ないない尽くしで転生   作:バンビーノ

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09.後日談その二 ~Eを司りし二人~

 アースラに戻ってから数日。裁判の手続きなど色々あったけど一番目立ったことといえば魔力ランクの測定だ。

 まずはフェイトが測ったが、魔力ランクがS+の魔導師ランクはAAA+らしい。よくわからんけどメッチャ強そう。

 

「で、なんでランクがふたつもあるの?」

「わかりやすくザックリと言えば魔力ランクが自分のリンカーコアの魔力総量、魔導師ランクが総合値だね」

「ほー……で次はどっちから測るよ」

「うーん、ミソッカス魔力の第一人者としてナナシに任せるよ」

「よし、見てろ。フェイトくらいに軽く捻り潰されるくらいのランク叩き出してやるぜ!」

「捻り潰されるんだね……」

 

 当たり前だ、そもそもあの速度目で追うのが辛い。

 

「よーし、まずは魔力ランクね……あの的に最大魔力の攻撃放てばいいの?」

「そうだ、別に外しても構わない」

「了解」

 

 超初心者用デバイスを構える。こいつもそろそろアリシアが弄りそうなので最期の魔法になるやもしれん……最後じゃなくて最期に。

 

「あと砲撃魔法なら一番測りやすいんだが」

「撃てません! というか攻撃魔法フォトンバレットしか知らない」

「……そうか」

「なんで俺そんな可哀想なもの見る目で見られてるの?」

「……ナナシ、私も教えるからもう少し覚えよう?」

 

 フェイトにまで哀れみを込めた目で見られてどう立ち直ればいいのかわからない。俺が魔法知らないとこから来たこと忘れてない? どっかの高町さんってスーパーマジカルガールのせいで感覚狂ってない?

 

「まぁ、取り敢えず早く測ろうよー」

「釈然としないけど……フォトンバレット・出来るだけフルパワー」

《Photon Bullet as fullpower as possible》

 

 水色のフォトンバレットが発射され的を貫く。見た目が派手さに欠けるなぁ、プレシアにフォトンバースト習っとけばよかった。

 

「これは……!」

「えっ、なんかあった?」

「いや、これは……魔力ランク聞きたいか?」

「もうこれが勝ち組フラグじゃなくて負け組フラグってわかる自分が嫌だ」

 

 いいから聞かせてくれ、後ろでアリシアがニヤニヤしてやがるけど。フェイトなんて両手合わせて目をつむって何かに願っている。

 

「Eランクだ」

「い、Eランク……? クロノ何かの間違いじゃないの!? だって、ナナシはジュエルシードの魔力を!」

「信じがたいかもしれないが……愕然たる事実だ、それもギリギリのEランクだ」

「い、Eランク、フ、フヒッ! プッフゥー! アハハハハ!」

 

 なんかクロノとフェイトが深刻な悲痛そうな顔をしてる傍らアリシアは爆笑している。出来ればふたりも笑ってくれた方が気が楽なんだが……別に俺は気にしてないのにふたりが無駄に深刻そうにしてるせいで俺までへこみそうだ。

 あとジュエルシードに関しては四次元空間に突っ込んだだけですんで魔力関係ねーのよ。

 

「いやー、一般の武装局員はD~Cランクが一番多いんだけど……あ、いやこれは魔導師ランクだっけ? それにしてもEランクかぁ、強いて言えばE-か」

「武装局員になるつもりないし問題ないけど……いや、強いて言わなくていいからな」

「よっし! 私もいっちょやりますか!」

 

 アリシアはアースラから貸出しされた一般的なデバイスを使うようだ。

 

「フォトンランサー・アサルトショットー!」

《Photon Lancer assault shot》

 

 え、なにそれ。色は俺と同じ水色、というか空色か、フェイトのフォトンランサーのような円錐の魔法弾が10発ほどマシンガンのように撃ち込まれる。的が蜂の巣になっている。

 

「ふっふーん、フェイトのフォトンランサーを弄った半分オリジナルな魔法だよ!」

「え、なにそれズルい。俺なんて回復魔法で身体を輝かせることしか出来ないのに」

「逆にそれも凄いよ、原理どうなってんの……?」

 

 俺が聞きたい、全身一気に治るようにしたかったのにどうしてこうなったのか。

 

「魔力ランクはどうだったー?」

「……ギリギリDランク」

「よっしゃー!」

「裏切り者!」

「手前のEランクだ」

「ぎゃー!?」

「ふははは! ようこそ、おかえりミソッカス魔力!」

 

 フェイトはどうやって姉を慰めようかとオロオロしてるけど指差して笑えばいいと思うよ? 絶対本人気にしてないから。

 

「まー、私の本職って頭使う方だしね。次は魔導師ランク? どっちからにしようか」

「ああ、それなんだが二人まとめて行う」

「ふーん、どうやって測るん?」

 

 そもそも総合力って測れるのか、そんなん実際戦わないとわかりそうも……戦わないと?

