現代人 in エド in ONEPIECE   作:アディオス

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反乱軍と国王軍が相対する最中に21話

 

 

 

 

 

「宮殿を爆破します」

「ビビ様!?」

 

アルバーナ宮殿に着いた途端これだ。敵組織に潜入するぐらいのお転婆王女サマは、人が思いつかないようなことをすらりと言ってのける。ルフィ達に影響を受けたのか、彼女は結構大胆だ。

4000年の歴史を持つというアルバーナ宮殿は、民の命と国の存続より大切ではないらしい。それを聞いた途端、くつくつと笑いが溢れる。国を第一に考える上に立つ人間は良い支配者になれる。ビビはいい王様になれるだろうな。

ただまぁ、この国を狙っているクロコダイルが黙っているはずもなく。

いざダイナマイトで宮殿を爆破しようとしたところで、突風が吹いた。砂を含んだそれは確実に自然なものではなく、火を付けようとした国王軍の兵士達が次々に何かに斬られて倒れていく。

 

「(カマイタチ……か)」

 

風に乗って通行人を刃で傷つける妖怪を思い出す。彼の場合、風ではなく砂で代用しているんだろうが、問題はそこではない。クロコダイルがここに来たということである。

 

「クハハハハハ。壊されちゃ困るなぁ、これはこれから俺の家になるんだからなァ」

 

詰まる所、クロコダイルを足止めしていたルフィは負けたことになる。その事に気付いたビビはクロコダイルを睨み、ずっとルフィの行方を聞いていた。

負けた、それは即ち死を意味する。海賊の決闘において慈悲はなく、クロコダイルの様な野心家であり策略家なら確実に邪魔になるであろうルフィを殺しておかないはずがない。あいつは死なないとは思うが、もしかしての事もある。慢心したクロコダイルがちゃんと死んだかどうかを確認していないのに賭けるしかない。

隣にいたビビが怒りのあまり駆け出そうとするのを肩を掴んで止める。肩の関節を外す勢いで掴んだからか、ビビは呻いて止まった。パッと離すと彼女は左肩を掴んで歯を食いしばっている。そんなに痛いか、そりゃそうか……バロックワークス社に潜入していたとはいえ、元は王女。痛みには弱いのかもしれない。まぁそれが普通なのだけど。

 

「貴っ様ぁ!!ビビ様に何を!!」

 

ビビの右隣にいた大男に怒鳴られる。国王軍の奴だろう、それも偉い奴。他の奴よりはいくらか強そうだがまだまだ弱い、そんな印象を感じる。

で、なんだっけ?何をした?そりゃオメェ。

 

「走り出そうとしたバカを止めただけだが?」

「止めるだけだけに左肩を痛めたのか!?」

「そうだが?」

「その必要があるのか!!!一国の王女だぞ!」

 

凄い剣幕だが、そんなもの俺には屁の河童。何ともないし、この大男の言いたい事もわかるのだが少しだけムカついた。

 

「五月蝿ェ」

 

イラッとしてドライヴで軽く大男の脛を突く。軽くとはいえ弁慶の泣き所を硬い機械で突かれたのならめちゃくちゃ痛いはずだ。現に脛を抱えて蹲っている。

そんな大男を見下ろして鼻で笑ってやった。

 

「こんな時に王女もクソもあるか。それに一国の王女だからだ……国を救おうって言う奴が敵に煽られてまんまと殺られるザマを指を咥えて見てろってのか?国王の兵ってのは薄情だな」

「なっ……!」

「良いのよ、チャカ。エドさんの言う通りだわ……」

「ビビ様!」

「ま、仲間を殺され、父親を囚われて怒らない理由はないな。お前は正常だぜ、王女サマ」

 

殺されてそれがどうしたのかという仲間は仲間ではないし、親が柱に磔にされて黙っている様な子供は家族ではない。というかいつの間に王を磔にしてたんだ?こいつ。

 

「で、目は覚めたか?」

「えぇ……お陰で冷静になれた。でもちょっと痛いわ、エドさん」

「そりゃ悪いな、手加減が苦手なんだ」

「…………嘘つきね」

 

そりゃどうも。ウソップ程じゃねぇけどな。

 

「クハハハハ。良い仲間じゃねぇか、えぇ?ビビ王女」

 

到底手の代わりになり得ないような義手をさすりながら笑うクロコダイルにビビは悔しそうに歯を噛んでいる。実力差は歴然、手も足も出ないというのは悔しい以外何物でもないだろう。気持ちはわかるが、行かせる気はさらさらない。

一通りビビを嘲笑ったクロコダイルは国王に向き直り、ある兵器の場所を聞く。遥か古代に存在したという、一発放てば島一つ消滅させる程の火力を持った残虐兵器。その名もプルトン。神の兵器とも呼ばれるそれがこの国に眠っているという。

 

「その名をどこで訊いた」

「そんな事はどうでも良い。あるかどうかを訊いている、アラバスタ国王ネフェルタリ・コブラよ」

「…………確かにこの地にある。だが、話を聞いただけで何処にあるのかすら先代国王すら知らなかった」

「だろうな。あるのかも疑わしい代物だ。そこは俺も期待してねぇよ」

「なら何故、求める?」

「クハハハハハ!」

 

