現代人 in エド in ONEPIECE   作:アディオス

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前に執筆速度を上げたいと言っていたな?



あれは嘘になった。


降り積もる雪の中夢の続きを垣間見る10話

 

 

 

 

 

 

 

リトルガーデンを出た俺たちはアラバスタへ直行していたのだが、途中である島へと向かっていた。

 

ドラム王国。

 

それがその島の名前だ。

雪国であるこの島は医療大国と言われ、医者が多く住んでいる島である。

ここへ寄った理由はただ一つ、病人がいるからだ。怪我人なら俺たちでも対処できる。だが、病気となると話は別。

病気の名前も、病気の元となった病原体も、治療法すらもわからない。只々その病人が40度という高熱を出して苦しむ姿を見ながら、せめてと熱が低くなるように濡らしたタオルを額に乗せたり、健康にいい料理を作ったりするだけ。

アラバスタでは今、大変な時期にある。とても他人事だが、他人なのだからしょうがない。今にも反乱軍と王国軍が衝突しそうなのに、アラバスタ王女ビビはその病人の方が最優先と、島に寄る決意をしてくれた。当然、仲間が大事な俺たちは反対するわけもなく。

 

その病人であるナミのため、ドラム王国に寄ったわけだが。

俺たちは今。

 

「今すぐ出て行け!海賊共!」

 

住民達による手厚い歓迎を受けていた。

船が着くなり発砲してくるとかどういう神経なのか問いたい。もし、好戦的な海賊なら発砲された時点で攻撃とみなし、今ごろ住民達は皆殺しされてたぞ。

今のところ銃弾は一つも当たってはいない。各自、自身の武器を構えすぐさま攻撃できるようにしている。俺もドライヴを攻撃モードに移行させて、いつでも電磁砲が撃てるようになっているが……さて、我らが船長がどうでるか。皆が皆、横目でルフィを窺っている。

 

「…………」

 

ルフィは俺たちの隙間を通り抜け、船首近くの甲板の上に立つ。そして住民達を見渡してから、膝をついた。

その行動に驚く。膝をつき、手をつく……そこから予想される行動は元日本人である俺には親しい行為。つまりは。

 

「病気、なんだ……。触ったら熱くてすげぇ苦しそうで、肉食わしても治らないって……俺には何もできない……!けど!!苦しむ仲間を見てるだけなんて嫌だ!医者を探してる!お願いだ、ナミを、仲間を助けてくれっ!!頼むっ!!」

 

土下座だ。

正座をし地面に頭を近づけ、精一杯の誠意を見せるその行為。主に謝罪や頼み事になどに用いられるそれは、日本特有の文化だ。

その事を知ってか知らずか、ルフィはそれをして見せた。

そんなルフィを見て、ビビもルフィの隣に立ち同じく土下座する。

 

「私からもお願いします!私のせいでナミさんが!だからお願い!病気が治るまでで良いんです!私たちをここに居させてくれませんか!?」

 

そんな二人を見て狼狽える住民達。どうやら彼らは海賊は悪だと思っているのだろう。海賊にだって善良な人はいる。敵には容赦のない素敵な人たちが。

 

結果から言うと住民達の代表的な人が現れ、俺たちを迎えてくれた。

コートに身を包んだ俺たちはナミを連れ、その人達について行った。ゾロとカルーは留守番組。ゾロは迷子癖から、カルーは雪には慣れていないためからだそうだ。確かにカルーの足じゃ、雪に埋もれて動けなくなりそうだ。

はぁーと悴む手を温めるために息を吐く。白い息が空に昇っていくのを見届けながら、歩く。ドライヴに乗るのも一手だが……初めて雪国に来たんだ、この足で雪を踏みしめる音を楽しみたい。

 

「ここが私の家だ」

 

屈強な肉体を持ったその代表的な人、ドルトンさんはある一軒家の前で止まった。

扉を開け中へ招き入れる。窓のすぐ側にあったベットへナミを下ろすように言った。

へぇーいい家だな。木の造りは人の心を安心させる。

俺が家の中を見渡していると、この家の持ち主ドルトンさんは神妙な面持ちで椅子に腰掛け口を開いた。因み俺以外は全員ソファに座っている。

 

「早速本題に行こう。医者なんだが」

 

今は一人しかいない。

そう続けたドルトンさんの顔は申し訳なさそうで、ルフィたちは首を傾げた。ま、国に一人……まぁ少ない方だが、妥当だろう。普通の国ならば。

しかしここは医療大国として知られるドラム王国だ。そんな国に医者が一人しかいないなんて可笑しいとは思わないか?

