東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

40 / 40
 
 1300年後の幻想郷。
 そこには輝夜たちと出会う前のボーボボたちがいた。
 歴史の史実通りにするために輝夜一行はボーボボたちを大昔の日本に送り込む。
 
「――彼らを迎えに行きましょうか…?」

 妖怪の賢者はそう言った。



再会と宴会と…

 

 

 ――迎えに行く。紫はそう言う。

 

 

「一ヶ月前から京都の大学、前に見た赤髪の教授がいる所に居候しているわ。

 私と貴女が所有しているのと、ボーボボのアフロに住んでいる「ゆっくり妖怪」

 それらが発してる妖気。それを点と点にして繋げて線にすれば道となる」

 

 

 私はゆっくりもこたんを紫はゆっくり霊夢をボーボボから購入して飼っている。

 今の紫ならば手掛かりさえあれば居場所を特定することなど容易(たやす)いのだろう。

 それこそ異空間、時の狭間、世界の外側であろうと…

 だが幻想郷の結界の特性ならば彼らを引き寄せることができそうなのだが…?

 

 

「過去のボーボボたちがいると未来のボーボボたちが弾かれてしまうのよ。

 それ故に幻想郷にいるボーボボたちを過去に送り込む必要がありました」

 

 

 そうしなければ未来のボーボボたちが幻想郷に入って来れない。

 河童たちと()()に協力を要請して今日この日に実行した、とも彼女は言う。

 教授が少なからず関わっていたことに驚いたが…

 

 

「――でも問題が一つ。未来への帰還のための道標が「ゆっくり妖怪」の妖気だけでは足りない」

 

 

 ()()の無敵要塞ザイガス。

 その人型形態の()()の核熱造神ヒソウテンソク。

 

 

 同じく()()の宇宙船ザンボット。その船内で使用したニンジャ=ゲッコウの自爆装置。

 そして()()にてメリーに教授と呼ばれた赤髪の女性が放ったプラズマ・クラスター。

 

 

 さらりと流したニンジャ=ゲッコウの名に驚くも紫は構わず話を続ける。

 空間の壁を破壊するほどの力を道標にして過去と未来を繋げる。

 その最後のピースが因幡てゐの能力「幸運」と対価による「不幸」

 1300年前にタイムスリップする、という特大な「不幸」な目に遭わせて…

 過去の私たちが「幸運」の力と権能で彼らを未来へと帰還させる。正直ややこしい。

 

 

「貴女の言う通り、これは非常に面倒なことよ。

 でも歴史の史実通りにやらなければ、それ以上に面倒なことになるわ。

 この行動はそちらの月の叡智殿と話し合った末の結論よ?」

 

 

 初耳なんですけど…?

 永琳は顔をしかめさせながら本音を語る。

 

 

「正直、あの者たちは教育上に良いとは言い難いので姫様とは関わらせたくないのですが…」

 

 

 彼らの奇行は今に始まったことではないが良くも悪くも周囲の人に影響を与えている。

 それに永琳が反対した所で紫は実行するだろうし…何もしなくても普通に帰ってきそうで怖い。

 何はともあれ彼らを幻想郷へと戻す手筈は整った。あとは帰還を待つのみ。

 

 

 紫は異空間から通信機のような物を取り出すと指先で画面を軽く撫でるようにして操作。

 通信先と短いやり取りをしたあとに異空間に放り込んでしまう。

 会話の相手は教授だろうか? 紫の能力で空間と空間を繋げば良さそうなのだが…

 件の彼女がプラズマ・クラスターをぶっ放して山を砕いた前科があった事を思い出した。

 ああ、安全のためか…と手を叩いて納得する。

 紫は真顔でこちらを見つめるとボーボボたちの現在の状態を教えてくれた。

 

 

「なんかゴッサム・シティの『アーカム・アサイラム』という所に()()されたみたい」

 

 

「「…………はい?」」

 

 

 予想を斜めを行く発言に思わず間の抜けた声を出してしまう一同。

 

 

 アメリカという国の東海岸沿いにある都市。その中にある精神治療施設。

 病院という看板がついているものの実態は凶悪犯罪者を入れるための刑務所らしい。

 一体なにをやらかしたんだ、というか何故そんな場所にいるんだろうか…? 謎が深まる。

 