ニマリと笑うクロコダイル。静観するミス・オールサンデー。バロックワークス社、トップ2がこの国を狙い、神の兵器を狙った理由を語る。

バロックワークス社の最終目的は理想国家の建設。それはプルトンが眠るこの地を狙うことにより成り立つ事。クロコダイルの理想国家とは軍事国家。だが海賊が軍事国家を作り、他の国を侵略するとなると世界政府が黙っていない。その為の世界最強の軍事力、その為のプルトンだという。

ククク、海賊が考えるような事じゃねぇな。まぁ海賊が王下七武海になり、一つの会社を作り腰を据えた所で海賊であってそうじゃねぇか。野心はそれなりにあるようだがな。

 

「では質問を変えようか、コブラよ。ポーネグリフは何処にある?」

「……!」

「おっと、だんまりは無しにしろ。あるのはわかっている。案内して貰おうか」

 

数秒黙り一度目を閉じた国王は項垂れる様に頷いた。国王の返事にクロコダイルは笑い、ビビは目を見張り口を押さえた。

ポーネグリフとは古代の人々が残した碑石。銃弾にも砲撃にも爆撃にも耐えうる特殊な石を使った記録。その一部がここにある。

先祖代々受け継がれたポーネグリフ。そこにプルトンの場所が書かれているという。

 

「(…………じゃぁあの場所にあったポーネグリフは何だ。あの藍色の輝きを持った石、どう考えてもポーネグリフだった。それに……)」

 

それに、そこには古代兵器の場所が書かれていた。そう今あいつが求めるプルトンの居場所だ。どうなってやがる。

島一つ容易く吹き飛ばす代物だ。王家が厳重に管理していなければならないものがあそこには、忘れ去られた砂漠の下にあった。何の冗談だ。フェイクだと考えるべきだろうが、記録から見てもあれは本物だ。あんな所に放って置かれる物じゃねぇはずだが。

4000年前からあるというこの宮殿。ポーネグリフの文字を読めなかったバカが間違えてプルトンの場所を記した碑石だと信じていたわけでもないはずだ。4000年もの間一度もこの場所を移動していないのなら、何故あの場所にポーネグリフが。それも古代兵器の。

あの場所にポーネグリフがあるのは簡単に推察できる。度重なる砂嵐によって埋まっている街を見た後だ。砂漠の上に建造物を作ったが何千年もの時間で砂漠の位置が上がった事により埋まったと推測できる。ゾロが岩に座っただけで建造物に穴が開いたことからその時間が窺える。

でもそうだとしても……あんな場所に、忘れ去られた場所に、世界を揺るがすものを置いておくはずがない。やはりフェイクなのだろうか。

 

「(まぁそれはコブラが知るポーネグリフの内容によるな)」

 

憶測の域を出ないな。考えるのをやめよう……なんだか展開が進んでいる。

 

「四時半に広場に砲撃を……!?」

 

え、何々?砲撃?

 

「クハハハハ!そうだ。十六時三十分丁度に、直径五キロを吹き飛ばす砲弾を撃ち込む。俺の計画が正しければ……十六時丁度に反乱軍と国王軍がその広場でぶつかり合う。クハハハハ、乱戦の中周囲を吹き飛ばす砲弾を撃ち込んだらどうなるのだろうなァ?」

「そんなの!みんな死ぬに決まってるじゃない!!」

「……外道がぁ!」

「クハハハハハ」

 

マジで……?やるな?クロコダイル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んなわけで、広場中央。反乱軍のリーダー、コーザが国王軍の前に立ち白旗を掲げていた。現在十五時五十八分。アルバーナ宮殿に向かう道筋から次々の反乱軍達が入り込んでくる。宮殿の上にいるからこそわかるこの風景は、まるでアリのようだと言ってしまいたいものだった。

え?何故反乱軍のリーダーが国王軍の前に立ち白旗を掲げているのかだって?そりゃオメェ、コーザが宮殿の抜け道を通って悪役のクロコダイルと相対したからだ。今までまだ国王が悪だと思っていたコーザだったが、国王が磔にされている状況で流石に国王が悪と決めつけ討ち取ろうとはしなかったようだ。幼馴染のビビと馴染みのある国王に頼まれ、コーザは反乱軍を止めるために前に立つ。

その様子を宮殿の上から眺める俺たちだが、さてそう上手く行くものだろうか。

 

「聴けェ!!反乱軍!!!!戦争は終わった!武器を置け!!国王軍はもう交戦する意思はない!!!!!」

 

反乱軍を率いていたことはある、中々のカリスマ性だ。コーザの言葉に疑念はあるものの、リーダーの言うことを信じているのか次々と武器を下ろしていく反乱軍。国王軍はすでに武器を下ろしている。

 

「それは本当なのか……?コーザさん」

 