なんで……?とこの国の事を知っていたビビは独り言のように呟いた。

 

「ちょっと待った……あんた“今は”って言ったよな?昔はそうじゃなかったのか?」

 

疑問に思ったサンジが手を挙げて質問する。まるで教師と生徒の図だが、今はスルーしとこう。

ドルトンさんは頷き、それを肯定した。

 

「昔は沢山いた。だが、この国の王の専属医師に皆がなってしまった……ただ一人を除いて」

 

ドルトンさんは続ける。

 

「唯一王の命令に逆らった女性。住民達からは魔女と呼ばれている」

 

それはどう考えてもDr.くれはだろう。141歳の元気な婆さん。若さの秘訣は世の女性誰もが教えて欲しいだろう。俺も教えて欲しい、長生きはしたいものだ。

“魔女”という言葉にウソップやビビはゴクリと唾を飲み込む。

 

「普段は山の上にある城に住んでいる。山の上に行くにはゴンドラが必要だが、生憎全てなくなっている。魔女以外にはあの断崖絶壁を登る事は出来ない……。魔女は定期的に村に降りてくるから、その子には悪いが待つしか」

 

そう言って目を伏せるドルトンさん。

はぁ……待つだなんて。そのままじゃコイツ死ぬぞ。

 

「それまで苦しむナミさんを見とけってのか!」

「じゃぁ登ればいいだろ、その山」

「エドもそう思うか?うっし!行くか!」

「ちょっと待てぇええ!話聞いてたか!?お前ら!」

「そうよ!待ってルフィさん!来る時見えたでしょ!?あの山!無茶よ!」

 

ウソップとビビが止めようとするが、無駄だって。ルフィは決めたら止まらないタイプだぞ。

ルフィとサンジと立ち上がり俺の方を向き笑う。何だよ、ニヤけちまうじゃねぇか。ニヤリと笑い返してやる。

 

「本当に行くのか?」

「おう!」

「あぁーおっさん、細長い布か何かないか?ナミさんが落ちるかも知れない」

「知れないじゃなくて、絶壁登ったら確実に落ちるだろうがな」

「……本気なら止めはしない。少し待ってくれ」

 

ナミを細長い丈夫そうな布やロープでルフィに固定し、付き添いとして俺とサンジがついていくことになった。

ウソップとビビは留守番組だ。まぁあの絶壁、身体能力がほぼ一般人に近い彼らは登れないだろう。

コートを着込み直し、彼らと別れる。ルフィが真ん中、右にサンジ、左に俺の陣形で筒のような山の中で一際デカイ城がある山へ向かって歩き出した。

 

「ナミさんは俺が護りますからねぇ〜!」

「頼もしいなァ」

「サンジ、気合い入ってんなぁ〜!」

 

こんな足場なのにクネクネと踊りだすサンジってすげぇな。

雪道だぞ?足を囚われて、踊るなんてできない。さすが黒足だな。いやまだ賞金首じゃないか。

サクサクと山の前にある登りを登る。まだあの目標の山まで遠いというのに、ここの登り道は普通の山の斜面のようで、体力を持って行かれる。まぁ、この世界に来てだか、エドが元々鍛えてたのかわからないが前よりは体力があるのですぐにはバテたりはしない。

そもそもこんな雪、滅多に拝めない。精々前世では、スキー場に行ったぐらいで、俺の住んでいた場所は雪が降ってもニセンチ程しか積もらない地域だった。

 

だけども、何故だろうか?

 

この降り積もる雪が懐かしくとも思う。

 

「---ッ!!」

 

ズキリ、と頭痛が走った。

幸い声を上げるほどの痛さではないが、思わず足を止めてしまうほどだった。

 

瞬間、脳内にチラつく雪の色。

 

そして、サラサラと動く……銀。

 

 

 

 

 

 

 

なんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エド?どうした?」

「うーん?エドがどうかしたのか?」

 

前を歩いていた二人がこちらを向いて心配してきた。

一味の中でも今のところ一番の新参者である俺を心配してくれるなんてやっぱ、麦わらの一味優しっ!

俺はなんでもない、と手を振って誤魔化す。痛みは引いてなかったが、顔に出すほどでもないし、いつもの無表情で突き通せる。

二人とも首を傾げたが、一言そうかとだけ言ってまた前を向いた。

 

「(さっきのは一体……)」

 

真っ白な雪に映える銀の色がやけに脳内に残っている。

俺は大事なことを忘れているようで、しかしどうにも思い出せない。

いや、忘れているのは俺のせいか。多分これは“エド”の記憶だろう。俺が憑依する前の。

何か罪悪感が凄くあるんだけど……すまんな、エドよ。大切な記憶なくして。

 

「エドー!見ろよ!白熊がいるぞ!」

 

不意にそんな明るいルフィの声が聞こえてきた。

は?白熊?確かにこんな雪国じゃいてもおかしくないが、白熊と呼ばれるホッキョクグマが生息する北極は確か氷でできた擬似的な大地だぞ。ここには北極はなさそうだけどさ!

