Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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行き成りですが、タイトル変えました。

理由は、主人公の右腕感が薄いという事です


タイムリープ

私と響の両親は響が三つの時に交通事故で死んでしまった。

 

響は、両親がいなくなりいつも泣いていた。

 

そんな弟を私はただ抱きしめることしかできなかった。

 

親を亡くした可哀想な姉弟。

 

周りからそうみられていた。

 

だが、私たちは確かに親を亡くして辛かったが幸せではあった。

 

隣りに住む乙坂兄妹のお陰だ。

 

親を亡くして落ち込んでいた私たちを励まし元気づけてくれた、私たちのもう一つの家族。

 

とくに、乙坂兄弟の次男、有宇君は響と同い年と言うこともあってすぐに仲良くなった。

 

お互いに親が居ない身と言うこともあり、互いに助け合い生きてきた。

 

そんな生活がずっと続くと思われた。

 

だが、そんな生活は研究者どもの手によって壊された。

 

私と隼翼が能力を発現し、それに伴い響と有宇君、歩未ちゃんも施設へと連れていかれ、私と隼翼は能力の危険性から拘束された。

 

だが、熊耳、前泊、目時、七野、そして、有宇君と響たちが私たちを助けるために動いてくれた。

 

そして、私たちはタイムリープを行い過去へと戻った。

 

「はっ!」

 

目が覚めて私は、自分の姿とカレンダーの日付から自分たちが捕まる三年前の時間に戻れたことが分かった。

 

「姉さん!遅いよ!」

 

その声に反応し、前を見ると響が鍋を抱えて立っていた。

 

「早くしないと朝ごはんに遅れるよ!」

 

「ごめん、すぐに準備するから」

 

服を着替え、隣の乙坂家へと向かう。

 

「響お兄ちゃん、由美お姉ちゃん!おはようなのですぅ!」

 

元気よく歩未ちゃんが挨拶をして迎え入れてくれる。

 

「よぉ、響。味噌汁持ってきてくれたか」

 

「ああ、お前のご要望通りに、豆腐とワカメのな」

 

「ナイスだ」

 

響は有宇君に鍋を預け、朝食の準備を始めた。

 

そして、隼翼。

 

隼翼は私の顔を見て頷いた。

 

これから三年間。

 

三年間の間に、奴等に対抗する方法を考えるんだ。

 

まず、私たちは熊耳の仲間になることから始めた。

 

未来でした約束を果たすために。

 

「凄い能力者が現れたな」

 

「……やっと来たか!」

 

「え?なんの話だ?」

 

目の前に現れた熊耳に、隼翼はすぐにかけつけた。

 

「俺たちは絶対に世界を変えてやろうと誓い合った心の友だぞこいつ~!」

 

「待て!寄ってくるな!」

 

熊耳に抱き付いた隼翼と熊耳は、そのまま河原の坂を転げ落ちた。

 

まったく、子供ね。

 

スカートに付いた草を払い、ゆっくりと下に降りて行く。

 

「…なんなんだお前は!」

 

「俺たちの能力は知っているはずだぞ?」

 

「…まさか未来で会ってる?」

 

「その通りだ!」

 

「未来で会ってたとしても今は他人だ!馴れ馴れしくするんじゃない!」

 

熊耳は抱きつく隼翼に抵抗し、突き飛ばす。

 

「んだよ釣れないなあ、ぷー」

 

「ぷー!?」

 

「熊耳で熊だからぷーってそう呼んでたんだぜ?」

 

「まさか俺がそんな呼び名を許していただって!?」

 

………そんなあだ名、呼ばせてくれなかったのに。

 

私は呆れながらも、二人の会話を聞いて笑みを浮かべた。

 

そして、熊耳は私たちをある場所へと案内した。

 

熊耳は既に能力者を集め一つの集団を作っていた。

 

そこには、前泊に目時、七野の三人が居た。

 

「タイムリープ能力者の乙坂隼翼と、時空間制御能力者の一之瀬由美だ」

 