 後ろを振り向けば、バリアジャケット姿なフェイトさん。ジャキッとバルディッシュを構えてヤル気満々ですねチクショウ。ササッと俺たちはフェイトから距離を取り座り込んでコソコソ話す。

 

「おい、お前の妹だろ。どうにかしろよお姉ちゃん」

「そんな……私には妹と戦うことなんて出来ない!」

「戦力的に?」

「もちろん」

 

 おい、見ろよフェイトったらあんなに顔を輝かせて楽しみそうにしてるぜ……頼むからランク差を思い出しておくれ。

 

「ちなみにフェイトの魔法は母さん譲りでデフォルトで電気付与だから痛いよ……」

「その母さんにフォトンバレット喰らったときには一撃で気絶したことあるから、死んだかと思った」

「正直私は、魔導師ランク圏外でいいから帰りたいよ!」

 

 俺もだよ、フェイトとなのはの戦闘を見たことあるから余計にだよ。なのはの砲撃で印象薄かったんだけど、よくよく考えればあの砲撃とまともにやり合ってたんだよ?

 せめて相手をランクCとかDにしてほしい。なんでEランクふたりが魔力ランクS+に挑まないといけないのか。バイクにママチャリで挑むようなものじゃん!

 

「ううん、この戦力差はトイレットペーパー1枚が滝に挑むようなもだね」

「なんとEランクがふたりいるからトイレットペーパーが2枚に!」

「やったね! 犠牲者が増えるだけでなんの足しにもならないよ!」

「……えっと姉さんとナナシは相手が私じゃ嫌だったかな……? だったら、あの代わってもらうようにお願い、してくる……けど」

 

 そんなことを話しているとフェイトが凄く悲しそうな声でそんなことを言ってきた。心が痛い……アリシアと俺は生唾を飲み込み目を合わせて頷く。

 ――覚悟を決めるときが来たようだ。

 

「そんなことないよ! フェイトと戦うのは初めてだからねー! どうするか作戦たててただけだよ! ねっ、ナナシ!」

「そうともさ、Eランクだからって甘く見てると後悔するぜ!」

「そうだったんだ、うん! 油断せずにいくね!」

 

 フェイトさんったらキラキラ目を輝かせちゃってもー、俺には子供が玩具をゲットして喜ぶ顔というか餌を見つけた肉食獣の顔に見える。冷や汗が止まらん……

 

「アハハー、タノシミダナー。ネー、ナナシー?」

「ウン、チョウタノシミー。アリシアガンバローナー」

「声が震えてるし尋常じゃない汗だが大丈夫か……?」

 

 もはや魔導師ランクなんて関係ない、これは男とお姉ちゃんの意地だ。別に実際に死ぬわけじゃない、痛いだけだ。

 

「……じゃあ始めるが、本当に大丈夫か? 凄く震えてるぞ」

「くどいよ。武者震いだし問題ない、ね!」

「楽しみすぎて、な!」

「震えるのが主に膝なのはツッコミを入れないべきか……」

 

 ルールは簡単。初めの5分はフェイトは回避しか行わないらしく、そこで俺たちの攻撃や捕縛の動きを測定。次にフェイトが5分後にアタック開始、俺たちは死ぬ。

 じゃなくて、俺たちの回避やシールドの使い方を測定するらしい。

 

「ナナシ、私この戦いを無事に終えたら……ううん、この戦いを乗り越えてから伝えるね」

「やめろ、ここぞとばかりに死亡フラグを建てるな。作戦とかないの? 勝てなくていいから楽に乗り越える方法とか」

「うーん、時間とかが余りにも無さすぎて……」

「そろそろ始めていいか?」

「どぞー」

「いいよー」

「はぁ……では始め!」

 

 その合図とともに俺たちは一斉に攻撃魔法を繰り出す! ――なんてこともなく突っ立っていた。取り敢えずデフォルトとしてデバイスに登録されているバリアジャケットは展開したが……

 いやね、即席タッグでどうしろというのか。ひとりよりマシだけど戦闘経験ゼロなふたりよ?

