現代人 in エド in ONEPIECE   作:アディオス

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塵が舞う戦場の中で仲間達を見送る22話

 

 

 

「ビビぃッ!!!!!!!!」

 

めい一杯叫ぶ。喉が裂けるかと思える程の大声はちゃんとビビに届いたようで、アルバーナ宮殿から声が聞こえた。

 

「聴いてくださいッ!!!!!」

 

突然現れた“壁”に困惑している両軍に可憐な、そして悲痛そうな音が届く。ビビの言葉を聞いた瞬間誰かわかったようで、皆が皆ビビ様と譫言のように呟いていた。

 

「これはッ!!仕組まれた罠なんです!!!!だからッ!!だから!!!!!戦いをやめ------ッ!?」

 

声が途中で途切れた。ビビがいた場所を見ると彼女が消えていた。そして塵旋風が更に大きく舞い視界を悪くする。もはやビビがいた場所すら見えなかった。

 

「チッ!能力者ってのは厄介だな……!」

 

海に嫌われているとはいえ、自然の力を手に入れた彼等はとても強い。そもそも一生物が唯一勝てない災害を、自然を味方につけるのだから、それだけで強さは計り知れないというものだ。使い方次第ではあるが、それ個人がいるだけで災害になり得る。そう思うとルフィのゴムゴムの実なんて可愛いものだ。

ビビが消えたのも、あのクロコダイルの仕業だろう。ここまで来たのに黙って戦いが終わるのを待っているはずがない。

もう一度舌打ちをして、熱感知でコーザを探す。お生憎様、パーティクルプリズムはダミードライヴで展開している為に時間制限がある。それは約三分。五分にも満たないわけにはダミードライヴの動力がドライヴよりも途轍もなく低いからだ。所詮はダミーということだ。こんな事ならドライヴで展開しておくべきだったか。

 

「(いた……!)」

 

あんなに撃たれたのにまだ息があるのは流石この世界の住人と言えよう。駆け寄りドライヴによるスキャンを開始する。オレは医者ではないが、科学者だ。人体の構造など頭に入っているので、銃弾の摘出ぐらいは問題ない。

 

「な、にを……っ」

「黙ってみてろ」

 

あった、四発の弾丸。幸い重要な血管には届いていないようだ。大きく血を吹き出していない事から全て静脈を通過している。一つでも動脈に当たっていたら危なかったかもしれない。運がいいな、こいつ。

これぐらいならば多分自然治癒できる。荒治療にはなるが、有害な鉛玉を身体の中に残しておく方がきっと駄目だろう。

ま、オレは医者じゃねェが。

 

「ぐっうっ!」

 

磁力で引っ張り出してそこらに捨てる。カランカランと銃弾が落ちた音とコーザの苦しそうな息が重なる。

さてあとはこいつを安全な場所に移動させよう。流石に戦いの真っ只中に怪我人を置いておくわけにはいかない。担ぎ上げて広場の横にある建物に寄りかからせる。その時も呻き声を漏らしたが、まぁ痛みがあるなら大丈夫だろう。

楽観的?いやいや、的確な状況判断である。

 

「(そろそろダミードライヴが消える……!)」

 

同時にダミードライヴを出せるのは今のオレでは最大八機。つまりパーフェクトプリズムをもう一度張るには、これが消えて数秒後。俺が作り出した壁を叩いている両軍の怒りはもう治らず、数秒もあれば殺し合いが始まってしまうのは確実だった。

ここで止めるというビビの思惑は阻止され、何重にも予防線を張っていたクロコダイルの勝利だ。まだ実質的な勝利とは言えないが、確信しているのだろう、我らが勝つと。

確かに通常の海賊ならばそうなるだろう。だが、お前が確信しているのと同時に俺たちも確信している。我らが船長がお前に勝つと。何せあいつは……。

 

「……未来の海賊王だからな」

 

ほぉら、お出ましだ。

能力者であろう大きな鳥に乗って現れたルフィに自然に笑顔になる。彼が来たからには事態は終結に向かう。だからこそ、俺たちで彼をサポートしなくてはならない。

 

「…………(できるとかできないとかじゃねェ……やるんだ)」

 

あいつだって必死に生きて、必死に敵をぶっ飛ばそうとしている。ならば俺の役目はここで反乱軍と国王軍を止める事だろう。タイムラグがなんだ。オレは天才科学者だぞ、ノータイムで張り直すことなんて少し頭をひねれば分かることだ!

 

「ダミードライヴ四機消失。再出現まで十五秒」

 

八機のうち手前側四機のみ消失させる。再出現までのタイムラグは時間切れで消失した際と同じだが、消せるタイミングはこちらで操れる。これにより立体四方系ではなくなったが、まだ“壁”は存在していた。まぁあれはただの電磁波なので、触ればピリッと来るぐらいだ。完全な“壁”にはなり得ない。

つまりはこのただの面を交代で出すことにより、もう一度パーフェクトプリズムを張ることができる。うっわ、俺って天才?

