現代人 in エド in ONEPIECE 作:アディオス
おはようございます、江戸です。
あ、誤字った。エドです。
病室を抜け出した事がバレた俺たちは、Dr.くれはに首根っこ捕まれ病室へと突っ込まれた。
まぁ、俺は凍傷になりかけなだけだったし、もう治ったから必要ない。だが、ナミとサンジは違う。
ナミは治ったが病み上がりであるため、まだ大人しくしておけとDr.くれはは言っていた。医者が言う事なのだから、まだ完全に復活というわけでもないのだろう。
サンジは言う事なかれ。完全に腰が逝っちゃっている。トドメは俺が刺した(ドヤァ。
「……それで、サンジの手術が終わったらどうする?」
ぎゃぁあああ!とかうぎゃぉおおおお!とか変な悲鳴が隣の部屋から聞こえる。手術室であるその部屋ではサンジの治療が行われていた。
にしても、サンジの悲鳴と別にドリル音や魔女の笑い声が聞こえてくるのはどういう事なんでしょうな。
「そりゃもちろん、トンズラよね?ビビの事もあるし」
ニヤリと笑って俺の質問に答えるナミ。
そりゃね、お前の第一はビビの国であるアラバスタだもんな。男だらけのこのメンバーで、一時的とはいえ加わったビビを友達として助けたい、という気持ちは分からなくもない。
ナミの言葉を聞いた、当の本人であるビビは慌てるように両手を振ってナミの身体を案じる。
「ナミさん!私の事はいいから、今はちゃんと病気を治す事を第一に……!」
「いーのいーの!私はもう治ったし……ただ」
「Dr.くれはが許すかどうかだな……」
「そうなのよね」
困ったわー、という言葉と裏腹に全く困った様な表情をしていないナミは、考える素振りをする。それに苦笑する俺。ビビは未だ慌てたまま、ドルトンさんは今までと同じ様に静観していた。
ルフィがワポルを遥か彼方の星にした後、村にいたビビやウソップ、ゾロやドルトンさんと合流した。ドルトンさん達、国民達はワポルを倒すぞ!と意気込んでいたらしいが、ルフィに倒されたと聞いて唖然としていた。その顔は面白かったが。
一件落着した今回の騒動。さっきも言った通り、病人組ナミとサンジはDr.くれはに連れられて城内へ、ゾロとウソップは外、ルフィはチョッパーをずっと追いかけている。ご苦労なこって。
「やぁ、馬鹿共。ハッピーかぃ?」
隣の部屋から出てきたDr.くれはが、ゴーグルを額に上げながら此方へ笑いかけてきた。サンジの治療が終わったらしい。それはいいが、そのゴーグルが手術用ではないのは突っ込んでいいのだろうか。
Dr.くれはは、側に置いていた酒瓶を持ち上げ、蓋を開けて飲んだ。いい飲みっぷりだ。
「Dr.くれは、サンジ君は?」
「っはぁ!……あぁ、大丈夫さ。全く無茶するから、悪化するんだよ。あの馬鹿によぉく言っておきな!」
更に悪化させたの俺だけどな!
「それより、ドルトン。武器庫の鍵は持ってるかい?」
「武器庫の鍵……ですか?あれはワポルが持っていたはずですが、ワポルは……」
「飛んで行った、と……どうしようかねぇ」
ふむ、と思案するように考え込むDr.くれは。
武器庫とは、入り口からすぐにある雪に埋もれた中心の柱にある部屋のやつか。
何に使うのか知らねぇが、これは好都合だ。
ニヤリと笑う。多分だが、この時ナミと同じ顔をしていただろう。
「Dr.くれは……相談なんだが」
「ん?なんだい?」
「俺とナミ、あとサンジを退院?まぁ、とにかく出ることを許可してくれ」
「それと治療費をチャラにしてくれる?」
ナミの奴、ちゃっかりしてんな。金の亡者はこれだから。
俺とナミの言葉を聞いたDr.くれはは、眉間に眉を寄せ渋い顔をした。そりゃそうだ。Dr.くれはは金をぼったくりまくる魔女ではあるが、患者を第一に考える良い医者である。そんな医者が、まだ療養期間が必要な患者を退院させるだろうか?
