現代人 in エド in ONEPIECE   作:アディオス

20 / 30
変態に追われながら宮殿へ向かう20話

 

 

「置いて行って良かったのか」

「大丈夫よ、アイツが言ったんだから」

 

卑劣()な罠に嵌められたルフィ達を助けた後、レインベースを脱出。国王軍と反乱軍の衝突を止めるために首都アルバーナへと向かうべく巨大ガニに乗って出発したが、思ったよりしつこいクロコダイルによりビビが拐われそうになり、ルフィが身代わりになった。ルフィは自分の事はいいから先に行けと言い、理解はするが納得はしていない面々は逃げながらも本当に大丈夫かどうか思案していた。←イマココ。

まぁ俺としては大丈夫だとは思う。負けフラグは立っているが死にはしない。あの男はあんなところで死ぬような奴じゃないのは前世からわかっている事だ。

 

「クク。ま、俺達ができることをしようぜ。今の俺達にとっての最優先事項は王女サマを送り届けることだ」

「そうだな……おれがお守りしますね〜!ビビちゅわーん!」

 

おい。

 

「あら?私は?」

「もちろん!ナミすわぁんもですよ〜!」

 

おい、サンジ。

三時のおやつって呼ぶぞ、コラ。ただ単にサンジが作ったおやつみたいな呼び方だけど!

シリアスをシリアルにすんなよ。いやシリアスなんて長続きしないのはわかっていたが。

喧嘩するゾロとサンジを呆れたように見てから、ルフィがいる方角へと振り返った。

原作を知っているとはいえ心配はある。オレというイレギュラーがいるからだ。もしかしたらバタフライエフェクトで死んでしまうかもしれない。そんな場面に船長はいつも出くわす。

ただ置いていった手前、信用しないわけもなく。

 

「精々精一杯足掻け、船長。アルバーナで待ってるぜ」

 

まだ、信頼はできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけでアルバーナ。展開はやバーナ。

俺は今遥か上空、肉眼で辛うじて見えるであろう場所を陣取り脚を組んで欠伸をこぼしていた。

アルバーナは決戦の地だ。国王軍、反乱軍、そしてバロックワークスの皆さんがお集まりになる地。バロックワークスについては幹部てあるオフィサーエージェント達ではあるが。

その強さは計り知れないので束で来られても困る。というわけで皆同じマントを被り、超カルガモ部隊で三手に別れるという手に出た。敵はまんまと引っかかり、見事に三つに分かれた。ま、咄嗟すぎて混乱したからこそなんだろうけど。そうじゃなければ、ここまで上手く乗ってくれない。最悪の場合、殺さなければ良いのだから超カルガモを狙われたかもしれないし。

眼下にいる岩陰に隠れていたビビはオフィサーエージェントたちがどこかへ行ったのを確認して出てきた。よし、ここから俺の任務の始まりだ。

何故俺が超カルガモ部隊に乗らなかったのかは、そういう作戦だと言っておこう。彼らはカルー入れて七羽。俺達はラクダ入れて八人(うち一頭)である。つまりは余るわけだ。常識に考えてラクダのマツゲを置いて行くべきなのだが、マツゲをビビと一緒において行くわけにもいかず、そもそも乗り物として以外は役立たずなマツゲを置いていってもなーという。本人……本ラクダには失礼な物言いだけれど。

そんなわけで俺が残ると立候補。ビビを護る役だ。勇敢な超カルガモ部隊隊長であるカルーがいるとはいえ、ビビ大好きなナミは心配であったらしい。俺を置いて行った…………おい誰だよ立候補したなんてかっこいい事言ったの!押し付けられただけだよ!俺だよ!

 

「はぁ……面倒クセェ」

 

どうせならオフィサーエージェントと戦ってみたかったものだ。アレらが消えたら残るはクロコダイルのみ。 クロコダイルはルフィの獲物なので手出しができない。ワンチャン他のオフィサーエージェントか、ミス・オールサンデーぐらいだろうな。チャンスがあれば良いけど……オレも実力を試したいもんだしな。

ま、その前にビビの護衛だ。反乱軍を止めるために待ち構えているビビだが、前方から来る反乱軍が素直に止まるとは思えないし、国王軍からは壁が高すぎてこちらに気づいていない。すんなり事が収まるのなら俺たちは居ないってもんだ。いやすんなり収まる事に越した事はないんだけど。

ん?誰か砲撃しやがったな。ビビに当たらない軌道だからいいけど、ったく国王軍早とちりし過ぎだろ。せっかちなのだろうか。そう思い下を見ると砲撃による衝撃で砂煙が舞い、ビビの姿が見えなくなっていた。まずい。あの状態では視界が悪すぎる。前方から反乱軍が来ているし、あのままだと押しつぶされる危険性がある。反乱軍だって人がいるだなんて思っていないだろうしな。ここでビビを怪我させたら俺の面目丸つぶれである。

立ち上がり反乱軍が砂煙の中に突っ込んでいくのを確認しながら、ドライヴを展開。熱感知をさせつつ、ビビの反応を探りそちらへ向かう。彼女は女性であるからか他の人より体温が少しだけ高い。砂の国出身なのにこれいかに。

