Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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前回の話の最後に少し付け加えをしました。

有宇に響の持っていたデジカメを預けたことになっています。


壊れゆく有宇

俺と有宇が最初に向かったのはシンガポールだった。

 

で、有宇はと言うと今、職員に質問をされているところだった。

 

奈緒が作ってくれた英語リストをみながら話す。

 

やっと解放してもらい、入国の許可を貰う。

 

「ふぅ……あの職員のおっさん、怖かった~」

 

『最強の能力者がビビってんじゃねぇよ』

 

「それにしても、まずは何処に向かうか………」

 

『隼翼さんが言うには、この国にも能力者の組織があるんだろ。なら、まずそいつらに接触するんだ』

 

「でも、僕たちは相手の顔を知らないぞ」

 

『有宇、いいこと教えてやるよ。そう言う情報って意外と簡単にてに入るんだぜ』

 

俺の助言通り、有宇は組織の一員と接触した。

 

この男は、能力者ではないが組織の関係者らしい。

 

しかも、金に困ってると来た。

 

「ええっと……プリーズ!リスト!」

 

そう言って有宇が紙幣を数枚差し出すと、男は引っ手繰るように奪い、有宇の手にメモリーカードを渡す。

 

そして、そのまま素知らぬ顔で去っていく。

 

「まさか、本当にリストが手に入るとは………」

 

(だから言っただろ)

 

すぐさまリストの中を見るが、書いてある言語が英語ではなく俺は読めなかった。

 

まぁ、英語でも有宇は読めないだろうな。

 

「取り敢えず、まずはリーダーと接触だな」

 

渡されたリストの中にはリーダーの良く行く場所や乗ってる車まで書いてあり、そこへ向かうとリーダーの車があった。

 

「これか」

 

有宇は念動力を使い車を開け、中に乗り込む。

 

暫くするとリーダーの男がやって来て車に乗り込む。

 

乗り込むと、有宇は奈緒の能力を解除し、能力を奪う。

 

その後は、美砂の発火能力を使い、後ろから脅す。

 

「えっと……いふゆーむーぶ……ゆーふぁいやー……ゆあーリーダー?」

 

棒読みで奈緒の単語帳から英語を読む。

 

「……Who are you?」

 

「……アンユージュアル アビリティープレイヤー!」

 

「!?」

 

有宇がそう言うと、リーダーは驚いた表情になる?

 

「なるほど……心を読む能力か。That's right!クエスチョン!ワット、ドューユールック……ユージュアル アビリティープレイヤー!」

 

炎を近づけながら尋ねる。

 

男は考えないようにしているようだが、結局は心を読まれる。

 

「アンジェロ……そいつが能力者を見付けてるんだな。サンキュー!」

 

そう言い、リーダーの携帯を奪い、車を降りる。

 

そして、出られないように念動力で車の扉を壊す。

 

路地に向かうとアンジェロは二人の男に守られていた。

 

有宇は片方の男に乗り移り、もう一人を殴り倒す。

 

その行動にアンジェロは驚き、腰を抜かす。

 

乗り移りが終わると、その男の後頭部目掛け石ブロックを投げつけ倒す。

 

「What!?」

 

「アーユーアンジェロ?」

 

有宇が尋ねながら近づく。

 

「Who are you!?」

 

「アビリティーイズシックレス、ユードゥーノットユーズアビリティー 」

 

そう言い、能力を奪う。

 

アンジェロは呆気にとられたが、すぐに地図を見て声を上げた。

 

「なるほど。地図を見るのか」

 

その場を去り、有宇は街の小さな宿屋に泊ると早速、買った地図を広げる。

 

『どうだ?』

 

「凄いぞ!何処に能力者が居るのが一目で分かる!完璧な能力者探知能力だ!」

 

『なら、早く行動しよう。この国の能力者の能力を一気に奪うぞ』

 

「ああ!」

 

地図を仕舞い、有宇は空中浮遊の力で能力をどんどん奪っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南アフリカ共和国 北部。

 