それに、ナミの病気は紀元前のノミから感染る病気だったはずだ。治療薬があっただけでも奇跡なのに、それを治したDr.くれはに出会えたのも奇跡以上だ。治療費をぼったくられてもしょうがないと言える。それをチャラに?無理な話だろう。
そう思ったのだが。
「……治療費はワポルをぶっ飛ばしてくれたからねぇ、それはチャラにしてやるよ。でも、一つ目の願いは聞くことはできないねぇ」
医者として許す事はできないんだよ。
そう続けたDr.くれはは、本当に医者の鏡である。そこに憧れるぅ、痺れるぅ。
ふむ、それは困るんだけどな。ビビの国がどうなっているかわからない今。一刻も早く行き、あのクロコダイルをぶっ飛ばさないといけない。ぶっ飛ばすのはルフィの役目だが。
「……武器庫の鍵が必要なんだってな?」
「なんだい?それがどうしたってんだい。生憎、それを持っていたワポルは飛んで行ったらしいじゃないか。今はもう関係ないよ」
そう言ってまた酒を飲む。
Dr.くれはの言い分にドルトンさんもうんうんと頷いているが、考えてもみて欲しい。何故、その無くなった鍵について言い出すのか。
そして、その鍵は本当にワポルが持って行ったのか。本人達がそう言うんだからそうだろうって?はん、馬鹿だなぁ。前話見てたんだろ?わかるじゃねぇか。
「その鍵がある……と言ったら?」
「何……?」
疑わしそうな目線を送ってくるDr.くれはとドルトンさん。そんな二人に、失礼な、俺は嘘はつかねぇぜ?とドヤ顔で言ったら余計に睨まれた。解せぬ。
まぁ、それは良いとして鍵だ。まだナミが持っていたはずだからな。ナミに声をかけて、そこからはバトンタッチする。こういう交渉はナミの方が上手だろう。俺は万が一の時は力でねじ伏せようと思っているから、どうしても三下風味の交渉になっちまうんだよなぁ。どうにかしたい、と思う。
ナミはニヤリと笑うと、懐から特徴的な武器庫の鍵を取り出した。あのワポルから奪った鍵である。Dr.くれはの瞳が大きく開かれた。
「どう?お願いを聞いてくれなきゃ、私はこの鍵を絶対に渡すつもりもないわ」
最悪の場合、壊すけど。
うわぁ、ナミの顔がめっちゃ悪い。悪役。お陰で思考がダダ漏れ。悪役っていうなら俺もだし、何考えてんのかわかっちまうんだよな。悪役万歳。悪役演技は楽しいぞぅ。
ナミの言い分にDr.くれはは、暫く考えた後、はぁとため息をついた。仕方なく、本当に仕方がなくといった風にだ。
「お前達」
「え?」
「おれら?」
「そう、そこのドルトンについてきた馬鹿共。患者でもないんだから手伝って貰うよ。武器庫の大砲を持ち出すんだ、さぁ!行きな!」
パンパンと手を叩いたDr.くれはを見た、ドルトンさんを心配して来ていた大人達は大慌てで走り出した。途中でイテッ!という声も聞こえところから、雪で滑ったのだろう。雪国に住んでいながら滑るという事は、それだけ慌てているという事。どれだけDr.くれはの事が恐ろしいんだか。いや、まぁ、気持ちはわかるけどな。
国民達を追い出したDr.くれはは、ナミの近くに歩み寄り、パシリッとナミの手からカギを奪った。
「ちょ……っ!」
「いいかい!小僧と小娘共!」
扉の近くに立てかけてあった自身の上着を手に取り、それを着る。開けっ放しの扉の取っ手に手をかけたDr.くれはは、そう声を荒げた。
「その奥の部屋にあたしのコートが入ったクローゼットがある。別に誰が盗っても困らない奴さね。あと背骨の小僧の手術はもう終わったよ。それと、あたしゃ、これから用事があるかねぇ……ここを留守にするが、決して抜け出すんじゃないよ!わかったね!!」
此方を指差してそう警告して来たDr.くれはは、扉を勢いよく閉めて去っていった。
一息、とまではいかないが次々と言われた言葉に俺を含めて三人はポカンとしてしまった。
「コート着てサンジ君連れて抜け出せってさ」
「私にもそう聞こえた……」
両手を上げて肩を竦めさせたナミは、俺が言いたかった事を言ってくれた。ビビも言ったように、何を隠そう俺をにもそう聞こえたからだ。
Dr.くれはっていい婆さんだ!!わかってたけど!