 

「ダミードライヴ再出現と同時に四機消失」

 

よしよし、上手くいってる。誰も通ってはいないな。あと八秒。

 

「ちょっと!エドー!」

 

偉いぞー俺!と自分を褒めていると、俺の名前を呼ぶ声がした。この声の感じからすると多分ナミだろう。辺りを見渡すがいかんせん、塵旋風で視界がとても悪い。

わざわざドライヴの熱感池を作動させて探すと、ナミらしきシルエットは俺が作り出した“壁”の向こうにいる。つまりは俺と反対側にいた。

視覚でも確認して、ナミとゾロへと駆けよる。ナミはゾロに背負われている形で此方を見据えていた。

 

「ナミ、ゾロ。倒したのか?」

「あぁ」

「えぇ、ばっちりコテンパンにしてやったわ!」

 

力拳を作って笑顔で言うナミは怖いなー。戦力的には弱いはずなんだけどなー。女性って怖い。

まぁ踊り子衣装がボロボロなのでギリギリの勝利だったのだろう。ゾロも切り傷が多く、何故生きているのか謎で仕方ない程だ。生命力強すぎじゃね?

 

「ってそうじゃないわ!何よこの壁!エドの仕業でしょ!ビリビリして通れないんだけど!」

 

え、マジで?ビリビリする?

スキルであるパーフェクトプリズムになりそこないのコレが?そんな特殊技能が付いていたとは。

周りを見ると両軍が剣やら槍やらを使って“壁”を攻撃した瞬間、感電してふらついている。倒れたり死んだりするほどではなさそうだ。言うなれば護身用スタンガン並みの電撃なのだろう。こんな副次効果があったとは……無理にパーフェクトプリズムを貼らなくても大丈夫そうだな、これ。

まぁパーフェクトプリズムの方が阻むのには確実なので展開しないわけにはいかないが。

 

「あぁ俺の仕業だ。そりゃ悪かった、通っていいぞ。ビビとルフィが待ってる」

 

ナミ達の前にドライヴを差し込み、人一人分ぐらい通れる空間を作り出す。ダミードライヴもドライヴもどちらも一緒の存在。ダミーとは言え超劣化版ドライヴみたいな認識なので、本物を差し込んで形を変えるなど簡単だ。

 

「ほんと便利だな、それ」

「そうよねぇ。こんな大技、できるのアンタだけじゃない?」

「そうか?お前らもできるだろ」

「「出来ないわ!!!!」」

 

いやいや出来るだろう。今はできないかもしれないが、いつかは出来るはずである。大技ってのはバトル漫画において必須獲得事項だしな。雑魚無双にはもってこいだから覚えておいて損はない。

ビビとルフィが降り立ったであろう場所を指差して、ナミとゾロが通った瞬間に穴を閉じる。俺が作り出した道を通ろうとしたバカどもは運良く感電して倒れていた。ズルしようとするからだ、ザマァみそらせ。

 

「お前は来ないのか?」

「あぁ。ここで両軍を押し留めるのが俺の役目だ。別に行って乱戦状態になっても良いのなら、行くけど」

「それはダメよ!ここに居なさい、エド。ビビの為に」

「クックック。元よりそのつもりだ」

 

第一に王女のことを思い行動する。それが護衛の務めだ。

俺の返事に満足したのか、ナミは鼻を鳴らしてゾロにさぁ行くわよ!と元気に号令して居た。血だらけな二人は見て居て痛々しいが、これも仲間である彼女の為だろう。怖い事は避けるナミが善戦し、勝った。この勝利の風は正しく友情が引き起こしたものだと確信できる。

そんなもの、オレにはないがな。

 

「てっめ!一人で歩きやがれ!」

「足痛めてるのに歩けると思う!?」

「おれは胴体切られてるんだが!!」

「そんなのいつもの事じゃない」

「鬼か!」

「か弱い女の子よ」

 

か弱い……?がめついの間違いじゃないのだろうか。そんな事を思ったらギッと睨まれた。おーおー怖い怖い。

両手を挙げて降参のポーズをすれば、ふんと鼻を鳴らしてゾロを足にして去って行った。彼女を怒らせたら今後の活動にもヒビが入る。資金のあれこれを一手に担っているのがナミだからな。怒らせでもすれば、罰金かお小遣いが減る。それは困る、とても困る。当てのない俺にとって金とは生きる糧だ。今は欲しいものがなくともいつか出来るのかもしれないのだから、貯めておいて損はないしな。

貯めるのは地道だが、消費するのは一瞬だ。

 

「おい、エド。開けてくれ」

 