廃ビルに居る能力者の能力を奪おうとするが、部屋に鍵が掛かっていて、入れなかった。

 

『有宇、俺に任せろ』

 

俺は有宇の体に乗り移り、扉の鍵に触れる。

 

やっぱりだ。

 

俺も有宇に乗り移ってる間は自分の能力が使えてる。

 

直感の能力で鍵の構造を理解し、針金を使って簡単に開ける。

 

中をこっそりのぞくと三人の男たちが銃を手に部屋の中でテレビを見ていた。

 

能力者は確か一人。

 

残りの二人は能力者じゃないな。

 

俺は使い慣れた身体機能強化を使い、一気に部屋の中に入る。

 

俺の侵入に男たちが驚く。

 

まず手前の奴を下から殴り、そのまま服を掴んで近くの男に投げつける。

 

そして、マシンガンを構えてる奴の首を掴み、そのまま持ち上げ意識を奪う。

 

「制圧完了っと」

 

三人を倒した後、俺は自分の体の異変に気付いた。

 

テレビから聞こえる言語が外国語ではなく日本語に聞こえる。

 

能力の翻訳か。

 

良い能力だな。

 

有宇に体を返すと有宇は辺りの光景に驚いていた。

 

「これ、響が全部やったのか?」

 

『ああ。それより、有宇この男が能力者だ。コピーしたから分かるが、コイツの能力は翻訳だ』

 

「本当か!?」

 

有宇はすぐに男に乗り移り、能力を奪う。

 

「おお、本当だ……コイツは良い能力だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エジプト

 

また一人能力者の能力を奪う。

 

能力者だった少年は何が起きたのか理解できなかったらしく辺りを見渡す。

 

すると有宇の姿を見た瞬間、驚き慌てる。

 

「せ、隻眼の死神!」

 

そう言い、走り去った。

 

「なっ!?」

 

『まさか自分がそう呼ばれるとは思ってなかったか?』

 

「なんていう恥ずかしい名前だ………」

 

有宇は恥ずかしさから頭を手で押さえる。

 

すると、急に驚き出す。

 

『どうした?』

 

「今のイメージは……?」

 

有宇はおもむろに近くの露店に並んでるリンゴを一つ掴む。

 

リンゴはたちまち凍ってしまった。

 

『凍結の能力か』

 

「どうやら、いつの間にか、どんな能力なのかも分かる能力を奪ってたらしい」

 

その後も、能力を奪い続け、また一つの国から能力をずべて奪い去った。

 

今日はもう夜だったので、野宿することにした。

 

有宇は近況を隼翼さんに衛星電話で話していた。

 

「また一つの国の能力を全部奪ったよ。他にも、言語を翻訳する能力や寝なくても活動できる能力を奪ったよ」

 

『凄いじゃないか、有宇。でも、あまり無理をし過ぎるなよ。なんだったら一度日本に帰ってきてもいい』

 

「いや、またすぐにでも他の国に行くよ。早く世界中の能力を奪わないと」

 

『………そうか。だが、本当に無理はするなよ』

 

「ああ、分かってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アフガニスタン

 

「うわあああああ!」

 

「ふぅ」

 

アフガニスタンでまた一人能力を奪うと、有宇は溜息を吐き、頭を触る。

 

『有宇、今度の能力はなんだ?』

 

「病気を悪化させる能力だ」

 

そんな能力まであるんだな。

 

「次だ」

 

次にやってきたのはアフガニスタンにある能力者の集まりだった。

 

「能力者に能力で戦わせてるのか」

 

千里眼の能力で集落の様子を確認すると、能力を持った少年が能力の特訓をしていた。

 

「うん?あの列……」

 

『どうした?』

 

有宇は確認するように地図を見る。

 

「おかしい。あそこの集まりには能力者が一人しかいない」

 

『それも、あそこに乗り込めば分かるだろう』

 

「ああ。今夜忍び込もう」

 

夜になると、有宇は一人の能力者を襲い、能力を奪う。

 

頭を触り能力を知ろうとすると

 