 

 暫くしてから紫が囚人服姿の三人を連れて戻ってきた。紫が現地に赴き救出してきたのだ。

 さらにもう一人、黒衣の男が静かに佇む。蝙蝠を思わせるような全身黒づくめの男。

 

 

「君たちが解放されたのは事件解決に協力してくれたからだ。

 いくら職務質問に腹を立てたからって警官に暴行を加えるのは感心できない」

 

 

「「すいません。以後、気を付けます」」

 

 

 深々と頭を下げる。

 彼はそれを見届けると紫の作った穴を通って幻想郷を去っていった。

 

 

「待たせたな」

 

 

 いつもの格好に戻ったボーボボ。過去の私たちと出会った後の彼らがそこにいた。

 

 

「全然、変わってないわね」

 

 

「お前たちと別れてから一ヶ月しか経っていないからな」

 

 

 時間の流れ、住んでいた時代ゆえにそういう現象も起こり得るか…

 過去にいた知己たちは殆どが寿命で亡くなった。

 この先もこうして私よりも先にいなくなるだろう。

 

 

「とりあえず、それを脱いだら?」

 

 

 私の指摘にいそいそと囚人服を脱いで、いつもの格好に戻る。

 もっとも首領パッチと天の助は普段から服を着ることは少ないが…

 

 

「やりたいことは山ほどあるが先ずは出所祝いだ! 派手にやるぞ!」

 

 

 首領パッチが拳を振り上げて叫ぶ。

 異変が解決する度に何かと宴会やらパーティーやらを催し物をやるのだが…

 その時にコイツらもやって来るのだ。呼んだ覚えもないのに。

 もっとも、それは幻想郷の住人たちも同じことだが…

 首領パッチが永琳の肩を軽く叩いてから蔑むように…

 

 

「――というわけで宴会の準備しっかりやれよ?」

 

 

 このあと永琳にきっちりと制裁を加えられたのは言うまでもない。

 

 

 その日のうちに宴会の話が顔馴染みの鴉天狗の手によって幻想郷の隅々に行き渡る。

 場所は永遠亭。主催者は私たち永遠亭組。彼らと出会い、別れた時と同じ満月の日。

 

 

 

 

 準備等で時刻は流れて夜。

 星空の下、首領パッチと天の助が二人並んで地べたに座っている。

 首領パッチが星空を眺めながら「キレイ…」と呟くと、天の助が真面目な顔で語りかけてくる。

 

 

「パチ美、君に渡しておきたい物がある」

 

 

 大きな四角い箱を取り出して、中に入ってある物を見せる。

 

 

「給料三ヶ月分の「現金」だ」

 

 

 分厚いお札の束だった。ロマンチックの欠片もない。

 

 

「まあ、素敵♥」

 

 

 頬を赤らめさせてお札の束を奪うように引ったくると、ペラペラと捲りながら確認する。

 

 

「何よコレ!? 全部「ぬ」円札じゃないのよ! 

 こんなモン暖炉にくべる薪代わりにしか使い道がないじゃないのよ!」

 

 

 「ぬ」と書かれたお札を燃え盛る焚き火に投げ入れる。

 投げ込まれたお札の束が一瞬で燃え尽きて灰に、風に吹かれて空へと舞う。

 

 

「ああっ!? 俺の三ヶ月の苦労が!?」

 

 

 いったい何処で手に入れたんだろうか…? 「ぬ」のお札。

 そんなアホなやり取りを余所に続々と来訪者が訪れてくる。

 紅魔館、白玉楼、妖怪の山といった幻想郷の面々に…

 

 

「あ、繋がった」

 

 

 突如、現れた空間の裂け目から黒髪の少女を連れたメリーが出てくる。

 その奥には赤髪の教授と助手らしき少女も。

 最初はおっかなびっくりしていたが私の知り合いということもあってかすぐにうち解け合う。

 私もボーボボたちが外でどんな騒動を起こしたのか気になり彼女達から話を聞く。

 彼らは相変わらず外でも凡人には理解不能な行動をしていた。

 

