見慣れた天井が視界に入った
「戻って………これたのか?」
タイムリープした実感がわかず、俺は暫く呆然とした。
「そうだ!日付は!?」
飛び起きるように布団から出て、携帯を掴む。
日付は歩未ちゃんが能力を発症した日。
よかった………どうやらタイムリープは成功したみたいだ。
日付の確認が終わると、有宇へと電話を掛ける。
「有宇、俺だ!」
『響!お前もちゃんとタイムリープできたんだな』
「ああ。歩未ちゃんは?」
『いるよ、生きてる』
「そうか…………必ずやるぞ」
『ああ』
その後、有宇と合流し、学校へと向かい、昼休み。
生徒会室で待ってると熊耳が現れ、地図に水滴を垂らした。
「能力は………崩壊」
そして去っていく。
「崩壊……どんな能力なんでしょう?」
「さぁ?狙った物を壊せるとかそんな所でしょう………にしても」
ここまでは前と同じだ。
「場所は?」
「ここは………併設する我々のマンションですね」
「ちょっといいか?恐らく、僕の妹が能力者だ」
「何を根拠に?」
「風邪を引いて寝ている。こんな時間に、マンションに居るってことは間違いない」
「貴方にしては鋭いですね。ま、私たちに専門的なことは分かりませんし、お見舞いも兼ねて歩未ちゃんが本当に発症したのか確認しに行きましょう」
「待て、奈緒。相手は病人だ。大人数で行ったら迷惑だ。俺とお前の二人だけで行こう。有宇いいか?」
「ああ、響の言う通り、そうしてくれるとありがたい」
「…………なるほど、そうだな。そうですね。そうしましょう」
奈緒は何かを察してくれたらしく、頷いてくれた。
「しっかし、貴方たち急に仲良くなりましたね。昨日まで、名前で呼び合う関係ではなかったのに」
その言葉に、俺と有宇は顔を見合わせ笑った。
「ま、色々あったんだよ」
「本当に色々な」
「「「ん?」」」
三人は頭に?を浮かべ首をかしげる。
放課後、コンビニでお粥の材料を買い、マンションへと向かう。
歩未ちゃんに会い、お粥を作り、三人で食べる。
「では、帰るとします」
「歩未ちゃん、またね」
「はい!」
歩未ちゃんに別れを告げ、俺達は外に出る。
「悪夢の内容を聞きだしといてください。それが崩壊の能力への手かがりになるかもしれません」
外に出ると奈緒がそう言う。
有宇は少し黙り、そして口を開いた。
「なぁ、友利。もし、僕と響が未来からタイムリープしてきたって言ったら信じるか?」
「………信じますよ。貴方たちなら歩未ちゃんの為にそれぐらいはする人です」
「話が速いな。やっぱり、俺と有宇の本当の能力知ってたんだな」
「ええ。協力者が教えてくれましたから」
「明後日、歩未がその崩壊の能力で死んでしまう」
「俺達はそれを阻止するためにタイムリープしてきたんだ」
「そうだったんですか…………では、貴方たちだけでは不安なので生徒会も協力します」
「……それは頼もしいな」
沈黙が訪れ、誰も口を開かない。
「あのさ、友利。お前の事少し誤解してた。歩未を失って、自暴自棄になった僕を助けてくれたのはお前と響だった」
「ま、俺はただ有宇と殴り合っただけだったけどな」
「そうだな。あの時の拳、痛かったぞ」
「それはこっちもだ」
「なに青春物の少年マンガみたいな展開してるんですか?………ま、未来の事なので知りませんが、貴方がそう言うならそうなんでしょう」
「色々酷い目にあったりしたけど、お前は常に正しかった………ありがとう」
「それは…………どういたしまして」
二日後、歩未ちゃんの風邪も治り、今日から歩未ちゃんは学校へ登校する。
校門まで俺と有宇は歩未ちゃんを送り校門で別れることになった。
歩未ちゃんの崩壊の能力は既に有宇が略奪の能力で奪ってる。
これで、歩未ちゃんが崩壊の能力で死ぬことは無くなった。
後は、歩未ちゃんが崩壊の能力を使ってしまった原因を除く。
「じゃあな、帰りも迎えに来るから」
「病み上がり出し、あまりはしゃがないようにね」
「はい!では暫しのお別れなのです!」
そう言い、歩未ちゃんは学校へと向かった。
ここからが肝心だな。
「おはよーございます」
振り向くと、そこには中学校の制服を着た奈緒と柚咲、それと髪を七三分けにし、半そでワイシャツにネクタイ姿の高城が居た。
「よく手に入ったな、それ」
「高城、お前の恰好はなんだ?」
「私はどうやっても中学生には見えないので、教師に変装です!」
それバレた時に言い訳できないんじゃないか?
