現代人 in エド in ONEPIECE   作:アディオス

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咲いた花は絶望かそれとも希望か29話

 

 

 

 

「なぁに!やられてんだよ!!チョッパー!!!」

 

お前はこんなのでやられるタマじゃねぇだろ!!

 

頭の中の大まかな地図を頼りにたどり着いた祭壇。二百年前の地図と同じ形をしたそれの上にゴーイング・メリー号はあった。

しかし空島へ来るためのフライングモデルの羽は折れ、更には航海に大事なメインマストも折れていた。ボロボロなメリー号に、いる筈のない巨大な鳥と槍を持った男。そしてメリー号と同じくボロボロになったチョッパー。怪我はしているがまだ満身創痍ではないのに安心したけれど、メリー号を燃やしている炎を消そうと必死になっていて、後ろからの槍の攻撃に気づいていなかった。

このままではチョッパーに刺さるであろうそれを俺が止めない筈もなく、叫びながら全速力で移動し槍を蹴り上げる!

 

「あぁ?おれの槍を苦もなく防ぐとはな、何者……いや言わなくて良い。分かりきった事だ、お前も青海人だな?」

 

均衡している力を押し勝ち、相手は数歩後ろに下がった。それに合わせて俺もゆっくりとメリー号に降り立つ。

 

「それがどうした?」

「エド!!」

 

後ろで泣きそうな声で俺を呼んだチョッパーに振り返り様に笑ってやり、まだ手を出してこない神官であろう男を睨みつけた。

 

「ん?エド?エドってなんか聞いたことあるような……なぁ!フザ!」

「クァアア!」

 

側にいた巨大な紫色の羽を持った鳥が鳴き声をあげる。それと同時に動物ではあり得ない現象である、火を吹くというのをやってみせた。鳴き声を上げるごとに火を吹くという事は正確なコントロールはできていないのだろう。しかしまぁそれはそれでタイミングがわからないので厄介なのだが。

 

「まぁ良い、どうせ青海人には変わりない。ならば、我ら神官は神の名の下に試練を与えるまで」

 

突いてきた槍をドライヴで防ぐ。防いだ先で熱を帯びた事を感知してすぐさま防いでいたドライヴを変える。ドライヴの温度が上がっていることからして、なるほど……あの槍は熱いらしい。メリー号を燃やしたのはあの鳥だと判断していたがそうではなく、あの槍。所々、メリーの甲板に穴のような焦げ跡がある事から熱を帯びているのは明白。触れたものが燃やせる者ならば燃やしてしまう、謂わば燃える槍か。

避けてもダメ、受けてもダメか。厄介な。

 

「面白れぇもん持ってんな」

「カハハハハ!やらんぞ?おれの得物は熱貝(ヒートダイヤル)を仕込んだ槍、火の槍(ヒートジャベリン)!防げるもんなら、防いでみなァ!!」

 

だが、刺すことに特化した西洋槍だ。先端さえ気を付けていれば刺さる事はないし、燃えることもない。まぁ、横薙ぎの打撃でやられるかもだが。

ドライヴで受けるのをやめ、電磁波で止めるのと己自身の体術で対応する。本格的な戦闘なんてやった事ないし、自分のセンス次第なのだが!やっぱりというか、戦い慣れている奴の方に分がある。連続して降る槍の雨は今までドライヴの強さに頼っていた俺では、どうにも挽回できそうにない。

まぁ、だからと言って、タダでやられる訳にはいかないんだがな!?

 

「セィア!!」

「何ッ!?」

 

好転しない攻防に痺れを切らした神官は大振りの横薙ぎをして来たが、それを上に逸らしながらドライヴで強化したストレートを土手っ腹に食らわしてやる。普通に殴るよりも強いそれは体格の良い男とは言え、人間を飛ばすのには充分であり、彼は勢い良くメリー号から湖の方へ飛んで行った。

ま、こんなもんかと息を吐く。

 

「〈え、エドって強かったんだッ!?〉」

「聴こえてんぞ、チョッパー」

「エッ!?」

 

まぁまともに戦った事なかったから仕方ないかも知れないけれど、とため息を吐いた。

 

「まぁ良い。船を守れよ、チョッパー。いつ燃やされるか分からないからな」

「う、うん!虫一匹通さねぇ!」

「その意気だ!」

 

