現代人 in エド in ONEPIECE   作:アディオス

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雪が舞う城で一人の医者と出会う11話

 

 

 

 

 

 

 

炎が舞う中、一人の少年が走っていた。

異様に目立つ白髪を取り乱しながら、走る少年の顔は涙に濡れていた。必死に足を動かすが、しかし今まで満足に運動しなかったせいか、逃げないとという気持ちに体がついて行かず、とうとう足を縺れさせ転んでしまった。

うっと声を漏らし、咄嗟に受け身を取って転がる。

 

「ったく、手間を取らせやがって」

「早く連れてこうぜ」

 

倒れこんだ少年に二人の男が近寄り、少年の髪を掴み顔を上げさせた。少年の苦痛に歪んだ顔はその二人を余計喜ばせ、ニヤニヤと男達は笑う。手間が取られた分、捕まえたことが嬉しいのだろう。この外道め。と少年は心の中で呟いた。

首に首枷を付けられ、引きづる。しかし、このままでは窒息死してしかねないので、男達は少年を立ち上がらせ歩かせた。これから商品になるものだ。これ以上傷つけば値が下がる。

 

「お前の親が余計な事をしなきゃ、この街も滅ぼされなかったのになァ」

「全くだぜ。海軍もひでぇ事しやがる」

「まぁ、そのおかげで俺たちが儲かるんだしな。海軍様々だ」

「ガハハハハッ!確かに!」

 

ギリィと歯を噛む。

この少年はこれから奴隷として売られる。人権もクソも無い物へと成り下がるのだ。

連れてこられ、他の子供がいる檻に入れられる。少年は辺りを見渡した。知っている顔達だ。どれも近所で遊んでいた子供達。少年と同じく海軍に親を殺され、こいつらに捕まったのだろう。

少年がここにいる者を観察していると、一人の少年と目が合った。白髪の少年より背が高く、黒髪の少年。その少年は白髪の少年を睨みつけると、その胸倉を掴んだ。

 

「お前、あの研究所のやつだろ」

 

少年はその問いには答えず、ただ睨み返した。

無言を肯定と捉えて、黒髪の少年はぐっと白髪の少年を引き寄せ、そして殴った。

ゴッという鈍い音が響き、一部の少女達が小さい悲鳴をあげた。

 

「お前のせいでッ!この街はッ!!」

 

なるほど、この少年はこの状況を理解しているらしい。だが、感情が付いてきていないらしい。

実質、この街が滅んだのは彼の今はもう亡き両親のせいである。彼のその加担……手伝いをしていたのだから、少年のせいでもあるのだろう。だからと言って、少年に当たっても仕方がない。もう街は滅んでしまったのだから。

 

「お前ッ!!お前らのせいで!パパとママは死んだんだッ!」

 

少年の上に跨り、更に殴り続ける。白髪の少年はただそれを受け入れ、殴られ続けた。

暫くして段々と力がなくなっていく拳に、少年は首を傾げるが、それの疑問はすぐに解消された。

ポタポタと白髪の少年の顔に雫が降りかかったのだ。それは、黒髪の少年が流した涙だった。

 

「お前なんかっ……!うっ……ひぐっ……」

 

溢れる涙によってぐしゃぐしゃになる顔を、白髪の少年はただそれを眺め続けるしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よっす、エドだ。

 

何か夢見てた気がするが、忘れた。ただ、殴られてる記憶しかなかったけどな。

それでだ。ウサギ達が起こした雪崩に飲み込まれたかと思うと、いつの間にかルフィに担がれて絶壁にいた。

……嫌なタイミングで起きたな。というかルフィさん、三人担いで登ってんの!?人間辞めてるのか!?……やめてるか。

 

「ルフィ」

「ふぇふぉ!ふぉひふぁふぁ!(エド!起きたか!)」

 

どうやら口にサンジを咥えているようめで、何とかわかる程度の言語で話してきた。もう少し何とかならないか、とは思うが、そりゃ喋ろうとしたらサンジ離すもんな。死ぬもんな。無理だよな。

背中のナミは相変わらず寝ているが、辛そうだ。この位置からだと斜め下からしか顔色伺えないので、あまりわからないが。

因みに俺は、ルフィが俺のベルトを鞄の取っ手代わりのように肩にぶら下げているので、威嚇した猫のような体勢になっている。コート、どこ行ったんだろ……。

 

「とりあえず、離してくれ。俺のドライヴで浮くことができるから」

「ふぉんふぉ!(ほんと!)ふぇんひふぁほふぁー!ふぉふぇ!(便利だよなー!それ!)」

 

さっきから、“ふぁ”とかしか言ってないルフィ。

おれもほしいなーロボット!とか言っているが、やめとけ。ドライヴは操作方法を理解していないと扱えない代物だし、ルフィのような脳筋タイプのやつは、まず動かせないだろう。俺でも何で浮いてるのかとかわからないのにさ。いつか知る時が来るのだろうか。

とりあえずドライヴが正常に作動するかどうか確認しないと。……いや、こんな雪の中でも普通に浮いているし大丈夫か。うーん、何回か叩いた方がいいk「ふぁふぁふふぉー!(離すぞー!)」えっ?

