ないない尽くしで転生   作:バンビーノ

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08.後日談その一 ~お別れ~

 後日談。アリシア蘇生についてはプレシアが超説明頑張った、以上。

 

 いや、本当に俺やフェイトは数個質問に答えただけで残りはプレシアが話したからなぁ。大型魔力駆動炉の実験については記録にはプレシアの責任として押し付けられていたようだったが、それを覆す証拠を叩きつけていた。どうやら俺が会う前に集めてたらしい。

 そして涙ながらに語られる親子が死に別れる悲劇の物語、最後には口もとを押さえ涙を流し語っていたプレシアだが……口元笑ってんのが俺から見えてんぞ。

 

 こっちチラッと見て視線で『チョロいわね』って言われても反応できねぇよ。ほら周りのみんな目に涙浮かべてんのに何か俺だけ泣くに泣けなくて浮いてるじゃん……仕方ないので顔を伏せて肩を震わせておいた。伏せた顔は真顔だが誰からも見えないので問題ないだろう。

 アリシアはその話を聞きながら自分はそんな風に亡くなったのかーとウンウンと頷きながら聞いてた。今思えば一番浮いてたな、自分の死因を感心しながら聞いてるとか……

 

 何はともあれ、罪は可能な限り軽くなるよう尽力してもらえるそうだ。親身な人たちでよかった。

 

 

 さて、ここであとひとつ問題が残った。どっかの誰かさんの身元がまったくわからないわけだ、最後の最後にこんな面倒な問題残しやがって誰だよまったく。俺だな。

 

「次元漂流出身、ナナシ。年齢はトップシークレットじゃ駄目ですかね?」

「どこをどうすれば駄目じゃないと思ったのか聞きたいぞ」

「じゃあ、日本出身で年齢は9歳くらいでここはひとつ」

「通らないからな?」

「このお役所仕事! 柔軟に対応しようぜ!」

「ふむ、なら柔軟に身元不確かな人間として取り敢えずで牢屋にでも入れるか」

「すいませんでした」

 

 それは柔軟さじゃないよ、怠慢だよと言いたかったがむしろ怠慢さでいえば身元証明する気のない俺の方なので素直に謝る。しかし、どうしたものか……

 

「はぁ……その子は私が引き取るわ。そういう約束だったしね」

「え、そんな約束してたっけ?」

「手を貸してくれる代わりに三食寝床付きの生活を希望したじゃ……まさか、アリシアを起こすまでのつもりだったの?」

 

 はい、ぶっちゃけ身元が不確かなことよりこれからの生活について頭悩ましてました。あれ、あの約束って期間限定じゃないの?

 

「こっちは少なくともあなたが自立できるまでは衣食住くらい面倒みるくらいのつもりで引き受けたのだけど……自分がやったことに対して見合った対価は求めなさい、どこかで付け入られるわよ?」

「プレシアさんにとってはそうかもしれんけど、俺にとっては四次元空間開いてただけなんだけど……」

 

 でも引き取ってもらえるなら生活面に関しての心配がなくなった、俺にとってのハッピーエンドが今ここに成立した!

 

「まぁ、どちらにせよこれから裁判だからな。もちろん君もだ」

「うん?」

「今回の……仮称ジュエルシード事件についての裁判だ。こちらとしてもなるべく君たちの事情を配慮した上で罪が軽くなるよう尽力するが、そのためにはまず裁判だ」

「あー、そんなとこは地球と一緒なのね」

 

 ついでに今の今まで犯罪って感覚が薄かったけど、現在絶賛犯罪者なのだ。後悔はないけどね? 前科一犯と相成りました。

 とりあえず裁判中に余計なことを口走らないように注意しようと思う。

 

「あ、あの!」

 

 と、話に一段落ついたところでフェイトから艦長にひとつお願いを伝えた。簡単なことといえば簡単なこと、けど現状裁判待ちの犯罪者って扱いな自分達には難しいんじゃないかと思うんどけど……

 

「うーん、いいでしょう。そんなに時間はとれませんがいいですね?」

「はい、ありがとうございます……!」

 

 あれ、通った。

 

 

▽▽▽▽

 

 

 翌日の昼頃、少しの間だが地球へ戻ってきた。というのもフェイトのお願いが理由なのだが、なのはって子にお別れを告げたかったようだ。全力でぶつかり合って何か通じあったのかね?

 俺とアリシアも連れてこられたのだが遠巻きに、なのはとフェイトの会話を眺めている。

 

「やー、感動のお別れだね。姉としては妹に友達ができて嬉しいかぎりだよー」

「肉体年齢が妹の方が上っぽいけどな……いや精神年齢的にもそうじゃないのか?」

「ふっふっふー、実は亡くなってる間も霊だか意識体みたいな感じで時の庭園にいたっていったら信じる?」

「あー、なくはないんじゃないかね。魔法があるなら何があってもいいや」

「投げやりというか開き直ってるねぇ、もっと疑うもんかと思ったけど」

「あるがままを受け入れてるんだよ」

 

 だってアリシアって5歳で亡くなってたって聞いたけど5歳児にしては精神年齢がやけに高い感じがする。少なくとも5歳のそれではない。

 それこそ、本当に大型魔力駆動炉から発生した謎の粒子Xで死亡と見分けのつかない仮死状態なだけだったかもしれんし俺にゃ何もわからんですよ? で、そのわからんことを深く知るつもりもない。たぶん理解できないし、知る必要もないからね。

 無事、隣にいるアリシアが生き返った。それだけでオッケー。

 

「それにしても百合百合しいねぇ」

「おい、妹とその友達となる人間の感動のお別れに何てこと言うんだ」

「だってお互いに頬染めちゃってるよ……姉さんは妹の将来が心配です」

「あれ、微妙にデジャヴ」

 

