東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

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 龍の頸の玉( 体内の異物 )を手に入れた一行。 
 これで五つの神宝が揃った。
 しかし、帰り間際に驪竜は話しかける。
 『 三百年前の男に気をつけろ 』と




森林での攻防

  

 

 黒い鱗の竜が海底に棲んでいるとは思えないほどに海は穏やかで

 その海上を私たちは陸地に向かって空を飛んでいる。

 

 

 先頭にはゆっくりナズーリンを抱えたメリーがヴォルガノスの背に乗って

 外見はボーボボの首領パッチと天の助っぽいボーボボと(ややこしい)

 

 

「あたいってば最強ね!」

 

 

 自称、天の助の青い格好の背に氷のような羽をつけた女の子が…

 もう一度、灰になるまで燃やせば元に戻るかな?

 

 

「三百年も前に一体どうやって月に行けたんだ…?」

 

 

「それにソイツが海賊を率いているのも気になるわね」

 

 

 隣を飛行するボーボボ(天の助モドキ)とてゐが私に聞いてきた。

 疑問に思うのは当然だが… 落ち着いた場所で話をすべきだろう。 

 私がその事を伝えると納得して前を飛んでいく。

 

 

 ゆっくりナズーリンのロッドが示す方角には首領パッチカーがある。

 いろいろと条件が必要だが彼女の能力は役に立つ。

 アフロの中の住民である彼女たちをじっくり観察してみるのも面白いかもしれない。

 

 

 東の空が明るみを帯び始める。けっこう長いこと海の上にいたらしい。

 やがて陸地が見え… 砂浜が見え… オレンジ色の首領パッチカーが見えた。

 その入り口にはゆっくりメーリンがすぴすぴ爆睡していた… 

 

 

 仕事をしなさいよね… と額を軽く小突こうとしたら、避けられた。あれ?

 

 

 車内に入るなりメリーはゆっくりナズーリンを抱いたままベッドにダイブ。

 てゐもメリーの隣で小さく丸くなり… 小さな寝息を立てる。

 

 

 ボーボボたち三人も疲れていたのか、身体が崩れて――――液体化。

 床におかしな色合いの水溜まりを三つ作る。まぁ… 明日には復活するでしょう。

 その近くには巨大鯉のヴォルガノスが――――

 

 

「目、開けたまま寝てる…」

 

 

 魚類って寝る時はそうだったのか… いまいち記憶にないが私も休むことにするか。

 いまだにすぴすぴ寝ているゆっくりメーリンを抱き枕にして横になる。

 あー、驪竜の気を付けろって件。明日にしよう…

 

 

   □ □ □

 

 

 目を覚ますと太陽が真上を少し通り過ぎていて、誰が作ったのか料理が置かれていた。

 食卓にはマグロがどどんと置かれている。ここ(瀬戸内海)って、マグロがいたっけ…?

 

 

 昼食の傍ら、私は驪竜の話にでてきた男のことを説明する。

 三百年前に月に行った男の名は『浦島太郎』

 もっとも私が知っているのは男の名前ぐらいで、あとは…

 

 

 その男に月の都のことを海の底にある竜宮城と偽ったこと。

 数年前に地上に送り返したことぐらいで…

 何故、三百年もの間に冷凍睡眠させたのかは不明である。

 

 

 三百年もの間、冷凍睡眠させられれば… 当然、知人友人たちが生きているわけがない。

 月の民に良い感情を抱いていないのは――――そのことに対する恨みか…

 気を付けろというのは、そのことに関してか。驪竜にもう少し聞くべきだったかも。

 

 

   □ □ □ 

 

 

 道中、海賊からの襲撃に備えて海岸から離れた場所を走行する。

 非があるのは月の民でしょうけど、それは一部のみ。

 他人の罪のために罰を受けるつもりはない。

 

 

 しかし、予想に反して海賊たちがやって来る気配がない。

 拠点の要塞がある大和の国に入ったとき――――

 森林を通り抜ける途中。周囲よりも窪んで開けた場所にて…

 

 

 周囲の木の木陰から変わった髪型をした男たちがぞろぞろと姿をさらけだす。

 前方には宙に浮かぶ不思議な亀。その背には漁師姿の老人が座っている。

 

 

「モヒカン!? なんで髪型がモヒカンなの!?」

 

 

 メリーが男たちの髪型を見て叫ぶ。あの変わった髪型は「モヒカン」というらしい。

 それよりも気になるのは、あの老人… 件の『浦島太郎 なのか?

 

 

 その老人は片手を上げてモヒカンたちに指示を出すとモヒカンたちが左右に分かれ

 奥から両手首を後ろで縛られ木の枝に吊るされた男が…

 

 

 ボーボボ並みの身長に鍛えられた肉体。そして左目にある切り傷。最初の村の村長?

 なんでこんなとこで海賊に捕らわれているのこの人?