 

「んー、じゃあ一番槍ナナシいっきまーす」

「君の死は無駄にはしないよ!」

 

 そう言ってビシッと敬礼をするアリシア。縁起でもねぇな、おい。行くだけで逝かないからな?

 

「フォトンバレット」

《Photon Bullet》

 

 単発で飛んでいくフォトンバレットだが当然ながら簡単にかわされる。まー、弾速も遅いので当然である。

 けど、距離が空いてるから当たらないなら距離を詰めればいいじゃない。だって5分間はフェイト攻撃しないもの!

 ダッシュで近づくがフェイトは動こうとしない。気にせずにもう一度魔法を放とうとするとアリシアから声がかかる。

 

「ナナシ伏せて!」

「あっとぉ!?」

「――ッ!」

 

 振り返るとフォトンランサー・アサルトショットが撃ち込まれギリッギリのタイミングで上体を逸らし……いわゆるブリッジで避ける。おっふ、一発腹にカスった!

 さすがにこれにはフェイトも予想外だったのか避けるタイミングがワンテンポ遅れた。

 

「ナナシ追撃ぃぃぃ!」

「無茶をおっしゃる、けど撃つ! フォトンバレット!」

 

 とか言いながら俺もブリッジの体勢から魔法を放つ、腹に魔法陣を展開して。

 

「えぇ!?」

「キモい、キモいよナナシ!」

 

 

 フェイトは表情を驚きに染めつつもバルディッシュで斬り裂く。というかキモい言うなし、魔法撃てっていったのアリシアだろうが。

 

「うるせー! 魔法とかいうトンでも技術使ってるくせに、魔法は杖からしか出せませんなんて固定概念に縛られてる時点で負け組なんだよ!」

「な、なんだってー!?」

 

 割りと本気でビックリした顔をしている。余計なことをいってしまった気がしないでもない。

 

「残り1分でフェイトの攻撃禁止解除だ」

「延長は出来ませんか?」

「出来ると思っているのか」

 

 思ってないけど一縷の望みを賭けて聞いてみただけ。ほら、何事も行動を起こさないと始まらないしね?

 そんなことを考えながら残り30秒になったとき俺とアリシアは全力ダッシュでフェイトから離れる。

 作戦? ないよ、1秒でも長く生き残るため以上の意味はないよ!

 

「ナナシ、四次元空間のゲートでフェイトの攻撃防げないの?」

「あれなぁ、展開するまでに1~2秒かかるから」

「遅い、スロウリィー過ぎるね……」

 

 しかもあれ展開してから動かないからな。フェイトに対しては本気で効果が薄い、そもそも使い方が違う。あれはただのデカイ倉庫なんだ。

 

「残り15秒、フェイトさんがバルディッシュを鎌の形に変えました。直接殺る気満々のようですねアリシアさん」

「ええ、こちらとしてはこの距離を保ちたいのですが私の妹にかかれば1秒とかからないでしょう……」

 

 だな、ちょうど今15秒たったんだけど目の前にフェイトがいるし。振りかぶられた鎌が胴を薙ごうとする。

 

「ぉぉぉ! 弾速加速付与試験魔法プログラムα――ファイア!」

《――fire》

 

 俺はとっさにアリシアを抱え自爆魔法第一号を発動し無理矢理距離を取る。普通にシールド張れよって話なんだけどたぶん斬り裂かれるから! 魔力量とか技の錬度の差が問題で!

 

「やるね、ナナシ! フォトンランサー!」

「ラウンドシールド!」

 

 痛ァ! とっさに張ることが出来たシールドだが、防ぎきれずに左腕に当たった。痛みで一度伏せた顔を再び上げるとフェイトがいない。

 

「危ないナナシぃ!」

「ぐぉ!?」

 

 アリシアの蹴りが俺の頭部にヒットし盛大に転び、なんてことしやがると言いかけたが……俺の頭があったところにバルディッシュの鎌が通過するのが目に映った。

 アリシアは俺を蹴ると同時に捕縛魔法を発動するがフェイトは既にそこにおらず距離を離されている。

 

「アリシアさん、アリシアさん」

「なんだいナナシくん」

「そろそろ魔力がヤバい」

「奇遇だねー、私も体感で残量半分きったよ」

 

 俺はさっきの自爆魔法のダメージでガッツリと持ってかれたのか気持ち的には3割以下。ゲームならそろそろ赤ゲージである。

 

「ん、フェイトが鎌じゃない状態に戻したけどなんでだ……?」

「あっ、シーリングモード……あー、詰んだね」

 

 待て待て、動けなくなってるぞ……頭上では帯電してるような音が鳴り響いている。俺も今更ながらわかった、詰んだ。あとこれオーバーキル過ぎないか……!?