 フェイトも露出度とか百合じゃないかを家族に不安に思われるとは。本人が知ったらヘコみそうだぞ。

 けどバリアジャケットは直そうな、将来にプレシアみたいなナイスバディになるならあの格好はヤバい。

 

「そーいや、アリシアは魔法使えんの?」

「いやー、それが母さんの魔法技術方面についてはミソッカス程度にしか遺伝しなかったみたいで……デバイス弄る技術とかそっち方面の頭の出来は、ばっちし遺伝したんだけどねー」

「ミソッカス魔力の仲間ができた」

「ミソッカス魔力コンビ、いぇーい!」

「いぇーい!」

「君たちは何をいってるんだ……」

 

 実はさっきから数歩下がったところにクロノも待機してます。ハイタッチしてる俺たちを呆れた目で見られてる気がしないでもない。

 クロノから目を逸らしフェイトたちを見るとリボンを交換してる。いいね、友情だね。百合じゃなくて友情だね……友情、だよな?

 

「そろそろ時間だが君たちはなのはに挨拶しなくていいのか?」

「俺なのはと、まともに喋ったことないから特に言うことないんでいいや」

「私もないかなー」

「そうか」

 

 クロノが時間がきたことを伝えに行く。それに着いていこうとすると不意に服を掴まれ首が絞まった。

 

「コヒュッ! ゴホゴホッ!」

「あっ」

 

 あっ、じゃないから。たぶん止まってほしかったんだろうけど、もう少し方法があったろ。

 むせるむせる、若干涙目になってる気がするけどきっとそんなことないから。原因のアリシアをジト目で睨んでなんか、断じていない。

 

「えっとー、何かごめんね?」

「いいけど……どうした?」

「ん、なにが?」

「止めた理由だよ、まさか首を絞めるためじゃないだろうな?」

「あぁそうだ、違う違う。お礼を今のうちに言っとこうと思ってね、期を逃すと言う機会なくなりそうだし」

 

 礼? アリシアって生き返ってから間もないけどなんかしたっけか……昨日にリンディさんのお茶用砂糖を塩に変えて――死ぬかと思った。笑って許してくれると思ってたんだ。思ってた……確かに笑った、けどケタケタ笑いながら羽を生やして追ってきたのは予想外過ぎた、廊下の人をバレルロールで避けて一切減速しないまま角を曲がり常に笑いながら追ってきてた。あれはアースラ七不思議がひとつに追加されてもいいんじゃないだろうか?

 

「その生き返らさせてもらったことだよ。基本的に大部分を母さんがやったってわかってるんだけど、ナナシがいなきゃたぶん成功しなかったって母さんが言ってたし」

「あ、そっちか。まぁ遠慮せず礼は受け取っとくよ。あと出来れば悪戯に巻き込まないでほしい」

「いやいや、それはこれからが本番だよ。次は備品にある予備のデバイスを弄ろうかと」

「やめようか、ほら俺がもらった超初心者用デバイスをあげるから」

「ほほう、まずはこれで練習してから万全の状態でヤれと?」

 

 やめて、超やめて。クロノも不穏な空気を読み取ったのかこっち見てるから!

 デバイスの先端から醤油出るとかよくない? ってよくないからな。というか調味料系も地球……おもに日本と似てる。わかりやすくてありがたいけど、何故かデバイス関連は英語多くて辛い。正しくはミッドなんちゃらってとこの言葉らしいけど、いやいやもうあれは英語だろ。

 

「魔法にもミッドとベルカって種類があるんだけどね、基本的にはミッドかな」

「両方合わせたハイブリッドとかいないの?」

「んー、もしかしたらいるかも。出来ないことはないはずだし。私も目覚めたばっかでまだまだ知識が足りな……っとクロノが呼んでるよ」

 

 ん、ホントだ。こっち向いて腕組んでる、にこやかにおいでおいでと手を振ってもいいのに。

 

「帰りますか」

「ああ、だがその前になのはから一言あるそうだ」

「――高町なのは狙い撃つぜ! とか?」

「だから撃たないってー!」

「君は少し黙ろうか、話が進まん」

 

 申し訳ない。

 

「ええっと、ナナシくんとアリシアちゃん。今回はあまりお話しできなかったんだけど」

 

 お話しってフェイトとやってた魔法や砲撃入り乱れるアレのことならむしろ出来なくてよかったんだけど……っとクロノからの視線が痛いので口は開かずにいよう。

 

「また今度、いっぱいお喋りしようね!」

「うん、よろしくねなのは!」

「ういー、まぁ俺とフェイトはまず裁判だけど……クロノ任せた!」

「丸投げか」

 

 ふははは! 裁判みたいな小難しいことはわからんのだ! 転送用の魔法陣がアースラから展開されているので乗っかる。

 うーん、アルフに転送されまくって酔ったことを思い出す……あれがなければ、今どうなってたのか。管理局に拾われて身元不明とわかって……うん、あんま楽しくなさそうだなぁ。

 そう思えばアルフには感謝だし、ジュエルシードを四次元空間にしまってよかった。

 

 さって、アースラに帰って飯を食べよう。タダ飯万歳!

 

「そんな君には裁判の手続きの資料をプレゼントだ」

「アリシア、一人仲間外れで寂しかろう。そんなあなたには俺の裁判の資料半分をプレゼント!」

「いらないから」

 




ここまで読んでくださった方に感謝を。
アリシアとプレシアはこのままフェードアウトすることなくきっと「アリシア(プレシア)がいないとこの結末はならなかったかなー」って感じにしたいです。特にA`s。
ナナシの必要性? 知りません。

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