「ひっさしぶりー!…って言っても通じないんだよな」

 

「どういう意味?」

 

「お前たち三人とも未来ですでに出会っているらしい」

 

「そんな話を信じろと?」

 

七野の奴、コイツはこんな時からずっとこの性格なのね。

 

まったく子供ね。

 

「まずは七野。障害物を通り抜ける透過能力の持ち主。けどたった一枚の壁を通り抜けただけで極度に疲れる」

 

「何!?」

 

「次に目時。お前は催眠能力の持ち主。相手を眠らせられるがその後自分まで眠ってしまう」

 

「……う…」

 

「次は前泊。人の記憶をピンポイントで消すことができる。しかしその記憶は対象の体に触れ長い時間をかけて探す必要がある」

「すごい。完璧ですね」

 

「先に熊耳から聞いていたかもしれないだろ!」

 

まったく、七野は馬鹿ね。

 

「それは熊耳も信じないってことよ?アンタ、馬鹿でしょ」

 

「んだと!?」

 

「止めなさい、七野。事実でしょ、彼女の言い分も、貴方の頭が悪いのも」

 

「テメーは一言余計だ!」

 

怒り出した七野を目時が止める。

 

一々カリカリしちゃって…………

 

そして私たちは未来での特殊能力者の陰惨な末路を彼らに話した。

 

未来で熊耳たちと立てた計画も。

 

私たちが取りうる手段は一つ…

 

「能力者を集めて自分たちを守るんだ」

 

こうして私たちは能力者だけの組織を作りはじめた。

 

だが、所詮は子供。

 

大人の力に敵わず、自分たちの身を守ることはできなかった。

 

しまいには、他のメンバーが仲間を助けに行くと言う強硬手段にまで走ったりもした。

 

「俺達には守る力が足りない。そもそも子供だけで守るのが無理だったんだ」

 

熊耳の言葉に隼翼は考え、あることを提案した。

 

「大人の力を借りよう」

 

「はあ!?そんなの信用できるわけないだろ!!」

 

七野が怒鳴る。

 

「なら、他にいい案があるの?なら教えてほしいものね」

 

「んだと!?」

 

「騒いで相手の意見を否定する前に、自分も何か案を考えなさいよ」

 

七野と言い合いをしてるとまた熊耳が口を開いた。

 

「元能力者ならどうだ?何人か心当たりが居る。やってみる価値はあるんじゃないか?」

 

「まぁ、貴方がそう言うなら」

 

否定的だったメンバーも熊耳の一言で納得する。

 

流石ね。

 

「でも、具体的にはどうする、隼翼、由美?」

 

「ん~~………少し考えさせてをおくれよ、ぷー」

 

「隼翼に同じ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隼お兄ちゃん15歳のお誕生日おめでとうございます~!」

 

隼翼が15歳の誕生日を迎えた。

 

もうすぐ研究者たちに捕まる。

 

その前に、タイムリープしないと。

 

考えていると、隼翼はテレビを凝視していた。

 

テレビを見ると、そこには宝くじのCMが映ってた。

 

『今年は前後賞合わせて六億円~!』

 

六億…………それだけの金があれば大人でも動かせるわね。

 

隼翼を見ると、隼翼も同じ考えらしく頷いた。

 

翌日、私たちはすぐに仲間の下へ行き、この案を話した。

 

「資金を集めよう」

 

「ほぉ」

 

その案に、熊耳が声を上げる。

 

「私たちが過去へタイムリープして、宝くじや競馬なんかのギャンブルの情報を集める」

 

「へぇ」

 

「その先は?」

 

「更に能力者を集めて、もっと強大な組織を作るんだ」

 

「またコイツの言いなりになるのかよ!」

 

相変わらず否定的な意見ね。

 

「なら、案があるなら言いなさい。隼翼の考えた案より、大層立派で確実性のある案なんでしょ?でなきゃ、そんな否定的な意見言わないわよね」

 

見下すように、そして威圧的に七野に言う。

 