 

「あ、ちょっ、あ"ぁああああああああっ!!」

 

急すぎるぅうううう!!!このままじゃ、雪の中に落ちると言っても何十メートルの高さから落とされたんだ!死ぬかもしれない!

俺は必死に恐怖を押さえつけながら、ドライヴを動かした。

ドライヴ展開ッ!!

 

「い"っ……!」

 

落下による空気抵抗の風はなくなったが、俺を受け止めたドライヴの固い感触が背中から伝わってきた。これは痛い。

咄嗟だったため、磁場を発生させ俺を浮遊させるということは思いつかなかった。というか、この段階でできるか謎だし、あれは二次職からの、覚醒の時の移動方法だったはず。

……試すのは後でいいか。こっから落ちたら死にそうだし。

ドライヴを上手く操作し、何とか立ち上がる。こういう空気が少なく、絶壁の横であり気流が不安定な場所でもちゃんと立てるのは、身体が覚えてくれてるおかげだろう。

とにかく、歯で咥えているサンジを先に運ぶか。人一人ぐらいならば、耐えられるらしいし。

 

「ルフィ、サンジを先に運ぶ」

「ふぉーふぁひがとな!」

 

話している途中に離すバカがいるだろうか。

力なく落ちてくるサンジをドライヴを駆使して何とかキャッチ。起きてない人ほど重いのはやはりというか。キャッチした時の腕の痺れもあってか、恐竜の首より重く感じる。

ん?サンジの体温が低いな。早く持って行った方がいいか。

 

「先に行くぜ」

「おー!サンジよろしくな!」

 

屈託のない笑顔でそう言われたからには、何が何でも運ぼう。

ドライヴの推進力を最大にし、崖の上へと目指す。サンジを背負っているからか、推進力を最大にしてもいつもと同じぐらいでありあまり速くは進まない。

気圧が急速に低くなるせいで耳鳴りが酷くなり、春や秋にするような格好をしている俺にはこの気温の低さは少し厳しい。あのコートを着たルフィですら、寒さに頬を赤らめていたぐらいだ。

もし、俺がいなければあのまま二人を担ぎ、登り続けていたのだろう。もはや超人の域を出ている。凍傷にならなければいいが。

 

「というか、俺も凍傷になりかけだし」

 

スキー場に行った時、はしゃぎ過ぎてまだ柔らかい雪にダイブしたことある。

その時幼く、まだ力もないので深くはまったその体が抜けず、ただ泣きじゃくった記憶がある。

助けが来るまでそのままだったし、足から突っ込んだので、足が凍傷になりかけた。その感覚が今、足の指先にある。

ただ、まだ堪えられるのと、この背にある重さをどうにかしなければ俺が死にそうだ。いや、それは最悪の場合なだけで、このままだと足を切断……なんてことになりかねない。そうならないことを祈ろう。

 

寒さによる震えを我慢しながら、ドライヴを動かして、やっと着いた頂上。

目の前にはこの白一色の世界にとても似合う城が、我が物顔で建っていた。

こういう城は海外へ行くか、テレビで見るか、ファンタジー世界へトリップするかしか見られないので、とても感激なのだが……今はこうしている場合ではない。

足は言うことを聞かなさそうなので、この今の状態のままでドライヴで、開けっ放しである門扉を潜った。

中心にある柱から、円状にくり抜かれたこの場所は、扉が開いたままのせいなのか雪が入り込んできている。

周りにある壁には無数の扉。その中に魔女、Dr.くれはがいるはずである。

 

「誰か!誰かいねぇのか!!」

 

一々探すのはめんどくさい。というか、冷えすぎて体が少し限界だ。

暫くすると一つの扉が開き、誰かが出てきた。銀色の髪、ニヤリと笑うその姿は堂々としていて、こちらを見据えていた。彼女は、Dr.くれは。齢141の婆さんだ。

 

「珍しいねぇ。ここに客なんて」

 

コートを着込んだくれはは手すりに体重をかけながら、こちらの反応を待つ。

王族でもない彼女がこの城の主ではないはずだから、客という言葉は可笑しいだろうにとは突っ込まずに、取り敢えずサンジを見てもらうように、ドライヴを使って一直線にくれはへ向かった。

しかし、くれはは俺がドライヴで来たことに目を見張り、驚愕した。

 

「その技術……」

「え?これはドライヴだが、それよりも!サンジを頼む!雪崩に巻き込まれたんだよ!」

 

