東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

5 / 40
 

 無敵要塞『 ザイガス 』で一泊したあとにボーボボたちの前に現れたのは
 自称、竹林の所有者『 因幡てゐ 』
 彼女はボーボボたちとどう接触するのか? ボーボボたちの運命は如何に?




ボーボボたちと因幡てゐ

  

 

 迷いの竹林にて突如現れた首領パッチを模した巨大な要塞『 ザイガス 』

 その建物の周辺で不幸な攻撃で倒れた妖怪兎たち。

 ゆっくりたちが台車を使って妖怪兎をせっせと要塞の中へと運んでいる。

 

 

「なんで俺だけゆっくりよりもノルマが五倍あるのらァァァ!」

 

 

 アフロの中で出会った小さな白い人外の生き物が不平不満を漏らしては

 ゆっくりたちから背中にムチを打たれ、悲鳴を上げつつも台車を押している。

 序列最下位は大変だ。

 

 

 私はアフロで一度見たことあるし、ボーボボたち三人も知っているから驚かないが

 それ以外の連中は驚いていた。まぁ、遠目から見たら生首だし…

 今もメリーとてゐが一体のゆっくりを捕まえて、頬をぷにぷにつついている。

 

 

 やがて、ゆっくりたちが動けない兎たちを運び終えるとボーボボは――

 

 

「いろいろ言いたいことがあるだろうが

 まずは兎たちを回復させるのが先決だな」

 

 

 この兎たちがケガしているのは無敵要塞『ザイガス』のせいですが?

 つまり私たちが原因なんですけどね。

 今もあちこちで苦しそうに呻き声を漏らしている。ごめんなさい。

 

 

「安心しろ! 俺たち三人は回復魔法が使える!」

 

 

 どうしよう。安心できる要素がない。漠然とした不安しかないよ、ボーボボ。

 

 

「あんたたちが回復魔法? 治療の術の類いかい? 意外だね。

 ちょっと見せてもらってもいいかい?」

 

 

「え、ちょっと因幡…」

 

 

「「 ああ、もちろんだ! 」」

 

 

 私が止める間もなく、三人は引き受けて…

 目の部分が開けられた黒い三角頭巾で頭を覆い隠し、さらに黒いローブを纏う。

 極めつけには白いドクロがついた捻れた杖を頭上に掲げている。

 

 

「「 どう見ても呪術師の類い! 」」

 

 

 ささやき ― いのり ― えいしょう ― ねんじろ!

 

 

 三人が長々と呪文を詠唱して、杖の先端――ドクロを兎たちに向けて

 力ある言葉を、呪文の名を口にする。

 

 

「「 回復魔法『 聖母殺人事件( ジェノサイド・エクストリーム ) 』! 」」

 

 

「「 名前がどう見ても回復魔法じゃない! 」」

 

 

 三人が手にしている杖。そのドクロの眼孔の奥に紅い光が灯され…

 顎がケタケタと動き出す。さながら、笑っているかの如く。

 

 

 その口の奥から紫色の霧とともに禍々しい凶悪な面構えの黒い人魂らしきモノが吐き出されて

 兎たちに伸びてゆき、人魂が纏わりつき、霧が身体を覆ってしまう。

 

 

「「 どこをどう見ても回復魔法には見えない! 」」

 

  

 呪術師が唱える黒魔法にしか見えない。

 だが、見た目とはうらはらに人魂が触れた部分から広がるようにしてキズが癒えていく…

 

 

「「 ええええぇぇぇぇっ!? 」」

 

 

 いや、一人だけ口から紫色の泡を吹かせて倒れているのがいる。

 人魂に咬まれたのか、あちこちに咬まれた痕のような咬み傷がある。

 ボーボボのアフロに勝手に住んでいる。序列最下位の人。

 

 

「俺だけ扱いひどくね?」

 

 

 そう言い残して、それっきり動かなくなり

 ゆっくりたちに足首に縄をかけられ、引き摺りられながら運ばれていく。

 

 

「あたしゃ、長いこと生きているが… あんな奇跡というか妖術は初めて見たよ。

 相手を驚かすにはちょうどいいかもね」

 

 

 と悪どい表情を見せる。

 

 

「因幡てゐよ。お前の仲間はこの通り癒した」

 

 

 黒ずくめの格好のままのボーボボたちが近づいて来た。

 

 

「脱げや、それ」

 

 

 私の言う通りに従ってボーボボたちがしぶしぶと脱ぎ始める。

 気に入ってるの? それ?

 

 

   = 少女移動中 =

 

 

 場所は変わって私たちは要塞の中にあるレンガ造りの建物に集まっている。

 私たちが寝泊まりに使った建物だ。

 いつものメンバーに因幡てゐを加えた中。ボーボボは彼女に――――

 

 

「お前は俺たちがこの竹やぶで彷徨っているのを知っていながら…

 俺たちを放置。及び監視していたことについて、どう弁解するつもりだ?

