東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

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 仏の御石の鉢っぽいモノ。
 首領パッチの心を犠牲にして手に入れた蓬莱の玉の枝。
 しかし、これらのモノを手に入れて一体どうするつもりなのか…
 彼らは『 火鼠の皮衣 』を求めて動き出す。

 


五つの難題 中編

  

 

 『 火鼠の皮衣( ひねずみのかはごろも ) 』

 

 大陸の果ての南方の火山。その炎の中にある燃えず、さらに朽ちない木。

 その木の中に棲んでいる鼠の怪物。

 その鼠の毛皮でできた衣であり、火の中に入れても燃えないとのこと。

 

 

「火鼠(かそ)とも、火光獣(かこうじゅう)とも呼ばれているけどね。

 こいつ自体は水をかけるだけで死んで、毛皮が白くなる。

 その毛皮を剥いで織ったのが『火鼠の皮衣』ってわけね」

 

 

 得意気に説明するてゐ。

 メリーはさして期待してなかったのか…

 

 

「でも、この国にはないんですよね…」

 

 

 てゐを除く全員がメリーと同じことを考えていたのか深く頷く。…が

 

 

「あることはあるよ」

 

 

 予想に反した答えが返ってきて一同を驚かせた。

 

 

「西国にいる犬の大妖怪が持っている、って話があるんだけどね。

 鋭い爪と牙を持ち、気性も荒いって話だから…

 こいつのとこに行っても斬られるのがオチだろうね」

 

 

 負けたら大損。勝っても唯の自己満足。

 わざわざケガしに行く必要はない… というのが彼女の弁。

 てゐとメリーの会話は続く。

 

 

「んで、もう一つが東にある甲斐の国にある一番高い山。

 木花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)を祀る神社がある。アサマ山。

 その火口付近に火鼠っぽいのがいるらしいんだ」

 

 

「一番高い山? アサマ山…? 富士山じゃないのですか?」

 

 

「? 聞いたことない山の名前だね。もしかして未来のアサマ山の呼び名がそうなのかい?」

 

 

「たぶん…。とある物語以降で富士山とも不死山とも呼ばれるようになりましたから…」

 

 

「ふーん。名前をコロコロ変えるのはいいもんじゃないけどね」

 

 

 彼女の話ではここは大和の国と呼ばれているところ。

 この国からずっと東のアサマ山がある甲斐の国、そこまでは結構な距離がある。

 

 

「どちらにしろ、俺たちがその山に向かうことには変わりはない」

 

 

「ボーボボの言う通りだ。善は急げだ。この『ぬ』の車で乗っていくといい」

 

 

「なんの『首領パッチカー』もあるぞ!」

 

 

 家の外には巨大な『ぬ』を象った水色の四輪の乗り物と

 首領パッチっぽい形をした車が用意されていた。

 どちらもちょっとした民家ほどの大きさがあり長旅するには向いているといえよう。

 

 

「「それじゃ『首領パッチカー』で」」

 

 

 私たちは迷うことなく首領パッチが用意した乗り物に乗り込んだ。

 

 

「相手が水を苦手としているなら、私の力が役に立ちますよ」

 

 

 と、ヴォルガノスが乗り込んでくる。

 

 

「正直、こうなるんじゃないかと思ってたよ…」

 

 

 皆が乗り込んだあとに何かを悟ったような顔で天の助が乗り込み

 イナバたちとゆっくりたちがタケノコやら何やらいろんな物を積み込む。

 場所によっては貨幣ではなく物々交換でやり取りしているとこもあるとのこと。

 

 

 イナバとゆっくりたちに見送られながら私たちは要塞を飛び出し

 てゐの案内の元、竹林の森を抜き出した。

 道中につけものがいたが速度を緩めるどころか加速させて思いっきり轢いていく。

 

 

「「 やったか!? 」」

 

 

「いや、手応えを感じなかった…」

 

 