七野は怯えながら舌打ちをする。

 

私に口喧嘩で勝とうなんて百年早いのよ。

 

「じゃ、また過去で会おう。一から説明し直すのが面倒だけどな」

 

「特に七野にはね」

 

そして、私たちは何度目か分からないタイムリープを行った。

 

タイムリープした直後、私は自分の体の変化に気付いた。

 

脚の力が弱くなってる………………

 

どうやら私の能力は使えば使うほど、身体機能が落ちて行くみたいだ。

 

そして、隼翼もそれは同じだった。

 

隼翼の能力は使えば使うほど、視力が落ちて行くのだった。

 

隼翼の能力は目に光が入らないと使うことはできない。

 

これはかなり問題だった。

 

私の能力では過去に飛べるのは三日前までが限界。

 

しかし、隼翼のタイムリープ能力が私の能力と共鳴し、タイムリープの限界を超えさせてくれる。

 

隼翼の力が無いと私は三日前より過去には飛べない。

 

だから、急ぐ必要があった。

 

それから、私たちは更に能力者を集め、大金を得る道筋を作り上げた。

 

何度もタイムリープをして。

 

その度に、隼翼の視力は落ち、私は体がどんどん弱くなった。

 

だが、そんな事とは裏腹に、状況は一転しなかった。

 

「くっ…また研究施設に先を越されてしまった」

 

「これで何回目?最近多くない?」

 

「これでは能力者の奪い合いだ。彼らを守る環境が必要じゃないか?」

 

「う~ん…もう少し案を考えさせてくれよ、ぷー」

 

そして、隼翼はまた15歳の誕生日を迎えた。

 

もう何度目かしらね。

 

この時から、私は松葉杖が無いと歩けないぐらいにまで身体機能が落ちていた。

 

恐らく、次のタイムリープで隼翼は視力が無くなる。

 

チャンスはあと一回、どうすれば………………

 

「そういえば兄さんと由美さんは受験のシーズンだね。高校はどうするの?」

 

「姉さんは体が弱いし、その辺のパックアップもしてくれるところがいいよね」

 

高校………パックアップ……………それだ!

 

「有宇!響君!それは会心のアイデアだ!」

 

「流石は私の弟たち!」

 

「僕は何も言ってないよ?」

 

「俺も何も言ってないけど………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一度飛ぶよ、ぷー」

 

「どうして?」

 

「資金を集める組織はできたわ。だけど、まだ皆を守ることはできてないわ」

 

「でも、それだとお前達は………」

 

「ああ、分かってる。恐らく次飛べば、視力を完全に失う。由美もきっともう動けないぐらいに身体機能が落ちるだろう。だから、これはラストチャンスだ」

 

「そのチャンスでお前たちは何をするんだ?」

 

「「学校を作る」」

 

「学校?」

 

私たちの案に熊耳が尋ね返す。

 

「前にも言ったろ?この能力は思春期を過ぎると消えるって。だからその間だけ能力者を守るための学校をつくればいいんだ。そうすれば発症前の有宇や歩未、響君たちも守ることができる」

 

「なるほど。でも本当に最後の賭けなんだぞ。視力すら完全に失うんだぞ。由美だって、もう体を動かせなくなるかもしれないだ」

 

「まあ、為せば成るさ」

 

「それにまだ分からないでしょ。もしかしたら、私はまだ動けるかもしれないし、隼翼もまだ目が見えてるかもしれない。そう考えたら、結構気楽なもんよ」

 

「…………なんつーか…お前達は相変わらずだな」

 

「目見えなくなった俺をちゃんと見つけてくれよな!」

 

「体が動かせなくなった私もね!」

 

「ふっ、任せろ」

 

熊耳と約束をし、私たちは最後のタイムリープを行った。

 

そして、私は一人では動けない体になり、隼翼は視力を完全に失った。

 

そこから究極の道筋を、動けない私と光が見えない隼翼は、熊耳たちと共に歩み続けた。

 

最後の仕上げにある学校法人を買収することにした。

 