 そして、なぜ今ごろになって出てきた?」

 

 

 そう彼女は私たちの存在を知っていても可笑しくはない。

 あの山賊集団。最初に遭遇した妖怪たちですら私たちのことに気づいたのだ。

 竹林の所有者を自称する彼女が知らないとは考えにくい。

 

 

 弱小妖怪が生き延びるためには情報と知識は必要不可欠といえよう。

 ましてや、因幡てゐは妖怪兎を束ね率いる立場だ。

 おそらく彼女は… そして、彼女は悪びれもせずに答える。

 

 

「答えは簡単だよ。あんたらが私たちに危害を加えない… という保証がないからだよ?」

 

 

 単純明快、彼女は私たちに対して警戒していたのだ。

 妖怪になったとはいえ、元は兎だ。当然といえば当然でしょうね。

 

 

「目から光線出すわ。口から炎吹くわ。身体から毒ガスが出るわ。

 バラバラになっても死なないわ。合体してでっかくなるわ。

 そんな危険極まりない連中、警戒したくもなる――――と、思わないかい? 」

 

 

「「 確かにっ! 」」

 

 

 至極真っ当な理由に一同が同じことを口にする。

 でも戦わないわけにもいかなかったし、あの場合はどうしろというのか…

 ボーボボたち三人に彼女がこうして出てくれただけでも感謝すべきなんでしょうね。

 

 

「でもなんだって今ごろになって出てきたんですか?」

 

 

 私たちが疑問に思ったことをメリーが口にする。それに妖怪兎の長、因幡てゐは答える。

 

 

「私ら妖怪兎――イナバは、この無敵要塞『ザイガス』が欲しいのさ。

 私らが出口まで案内して、お礼としてこいつ(ザイガス)を頂く… ってわけね 」

 

 

「つまり… 最初から只で助けるつもりはなく

 そして、助けるに値する物を持っているから交渉しに来た――――と、?」

 

 

「私らも慈善事業でやってるわけじゃないからね?」

 

 

 私の言葉にいけしゃあしゃあと言い放ち、メリーは苦虫を潰したような表情を作る。

 一歩間違えてたら死んでた可能性があるメリーにとってはいい気分ではないでしょうね…

 

 

「ふざけんなよ、テメー!」

 

 

 首領パッチがキレた。

 

 

「テメーらがとっと出ねーから、変な槍が飛んできて頭を貫通していったじゃねーか!?」

 

 

 普通は頭を貫通されたら死ぬんだけどね… 本当に何者なんでしょうね。首領パッチ。

 こんな殺しても死なない連中相手じゃ、何されるのか、わかったもんじゃない――――

 と、考えるのが普通だよね。

 

 

 だとしたら、ボーボボたち三人に付き合っている私とメリーって一体…

 

 

「ああ、あれには驚いたよ。大陸のどこぞの山奥に封印されてる話だったんだけどね。

 どこぞの阿呆が封印を解いたのか、使い手が死んだのか、或いは両方か…

 あれは妖怪に反応するから、風を切る音が聞こえたら気をつけた方がいいよ?」

 

 

「もうおせーよ!」

 

 

「とりあえず落ち着け、首領パッチ。ここで言い争いしても言いくるめられるのがオチだ」

 

 

 なおも食って掛かる首領パッチを天の助が抑えて――――因幡てゐに鋭い視線を送る。

 

 

「だが、俺たちがあんたらを力づくで言い聞かせる。…ってのは思いつかなかったのか?」

 

 

「んー? 見ず知らずの人間を助け、見ず知らずの妖怪を助けるようなお人好しが

 凄みをきかせて言っても説得力が欠けるよ? だから私はあんたらに近づいたんだよ?」

 

 

 メリーのことと、先ほどの妖怪兎たちのことか…

 

 

「違いないな。どうするボーボボ?」

 

 

「要はお前たち――イナバは、自分たちの身を守るためにこいつ(ザイガス)が欲しいんだろ?

 ならばくれてやる。ただし俺たちもここを拠点として使うがな?」

 

 

「ん? くれるんなら構わないけど。ここから脱出したいんじゃなかったのかい?」

 

 

「お前のその耳は飾りか? 俺たちの目的を知ってるだろ?

 大事なのは目的であって、手段ではない。俺たちの目的は元いた場所に帰ることだ。

 そのためには、寝泊まりできる拠点があった方が好都合だ」

 

 

 ボーボボ三人とメリーの目的。元の世界。元の時代。自分たちがいた場所に帰ること。

 でも私には、私がいた場所――――月には私の居場所はもうないでしょうね。

 穢れを嫌う、あの月の住民たちが私を受け入れるとは到底思わない。

 

 

 とはいえ、ここをこの要塞を拠点にするのはいいかもしれない。

 何しろ私たちはこの世界について疎い。まだ一日も経っていないかもしれない。

 現地を知る人物。それも長生きしている妖怪ならば… 知識もあるでしょうね。

 

 

 メリーやボーボボを元の世界、元の時代に戻す時――私はどんな選択を取るのか……

 メリーやボーボボたちについていくのか…… それとも、てゐとともに残るのか……

 

 

 未来のことはひとまず置いとくとして――――

 私たちはまず、てゐからこの世界の知識と情報を仕入れることにした。

 