 ボーボボ、天の助が確認のために問うと首領パッチは首を横に振ってそう否定した。

 手応えとは一体… メリーはもう突っ込むことすらしなくなった。

 どこかでまた出てくるんでしょうけどね。つけもの。

 

 

 私たちはまず東へと進み海岸を目指す。そこから海岸に沿って駿河の国へと目指す。

 道なき道を進み、街道に出て、喉かな田園風景が現れて、その先にある村へと向かう。

 すれ違う人々がこのヘンテコな乗り物を見て驚いていたが… 

 

 

 やがて最初の村に到着する。

 首領パッチカーを見て驚き、そこから現れた私たちを見てさらに驚く。

 まぁ、驚くなという方が無理でしょうね。

 

 

 首というか頭をキョロキョロと(せわ)しなく動かして村を観察していた首領パッチは

 

 

「着いたのはいいけどよォ。この後どうするんだ? てゐ?」

 

 

「そこら辺は私に任せときな」

 

 

 私たちを遠巻きに眺めていた村人一人を捕まえて… 何やら話し込んでいると

 男は奥の一回り大きい建物に入っていき扉から仙人のような風体の老人が現れる。

 おそらく、この村の代表者。村長なのだろう。てゐが彼に尋ねる。

 

 

「あんたがこの村の代表者かい?」

 

 

「いいえ、違います」

 

 

 そう言うと彼はそのまま私たちの横を通り過ぎていき、杖を高く掲げると

 人間一人なら乗れそうな雲が現れて、それに乗り込むと東の空へと飛んでいった…

 

 

「「 ええええぇぇぇぇっ!? 」」

 

 

 誰、今の…? 何しにこの村に来たんだろうか… 

 そして先ほどの男が誰かを連れて戻ってきた。

 

 

「私がこの村の村長です」

 

 

 その身長はボーボボにも勝らず大きく。その体躯は筋骨隆々の戦士そのもの。

 左手に四角い木の盾。右手には大振りの鉈が握りしめられている。左目には縦に切り傷。

 何これ? 自称村長の初老の男に絶句するメリーは…

 

 

「え~と、てゐさん? 私の想像した村長とは…

 少々、かなり… いや全然違う気がするのですが?」

 

 

「奇遇だね。私もそう思ってたところだよ…」

 

 

 厳つい顔その口から地響きのような声を響かせて

 

 

「すいません。なにせ物騒な世の中でして…

 力のない村長では集落を守ることなど出来ませんので

 それに迷いの竹林に山賊集団だけでなく、妖怪も棲みつき始めた模様でして…」

 

 

 私たちの方に――正確にはボーボボたち三人の方に目を向ける。

 ごめん。否定できない。竹林に住んでいるのも事実だし…

 しかし、てゐは予想していたのか――――

 

 

「なるほど、なるほど。如何にも貴殿の思うた通り、ここにいる三人は妖異の類いぞ。

 しかし、ここに御座す方をどう心得るか?」

 

 

 と四指を伸ばした両手を私に向ける。

 

 

「申し訳ございませんが… 学のない私めには想像できませぬ。

 ただただ美しく、高貴な御方としか理解できませぬ…

 だからこそ妖怪を供にしていることがわからないのです」

 

 

「ならば答えてしんぜよう――」

 

 

 てゐは朗々と声高くして村長に説明する。

 

 

 曰く、ここにいるのは輝夜という名の貴族の娘。

 曰く、家の仕来りで東にある木花咲耶姫命を祀っている神社に向かう途中である。

 曰く、この妖怪たちはその護衛のために育ての親が雇ったモノである。

 

 

 そしてこの村で一泊したいとのこと。

 とまぁ、この兎はペラペラと喋る。

 もっとも村長は胡散臭そうにてゐを見ていたけど

 

 

「そうでしたか…」

 

 

「ああ、そして我、因幡てゐは彼の因幡の白兎で知られている白兔神(はくとしん)。

 その使いである。この名と、使いの証であるこの耳に嘘偽りないことを誓おう!」

 

 