「そう言う貴方たちはそのままでいいんですか?」
「ああ、歩未の兄として」
「歩未ちゃんの兄貴分として」
「「相手の前に現れたいからな」」
「得策です。威圧感が全然違いますので」
俺達はにやりと笑い、もう一度全員の顔を見る。
「みんなよろしく頼む!」
「はい!乙坂さんの妹さんの命、絶対に救いましょー!おー!」
「おー!」
こんな時でもテンションが高いな。
だが、幾分か楽にはなった。
「ちなみに、命を救うおまじないはありません!」
「すみません!」
「さ、こちらです。裏口から行きましょう」
二人をスルーし、俺達は裏口から入る。
俺と有宇は、前回崩壊した校舎の所で身を隠していた。
ここが崩壊したってことは、ここで歩未ちゃんが能力を使ったってことだ。
なら、ここにいれば必ず歩未ちゃんと歩未ちゃんが能力を使ってしまうきっかけを作った奴が来る。
「おい!お前、ここの生徒か?」
ん?どうした?
「わ、私は、ここの学校の教師です!」
高城?
「見ない顔だな。職員室まで来てもらおうか」
「あ、ちょ、ちょっと!分かりました!行きます!行きますから!」
やっぱり駄目だったか。
だが、まだ奈緒と柚咲がいる。
「あれ?君ゆさりん?」
「い、いえ!人違いですよ」
「どう見てもゆさりんだよ!」
「皆!ゆさりんがこの学校に転校してきたぞ!」
「本当だー!」
「テレビで見るよりきれー!」
やっぱアイドルだからすぐにばれたか。
「あ、あわわ………ケッ!ゆさりんじゃねぇよ!」
「え~?どう見てもゆさりんじゃん」
「じゃあ、これでどうだ?カ~、ペッペッペッ!これがアイドルのすることか?」
妹の体で何やってるんだよ、アイツは…………
「あ~!!」ゆさりんのだ液!どうすれば~!」
ここに第二の高城がいるとは……………
「引くな!」
「あれ?この子も可愛いよ!」
「もしかしてゆさりんと同じアイドルじゃね!」
「…………ッ!」
「あ、こら逃げるんじゃねぇ!」
「あ、逃げたぞ!」
「追えー!」
変装した意味なかったな。
てか、普通に生徒会としていれば良かった気もする。
それからさらに時間が流れ、どんどん崩壊の時間が近づいて来る。
その時、歩未ちゃんが凄い勢いで階段を上って屋上へ繋がる扉を開けようとした。
だが、扉は鍵が掛かってるらしく開かなかった。
そして、歩未ちゃんに続いて、この前歩未ちゃんのお見舞いに来ていた黒髪長髪の女の子がカッターナイフを手に上って来た。
「貴女の所為だ……だから、貴女が痛い目に会うの!」
カッターナイフを振り上げ、歩未ちゃんに切り掛かろうとした瞬間、有宇がロッカーの中から飛び出て歩未ちゃんの前に出る。
「なっ!だ、誰!?」
女の子は有宇に驚きながらもカッターを向けようとする。
それと同時に、俺は親指を噛み時空間制御能力の時間停止を発動させる。
時間を止め、俺は下から彼女に近づき、カッターナイフを奪い取る。
それと同時に、能力の発動が終わり、時間が流れる。
女の子手突き出すように向けるが、その手にカッターは無い。
「あ、あれ?」
「探し物はこれか?」
俺はカッターを見せながら、歩未ちゃんの前に移動する。
「ちょっと脅させてもらうぞ」
有宇は念動力を使い、窓ガラスを破壊する。
「ひっ!」
「俺からも脅させてもらおうか」
俺は奈緒の能力で、女の子の視界から消え、持っていたハサミでその子の前髪を切る。
「な、何が!」
「次妹に危害を加えよとしてみろ」
「次はこれぐらいじゃ済まさない」
「分かったらとっと失せろ!」
女の子は慌てて階段を駆け下りその場から消えた。
「怖かった!」
歩未ちゃんが、涙を流し有宇の背中に抱き付く。
「よかった………無事で。今日はもう帰ろう」
「うん!」
抱き合う二人を見て、俺は歩未ちゃんを救えたことを実感した。
よかった………………
歩未ちゃんは有宇の腕に抱き付いたまま離れようとしなかった。
助けに来てくれたのが余程嬉しかったんだろう。
そんな俺達の前に、熊耳と一人の女性が現れた。
「……なんだ、もう来たのか?」
「……随分と早かったじゃないか。熊耳」
「ほぉ、俺の事を知っているのか?」
「ああ」
「まぁな」
「「ぷー」」
熊耳のあだ名を呼ぶと、熊耳は一瞬驚くがすぐに笑った。
隣りにいる女性は口元を隠し笑った。
「話が早い。来てもらおう、三人共一緒に」
「ああ、連れて行ってくれ。兄さんと」
「姉さんの所にな!」
響が現在コピーしてる能力
身体機能強化(稲葉哲二)
不可視(友利奈緒)
瞬間移動(高城丈次郎)
降霊術(黒羽柚咲)
発火(黒羽美砂)
時空間制御(一之瀬由美)
念動力(福山有史)