ないない尽くしで転生   作:バンビーノ

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43.魔力炉併用以下略砲

 魔力炉併用ミッド術式応用系ベルカ様式デバイス型多砲身魔力砲。これなーんだ、答えは陸本部に取り付けられた防衛システムのひとつ。見た目は地球でいうガトリング砲を大きくした感じ。根本の方は上下左右180°曲げることが可能で、その気になれば真下に撃って魔力弾によるカーテンだってつくれる。

 

「すんごいぞー、なんと一分間にウン千発の魔力弾がぶっぱなされるぞぅ……」

「燃費の問題は母さんが作った魔力炉で解決」

「もう非殺傷設定にカッコつけて火力で防衛」

「いやぁ、それにしても今日の地上本部公開意見陳述会に間に合って良かったねぇ」

「しかし徹夜はプレシアさんが許してくれなかったからな、アリシアには」

「毎日8時間は寝て私もお肌も絶好調!」

 

 うん、水も弾く絹のような肌だね。でもプレシアさんも常にアリシアといるからか、日に日に肌が潤ってたんだぜ? もうね、見た目は20歳代で通るぞアレ。出会い頭に俺にフォトンバレット撃ち込んで来た頃より、見た目が干支一周分は若返った。本人に言うと褒めても何も出ないわよ、なんて言われたが誉めてない。おののいてるんだよ。

 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ、という重音が鳴り響いてる。

 ちなみに地上本部公開意見陳述会はミッドチルダで一年か二年かに一度行われる会議のことだ。

 発表された地上本部の運用方針に対する議論が行われ、その様子の公開はミッドチルダのみでなく色んな世界で行われるらしい。今回は地上本部の防衛システムの運用に対する注目が集まっていた。いたんだけど既に地上本部外壁には設置されている。

 

「母さんが議論するまでもなく、つけちゃったんだよねぇ。陳述会までに、陳述会で襲われてからじゃ手遅れだって」

「まぁ、レジアスさんもそれには賛成してたんよね」

 

 プレシアとレジアスさん。あの二人はどこか似かよっているところがある。百聞は一見にしかずっていうか、議論を重ねるくらいなら実際に試せってか……ある種でパワータイプなところがある。

 外では爆発音やちょっと悲鳴が聞こえたりする気がする。

 魔力炉併用ミッド術式応用系ベルカ様式デバイス型多砲身魔力砲……以下、魔力炉併用砲は既に無事()()している。

 

「ゼストさんは渋い顔してたりしたけどね」

「クイントさんなんかはやったれぇ! って感じだったぞ」

「陸の人たちって行動派が多い気するよね、その分頭脳派が大変だけど」

「「アッハッハッハ!」」

「笑ってる場合じゃないよ! 外! 外から凄い音が聞こえてるよぅ!?」

 

 俺とアリシアの肩を持って揺さぶるのはなのは。今日の陳述会には六課の面々も来てたらしく、ついさっきバッタリと出会った。外では服装的にスカさんちの娘さんとおぼしき子達が弾幕とタップダンス踊ってるし、アリシアと二人で『熱烈歓迎、地上本部へようこそ!』と書いた旗を振る。

 侵入者はスカさん一家だったかぁ……ガジェットも来てたけどAMF発動前に蜂の巣にされたんだよね。あの容赦のなさはプレシアかレジアスさんだ。

 

 眼鏡な子が騒いでるが魔力炉併用砲の音でなにも聞こえない。聞こえないよとジェスチャーで返すと眼鏡を叩きつけてキレる、なんてこった……眼鏡という個性を自ら捨てるとは。取り敢えずアリシアとイイ笑顔で手を振っといた。

 

「見てよ、これが地上本部防衛システム――タカマチ式防衛システム改だよ!」

 

 アリシアの台詞に呼応するかのように、魔力炉併用砲が回転するかのように中心部を開き、ぶっとい砲撃を放たれた。窓より吹きつけた爆風が、腕を組んで満足げなアリシアの髪をなびかせる。

 後ろで髪を一括りにした子が元眼鏡っ子を横に蹴飛ばさなかったら直撃だったな。惜しい。

 

「なんて名前つけてるの!? か、勝手に名前使うのは著作権の侵害だよ!」

「肖像権じゃない?」

「あ、あれ……?」

 