反乱軍の一人がコーザに問う。半信半疑なのだろう。そりゃそうだ、いきなり降伏宣言なんて怪しさ抜群ではある。疑うのも無理はない。

その反乱軍の言葉にコーザはゆっくりと頷いた。動作は遅いがその眼差しはきっと決意が篭った堂々たるものなのだろう。反乱軍達が気圧されている。

 

「あぁ、本当だ。もう争う必要は、血を流す必要はないんだ……!!戦争は終わったん「パァン!」---っ!?」

 

“だ”と続けようとしたコーザの言葉を乾いた音が遮った。ぐらりと傾いた彼を続いて二、三発撃つ。衝撃でぐらぐらと動いていた身体はやがて重力に従って地面に落ちていく。

コンクリートの上にある多少の砂を巻き上げて落下したコーザは、ごふと血を吐き出した。

反乱軍のリーダーが“撃たれた”。そう分かったのは彼が倒れた後だ。

 

「コーザぁ!!!!!!!」

 

倒れた幼馴染の名前を叫ぶビビ。

 

「コーザさん!!」

「コーザ!」

「リーダー!!!」

「よくもリーダーを!国王軍!」

 

リーダーを撃たれた怒りに震える反乱軍。

 

「お前ッ!!!何で撃った!?」

「へ、へへ。手が滑りましてね」

「嘘をつくな!!!」

 

仲間の奇行に困惑する国王軍。

現場は混乱し、そしてさらに銃声が響く。不自然に砂塵が現れ、両軍の仲間たちが倒れていく。

 

「クククッ、アハハハハハハハハハハッ!!バロックワークスの仕業か!まさか両軍に潜入してるとはな!!クク!あんなわかりやすいマーク付けておいて、それを見抜けなかった奴等は間抜けだとは思うが……ククク、用意周到だなァ、オイ」

 

そしてこの状況を笑うオレ。人間としては最低な行為だとは思うが、どうしても笑わずにはいられない。可笑しくって腹痛いわぁwwとはこの事である。おっと俺にも下衆の才能があるようだな。

 

「それには同意するが……クハハハ。お前、麦わらには勿体ねぇなぁ。バロックワークス社に来ないか?今なら良い地位を贈呈しよう」

 

おっと、クロコダイルさんにヘッドハンティングされちまった。何が気に入ったのか分からないが、ニマニマしながら此方を見ている。良い地位とはこの国が手に入ったらなんだろう。それはとても嬉しい誘いだが、あいにくこの国が落ちるとは思っていない俺にとっては受ける理由もなく。

 

「断る。船長を舐めてもらっては困るなァ、テメェの野望は潰えるって相場が決まっている」

「あ?」

「それに一つの場所に腰を据えるなんて事、面白くもねェモノに加担するかよ」

 

少しだけ青筋を浮かべたクロコダイルを鼻で笑ってやる。

 

「そもそも、本気じゃねぇ勧誘なんてお断りだ」

 

俺が麦わらの一味に加わった経緯はさて置いてだ。誰がお前の下につくものか。お前みたいな大物の癖に小物臭する奴について行きたくねぇよ。

最初とは逆に此方がニマニマ笑ってやっていると、ぐいっとベルトを引っ張られた。何だ何だと思うと、ビビが此方を見ていた。涙を押し殺したような顔で、懇願するようなもので。

最初と違って仲間である俺を頼ってくれるのは嬉しいが、はっきりと言葉を喋ってほしいものである。はぁと溜息をついて、俺は宮殿を飛び降りた。

 

「エドさん!?」

「任せておけって」

 

心配するような声を笑い飛ばす。そんなキャラではないのは重々承知だが、そうでもなければ彼女の心は折れそうだった。

重力に従い下に落ちながら、眼下を見ると反乱軍と国王軍はまだ衝突はしていなかった。混乱しているらしい。コーザの言葉を信じるべきか、目の前の出来事に怒って突撃するべきか。判断が遅いのは間抜けの象徴だが、今はそれが好都合。

ドライヴを引き寄せその上に乗り、塵旋風の中を突っ切る。熱感知によりどこに何がいるのかは分かっているので、人を避けるのは容易い。丁度彼らが分断している広場の中央に降り立ち、端から端へとダミードライヴを八機展開させた。

 

「さぁて、やった事はねェが……俺の役目は王女サマの護衛。彼女の望みを叶えるのも護衛の務めだろうよ」

 

だからさ、止まれよ?お前ら。

 

「行けェ!国王軍を討ち取れぇ!!」

「国王軍の言葉なんかもう信じねぇ!」

「コーザさんの仇!!」

 

 

「パーティクル」

 

 

「反乱軍を抑えろぉ!!!」

「国王の名にかけて!!」

「反乱軍は所詮反乱軍だ!!前へ進め!!」

 

 

「---プリズム!!」

 

 

反乱軍と国王軍が衝突すると思われたその時、両軍の間に不可思議な“壁”が出現した。

 

 

 

 




アニメでは「アッアッアッア」みたいな笑い方なのに、漫画では「クハハハ」なのどういう事なのクロコダイル。冗談は名前だけにしておいてくれ。

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