馬達が嫌がる電磁波を発生させて寄せ付けず、振動を混ぜる事で砂埃を寄らせない。避けるように視界が開ける中、咳き込むビビを見つけた。国王軍の方を向いて嘆いたような表情を浮かべ叫ぶその姿はさぞかし国民の心を打つだろう。国の事をここまで考える王女なんて珍しいからな。

ただその姿勢は眩しいけれど、後ろにも注意してほしい。今まで避けていた馬がビビ目掛けて駆け出しているのだから。

 

「チィッ!」

 

大きく舌打ちしてビビを庇おうとしたカルーの首とビビの胴体をそれぞれ掴んで抱える。グエッなんてカルガモみたいな声出した一人と一匹に苦笑しながら、精一杯上昇した。

ドライヴ二機で人体一人分は余裕で支えられるが、二機で二人と一匹は流石に重過ぎる。ドライヴが全然速度を出してない。それでも回避するには充分すぎる程だが。

よろよろと近くの岩場まで退避して一人と一匹を下ろした。雑に下ろしたけれど無事だっただけ感謝してほしい。ありがとうと弱々しく呟く王女サマは余程ここで止められなかった事を悔いているようだ。顔からは悔しさが滲み出ている。

 

「立ち上がれよ、王女サマ。内乱を止められなかったとはいえ、まだ国は終わってねェだろ?」

 

そう言って手を差し出すとビビは俺の言葉に小さく頷いて手を取り立ち上がった。それで良い、今更いちいち後悔なんぞしていたらきりが無い。真正面を向いた彼女にニマリと微笑み、ドライヴを元の位置に戻した。

 

「ありがとう、エドさん」

「どういたしまして、王女サマ」

 

優雅に一礼して答えると、彼女はクスリと笑って顔を引き締める。

失敗したからってなんだ。何事にも失敗はつきものである。人と話すのにだって失敗するのに反乱軍を止めるだなんて大仕事、上手くいけるとは思っていない。王女サマもそうらしく、次の手を考えてカルーに宮殿に連れて行ってもらうように頼もうと辺りを見渡してふと気づいたらしい。カルーがいないことに。

 

「カルー?カルー!?どこ行ったの!?」

 

いや、カルーなら。

 

「そこで震えてんぜ?」

「カルー!?」

 

岩陰で震えて此方を見るカルーをジッと見ていると彼はだらだらと冷や汗をかいて隠れた。半泣きだったのだけど、俺何かした?咄嗟で首を掴んで運んだのは悪かったと思ってるけど……そこまで怖がるもんかね。馬に蹴られなかっただけマシってもんだと思うが……ま、所詮カルガモだ。考えてることなんて人間にはわからんものだ。

怯えるカルーを引っ張り出そうとしているビビを見ていると、ふと陰が落ちた。太陽を遮る場所が無いここに陰ができるなんてことはないので、つまりは誰かが後ろにいるという事だ。見上げるように振り返ると日光で眩しく見えなかったが、馬に誰かが跨っているのがわかる。

 

「ビビ!エド!こんなとこにいたのか!」

「ウソップか」

「え、ウソップさん?」

 

声からしてウソップだ。変な長っ鼻は彼しかいないだろう。完全に振り返って目を細めて見ると、案の定ウソップが笑って此方を見ていた。ふむ……ウソップねぇ。

 

「ウソップさん!どうしてここに?」

「へへっ、お前が心配でよぉ。さ、急ごうぜ。宮殿に行くんだろ?」

 

ふーん、こりゃ確定かな。

どうやら彼はあまり演技が得意では無いらしい。まぁ彼というのかは知らないけれど。

ウソップに駆けよろうとするビビをドライヴで押しどめ、隠れていたカルーを引っ張り出す。クワクワ五月蝿い此奴を軽く殴って黙らせ、耳があるであろう目の後ろあたりに顔を近付けた。

 

「〈首を掴んだのは悪かったと思っているが、今は怯える時じゃねぇのはわかってるな?〉」

 

こくこくとカルーが頷くのを確認する。

ビビとウソップが此方を怪訝そうに見ているのを横目によしと頷いた。

 

「〈ビビを乗せて走れるよな。宮殿まで直行できるか?〉」

「〈くわわ!〉」

「〈良い返事だ。よし、合図を言うからそのままアルバーナへ走り出せ。ビビはあの上でお前に乗せる。あの絶壁を登れるって信じてるぜ〉」

 

アルバーナがある絶壁の上を指すと、彼は勢い良く頷いて強い眼差しで指差した方を向いた。賢い奴だ。こんな俺を信用するなんてな。言ってはなんだが見た目が悪いって自覚してるんだけど。

軽く苦笑して、勢い良くカルーを押し出す!