なかなか骨が折れる仕事だったが最後のみんなの喜びようで気が晴れた。

 

「ふう…これでなんとなるだろ」

 

「ああ、よくやった。だが、これからだぞ」

 

「そうだな。それで、ぷー。お願いが二つある。まず一つ目、有宇と歩未と響君の記憶から

俺たちの存在を消してくれ」

 

「それと、有宇君たちの記憶から響の記憶も消して。そして、響にも同じことを」

 

「どうして?」

 

「そうしなければ俺たちはこの先自由に動けなくなるからな。もう表には出れないんだよ」

 

「分かった。だが、何故弟たちの記憶から互いの記憶を消すんだ?由美、お前は弟に一人で生きて行かせるのか?」

 

「その辺は大丈夫よ。元能力者の工藤さん。あの人が経営する施設に居れる。工藤さんとはもう話は済んでる。あの子が三歳の時からあの施設に居る様に思わせる偽装ばっちりよ」

 

「それに他人を装わせる方が、あの子達の危険が減る。だからだ」

 

「なるほど………で、二つ目は?」

 

「二つ目は、お前は日本中で同じような組織を作り能力者を保護できる学校を作っていってほしい」

 

「確かに、俺達の目が届かない場所でも能力者は守らないとな」

 

顎に手をやり、熊耳は納得する。

 

「しかしそんなまねをしたら俺自身も顔が知れ渡って危険になる」

 

「それなら、お前のその長い髪で顔を隠すってのはどうだ?」

 

「いいわね。お化けみたいになって誰も顔を見ないようにするかもね」

 

「ふっ、なるほど。水でも被れば完璧だな」

 

そう言うと熊耳は花瓶を手に取り、中の水を頭から被った。

 

まさか、本当にやるとは…………

 

「本当に被ったのか?」

 

「ああ」

 

「熊耳、アンタ結構イケメンね。顔だけでなく」

 

「だろ?」

 

すると急に笑いが込み上げ、私たちは笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人の記憶を消すために、私たちは全員で私たちが住んでるアパートへ向かう。

 

扉をノックすると歩未ちゃんが怒りながら出迎えてくれた。

 

「隼お兄ちゃん!それに由美お姉ちゃんも!どこに行ってたのでしょうか!?すっごい心配したのですー!」

 

「ああすまない。実は友達も連れてきた」

 

「来て」

 

目時が現れ歩未ちゃんに挨拶をする。

 

「え?ま、待ってほしいのです!今、お部屋の片づけを!」

 

「歩未ちゃん」

 

「あ、はい?」

 

目時が歩未ちゃんを呼び止め、能力で眠らせる。

 

眠ってしまった歩未ちゃんを受け止め、目時は眠そうにする。

 

「歩未?」

 

すると有宇君が玄関まで来て、目時に気付く。

 

「誰だ!?」

 

警戒する有宇君に、目時は眠いのを堪え、能力で眠らせる。

 

有宇君はすぐに眠ってしまい、顔を流しにぶつけ、眠る。

 

その直後、目時はすぐに眠ってしまった。

 

「連れてきたぞ」

 

私の部屋に行ってた七野は響を背中に抱え、有宇君たちの隣に並べる。

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

「ええ、響は一度眠ると目覚ましで無いと起きないの」

 

「分かりました」

 

そう言い、前泊が能力を使い三人の体に触れ、記憶を消す。

 

その間に、部屋から隼翼のものを運び、私たちの部屋から荷物を全て運び出す。

 

朝が来るころには、記憶の消去は終わり、前泊に感謝をした。

 

隼翼は別れを惜しむように、三人の額にキスをした。

 

七野に頼み、響を背負ってもらいそのまま、施設へと向かった。

 

「工藤さん、響をお願いします」

 

「ああ。この子は私が守る。約束しよう」

 

「はい…………じゃあね、響」

 

響の頭を撫で、私は響に別れを告げた。

 

こうして、私たちは響君と有宇君、歩未ちゃんの元から姿を消した。


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