 

 

「トモヒロ!?」

 

 

 ボーボボが彼の名前なのだろうかフロントガラス越しに彼に向かって叫ぶ。

 声が聞こえたのか村長トモヒロは――――

 

 

「すまねえ… ボーボボさん、てゐ様。へまをしてしまいました…」

 

 

 何故てゐだけ様付け? そういや神格と神社持っていたわ、このウサギ。

 しかし… ボーボボたちとあの村長の交遊関係がわからない。

 

 

「あの男とその仲間が盗賊のアジトの場所を教えてくれたんだよ。

 そう簡単に捕まるような男じゃないと思っていたんだけね…」

 

 

 てゐが説明してくれた。道理で旅の道中でやたらと盗賊と出くわすわけね。

 海を根城にしている海賊がこんなとこまでやって来るとは…

 

 

「どういうわけかアジトの場所を突き止められ… 組織を壊滅させられる連中が増えてな

 調べてみたらな、こやつが浮上してきて――――こうやって捕まえたというわけじゃよ。

 すまんが主らとちいとばかし話がしたいんでの… 外に出てくれんかね?」

 

 

 例の老人が私たちに向かってお願いしてくる。口調こそは穏やかだが、

 言う通りにしたらどうなるのか、盗賊連中なら問答無用で張り倒せば済むはなしだが… 

 人質を捕らえられた状況というのは初めてである。ここは私が須臾(しゅゆ)の術で――

 

 

「なんの! 相手が数で攻めてくるなら、こっちも数で攻めるのみだ!

 今週のビックリドッキリゆっくり妖怪発進!」

 

 

 「ほな、ポチッとな」と赤いボタンを何の躊躇いもなく押す。

 

 

「「ええぇぇええぇぇっ!?」」

 

 

 首領パッチカーの口の部分が大きく開かれ、奥からハシゴが地面に向かって伸びていき

 大量のゆっくり妖怪たちが「ゆっくり♪ ゆっくり♪」と口ずさみながら降りていく。

 

 

「ちょっとボーボボさん! 村長さんがいるんですよ!?」

 

 

 メリーがフロントガラスの向こうのトモヒロを指差すが――――

 

 

「俺にはわかる。あの気高き男が何を言いたいのかを…

 トモヒロは言っている。ここで死す運命じゃないと。

 こんなことで味方の足を引っ張るぐらいなら、俺ごと討て――――と!」

 

 

 トモヒロを見てみる。全力で首をブンブンと横に振っている。

 うん。どう見ても違う。

 

 

「さらば友情! フォーエバー!」

 

 

 ボーボボが涙を流しながら叫ぶと軍服姿でトモヒロに敬礼を送る三人。

 見捨てる気満々だ! コイツら!

 

 

「ちぃっ、役に立たない人質じゃな。だが、そんなちっこい妖怪が海賊に勝てるかの?」

 

 

   □ ゆっくり戦闘中 □

 

 

 全てのモヒカンたちが一人残らず倒され呻き声を上げながら地面に横たわっている。

 ゆっくりたちがモヒカンを下敷きにして、その上で愉しそうに跳ねている。

 

 

「「予想外に強い!」」

 

 

「よし、次はあのじいさんを倒せ! ゆっくりたちよ!」

 

 

 ボーボボの命令で謎の老人の元へとカエルのように跳ねながら向かっていくゆっくりたち。

 

 

「なんの! 紙芝居『ゆっくり虐待物語』! 御代はいらぬ!」

 

 

 何処からともなく紙芝居一式を取り出すとゆっくりたちに聞かせ始める。

 タイトルの時点で嫌な予感しかしない。

 それに何故にゆっくりたちは大人しく聞いているの?

 

 

 最初は楽しそうに話を聞いていたゆっくりたちだが…

 次第に表情を曇らせ… 青ざめさせて… 泣きながら背を向けるように逃げ始め――

 首領パッチカーへと戻ってきた。一体何を聞かされたのか非常に気になる。

 

 

「小癪な! ゆっくりたちをあんな非人道的で外道な方法で撃退するとは!

 もー許さん! 喰らうがいい! 鼻毛真拳奥義ぃぃぃぃぃっ――――」

 

 

 テカテカと光った黒い革の衣服には威嚇のために付けられているのか

 大小の銀色のトゲトゲと鎖に身を包んだ三人。(メリー曰く世紀末ファッション)

 アクセル全開。ノンブレーキ。凶悪な悪人面で「ヒャッハー!」と奇声を発して――

 

 

「「轢き逃げ!!!」」

 

 

「「もはや技ですらない!」」

 

 

 爆走する車を見て足をじたばた振ったりして、なんとか抜け出そうとする村長さん。

 ごめんなさい。きっといつかこれもたぶん、いい思い出に変わるから…

 

 

「いや無理でしょ。いっそのこと海賊に殺られたことにした方が楽だと思うよ?」

 

 

 てゐが非情な選択肢を挙げて

 

 

「そうだね」

 