 まぁ、そんななのはのことは置いておき、現状を整理すると陳述会開始後に襲撃され撃退中。うん、予想外に短くまとまってしまった。

 六課の隊長たち、なのはやフェイト、八神家もいるし外に出て撃退すればいいだろ? って話なんだけど弾幕が厚すぎて確実にフレンドリファイアしてしまうので待機中だ。

 

「彼女たちはまだ知らなかったのだ……タカマチ式防衛システム改を越えたとしても」

「その先には、真の高町なのはが待ち構えていることに……!」

「待ち構えてるけど! 待ち構えているけどさ! その名前変えようよ!?」

 

 シグナムさんあたりは素振りして……あ、レヴァンティンの弓型で狙撃しようとしてフェイトに止められてる。

 

「えー、なのはから着想を得たからリスペクトして名付けたのに」

「それにこのネームバリューだけで侵入を諦めるやつもいるだろうし……」

「却下だよ!」

「ちぇっ、今度登録名変更しにいかないとな……」

「既に登録しちゃってるの!?」

「冗談冗談」

 

 そんなことを話しているとフェイトが駆け寄ってきた。

 

「六課が、六課にも侵入者が!」

「えっ、そんな……」

「リインが残ってるところに侵入者……侵入者が心配だ」

「全くだよ」

 

 

▽▽▽▽

 

 

 いやぁ、あたしのISの無機物潜航(ディープダイバー)が役立つのはわかるよ? ドクター自身も意図せず作り出した激レアな能力だって言うし……だからこうやって地中に潜って、こっそり機動六課に侵入したりしてレリックも盗れる。

 それでもレリックの保管場所なんかに出て、部隊員と鉢合わせすると不味いわけで。

 

 だからトーレ姉とセッテが六課に突っ込んだ。トーレ姉の方は文字通りに正面玄関に、ライドインパルスで突っ込んだ。警報は鳴り響いて部隊員たちは、ほぼ全員トーレ姉のところへ行ったわけですよ。

 だというのに、レリック保管場所からただ一人動かない奴がいる。銀髪の女……たしか名前はリインフォース・アインスだったっけ? ドクター曰く、ヤバいらしい。

 

「主やナナシ、アリシアが言うには……こういうときはお約束的に一番のお宝を守っとけ、だったが……ここでよかった、のだろうか……?」

 

 セインさん的には最悪だけど合ってるね!

 と、ブーメランがリインフォースの首を目掛け飛んできた。妹のセッテだね。

 

 本来ならAMFを付加した攻撃なんで防げない。魔導師だろうとユニゾンデバイスだろうと意識を刈り取って、私たちはレリック取って万歳! なはず。

 ただドクターの言葉を思い出した。リインフォース・アインスは、ユニゾンデバイスであり魔力を使()()()()戦える。私たちが対魔導師特化なら、彼女は対AMF特化だと。

 

 でも大丈夫大丈夫、不意打ちのブーメラン(凶器)。これを避けるだなんて……

 

 ――肘と膝がギロチンのようにブーメランを白刃取りし、砕いた。うそん!?

 対AMF特化とかいうレベルじゃないじゃん、ドクター!

 

「う、そ……ドクターの情報ではボクシングスタイルじゃ?」

「それも、出来る。けど主が無手で刀を砕く流派の技を見たい、とボソッと漏らされたのを聞いて……こっそり練習してた。アッパーでも砕けたけど」

「逃げさせてもらう……!」

 

 セッテとリインフォース・アインスとの追いかけっこ、他六課の面子全員と逃走劇をしているトーレ姉を犠牲に、あたしはこっそりとレリックを盗み出すことに成功した。

 

 妹のセッテちゃんに敬礼、帰りにケーキでも買っていこう。

 

 

▽▽▽▽

 

 

 侵入者もといスカさんちの娘さんたちの撃退には成功した。まぁ、捕らえることは出来なかった。透明になりやがったもんで、追跡部隊も撒かれた。

 

「防衛システムの有用性は見せつけれたしいいでしょう。捕らえることは私たちの仕事じゃあないわ」

「ふむ、いやそこも陸の我々の仕事だったのだが……まぁ、久々にスカッとしたな。海の奴等め、魔力炉併用砲の威力に口を開けたままだったわ、フハハハハ!」

 