 

 私の場合は月からある程度は知っているのだが、地上は如何に穢れているのか… 

 ――を延々と教えられているのがほとんどで役に立つようなモノはなく。

 ボーボボたちもここは大昔過ぎて役に立つようなモノはないとのこと。

 

 

 帰還方法については大まかに二つ考えている。

 自分たちがいる時代まで自分たちの時間を止めて過ごす方法。

 

 

 ただし、彼らがいる時代まで1300年ほどある。その間に何が起こるのかわからないし

 凍結解除のとき、同じ時代に同じ人間が二人いたら、どうなるのか… 予測がつかない。

 これはあくまで最終手段として。

 

 

 次にメリーの能力で帰還する方法。彼女は能力の行使でこの世界にやって来た。

 ただ彼女はその能力を上手く使うことができない。

 ならば彼女を強化して能力を使えるようにすればいい。

 

 

 もっとも彼女の能力は未知数過ぎて、どこから手をつければいいのかわからない。

 そこで第三者、もしくは道具の使用を併用する。

 

 

 てゐ曰くこの世界には地上の住民では作れない古い遺物等々がある。

 その中には帰還に役立つモノがあるかもしれない。

 

 

 そして、てゐには『人間を幸運にする』という能力が備わっているらしい。

 四六時中ピタッと張り付いているわけにはいかないが、

 共に行動していれば… 少なくとも悪い方向にはいかないだろう。

 

 

「それじゃ、これが無敵要塞『ザイガス』の説明書な、読んどくといい」

 

 

 と、ボーボボが例の如く、アフロから分厚い紙の束を取り出し

 てゐの目の前にドドンと置く。

 紙の大きさはてゐの頭ほど、厚さはてゐの身長ほどある。

 

 

「なにこれ?」

 

 

 思わず聞き返すてゐに

 

 

「なにって、説明書だが?」

 

 

 さも当然のように答えるボーボボ。

 

 

「いやいやいやいや、この分厚さ。あり得ないでしょ?」

 

 

「この要塞は巨大だからな、当然注意事項とかも多くなる。

 まぁまぁ、騙されたと思ってパラッと目を通してみてよ♪」

 

 

「まぁ、そこまで言うならば…」

 

 

 一番上の一枚目を手に取って見てみる。

 

 

 

 

 [寂しがり屋なので構ってあげてくださいね]

 

 

 

 

「知るか!!」

 

 

 一枚目を左右二つに破り捨て。

 

 

「騙されたよ! 私を騙したよ、コイツ!」

 

 

 と、ボーボボを指差す。

 

 

「だから『騙されたと思って』って言ったじゃん。ほんじゃ、これ次ね」

 

 

 次の二枚目をヒラヒラとてゐの目の前でかざす。

 

 

 

 

 [運動不足解消のために散歩をお願いします]

 

 

 

 

「できるかっ!!」

 

 

 二枚目をボーボボから奪って空中に放り投げたあと

 手刀で細かく千切り――どこから取り出したのかアルコールを口に含み噴射。

 そこに火をつけて紙を燃やし、灰にする。

 

 

 次に机の上の紙の束を手刀で「ハイヤーッ!」上から下まで真っ二つにする。

 

 

「次はこんな感じでどうよ?」

 

 

「うん。いいんじゃない?」

 

 

 隣で書き上げた原稿用紙を首領パッチに見せる天の助。

 

 

「あんたらの仕業かい!!」

 

 

 上に置かれた用紙ごとてゐに机を蹴り飛ばされ引っくり返され、机の下敷きになる二人。

 直後にどこからともなく聞こえてくる機械音声。

 

 

『オ、オデ、皆、喜ブ思ッテ… オロローン』

 

 

「「 無敵要塞『ザイガス』!? 」」

 

 

 この要塞、意思を持ち始めてない? 無敵要塞『ザイガス』って何なの?

 あと何この俺、頭悪いけど心は綺麗みたいなキャラ設定は? 昨日は普通に喋ってたよね?

 

 

「悪いけど、この話なかったことにしてもいいかい?」

 

 

 終いにはてゐからそんな話が切り出されて、私たちが慌てて止める羽目になった。

 気持ちはわからないわけでもないが、それは非常に困る。

 

 

「ネギあげるから! ネギあげるから!」

「ところてん催促一式もつけるぞ!」

「アフロはどうだ!?」

 

 

「今回だけだからね」

 

 

 ボーボボのアフロだけを受け取って、渋々了承した。受け取るんだ。

 他の二人は地面に両手両膝をついて項垂れている。

 

 

 こうして私たちの一行に神代の時代から生き続けている妖怪兎こと

 『因幡てゐ』が加わることになった。

 

 





 こうして、ボーボボたち一行に因幡てゐが加わった。
 長生きをしている彼女ならばボーボボたちの力になるだろう。
 そしてそれは、その意味は、そして輝夜は…


 
   **********



 (´・ω・)にゃもし。

 当初は三話ぐらいで終わると思ってました。
 所々に少々真面目な話を入れてます。と思ってます。


 ※カッコと空白部分を修正しました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。