俺もだけど。

何故かサンジみたく、ずっと気絶してたわけじゃないのか、まだ大丈夫なんだけど。

体温が低いサンジに気づいたのか、くれはは急いで室内へ運んだ。あの婆さん、凄い力持ちだな。

それを俺は見届けた後、ルフィとナミを迎えに行くために来た道を帰る。一人減ったのでドライヴの推進力は元に戻る。全開にし、急いで行く。因みに人一人を乗せた場合のドライヴのスピード全開は、約時速50キロだ。え?遅い?多分セーフキーをかけているのだろう。それなりに速かったら危ないからな。

崖を垂直に降りて、ルフィの影が見えてきたところで反転。重力に従うように、ドライヴを下にして立った。

早く戻ってきた俺に驚いたのか、一瞬目を見開いたルフィは、やがてニカっと笑った。

 

「早かったな!」

「……ドライヴのおかげだ。それよりもルフィ、大丈夫か?」

「おう!エドがサンジ運んでくれたおかげで大分楽だ!」

「そうか……」

 

そう笑うルフィの唇は少し青ざめている。体温が低下している証拠だ。

むーん。やはり手伝うべきか。

今の時点、登っている場所は5分の3といったところ。つまりまだまだ。

 

「ルフィ、俺がナミ背負って先に行こうか?」

「いや、いい!エドばっか悪いもんなぁー!おれがやる!」

 

お、おう。そうか……。

そう笑顔で言われると返すことができない。俺は少し笑顔に弱いみたいだな。

けど、早く病気治すために俺が行くのが最善だろう。仲間のためだ、そう言えばルフィも納得してくれる。

 

「ルフィ、やっぱり俺が。早く行った方がナミにとってもいいだろ」

「うーん、そうか!そうだもんな!エドごめんなぁー」

「いや」

 

仲間と呼んでくれたお前らのためならな、これぐらい大したことない。

そうとは言わずにナミを支えている縄やら布を外してナミを受け取る。ルフィがうぉおお!軽い!と叫んでいる間に俺は上へと向かった。やはり、二人だからか遅い。

そうして、城にたどり着きDr.くれはが出てきた扉の前に降り立つ。ドライヴには感謝しなくちゃな、こいつがなけりゃ今頃お陀仏だったかも。

一応、三回はノックし返事を待つ。やがて、入りなという女性にしては年配に当たる声が聞こえてきた。状況から考えてDr.くれはだろう。

 

「また、あんたかい」

「もう一人、診てもらいたい奴がいてな。こいつの方が重症だ」

「……いいだろう、そこのベッドへ」

 

外と比べ室内は暖かく、生き返る。ナミをベッドへ寝かせ毛布を被せてから、うーんと腕を伸ばした。前世よりは体力や腕力が格段にあるとはいえ、病人を抱きかかえるのは少し精神的に疲労が溜まる。俺の行動一つで何かが変わるかもしれないしな。

あ、そういやルフィを迎えに行かないと。あいつ、大丈夫なのか?

俺は扉の方へと向かう。するとくれはが扉の前へと立ち塞がった。

 

「どこへ行く気だい?」

「……仲間を迎えに。まだ崖を登っているはずなんだよ」

「あの絶壁を?ハハッ、無茶するねぇ」

「笑い事じゃねぇよ」

 

Dr.くれはを押し退け、扉を開ける。ビュゥッと冷たい風が全身を包んだ。うっ寒い。

後ろの方で呆れたようなため息が聞こえたが無視して、扉を閉めた。

 

「ドクトリーヌ!人がっ……!?」

 

うん?

いきなりそんな声が降ってきたかと思うと、雪が積もった廊下が影に覆われた。この影はどうやら左から来ているようで、横を見ると茶色の毛深い大男がいた。

 

「うわっ」

「ぎゃぁあああっ!ひとぉおおああ!!」

 

いや、何でお前の方が驚いてんだよ。

そう突っ込みたかったが、その大男はズザザザーと後ろへ下がっていき階段を踏み外した。

そのまま転がり、大男だったのが小さい生き物へと姿を変えた。

ん、よく見りゃあれは……。

 

「チョッパー!!静かにしな!患者がいるんだよ!」

 

グハッ!

いきなり開いた扉に背中がぶつかった。

やっぱり、あれチョッパーか。

 

というかDr.くれはさん!?あんたの方がうるせぇよ!!あと痛いんですけど!?

 

背中を抑え悶えている中、チョッパーは走り出しまた大男になって何かを抱えてきた。

黒い髪に目の下に傷がある人。どう見てもうちの船長である。

 

「あ、エド」

 

凍えて死にそうな顔の割には元気な声ですね、ルフィさん。

どうやってあの短時間で登ってきたんですか、超人ですか。……超人か。

 

 

 

 

 

 

 

 




大体一ヶ月ぐらいでの更新が目安になってきた作者です。
エタらないよう頑張らないと!シャボンディまでは行きたいよね!(道のりは長い)

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