 となんかプレシアもレジアスさんも色々綺麗に終わった感じを見せてるが、実は問題も残ってたり。

 

「ナナシー、そっちはどう?」

「砲塔03号から05号まで、07号と09号が配線が焼けちまってる……砲撃ぶっぱなしたやつだな」

「うーん、撃ちっぱなしで熱負荷が掛かるせいで逝っちゃったかな」

「砲撃の際には何か別の処理を噛ませるべきね。ナナシ退きなさい、そこの修理は私がするわ」

「あいよ」

「中将、そこの工具を取ってちょうだい」

「う、うむ」

「プレシアさん、陸のトップを顎で使うなよ」

「使えるものは何でも使う主義よ」

 

 使えるものって……普通、陸のトップは使えないものだよ、てか使えない者だ。むしろ仕えられる者だ。

 たしかに見た目的にはレジアスさんがここにいる誰よりも工具が似合ってるけどね?

 

「やっぱり全砲掃射は負担が大きいわね」

「ローテーションが安定だろ、というかこれ一機の弾幕密度考えたら全砲掃射する意味ないだろ。なんでやったんだよ」

「私が楽しいからよ」

「レジアスさーん! ここにどうしようもない人がいます!」

 

 試験運用的な意図があるんだろうとか思った俺が馬鹿だった。

 

「いや、そうだな……正直、儂もスカッとした」

「あ、もう駄目だ……ん?」

 

 突如、突然そこら一帯の空中にディスプレイが投影された。そこに写るのは、てかこんなことするのはジェイル・スカリエッティことスカさんのみ。

 

『初めまして、こんにちわ、それとも久しぶりかな? 次元世界随一の科学者ジェイル・スカリエッティだよ』

「あの変態、私を差し置いて次元世界一を名乗るとはいい度胸ね」

「へーい、プレシアさん落ち着いて。画面に雷撃ち込んでもスカさんには当たらんから」

「次元跳躍って、知ってるかしら?」

「知ってるけど止めろ!」

 

 

▽▽▽▽

 

 

 フッフッフ、フフフハハハハハハ! 時は満ちた、レリックは揃った! ヴィヴィオくんも元気だ!

 それでは始めようではないか、ドキ☆空飛ぶスカさんパーク開演宣言を!

 

「初めまして、こんにちわ、それとも久しぶりかな? 次元世界随一の科学者ジェイル・スカリエッティだよ」

 

 ……おぅ、何故かはわからないが背筋に寒気が走ったのだが疲れが出てきたのだろうか。右下モニターに映るプレシア女史が、デバイスを振り回してるのは関係ないと思いたいね。

 

「めんどくさい前置きは全て取っ払ってしまおう。用件のみ伝えるとしよう。明日の午前八時よりドキ☆空飛ぶスカさんパークの開催を宣言する! 入場料は無料、奮って参加してくれたまえ! 世界を面白おかしく変えてやろうではないか!」

『アホでしょうか』

『アホや』

『アホね』

 

 聖王教会や六課や地上本部から拾っている音声がアホしか聞こえないのは機器の故障だろうか、きっとそうだろう。

 

「さて、きっと私の登場によってカリカリしている者もいるだろうが心配しないでくれたまえ! 危険なことはなにもしない、ちょっと聖王のゆりかごというものを空飛ぶ遊園地風に改造しただけだ!」

『なんてことしてるんですか!? シャ、シャッハ! 六課、六課の方々に連絡を!』

「我々のところまで到達できた心優しき者には豪華な宝をきっと用意しよう!」

 

 子宝とかね。

 

『アリシアー、リイン誘って行かない?』

『休暇取れるかなぁ……まぁ、ついでに皆も誘ってみよっか』

『遊園地とかなんか久々だわ……年甲斐もなくワクワクしてきたぞ!』

『『いぇーい!』』

 

 純粋に楽しんでくれそうな人がいて何よりだね。何よりだが、その楽しんでくれそうな人間が一番厄介そうなお友達を連れてきそうだよ。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を。

ホテルアグスタ?ティアのイベント?
そんなものないです。
レリックに関しては普通にセインさんが頑張りました。うちのセインさん実は滅茶苦茶働いてます。

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