 

「サンダーレイジ!」

《Thunder Rage》

 

 目の前が真っ白になった。

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 気がつくと俺とアリシアは医務室に運び込まれていた。

 

「死ぬかと思った」

「姉の意地で生き残れた……」

「あれ最後なんで動けなかったのかわからないんだが」

「始めに接近されたときにバインドを仕掛けられてたんだろうねー」

 

 そういうことか、抜け目ないね。もう少し手加減してくれてもよかったのに……そういや、油断するなとかいったバカがいたね。

 誰だろうホントに、後先考えないバカは駄目だな……俺だね。

 

「やっぱりEランクの私たちが楽して強くなろうと思ったらユニゾンデバイスをつくりたいところだね」

「努力せずに楽して強くなろうとしてる時点で駄目人間さが伺え……え、なにユニセフデバイス? 皆から不要になったデバイスでも寄付してもらうのか?」

「ユニゾンデバイスだよ、えーとそもそもデバイスには何個か種類があってね」

 

 アリシアの解説によればデバイスは大まかに別けてるとストレージデバイス、インテリジェントデバイス、アームドデバイス、融合型デバイス。

 ストレージデバイスはミッドチルダ式魔導師の大半が扱うデバイス。意志を持たないもので役目としてはあらかじめ魔法のプログラム詰め込んでおく記憶媒体。

 さっき、俺やアリシアが使っていたものもこれに分類される。これが一番管理局員の多くが所有しているスタンダードなもの。

 

 インテリジェントデバイスは意思をもったデバイスらしい。魔法の発動の手助けとなる処理装置、ついでに状況判断を行える人工知能まであるので、その場の状況判断をして魔法を自動起動させプロテクションなどの魔法を発動したり、持ち主の性質によって自らを調整することもある。ただストレージよりもピーキーで、扱いが下手くそな俺みたいなのが使うとデバイスを使うのではなくデバイスに使われる図が完成する。あと高い、値段的に高い。

 ちなみに人工知能のおかげか会話もできるらしい。

 

「そうか、たまにフェイトがバルディッシュと会話してるように見えたのは友達がいなさすぎておかしくなったんじゃなかったのか。よかったよかった」

「フェイトが聞いたら怒るよ……あとアームドデバイスはその名の通りガッチガチの武器型デバイスだね」

 

 アームドデバイスは基本的に武器性能を特化させてる反面、魔法関連のサポート機能は劣るらしい。

 

「あとはカートリッジシステムがあったりとかするらしいけど……資料がなさすぎてなんとも。母さんミッドチルダ式だし、母さんの手持ちの本じゃベルカ式のデバイスについて調べるには限界が見えてきたよ……」

「そのまま諦めればいいのに」

「それで最後に融合型デバイスなんだけど、これがさっき言ってたユニゾンデバイスね」

「スルーしやがったな」

 

 ユニゾンデバイスはインテリジェントデバイスのを更に極端化したものらしい。で、一番の特徴が魔導師と融合し魔力の管制、補助を行うとのこと。そのことにより他のデバイスをぶっちぎる性能を発揮して感応速度や魔力量を増加させられる。

 けど、その分手間やリスクなどがかかるって言ってた。ごめん最後らへん面倒になって聞き流してた。

 

「だがら手始めにデバイスをつくっていこうと思います。それが成功したら融合型デバイスを」

「ガンバ、俺は応援してる」

「ナナシも手伝って、暇でしょ?」

「裁判あるから、微妙に俺の未来がかかってるやつ」

「準備の資料書く以外にすることは?」

 

 クロノとプレシアが頑張る、のを応援してる。

 

「余計なことをしないことをするのに忙しくてだな」

「よーし、行くよー。まずは資料探しだー!」

 




ここまで読んでくださった方に感謝を。
ちょっと今までより文字数が多く……デバイスについて長々書きすぎました。これからちょいちょいこんな長さになるやも。
このままアリシアはナナシ引き摺りつつ突っ走っていきます。

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