ナミ達が去って行った数秒後、サンジとチョッパー、包帯だらけのウソップにマツゲがやってきた。おやお揃いで。

 

「さっきナミ達が出てったの見たぞ!開けてくれ!」

「これエドがやったのか?すげぇなー!」

 

チョッパーが俺がした事に対して目を輝かせて見てくるのにちょっと気分が良くなる。人は何かしら褒められたら嬉しいものだ。それは俺も例外ではない。

 

「通すから触んなよ、触ったら時間が止まる」

「さっき見たぜ!すげぇな、あれ。どういう仕組みなんだ?」

「流石9000万の首は伊達じゃないっていうことか」

「9000万!?!?!?」

「そういやチョッパーは知らなかったか」

 

ひぇ!?とマツゲの陰に隠れるチョッパーに少し泣きそうになる。ドラムで仲間になったチョッパーが知らないのも、9000万という大金でありこの前半の海ではそれなりの大物である事からすれば、その反応は正しい。けど泣きそう。

 

「おれ、たまに忘れるんだよな」

「おれもだ。ルフィのは納得するんだが」

「俺もー」

「「いやオメェは覚えとけよ」」

 

当事者だろ、とツッコミを受けてそれもそうかと納得する。でもそんな賞金が自分の首にかかってるなんて思えないから、普通に忘れるんだよな。

って今はそんな世間話する時間じゃないんだよ。さっさとビビの所へ行けっての。

 

「さっさと通れ」

 

先ほどと同じようにドライヴで開けて促す。お前はいかないのか?という質問をまたされたので、さっきと同じくここにいる重要性について簡単に言った。

 

「よし、ここにいろ。ビビちゃんの為に」

「お前、美女がらみだと本当に迷いないな」

 

サンジのブレなさっぷりに呆れながらも三人と一頭を送り出す。ドライヴで開けた場所はさっさと閉めて両軍を通らせないようにした。

 

「ぐぅっ!腕の時だけ止まったみたいだ!痛ェ……!」

 

まぁ突っ込んだ馬鹿もいたようだけど、そいつは腕だけで済んだようだ。まぁ中が時が止まったように感じるのは中に何も入っていないからである。パーフェクトプリズムは完全に無の空間を作り出し、相手を通さない。完全なる“無”だからこそ、こうして不可思議な現象が起こる。まぁ起こしてんのオレだけどな。

因みに中に閉じ込めるのも可能だが、その場合その中に入ったモノの時間は止まる。外からの救助を待つしかない状態になってしまう。解くまで完全にオレの手中にあるってわけだ。ククク、いい気味だ。

ところで中は時が止まるといったが、身体の一部分だけ入ってしまった場合、その部分だけの時が止まる。だが他の時は止まっていない。あの腕を突っ込んで痛がっている馬鹿のように。

さてはて?生きているモノから、時が完全に止まったモノに移る時その中はどうなっているのか考えたことあるだろうか。もしその時が止まった場所にずっと何かを送り込んでいたのだとしたら?止まっているのを突然解除したのだとしたら?

 

どうなるのだろう。

 

「答えは」

「っ!と、取れた!!やっ……ッ!?!?あ゛ぁあああああっ!!!」

 

指を鳴らし、男が突っ込んだ腕の部分だけ解除する。男は腕が取れた事に喜んだが、それは一瞬の出来事。次の瞬間には腕を押さえてのたうち回っていた。

 

「止まっていたのは腕……だがその上は止まっていない。つまりは細胞の中で断絶した空間ができるわけだ……その意味がわかるか?酸素を運ぼうとしても、病原菌を追いかけようともその空間に入った瞬間に止まる。つまりは詰まっているわけだ。やり過ぎた止血は四肢を壊死させる……ククク。痛ェだろうなァ!溜まっていたダムが決壊したんだもんなァ!!腕はまだ付いてるか!?取れてねェのか!?あはっ、アハハハハハハハハハ!!!」

 

ばかみてェ。

のたうち回っている男を止める為に腹を足で蹴ってから、足の裏で踏む。

 

「もう突破しようだなんて思うなよ…………死にたくねェだろ……?」

 

顔を近づけてそう言えば、男はただひたすらにコクコクと頷いた。

やけに素直な彼に面白くないと呟きながらビビとルフィ、そしてみんなのいるであろう場所を向く。空では既に、大きな鳥が羽ばたいていた。

 

「(上手くやれよ、お前ら)」

 

物語の中心には関われてないけど、こうして余計な血を流させずにできるのは良い役目だとは思う。

全くもって面倒だし、面白くもないがな。

 

 

 

 




原作を隔離させようとしたら“させねぇよ!”ってぐらいに私の指には世界の抑止力が働いている。つまりは……抑止の守護者(指)?

次ぐらいでアラバスタ編を終わらせたい(願望)

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