船長のはしゃぐ声に顔を上げれば、そこには体長2メートル長はあるかと思われる白熊がいた。

 

いや違う、ウサギだ。

 

どう見てもあの顔、あの長い耳はウサギである。白熊!白熊!と騒ぐ船長には呆れるが、背中に背負っているナミの事も考慮してやってほしい。あ、サンジに殴られた。

ウサギ達にはしゃぐのはいいが、あの殺気とも言える敵意を感じ取れないわけではないだろう。どうやら彼らのナワバリに入ったようだ。

 

「…………」

 

無言で此方を睨んでくる。

リーダーと思われる一際でかい奴の上にいる子供は毛を逆立て声を上げてめちゃ威嚇してきているが。

ルフィが麦わら帽子をかぶり直し、戦闘体勢を取った瞬間、彼らは弾かれるようにして此方へ飛んできた。

ルフィはリーダー、その他は俺たちが担当である。

 

「遅いな」

 

殴りにかかってくるウサギはスピードは遅い方だった。ウサギなのに。

殴りにかかってきたウサギは六匹……丁度じゃねぇか。薄く笑う。

ドライヴを移動させて、ウサギ達の首を狙って地面にぶつけるようにして振り下ろす。リトルガーデンでハゲタカにしたようなやつだ。

首の付け根を狙ったからな、気絶はするだろう。最悪なのはまぁこいつらが死ぬ事だが、多分それはない。

サンジの方を見ると最後の一匹が倒された後で、ルフィはまだだった。

 

「グォオオオオ!!」

 

え?嘘、ウサギって鳴くのか?

リーダーのウサギが吠えたと思うと、今まで倒れていたウサギ達が立ち上がり、リーダーの横にズラリと並んだ。

 

「ガッ!」

 

ピッとリーダーウサギが右手をあげて鳴いた。何かの合図だったらしく、一斉にウサギ達がジャンプし始めた。

交互に跳ぶその姿からは何をしようとしているのか想像ができない。

 

「なんだ?」

「何で跳ねてんだ、白熊のやつ」

「ルフィ、どう見てもあれはウサギだ」

 

まだ白熊って言ってんのかよ。

そんなルフィに呆れつつ、白熊……じゃない、ウサギ達を見るが、やはり何がしたいんだろう。

三人で仲良く首を傾げていたが、やがて理由がわかると一斉に顔を青くした。

遠くから聞こえるゴゴゴゴッという音。目を凝らすと、雪が波のように此方へ押しかけてきている。雪崩だ。

 

「「雪崩だーーっ!!!」」

 

うわぁああああっ!!!

三人で我を忘れて走る。だが、人の足で時速100キロ以上はあるかという雪崩から逃げ延びる事はほぼ不可能だ。

徐々に距離を詰めてくると同時に、ウサギ達が流れてきた大木を使ってスノボーをし始めた。どういうことやねん!!

後ろを向けばスピードが落ちる。ひたすら前を向いて走るが、やはり雪崩はもうすぐ側まで迫っていた。あ!あそこ!ちょっと出っ張ってるから助かるんじゃ!

皆が同じことを思ったのか、一目散にそこへ向かう。

ルフィが一着で到着するのを見てから、俺とサンジも向かうが、サンジが飛んできた木を頭にぶつけて気絶した。さ、サンジー!!

 

「ガッ!」

 

というかウサギに道を邪魔された!何でいるんだよ!サーフィンはどうした!

ちっくしょ!

ドライヴでそいつをなぎ倒してから、向かおうとするが、すでに遅い。もう横に雪崩が迫っていて俺を飲み込んだ。

遠のいていく意識の中、俺はドライヴを使って上空に逃げるという手段を思い出した。完ッ璧に忘れてた!

 

 

 

 

 

 

 




評価が高評価すぎて度々気絶しそうになる作者です。

前回から二ヶげ……大体一ヶ月ちょっと経ちましたね!

ラパーン達がグォオオとかガッとか鳴くのかと聞かれれば、肯定しかねます。鳴く……んじゃないですかね?
一応、ウサギは鳴きますし。ぷーぷーぶーぶーと。
なのでラパーン達だって鳴くでしょう!きっと!多分!


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