フザと呼ばれた紫の怪鳥が神官を拾い上げる。

 

「ッてぇ……少し意識が飛んだぜ……」

「そのままずっと飛んどきゃ良いものを」

 

チッと舌打ちをしてメリー号から飛び出す。そのまま落ちる前にドライヴに受け止めてもらい、怪鳥の上に乗った神官様の目の前まで上昇した。

 

衝撃貝(インパクトダイヤル)並の威力だったぜ?ま、お世辞だが」

「そりゃどーも」

 

そもそもインパクトダイヤルってのがなんなのか思い出せないけれど…………いや、そんなのあったなってな感じでは思い出せてる。インパクトと言うからには、衝動、驚き……衝撃か。物理的な方での。

ヒートダイヤルやらインパクトやら、トーンやら色々なものがあるらしいな。やっぱりあの貝買っておいて正解か。ま、通貨の値からしてここで買った方が安かったかも知れないけれど、それはそれっていうもんだ。

 

「しかしおれに空中戦を挑むとは良い度胸だ!行くぞ!フザ!!」

「クァアアアアッ!」

 

鳥が火を吹いた。

それを横に飛ぶ事で避け、神官に向かって殴りかかる。しかし大人しく受けてくれるはずもなく俺と同じ様に避けられた。

だが避けられることは想定済み!体勢を崩した様に見せかけて回し蹴りを食らわせる。狙うのは勿論弱点である首だ。

 

首肉(コリエ)---」

「(あれはサンジの技!?)」

 

寸分違わず首元に吸い込まれる蹴りに思わず口角を上げた。しっかり喰らえよ、サンジ直伝(教わってない)。

 

「キーーック!!!」

「ぐぅッ!?」

「なんかちょっと違うッ!!!!!」

 

怪鳥から落ちる神官を尻目にツッコミをくれたチョッパーの方を向いた。

違うって言ってたけど、こんな技名じゃなかったっけ?と首を傾げると、チョッパーは慌てた様になんか違うと言って来た。

 

「何が違うんだ?」

「いや、おれも詳しく聞いてないからわからないけど、なんか響きが違うっていうか……」

 

マジか。響きって事は発音が違うという事で言葉が違うって意味だ。料理人であるサンジが使う技だから合ってると思ってたのに。

凝った首を解しながらまたもや怪鳥に拾われる神官を見る。まだ死んでないらしい。ドライヴで威力を上乗せしたのに。

 

「やっぱ、コリエじゃなかったか」

「そっちじゃねぇよ!!」

 

なんだ合ってんのかよ。でもキック以外に候補がなかったからキックって言ったんだけどな。だって蹴りだし。

ごふと血反吐を吐く神官。首元を狙ったのにも関わらず血反吐吐くだけで動けるとか化け物かよ。普通の人間なら首の骨を折って死んでいるわ。

 

「……青海人は空島の戦いに慣れてないからって嘗めてたか」

「いーやいや、その嘗め方は当然だ。普通は酸素不足になり気を失うか、気圧の変化に慣らして来たからと言って地上と同じ運動はできないはず。ならば、神官なんて相手はできない」

 

何か言いたそうな神官さん。ニヒ、と口角を上げてやる。

 

「しかしなぜ俺たちは普通に動けているのか…………そりゃぁお前、俺たちが強いからに決まっているだろう?」

 

嘲笑うように空中を飛び回る。もはやその移動は見えない程で、残像が何人も映し出された。さぁ、どれが本物だろうな。

 

「ククッ、アハハハハハ!!慣れた環境が違う、ダイヤルなんて青海にない武器、これだけのハンデがありながら---」

 

するりと相手の後ろに周り肩に手を置いた。口角を上げたまま、ただただ忠告する様に囁く様に口を開く。

 

「なぁんで神官様は一人の青海人に傷を負わせられてないのかねぇ?」

「ッ!!テメェ!!!」

「おー、怖い怖い」

 

槍を振り回され一時離脱する。大振りなそれは当たらなければ怖くはないが当たれば脅威だ。ドライヴで攻撃範囲内から離脱した。

しかし相手もそのまま離脱するわけでもなさそうで、怪鳥が羽ばたき接近して来た。合わせて火を吐くものだから慌てて避け、狙った様に突いてきた槍を蹴り上げて受け流す。そして神官は防がれたとわかった途端、三メートル先ぐらいに離脱した。