「分からない……?おい、ここはなんの集まりだ?」

 

少年は答えようとしないが、心が読める有宇には意味が無かった。

 

「キャリア?」

 

『なるほど。感染してるがまだ能力は発症してない奴を集めてるんだろう』

 

「そういうことか」

 

有宇が地図を見ると納得するように頷く。

 

「能力者探知能力と同じように地図を見ればキャリアが分かるのか。だけど、僕の能力じゃ、発症前の能力は奪えないし………」

 

『これは病気なんだろ。この前奪った能力はなんだ?』

 

「そうか!」

 

有宇は気付くと、すぐに感染者がいるテントに行き、病気を悪化させる能力を使う。

 

少年は苦しそうにするが、能力が発症すると同時に、有宇が奪う。

 

「……よし!行ける!」

 

地図を見て有宇がガッツポーズをする。

 

「これからは、キャリアの方も奪って行かないとな」

 

そして、その集落からも全ての能力を奪い、俺と有宇はその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インド 北部

 

空中浮遊の能力で廃寺院に向かい、中に入る。

 

すると、銃声が響き、有宇が撃たれる。

 

だが、バリアの能力のお陰で有宇に弾は当たらない。

 

「弾が切れるまで撃てぇ!」

 

数百発の弾丸を受けながら、有宇は前方にバリアを広げ、銃を持った兵士たちを吹き飛ばす。

 

兵士たちは吹き飛び気絶する。

 

そこで、有宇は膝を着き、体を震わせた。

 

『有宇!大丈夫か!』

 

「あ、ああ………大丈夫だ。ちょっと、驚いただけだから」

 

やっぱり、能力を奪い過ぎて体に負担が掛かり過ぎてる。

 

精神の方にもだ。

 

まだ能力を奪ってない国は沢山ある。

 

このままだと有宇が危ない。

 

だが、今の俺は有宇の代わりに能力を奪う事は出来ない。

 

こんなことなら、生きてる内に有宇の能力もコピーしておけば良かった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペルー共和国 郊外

 

次にやってきたのはペルーで、そこに居た能力者は女の子で、治癒の能力だった。

 

女の子はその能力を怪我をした人の為に使っていた。

 

『良い子だな』

 

「ああ………でも、例え善行に使われてるとしても奪わないといけないんだ。すまない」

 

有宇は女の子に謝ると能力を奪った。

 

「これで、治癒の能力も奪ったか」

 

そう言い、有宇はガラスに映った自分を見つめる。

 

「………この目の傷を治したら、僕はタイムリープ能力まで取り戻してしまう(取り戻せば、響を救うことが…………)」

 

『有宇』

 

有宇が何を考えているのかなんとなく分かり、それを止める。

 

『そんな事の為に、能力を奪うんじゃないだろ』

 

「………ああ、そうだ。世界中の能力を奪う。それが僕の目的だ」

 

有宇はそう言い、また能力を奪いに動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キューバ共和国 市街地

 

その日の朝、有宇はベッドの上で叫んでいた。

 

「うるさい…うるさい!うるさい!うるさいうるさいうるさい!」

 

鳴り響く電話、外からの騒めきやホテル中の声にテレビの音、車の走る音など様々な音を拾ってしまい有宇はここ数日ちゃんと休めていない。

 

能力で肉体的な疲れは無いだろうが精神的な疲労はあるはずだ。

 

俺が有宇の体に乗り移り、有宇を休ませる。

 

だが、口寄せの能力にも時間制限がある。

 

これは後で知ったことだが、口寄せで乗り移ると、乗り移れる時間は三時間が限界。

 

さらに、一回乗り移ると暫くは乗り移れない。

 

せめて、三時間は有宇を休ませよう。

 

俺は、テーブルに置いてある衛星電話を手に取る。

 

「もしもし、隼翼さんですか?」

 

『響君か?有宇は?』

 

「………奪った能力の所為か、それとも能力を奪い過ぎた所為か分かりませんが精神的にかなり疲れ切ってます。このままだと、全ての能力を奪う前に有宇が壊れるかもしれません」