さて、行動に移そうか。うちの航海士によると、今日にでも出る予定らしいしな。
俺は立ち上がり、Dr.くれはに言われたクローゼットに向かう。男物があるといいけどなぁ。ないかなぁ、流石に。
扉を開けるとそこは寝室だった。なるほど、ここで寝起きしているのか。確かに出張診療が多いDr.くれはならば、患者様のベットは一、二個で十分だろう。生活感溢れる部屋の中にある大きなクローゼット。俺はその取っ手を掴んで開けた。ふむ、やっぱりないか……男物。男がチョッパーだけだから必要ないのはわかっていたが……うーん、このままじゃァなー。外マイナス五十度だし……何とか代用して、女物でも男が着て不自然じゃない奴。
「あるじゃねぇか」
膝下まであるようなモノばかりだったが、一つだけ腰までのがあった。うん、これならば大丈夫だ。フードにファーが付いているだけの黒いやつ。ボタンの位置が女用だったが、まぁしょうがない。
あとは、あの二人……というかビビのはいらないか。着てるし。
扉の縁からひょっこりと顔を出した俺はナミへと声をかける。
「ナミ。コート、どれにする?」
「どういうのがあるの?」
「色は暗い赤、黒の二色で二つとも膝下までの長いやつだ」
「じゃ、黒ね」
被った。別にいいけど。
ナミに言われた通りのやつをハンガーから外し、俺は先に着込む。うーん、元々上着着ているからかちょっと中がきつい。しょうがないか……前は開けておこう。え?コートの意味ないって?大丈夫、大丈夫。根性で乗り切るさ!
…………科学者にあるまじき思考回路だな。
黒のコートを取り出し、部屋から出る。そこで見たものは目を閉じているドルトンさんと、隣の手術部屋と思わしき所からサンジを引き摺るナミとビビの姿だった。おう、仲良いなお前ら。
此方の姿を視認したナミはサンジの脚を離し、此方へと歩み寄ってきた。ゴンという鈍い音がナミの後方から鳴ったことは無視して、俺はコートを差し出す。
「ありがと」
「どういたしまして」
「にしても、エドのコート。似合わないわねー。白に黒って」
うるせぇー!俺も自覚してます!ほっといてください。
良いものがコレしかなかったと伝えると、ふーんと興味なさそうに返事をする。このヤロっ。
「それで?」
トンズラするんだろ?とコートを着込み終わったナミに問いかければ、そりゃ勿論!とそれはもう良い笑顔で返されてしまった。
城から出ると、チョッパーとルフィが何やら言い合っていた。何をしているんだか……仲間にすると言い張っては聞かなかった一刻前のルフィを思い浮かべて苦笑する。俺がやると嘲笑の様な表情になってしまうが。不便だな、この顔。
ルフィ達の会話を聞いていると、チョッパーがおれは怪物だし、青っ鼻だし、トナカイだし、と言って航海に出れないと否定しているが、それをルフィが何も聞いてなかったかの様に、うるせぇ!!行こう!!と怒鳴っていた。いやいやいや、それはないだろう。
話聞かな過ぎかよ。あれで不愉快はないのだから、凄いのだけれど。ああいうのがカリスマ性とでも言うのか。成る程、俺には一生無縁なものだろうな。
ただ、今回のはそれが良い効果を発揮したらしく、チョッパーは泣き出していた。ぎょっとはするが、本人が嬉しそうに笑うもんだから皆が皆、同じ様に微笑んだ。サンジだけはずっと気絶してるけどな。
さて、チョッパーが準備してくると言って駆け出して行った後、ナミがここにいる船員達に招集をかけた。こういうのは船長であるルフィが行うものなのだろうが、生憎本人は馬鹿である。戦闘と飯を食べる速さは誰にも負けないが、作戦や行動方針を決める事はできない。まぁ、役割分担を船員全員でするのが麦わらの一味だからな。そこは別に言及する事でもないだろう。
「で、全員揃ってるわね?」
中心にいるナミの言葉に皆が頷く。新しく一員となるチョッパーを除いて、一時的な仲間であるビビ含めて全員がここにいた。あぁでも、いないとすれば、あのチョ○ボの様な鳥がいない。多分、船で待ってるはずなんだが……あれ?そういえば何で同じく待ってるはずのゾロがいるんだ?
「じゃぁ、これからどうするか伝えるわね。まぁ簡潔に言えば、ここドラム王国から出て改めてアラバスタへ向かう事なんだけど、そこは良いわよね?」
こくこくと全員が頷く。逆らう気は毛頭無い。
「もう寄り道はしないからね!とくにルフィ!あんたは新しい島とか見つけても行かないこと!」
「わかってるよー」
絶対わかってない。
唇を尖らせ、拗ねた子供の様に言うルフィの言葉は説得力がなかった。どう考えても、島だ!冒険だ!等と言って行ってしまうに違いない。十七という俺よりも年上なのに、その欲を制御できない所に呆れる。というか、食欲と冒険欲しかなさそうなのって逆に凄いな。流石少年漫画の主人公と言えば良いのだろうか……どうしてそう純粋に育ったのか教えて欲しい。十七というと前世でいう、高校生だ。思春期真っ盛り。どうしてだろう、ルフィが現代人だとしても部屋にエロ本とか隠してないと確信できる。本当に同じ男かどうか疑心暗鬼に陥るわ。聖人君子かよ、頭は破滅的だが。
「エドとウソップ、ゴンドラの用意して。チョッパー君が来たら直ぐに降りるから」
「え!おれが?」
「了解。ちゃっちゃと済ませるぞ、ウソップ」
ウソップの襟首を掴み引いてゴンドラの乗り場へと向かう。
引き連られながらも、まだ雪で超傑作の雪達磨作ってないのにやら何やら文句を垂れるウソップを無視して、歩く。引きつった後には、二本の線ができていて、端から見れば少々滑稽だろう。
「第一、エドだけでやれるだろ」
「俺はあまり機械には詳しくねぇんだよ、ウソップの方が知ってそうだしな」
「ぜってぇ嘘だ!」
本当、本当。この時代の機械は詳しくはない。古代文明であるナソードだったらわかるんだがなぁ。分解から組み立て、仕組みやらを説明してくれと言われても直ぐにできる自信があるぜ。まぁ、教えるなんて事しないが。オレに得がねぇからな。ナソードの女王様でも連れて来たら考えてやるが。無理だろうけどな!