 超巨大大嘘つき。使いどころか本人自身なのだが…

 この兎妖怪、妖怪でありながら神格と神社を持っているのだ。

 

 

「でしたら… 我が家へおいでくださいまし、

 とても貴族様が泊まるような家じゃございませぬが…」

 

 

「気持ちは嬉しいが、仕来たり故に寺か神社あれば、そこに泊まらせていただきたい」

 

 

 村長はそう言うと今は使われていない寺を紹介し、案内してもらった。

 長いこと使われていなかったのか、中はぼろぼろでとても泊めれるような環境じゃないけど。

 そのことに不満がある首領パッチは村長の家に泊めることを勧めるが――――

 

 

「あの村の連中が物取りの類いじゃない。という保証がないからだよ」

 

 

 と、てゐは首領パッチの意見をバッサリと切り捨てた。世知辛い世の中である。

 埃だらけのとこには全員嫌がったので、その日は首領パッチカーで寝ることになった。

 

 

 こうして私たちは村や町に着けば、寺や神社に泊まっていき…

 街道を進み、海岸沿いに北上していき…

 

 

 道中を山賊、盗賊、海賊、追い剥ぎと遭遇しては、返り討ちにし

 アジトを襲い溜め込んだ宝を根こそぎ奪って旅の旅費の足しにしたりして…

 出発してから一週間ほど掛けて、ようやくアサマ山の麓に辿り着いた。

 

 

「見ろよ皆! 富士山が見えてきたぞ!」

 

 

 いち早く見つけた首領パッチがその旨を伝える。

 首領パッチを除いた面々が窓を全開に開いてその山を眺める。

 その大きさと美しさに言葉を失い、しばし見とれていた。

 

 

「さすが日本一の山、富士山だぜ! お前らもそう思うだろ!」

 

 

 首領パッチの意見に頷く一行。ついでに写真を撮ることになった。

 一応、遊びに来たわけじゃないけどね。

 

 

「でも高さだけなら二番目だったんだけどねー」

 

 

「「え? マジで?」」

 

 

 てゐの何気ない発言に驚く首領パッチ含む三人。

 

 

「説明が面倒なんで、端折るけど。

 木花咲耶姫命が姉の磐長姫(いわながひめ)の山を砕いて日本一になった」

 

 

「てゐさん、幾らなんでも端折り過ぎでしょ…」

 

 

「山を砕くって… さすが神様。スケールがデカイな…」

 

 

 てゐの説明にメリーと天の助が感想を述べる。

 ついでに言うとその時に八つに砕かれたので『八ヶ岳』という名になったそうな。

 

 

「よし。こんだけ近づけばコイツの能力が発揮できるだろう

 ゆっくりナズーリン! 君に決めた!」

 

 

 青い服装に赤い帽子を被ったボーボボが懐から

 上半分が赤。下半分が白のボールを取り出すと色の境目で二つに割れて…

 中からボーボボのアフロに棲んでいる謎の妖怪ゆっくり。そのうちの一体が飛び出す。

 

 

 灰色の髪にネズミのような耳を持ったゆっくり。

 要塞に全員、置いてきたと思ってたようだが、何体かは連れてきたのだろうか…

 

 

「ゆっくりナズーリン! 『探し物をする』だ!」

 

 

「断る」

 

 

「…………………………………………」

 

 

 にべつもなく答えるゆっくりナズーリンに彼らの言う富士山を指差したまま固まるボーボボ。

 私たちは前払いとしてチーズを渡してようやっと動いてくれました。

 

 

 彼女は『探し物を探し当てる程度の能力』を持っている。

 今回の件にはうってつけの人材といえよう。性格はさておきだが。

 

 

 とはいえ見たことも聞いたこともないモノを探し当てるのは難しいらしく

 ある程度、近くまで行かないとダメらしい。

 今も開いたアフロの中からダウジングロッドを前方に向けている。

 

 

 ダウジングロッドの指し示す方角に山を登ること幾数分。

 突如、メリーが首領パッチの足ごとブレーキを踏み…

 首領パッチの「ぎゃぁぁぁ!?」という叫び声を尻目に

 