 

『………これ以上は限界かもしれないな。迎えを送る。もう日本に帰ってこい』

 

「…………すみません。それはできません」

 

『分かってるのか!このままだと有宇が!』

 

「………例えそうだとしても、有宇は絶対に帰らないはずです。能力者がいる国が残り一つになったら連絡します。それじゃあ」

 

そう言い、俺は一方的に電話を切る。

 

三時間後、能力が切れ有宇に体の主導権が戻る。

 

「僕は………一体……?」

 

『有宇、大丈夫か?』

 

「響……ああ、大丈夫だ。お陰で少し休めたよ」

 

『……………すまない。隼翼さんからの電話で、もう帰ってこいって言われたけど、断った。お前の意志も聞かずに………』

 

「いや、いいさ。どの道、僕もそうした」

 

そう言い、有宇はベッドから起きる。

 

「さぁ、次に行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サウジアラビア 西部

 

サウジアラビアに着いたのは夜遅かった。

 

前の有宇なら夜でも能力を奪いに行ったが、今の有宇には奪いに行く元気がなかった。

 

宿屋に泊り、テレビのニュースを眺める。

 

「明日はここか………少し休もう……」

 

そう言い、睡眠薬を取り出す。

 

「無理矢理にでも………体を休ませないと…………」

 

そして、有宇は無理矢理眠りについた。

 

だが、眠りについて僅か数分後、有宇は急に起き出した。

 

『有宇?』

 

声を掛けるが有宇は反応せず、そのまま何処かへ行く。

 

俺もそれに着いて行き、何処へ向かうのかと考えていると有宇が来たのは能力者が集まってる組織だった。

 

すると有宇は行き成り崩壊の能力で施設を破壊した。

 

『有宇!一体何を!?』

 

声を掛けるも有宇はそれを無視し、念動力や発火、奪って来た能力で攻撃に使える能力を使いまくり施設の職員や警備、果ては能力者まで攻撃する。

 

乗り移ろうにも、此処に来る途中の飛行機で俺が有宇に乗り移ったからまだ乗り移れない。

 

俺は有宇が暴れまわる姿をただ見てることしかできなかった。

 

一通り暴れると、有宇は能力を全て奪い、そのまま宿屋に帰った。

 

血に濡れたまま、地図の裏に赤い文字で色々書き、そして、最後は死んだようにベッドに倒れ込んだ。

 

そのまま有宇は朝になるまで目を覚まさなかった。

 

朝になると有宇は目を開け、ニュースを見て驚いた。

 

何故なら今日行く予定だった組織の施設が襲われたと言うニュースだったからだ。

 

「い、一体何が…………ハッ!?」

 

有宇は自分の体が血まみれで、ベッドの血に濡れているのに気付く。

 

「僕が…………やったのか…………?……………ダメだ、記憶が混濁してる…………もう、寝ちゃいけない、寝ちゃダメなんだ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリア 南部

 

銃声がホテルの一室で響く。

 

イタリアのマフィアが有宇を狙い襲って来た。

 

有宇は抵抗するわけでもなく、ただ黙って椅子に座っていた。

 

銃弾はバリアの能力で防いでいる。

 

「僕は…………ここで何をしているんだ?なんで戦場にいるんだ?」

 

有宇がそう言う。

 

記憶も失い欠けてる。

 

その時、マフィアの弾丸が、有宇の鞄を撃ち抜く。

 

するとその中に会った、奈緒が作った単語帳が空中に散る。

 

その瞬間、有宇は怒り、念動力でマフィアを天井に叩き付ける。

 

有宇は立ち上がり、ふらふらとした足つきで単語帳を拾う。

 

「何だこれ?…………そうだ、僕は約束したんだ………誰と?一体………誰と約束したんだっけ?」

 

この時から、有宇はもう殆ど壊れかけてしまった。

 

そんな有宇に、俺は何もできずただ見てるだけしかできなかった。

 




次回で最終回になると思います。

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