 

 騒霊たちが音楽を奏でて妖怪たちが歌を歌う。

 人外の生き物と人が交ざっている不可思議な光景。

 顔触れは違うが過去と似た光景がそこにあった。

 そして地面を跳ねながら移動するゆっくりと変な生き物……

 

 

「……………………」

 

 

 ボールほどの大きさの饅頭のような体に短い手足。円らな瞳に猫のような口。

 ゆっくりが誰かを模しているように、この小さな生き物も誰かを彷彿させる。

 

 

「ほっほっほ、それは「すくすく」という謎生物じゃよ。お嬢ちゃん」

 

 

 その生物を観察していると老紳士のような格好のボーボボが説明してくれた。

 慧音の能力と妄想で生み出された生き物らしい。

 

 

「私、こんなの生み出した覚えないぞ!?」

 

 

 妹紅と一緒にいる慧音がこちらに振り向いて否定する。

 ゆっくり同様にこの謎生物も馴染んでいくんだろうなぁ…

 

 

 人が集まれば、招かざる客も来るようで()()から一隻の船がゆっくりと降りてくる。

 広場から少し離れた所に着地し、船の甲板から骸骨たちを引き連れて男が降りてきた。

 格好をわかりやすく説明するならば西洋の海賊の船長。ただし骨。

 赤い派手な格好にドクロのマークがついた帽子。カイゼルヒゲに眼帯。腰にはサーベル。

 その人物は私たちを一瞥すると偉そうに腕を組みつつ後ろにふんぞり返って名を名乗る。

 

 

「――私の名は「フック」船長…」

 

 

 フック船長の自己紹介が言い終わる前にボクサーの格好をしたボーボボが動き出す。

 両腕で顎を隠すようにして接近。

 二人はボクシングのリング中央に立っている。

 

 

「フー―――ック!!!!」

 

 

 ボーボボの横から打ち抜く右のパンチがフック船長の頬を捉える。

 堪らずよろけて体をリングへと傾ける。そこに…

 

 

「アッパー―――っ!!!!」

 

 

 肘を曲げたまま下から突き上げるようにして放った左のパンチが顎に突き刺さる。

 そのパンチの衝撃で体ごと宙に浮き、背中から大の字になって倒れる。

 試合を見届けた首領パッチが試合終了のゴングを鳴らす。

 

 

「アイアムア、チャンピオー―――ン!!!!」

 

 

 ボーボボがリング中央で叫び、レフリー姿の天の助がボーボボの右腕を上げさせる。

 

 

「その「フック」じゃなかァ~~~っ!!」

 

 

 復活したフック船長が古めかしい銃で三人を撃ち抜いて穴だらけにする。

 

 

「ええい、大人しく宝を渡せば痛い目に遭わずに済んだものを!」

 

 

 フック船長の号令の下、骸骨たちが動き出す。

 常人ならば慌てふためくだろうが生憎ここに集まっているのは…

 異変を起こす者と解決する者たちが集っている。

 この騒ぎすらもイベントの一種、酒の肴、暇潰し程度にしか思っていない。

 

 

 迷いの竹林の一角が色とりどりの弾幕の光で鮮やかに映える。

 それはまるで満天の星空が地上に下りたようで……ただただ、美しい。

 この地上で、この幻想郷の行く末を見ていくのも悪くはないかもしれない。

 

 

 そして私は知った。場所などは関係なく、己の心が退屈を生み出すということを…

 だから私は私にできること探そう。幸い時間だけはたっぷりとある。

 

 

 ここは幻想郷、美しくも残酷な世界。

 でも、どこぞの三人組のせいで騒がしくも平和だったりもする。

 

 

 

 

 見目麗しい少女たちが撃つ光の塊と光の欠片。

 その宝石のような輝きを全身に浴びながら、私は幻想的な光の奔流を目で愉しむ。

 

 

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 正直、最終回はどうしようかと悩みました。
 因みにフック船長の元ネタは「突撃!パッパラ隊」
 何はともあれ「東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語」終了しました。
 番外編は書きません。万が一、書く場合は別の作品としてでしょうね。

 ここまで読んでくれて、ありがとうです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。