 

 無情にも私は賛同した。

 

 

「あなたたちの中に助けるっていう選択肢は思い浮かばないんですか!?」

 

 

 メリーがツッコミを入れた。そうやっている間にも車は突き進む。

 老人は両手を懐に入れて、中から朱色の甲羅を三つ取り出すと老人を中心に回り始める。

 そのうちの一つが私たちの車に向かって飛んできた。

 

 

「ヒャッハー! そんな亀の甲羅ごときで…」

 

 

 ボーボボが言い終える前に甲羅と激突。強い衝撃と揺れ。さらに高速でスピン。

 フロントガラスの光景が目まぐるしく変わり――

 そこに二つ目の甲羅が当たったのか、車の後ろからの衝撃。

 

 

 その衝撃で床下へ通じる出入口からゆっくりたちが雪崩れ込んできて

 車内を目を回したゆっくりたちで溢れかえる。

 

 

 最後に車の側面からの攻撃で傾き――――横転して一回転。

 車内は荷物やら何やらでごった返した状態に陥る。

 

 

「首領パッチぃぃぃっ! 亀の甲羅でスピンって、マリオカートか!?」

 

 

「俺が知るわけねーだろ! 文句はあのジジイに言えよ!」

 

 

 この状況にも関わらず掴み合い殴り合いのケンカを始める二人。醜い。

 天の助は…と姿を探しているとゆっくりたちの下敷きになって――――死んでいる…

 

 

 異変は続く。外へと通じる扉の一つから黒い線が入り込み… 頭上で動きを止める。 

 その先端部分には銀色に輝く釣り針。釣り糸と釣り針? 漁師だから?

 

 

 先端部分の釣り針が急に動き出す。急降下。狙う先はメリー。

 須臾の術で加速。途中で天の助を拾い上げ… メリーと釣り針の間に割り込ませる。

 術を解くと天の助の身体の中に釣り針が深く入り込み…

 

 

「俺の身体の中に釣り針がぁぁぁっ!?」

 

 

 気づいた天の助が叫び、釣り糸がピンと張り天の助を外へと引っ張ろうとする。

 天の助の背後に回り込み――――

 

 

「ところてんマグナム!」

 

 

 釣り針が食い込んでいる部分を拳で打ち抜き――円柱状の弾丸として発射。

 高速で飛来。車の外へと飛び出し、遠くで幾つもの木々がめきめきと音を立てて倒れる。

 轟音が響き渡り、反響。木霊する。

 

 

「俺の身体の一部がぁぁぁっ!?」

 

 

「全部、持ってかれるよりマシでしょ!?」

 

 

 これで敵が倒れればいいのだけど… そういやボーボボたちは?

 

 

「よっしゃー王手だ。負けを認めろボーボボ! この首領パッチ様に赦しを乞え!」

 

 

「なんのキングとルークでキャスリングだ!」

 

 

「ちょっと待て! チェックメイト後のキャスリングは反則じゃねーのか!?」

 

 

「それはチェスのルールだ。お前のは将棋だから大丈夫だ。問題ない 」

 

 

「なるほど! じゃあ、続けようぜ」

 

 

「「続けるな!」」 

 

 

 私が首領パッチを、天の助がボーボボの後頭部を思いっきり殴り

 チェスと将棋の駒が辺りに散らばる。

 

 

 甲羅は大雑把な動きだが威力は半端なく、釣り糸と釣り針は正確無比に狙ってくる。

 遠隔主体の敵。接近して攻撃を叩き込みたいところだが…

 相手がのんきにいつまでも同じ場所にいるとは思えない。

 

 

「外に出よう。ここにいても飛び道具の的になるだけだしね」

 

 

 てゐの言う通りだが… 森の中を視界の外からやってくる攻撃を避けるのは簡単じゃない。

 

 

「あの甲羅は避けるのは難しくはない。問題は釣り糸と釣り針だね。

 こいつは多分、硬い物質を貫通するような威力はない。

 でなきゃ、わざわざ扉から入る必要はないと思わないかい?」

 

 

 確かにあの時、扉から入ってきて… それから攻撃してきた。

 

 

「相手が得意な場所で戦う必要はないよ。戦うなら相手が苦手そうな場所でやるべきさ」

 

 

 そんな場所がはたしてあるのか… 私の永遠と須臾を操る能力で…

 この森林で探り当てるのは難しいか? 

 

 

「とりあえず、まずはトモヒロを助けよう。アイツなら情報を持っているかもしれないしね」

 

 




 

 要塞への帰路の途中で出くわせた海賊一行。
 手下の海賊を倒せたはいいが海賊を率いる老人が手強い。
 はたしてボーボボたちはこの老人相手にどうするのか?


   □ □ □


 (´・ω・)にゃもし。

 土曜日に推薦されました。
 その影響が物凄かった。

 感想と評価とツッコミを待っています。

 ※カッコと空白部分を修正しました。

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