 

「結界の境目が見えました!」

 

 

 指差す方向には何の変哲もない山の岩肌。

 ゆっくりナズーリンも同じ方向にロッドを指し示している。

 

 

「奇遇だね。私のロッドもそこを指しているよ」

 

 

「その前に俺の足について、何か言えや! コラァ!?」

 

 

 私たちは車から降りてメリーの案内のもと、その現場へと足を運ぶ。

 やはし、何もない岩石しか見えないのだが、メリーが手を伸ばし… 触れると

 水面に腕を入れたように掻き消える。

 

 

「きゃぁぁぁっ! やっくん、パチ美こわーい!」

「ボボ子もー!」

「ヒィィィ、輝夜の姉御。助けておくんなましー!」

 

 

「引っ付くなバカども…」

 

 

 あと私はやっくんではない。

 女装した姿で抱きついてくる三人を引き剥がしてメリーの元へ

 彼女は腕を引っ込めて手を握ったり開いたりしている。

 

 

「この先に創られた空間があるみたいです」

 

 

「仙人が創った異空間。或いは結界の一種かもね。連中にとっては簡単なことらしいし…」

  

 

 てゐがその空間の推測を立てる。

 どちらにしろ、この先に私たちの求める品があることに変わりはない。

 不老不死である私が結界の先に飛び込む。

 

 

 たとえ、結界内で死んでも… 好きな場所で復活できる。この力ならば――――

 

 

 私は結界の中へと侵入する。

 私はそこで鼠を目撃するのだが…

 

 

   □ 少女移動中 □

 

 

「成る程。お主らは『火鼠の皮衣』を求めて此処へやって来たわけか…」

 

 

 そこには最初の村で出会った仙人が、カピバラの群れに囲まれていた。

 自称リア獣仙人。まさか、こんなところで出会うとは…

 入っても安全と判断した私は一度戻り、合流したのちに今度は全員で入っていった。

 

 

「火鼠の皮衣はないが… 火を喰う鼠の皮衣ならあるから、それを持っていくとよい」

 

  

 目的の物とは少々違うがあっさりと手渡す。

 疑問に思い尋ねてみると――――

 

 

「殺しても死なない連中相手にどうやって勝つのじゃ?」

 

 

 と、答えた。

 どうやら、この仙人は只者じゃないようだ。

 私たちは彼に礼を述べると結界の外へと出ていく。 

 

 

   □ 少女移動中 □

 

 

 帰りの車の中、てゐがふと

 

 

「予想とはだいぶ違った結果になったね」

 

 

「そうですね。火鼠といえば火鼠なんでしょうけど」

 

 

「いや、メリー。あんたのことだよ」

 

 

「…え?」

 

 

「あんたは仙人の創った異空間。その入り口を探し当てたんだよ?」 

 

 

 そういえば、そうだった。カピバラの群れと仙人の存在で忘れていたが…

 メリーの結界の境目を見る能力は問題なく発動しているのか…

 それとも今回の旅路で強化されたのか…

 

 

「とりあえず、一度戻って確かめた方がいいかもしれないね?」

 

 

 てゐの言葉に賛同して私たちは進路を迷いの竹林に向けて帰路に着く。

 

 

「結局、私の出番なかったですね…」

 

 

 ヴォルガノスが寂しそうに呟いていた。ごめん、忘れていた。

 

 




 

 そんな宝で大丈夫なのか? と思いたくなる今回の旅路。
 そしてメリーの力は? 残りの神宝は?
 ヴォルガノスの出番は? …続く。


   □□□□□□□□□□□□□□□


 (´・ω・)にゃもし。

 五つの難題は省略して、五人の求婚者 → 帝 → 何故か忍者と戦闘勃発。
 ――が本来の形でしたが
 誰かが「 書いてください 」って言った気がしたので書きました。

 ※駿河 → 甲斐 指摘により変更しました。

 ※カッコと空白部分を修正しました。

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