べよう!な?」

 

咲「兄さんは?」

 

 

せめて兄さんを道連れにしよう。

一人でこのろくでなしの相手なんてとても耐えられない。

こちらの機嫌を取ろうといちいち間に触ることばかり言うのだから。

 

 

浩太「………連絡するか」prrrrrr.prrrrrr!

 

真也『父さん?どうかしたの?』

 

浩太「いや、今日はご飯を食べに行こうと思ってな?」

 

真也『……………今日は兄さんと食べるから』

 

浩太「そ、そうか」

 

真也『………………じゃ』プツッ

 

浩太「………真也は達也と食べるってさ」

 

 

当然だと思う。

私でさえお兄ちゃんが受けてきた仕打ちと私たちとの差に感づいているのに、兄さんが気づかない筈がない。

正直、隣にいるだけでも吐き気がする。

お兄ちゃんがしてきた事を考えてこの人を不幸にしたいという思いがないことには気がついた。

だから我慢してこの人の世話をしているが、とても一緒に食事を取ろうとなんて思えない。

 

 

浩太「どこにする?」 にこっ

 

 

それなのにこの人の中では既に食事に行くのは決まっているようだ。

 

気持ちの悪い笑顔を向けないで欲しい。

この人はこの気持ち悪い笑顔をしながらお兄ちゃんに拷問をしていたのだ。

この貼り付けたような下品な笑顔で私たちとお兄ちゃんを差別したのだ。

 

 

とてもお気楽な頭をしていると思う。

一度頭の中を覗いてみた………くはないけど。

 

これ以上この笑顔を向けられていたら私はどうにかなってしまう。そう思い、慌てて特に何の意味も無く、嫌がらせの為に高いものを買わせる。

 

 

咲「…………………お寿司を食べたい」

 

浩太「そ、そうか!じゃあ食べに行こうな⁉︎」

 

 

食事に行くことに肯定的な返答をしただけでこの喜びようだ。

本当に底の知れた人間だ。

薄っぺらくて、矮小で、つまらない人間だ。

 

 

 

 

 

 

寿司屋

 

ある日の放課後のこと

真也は何度も説得して粘った上、ようやく兄と初めて食事に行けることになった。

もちろん達也は納得していなかった。

既に自分は校内でも数少ない嫌われ者である。そんな自分と真逆の真也が一緒にいることを他の知り合いに見られたりしたらどうなるかわかったもんじゃない。

自分と関わらせることで相手を不幸にすることだけは嫌なのだ。

 

 

真也「兄さんはこんな所でいつも食べてるの?」

 

達也「なわけあるかよ………お前が食べたいって言うから連れてきてやったんだぞ?」

 

真也「僕は兄さんと一緒ならどこでもいいんだけど………」

 

達也「やめろ気色悪い……お前は新井かよ」

 

「新井君はこういうことするの?」

 

達也「冗談だよ。つーかもうやめろよな?校内で話しかけんのは」

 

真也「…………やだよ」

 

達也「やめろっての」(ここで折れて欲しいんだが……)

 

真也「僕は兄さんの弟さんだよ?話しかけて何が悪いのさ」

 

達也「それが分からんお前じゃないだろ?こうして外で食事をするのも嫌なんだ」(やっぱり俺の弟か。その程度で折れるような意志は持ってないらしい)

 

真也「……………ねぇ、家に戻ってきてよ」

 

達也「そんなに嫌か?新しい母さんは」

 

真也「………………うん」

 

達也「咲は?」

 

真也「咲は優しいから………あの人にいじめられてる」

 

達也「お前が助けてやらんでどうする」

 

真也「無理だよ………体が動かないんだ、あの人の前だと」

 

達也「……………親父は?」

 

真也「他の女の人を作ってる。僕の知らない所で」

 

達也「なんでしってんだよ」(まさか………手を出されたんじゃないだろうな?)

 

真也「匂いがするからね」

 

達也「…………………はぁ」

 

 

 

面倒だ。

 

こういうのは本当に一番悩ましい。

 

 

親父が未だに暴力を振るうなら帰ればいいだけの事。

それをできないほど弱ってるとはな………やっぱりそんなに強い人じゃなかったか。

 

ドラえもんでも一番怖いのはのび太が潰れる事じゃない。

のび太は雑草だ。

どんなに踏まれても必ず次の日には元どおりだ。

根元から直接刈り取られなければいいだけの話だからな。

 

一番怖いのはジャイアンが倒れた時だ。

ジャイアンは暴君だ。

暴力を扱うのは得意だが、暴力の対象になる事には弱い。

故に一度倒れるともう立ち直るのは望めない。

 

その時のび太はどうするのか?

 

倒れたジャイアンを踏みつけるか?関係ないと無視を決め込むか?