「っつぅ!おいっエド!急に離すなよ!後頭部雪に打ち付けたじゃねぇか!全然痛くなかったけど…………エド?」
「……………………まただ」
「は?」
また、知りもしない知識が記憶が蘇ってくる。
ナソード?エルソードに出てきた古代文明がここにあるはずが無いだろう?なのに何故、
けれどナソードの技術、仕組みとやらを思い出そうとしても頭が痛くなるだけで、どうしても無理だった。どうやら
…………考えても仕方が無いと、自己簡潔をして頭を振った時。
「みんなぁああああ!!!乗って!!!!!」
という叫び声が聞こえた。
結果的に俺たちは島を出れた。
それはそれは忙しい出航だったけれど、この麦わらの一味には相応しい旅立ちだろう。静かに別れを惜しむ別れ方なんて、俺たちらしくないだろう。
ただ、こうしてゆっくりと大きな桜を見物しながらお酒を飲むってのも悪くない。
「良い桜だ」
心は日本人な俺は久しぶりの桜に感嘆する。例えこれが偽物だろうと、綺麗なものには変わりないから。まぁ、最後に見た桜なんて覚えてないんだがな。
「ですね」
ふと、俺の呟きに答える人物がいた。この中で俺を除いて一番年下であるからか、敬語を使う王女サマ。つまりは、ビビだ。
甲板に座りながら、あまり減っていない酒が入った杯を膝の上で回していた俺の隣に座る。その所作は流石王女と言うべきなのだろう、とても最初に出会った時のような荒々しさはなかった。というか、ミス・ウェンズデーと同一人物だと思えねぇな。
「私、桜って初めて見たかも知れません」
「ハッ、知れないってえらく抽象的だな。敵さんに乗り込むお転婆王女サマなのに、ハッキリと覚えてないのか」
「それは関係ないです!じゃなくて、小さい頃に見ていたなら、それは見た事になるでしょう?だから」
「成る程な」
物心がつく前に見ていたら、覚えていない。そう言いたいのだろう。
王女サマの少し慌てた姿をクククっと笑いながら、まだ咲き誇る目の前の桜を見る。あぁ、これで桜吹雪があればなんて思うが、それは高望みだろう。ただの雪なら今でも降っているが。
「こんな愉快で素敵な桜はもう一生出会う事はねぇだろうから、ちゃんと見とくんだな」
それは自分にも当てた言葉だ。
目の前に広がるあの桜は、新しく仲間になったトニートニー・チョッパーの育ての親だというDr.ヒルルクが研究していた見る者全てを癒す究極の医療、その成果だ。藪医者だとDr.くれはから聞いていたが、チョッパーのあの号泣の様子を見ていても、決して悪い人物じゃないと知れる。
そもそもこんなに良い桜を見せてくれたんだ。冬に見る春の風物詩は、人々の心を躍らせる。一度で良いから会って見たかったな、その藪医者に。
ドラムロックのその頂、桜色に染まる光景を心の中に留めて置きながら、眺める。こういう事なら、ドライヴに撮影機能でもつけとけば良かったと後悔するも、もう遅い。
「えぇ、もう一生見れないでしょうから。こんな綺麗な桜」
ビビの言葉に苦笑を浮かべながら、ぼんやりと酒を嗜む。喉の奥が痛い。
「(あぁ……)」
なんて
どうしてだか、心の奥底で、純粋に楽しめない自分がいた。
約半年ぶりの投稿だって!わー!作者はエタるつもりは無いって言って最終的には更新しなくなっちゃう百流作家フレンズなんだね!すっごーい!
このネタ流行ってますね。見てないけど、知ってる系です。
次回は多分、アラバスタに飛びます。ボンちゃんは……多分出ない!気分が変わったら出るかも知れませんが。