 

「行けェ!!」

「クワァアアアアアアアア!!!」

「カルー!?」

 

翼を羽ばたかせ勢い良く走り出したカルーに驚いたビビだが、その隙をついて腰の部分を抱き上げ、肩に乗せて俺は走りだした。

 

「エドさん!?どうしたの!せっかくウソップさんが!」

「あいつは偽物だ!」

「えっ」

 

来てくれたのに!という言葉を遮って告げた俺の台詞にビビは驚いてウソップ(仮)を見る。俺はもう前を見ているからわからないがどこからどう見てもウソップなのに何故気づいたのか、そんなの単純だ。あいつが馬鹿だったに過ぎない。

 

「お、おい!何で逃げるんだ!?」

 

馬を走らせ追いかけて来ているウソップ(仮)から逃げるために、走る事からドライヴで移動するのに移る。飛んで乗ったドライヴは重量制限のオーバーからか少しよろめいたが、馬から逃げるだけには充分だ。

 

「で、でも」

「疑うってんなら、確かめてみろ。その方が確実だ」

「……わかったわ」

 

迷うように此方を見たビビを説得して仲間かどうか確認するよう促す。見た目も何もかも同じな其奴をどうやって見分けるのかは、俺たちが腕に巻いている包帯で確認できる。

 

「ウソップさん!エドさんが貴方を疑ってるの!だから!仲間と証明して!」

「な、なーんだ!そんなことか!それならお安い御用だ!ほら」

「っ!」

 

ビビが息を飲んだのがわかった。俺は口角を上げて、当たってただろ?と呟く。彼女は静かに頷いて、ウソップ(仮)を睨んだ。

 

「……ウソップさんじゃないわ。エドさんの言う通りね……Mr.2!ボン・クレー!」

「あーらぁ?なーんでバレたのかしらね〜」

 

声が途中で変わる。変身を解いたらしい。横目に見ると服装まで変わっていたのが不可解だが、まぁ早着替えでもしたんだろう。馬の上だけど。

 

「アンタ達がこの左腕の包帯を目印にしてたのは把握済み……だったんだけどね〜、ドゥーしてかしら?」

 

そんなの簡単だ。仲間の証明はその包帯を掲げることではない、包帯の下にある油性マジックで書いたバツ印を見せる事によって成り立つもの。一見包帯だけが仲間の印だと勘違いさるようにできている良い案だ。これを考え出したのがゾロってのが面白い所である。

 

「そ・れ・に!そこの真っ白いアンタ!何故王女様が確認する前にあちしが偽物だってわかったのかしら?とっても気になるわーん!あと、王女様置いていきなさいよ!」

 

最早馬を乗り捨て走り出した変態に背筋を震わせる。変な格好してるだけで変態じゃないって?五月蝿ェ!だったら、その臑毛抜けよ!いくらか気持ち悪さが減る!バレリーナとしてどうかと思うしな。

 

「ハッ!そんなの簡単だ、テメェがウソップの事知らないバカだったってだけだ。それと王女サマは置いていけねェ」

「ドゥーいう事よぉ!?」

「主な理由は三つある。一つ、宮殿に行くだなんて確定事項を今更確認しない。一つ、オフィサーエージェントを惹きつけたのに王女サマの元に向かうだなんて危険犯すほどバカじゃねぇ。あとは」

「あとは……?」

「あとは……オフィサーエージェントを撒ける程、ウソップは強くねぇ!寧ろ弱ェ!」

 

あ、ズッコケやがった。敵ながら天晴れなノリだ。好きだよそういうの。

 

「仲間の実力信頼してないの!?」

「してるぜ?あいつは弱ェってな」

「別方向の信頼じゃない!嫌な仲間ね〜ん!」

 

っと、もうすぐ絶壁だ。

 

「王女サマ、しっかり捕まっとけよ。ここから垂直に移動する」

「えっ」

 

アルバーナへと向かっていると気づかなかったらしい。戸惑ったような声を出したが一応忠告はしたので無視して、ドライヴの速度を上げる。ギリギリまで絶壁を引きつけて置いてから、垂直に上を向いた。肩に担いだ王女サマは今頃逆さになっているのだろう。しっかりと俺の上着を掴んでいる感触がした。

下で何か騒いでいたが無視して、何十メートルもある絶壁を中間ぐらいまで行った後、重力に押し負けてしまうのでパーティクルアクセラレーターの要領で小さく粒子を圧縮したやつを後ろに向けて発射。その振動でもう一度勢いを取り戻し、一番天辺まで躍り出る。

途端に響く激戦の音をBGMに既にいて休憩していたカルーに王女を預けて、一緒に走り出す。

 

「良いな、鳥。宮殿までひとっ飛びもとい、ひとっ走りだ。できるな?」

「くわ!くわわわ!」

「良い返事だ!」

 

平行して走ることは出来ないので、空へと逃げて一緒に宮殿へと向かう。後ろからMr.2が追いかけてきているがそれはそれ。今はともかく宮殿へと向かうべきだ。

 

「というか、どうやって登ってきた!?」

「そりゃ絶壁を走ってに決まってんでしょ〜!」

「気持ち悪ッ!!」

 

人間か!?こいつ!

 

 




ボンちゃんは変態ではない……ただ自分の信念のもとあんな格好をしてるだけである。つまり変人じゃん!?
B•Wは変人変態しかいない会社ってのがわかるね。

というかボンちゃん……字に起こすと、ただのオカマ……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。