 

どちらでもない。

何もできずにモヤモヤしたままいるだけだ。

 

強い存在に虐げられていた存在は、強い存在の衰弱を見ても何もできないものだ。

 

強いという事は一種のカリスマを持っているという事で。

 

衰弱したという事は見るに耐えない状態だという事で。

 

そんな父を見ても俺は虚しくなるだけだ。

 

 

 

達也「………今日、ちょっと行くか」

 

真也「本当に⁉︎」

 

達也「見にいくだけだ」

 

真也「ありがとう兄さん!」ぎゅ

 

達也「ええぃ!暑っ苦しい!」(………でも、こんな抱擁も初めてなんだよな)

 

 

 

 

 

咲「に、兄さん?」ガタガタ

 

浩太「真也………」

 

 

 

 

 

 

 

達也・真也「「………あ」」

 

 

 

 

 

 

 

咲「兄さん!」だだっ

 

達也「………図ったな?」

 

真也「違う!………父さんとなんて」しゅん

 

達也「分かったよ。もういいよ………」

 

咲「兄さん!どうして私も誘ってくれなかったの⁉︎」

 

真也「咲は父さんと食べるんだろ?」

 

咲「こんなに近くにいるなら合流すればいいでしょ⁉︎」

 

真也「でも」

 

咲「でもじゃないよ!いつも私にばっかり押し付けて!どうしていつもいつも私ばっかり」

 

達也「やめとけよ」パクッ

 

咲「で、でも!」

 

達也「親父見てみろよ」

 

浩太「えっ、えと、俺は別に………」

 

達也「その真っ白な顔じゃ説得力皆無だけどな」

 

咲「あ………と、父さん」

 

達也「もういい。喋るな」

 

浩太「…………」

 

達也「……………………座れよ」

 

浩太「あ、あぁ」

 

咲「………うん」

 

真也「いいの?兄さん」

 

達也「………家族だしな、一緒の席に着くぐらい普通だろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テーブル

 

 

達也「で?何にする?」

 

咲「…………」

 

浩太「…………」

 

達也「座って何も頼まないんじゃつまらんだろ?親父も、咲も」

 

咲「えと………茶碗蒸し」

 

浩太「父さんはまだいいよ………」

 

達也「真也、お前は?」

 

真也「食べる気分じゃない」ツーン

 

達也「…………はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

達也「何がしたいんだよお前ら」

 

 

 

 

 

 

 

真也「…………兄さんは何も思わないの?」

 

達也「何もない」

 

真也「だって父さんは虐待を!」ガタッ

 

達也は「俺はそうは思ってない」

 

真也「はぁ⁉︎あれはどう考えても虐待でしょ⁉︎」

 

達也「落ち着けよ………店内で騒ぐな」

 

真也「はっ!…………ごめん」

 

達也「………お前は頭に血が昇るのが早いんだよ」

 

真也「うん……気をつける」

 

咲「で、でも兄さんは」

 

達也「好きに呼べよ。兄さんじゃややこしいだろ?」

 

咲「………お兄ちゃんは父さんをどう思ってるの?」

 

達也「感謝してる」

 

咲「え」

 

真也「え」

 

浩太「…………………えっ?」

 

達也「感謝してるって言ってんだよ」

 

咲「嘘でしょ………?」

 

達也「嘘をつく意味がないしな」

 

咲「…………おかしいよ」

 

達也「ンなもん13年間生きてきてとっくに知ったよ」

 

咲「父さんは………?何も言わないの?」

 

浩太「……………………俺は」

 

達也「今、謝る必要はないから」パクッ

 

浩太「……………なぜ?」

 

達也「今の俺はさ」

 

 

 

 

 

 

達也「辛気臭ぇ顔でしたくもない謝罪をされて、食事の気分を害されたくないんだよ」

 

 

 

 

 

真也「そんなことで………?」

 

達也「そんな事とはなんだ弟よ。いいか?過去の過ちよりも今の食事だ」

 

咲「……………馬鹿みたい」

 

達也「妹よ、確かに俺の成績は低空飛行真っ只中だが、唐突にその事実を告げる必要はないと思うんだ」

 

咲「………………もういいよ」

 

達也「そうか」

 

咲「お兄ちゃん」

 

達也「なんだ?」

 

 

 

 

咲「うちに戻ってきてよ」

 

 

 

 

達也「………なんでまた?」

 

咲「もう」

 

咲「もうやだよ………」ふるふる

 

達也「……………はなしてみろ」

 

咲「うん」ふるふる

 

達也「……………」

 

咲「あの人ね?最近、男の人を連れてくるの…………」

 

浩太「…………本当か」

 

真也「父さんは黙ってて」

 

浩太「でも」

 

達也「親父、あんたの話は後だ」

 

浩太「……………」

 

咲「それで、その人、私の事、いやらしい目で見てきて」ふるふる

 

達也「……………」

 

咲「この前、あの人、買い物、行った時、腕掴まれて、いいだろって」ボロボロ

 

達也「………真也」

 

真也「………………知らなかった」

 

咲「わたし、怖くって、それで」ぽろぽろ

 

達也「もう喋らんでいい」

 

咲「う、うん……」ぐすっ

 

 

 

 

達也「もういい」ぽんぽん

 

 

 

 

浩太「…………」

 

達也「それで?親父は何か言う事はあんの?」

 

浩太「………母さんは」

 

達也「?」

 

 

 

 

 

こうた「母さんは寂しいだけなんだよ」

 

 

 

 




この後、父にかなりイラつくでしょう

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