 

「あ゛ー、もう良い。手加減は無しだ……テメェは絶対に殺すッ!」

「クァァアアアアアアアアッ!!」

 

鋭い眼光を向けて来た神官にオレ(・・)は楽しくなって、自然と笑みをこぼしていた。

 

「クククッ。最初からそうしろよ……ゴミが(・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エド、すげぇ……」

 

ポツリと溢れた言葉。でもそれは本心で、自分でも呟いたことにすら気づいていない。それぐらい目の前の戦いに魅入っていた。

縦横無尽に空を駆けるその姿は地を這う動物からすれば憧れるもの。小さい頃、空を見上げては雪をものともしない鳥たちに憧れを抱いたものだった。あの翼があれば自由になるのだろうか、なんて。その可能性がある実を食べても得た力は“人間”になるだったけど中途半端で結局はどっちつかずになっちゃったんだけど。

空というのは凡ゆる物に対して優位が取れる。鼻が青いから追い出された群の長でさえ、空から来る捕食者には子供を取られるんじゃないかって怯えてた。どこから来るか分からないし、受け身しか取れないからだ。

そんな空を支配する者同士の戦い。魅入らないはずがなかった。強い者には憧れる、それが獣のサガだ。

まぁでもおれ、元草食動物だから怖いものからは逃げたくなるんだけど。

 

『そんなに守りたきゃ、なぜ弱い!!』

 

神官が言った言葉が脳裏に蘇る。涙が溢れてくる。その通りだ、その通り過ぎて反論の余地もなかった。

船番を任された。だからみんなに頼られてる、その筈だ……そのはずだった。

だが現実はどうだ。船を守ると意気込んでいたはずなのに、直すと口にしていたはずなのに。なのにした事と言えば、船を傷つけられ、挙げ句の果てには為すすべも無くてマストを折った。大事なメインマストを湖の底へ沈めたんだ。

敵が来た途端に逃げるように笛を吹いた。助けを呼んだ。仕方がない?

 

「(仕方なくなんかない……!)」

 

あいつらなら、お前なら呼ばなかったんじゃないか!

 

「エドッ!?」

 

問いかけと悲鳴が重なったのは、今まで優位だったエドが吹き飛ばされたからだ。明らかにあの押されていた神官の仕業ではない。

船の手摺りへと飛び乗ってエドが吹き飛ばされた場所を見て無事を確信する。どうやらなんらかの方法で衝撃を殺したらしい。憎たらしく睨むエドに安堵の息を吐いて、エドが元々いた場所を慌てて見た。

おれの予想通りなら、誰でもない第三者がいるはず!

 

「ッテメェ!これからって時に手出しすんな!」

「エネルから言われてませんでしたか?“エド”には手を出すな、と」

「んな事、仰ってたか?」

「言ってましたよ……」

 

ゆらりと派手なローブが揺れる。ねずみ色に水色のメッシュが入った髪がふわはわと風邪に流されている。

 

「てめぇ……何者だ?オレ様を吹き飛ばすなんざ、人間業じゃねぇな」

「おや、仲間の顔をもう忘れたんですか?科学者に向いてないのでは?」

「五月蝿ぇ!さっさと名乗りやがれ!」

 

宙に浮かんでいた。羽根もなく、そういう機械もなく、ただその男は佇んでいる。

見知らぬ男、でもなぜかその自分達とは何かが違う雰囲気というものはどこか知っている。

 

「では名乗らせていただきましょう」

 

優雅にお辞儀を一つ。

 

「アインチェイス・イスマエルと申します。アインとお呼びください。職業はそうですね……」

 

そしてくすり、と微笑みを零した。

 

Bluhen(ブルーヘン)、とでも言っておきましょうか」

 

 

 

 

 

 




空の騎士ーー!!!!

騎士「解せぬ」

【悲報】あまり出番がない騎士、更になくなる。
でも出番があまりないにせよ、神官の一人と互角かそれ以上、ナミやウソップが痛がる衝撃貝を使いこなし、重たい甲冑を着ている……それだけで結構強いってわかるよな。って事は全盛期どんぐらいだったのだろうか。
というか、この世界のお爺ちゃん達強過ぎないかー!衰えを知らんのかー!

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