東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

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 ニンジャ=ゲッコウの最大出力の『プラズマ・クラスター』が放たれる瞬間。
 輝夜の元家庭教師が現れ窮地を救ったが、自爆を試みるも紫の能力で消え去った。

 永琳の口から語られた赦された罪と罰?
 やってくる月の本隊?



月の本隊

 

 

 永琳が要塞にやって来て二週間経った頃。満月の日。昼を回った頃か…

 それは突然やって来た。

 

 

 空からゆっくりと下降して、平安京の上空でピタリと止まって――静止。

 その影は平安京を覆いつくすほどの巨大な建造物。星の海を行く船。宇宙船。

 その大きさは私たちがいる迷いの竹林からも視認できるほどであった。

 形はアルファベットのH。黒い流線形の船体を持った巨大な船。

 それが船体のあちこちを点らせて滞空していた。

 

 

 わざわざ平安京上空で止まったのは見せびらかして恐怖を煽るためだろう。

 

 

「抵抗しても無駄だ」――と…

 

 

 同時刻、数名の兵士を連れたソルジャーがやって来る。

 目的は言わずもがな… 私たちを連れていくためだ。

 断ることもできたが、そんなことをすれば彼らがどんな目に遭わされるのやら…

 それに月の使者たちとはいずれ会わなければならない。

 

 

 紫と藍は要塞に残して、ソルジャーたちを先頭に永琳を加えたメンバーで平安京へ。

 道行くがてらソルジャーが平安京で起きた出来事を簡略ながら説明し始める。

 

 

 先代の帝と今代の帝。さらに五人の貴族たちがいる広間に月の使者が突然やって来た。

 

 

 てゐと同じくウサギの耳を生やした女性。

 鋼鉄の身体を持った侍。

 そしてリーダー格らしい三日月の男の三人組。

 

 

 その三日月の男は彼らに

 

 

「かぐやを連れ戻しに来た。コロセウムに連れてこい。

 拒否することも抵抗することも妨害することも許可する。ただし、その場合――――」

 

 

 男が頭上を軽く指差すと天井が吹き飛び、例の宇宙船が視界に入った。

 

 

「罰を与える」

 

 

 男はそう言い残して立ち去り、貴族たちは満場一致で従うことに――そして…

 

 

 ――現在に至る…

 

 

「すまないな、平安京のためとはいえ君たちを差し出すような真似を…」

 

 

「まったくだわ! パチ美をあんなヤツらに――」

 

 

『輝夜アイアンクロー』

 

 

「頭が !? 頭が割れるゥ――っ !?」

 

 

 正面から片手で頭を鷲掴みにして持ち上げ、万力のようにじわじわと締め上げる。

 

 

「こいつはツケだ。いずれ支払ってもらう」

 

 

「俺たちに支払える範囲、できる範囲内で頼む」

 

 

 ほどなくしてコロセウム入り口に辿り着く。

 この細い通路の先に月の使者たちが待ち構えているのだろう。

 

 

「相手は月の民の戦闘員だ。マトモにぶつかり合えば、こちらもただではすまない」

 

 

 ウサギの耳を生やしたのは月のウサギ――玉兎(ぎょくと)

 彼女たちの中には兵士として訓練されているのも存在する。

 貴族たちの前に現れたのは部隊長クラス、もしくは上の存在。

 

 

 鋼鉄の侍は戦闘用ロボットだろう。

 先日のニンジャ=ゲッコウよりも強化されたモノと見ていいだろう。

 

 

 そしてリーダー格の三日月の男…

 

 

「俺たちの趣旨に反するが多少の卑怯な手も使わざるを得ない」

 

 

 ボーボボの意見に深く頷く首領パッチと天の助。

 

 

「まず俺が砂か何かで相手の目を潰すから、お前たちは後ろから何か硬いもので殴れ」

 

 

「ボーボボさん !? いくらなんでも卑怯すぎません !? それ!」

 

 

「そのあと、ソイツらを人質にうちらに二度と手を出さないように約束させれば…」

 

 

「てゐさん !?」

 

 

 てゐの発案に「おおっ」と感嘆する三人。

 

 

 さらに私も一緒に殴れば… 計画はより完璧に仕上がる筈。

 

 

「私の味方が一人もいない !?」

 

 

「あなたたち、一応ここに月の民の一人がいるんだけど…?」

 

 

 永琳がこみかみを指で押さえながら呆れた声で言う。

 

 

 細長い通路を抜けると以前あったリングがなくなっており、

 代わりに三人――月の使者がそこに立っていた。

 

 

 制服を着た長い黒髪の玉兎。

 甲冑姿の人型兵器。

 そして最後の一人…

 

 

 中肉中背の男、執事が着るような黒の燕尾服――は、まだわかる。理解できる範囲だ。

 だが生物でいうならば頭がある部分に頭がなく、代わりにあるのは三日月。

 マンガ等に書かれている、ややデフォルメされた三日月が首の上に乗っかっていた。

 

 

「「 三日月 !? 」」

 

 

「今回、連れ戻す役目を任された『満月伯爵』という者です。以後よしなに」

 

 

「「 おいっ、三日月! 三日月、名乗れよ! 」」

 

 

 自己紹介する満月伯爵――その名前にツッコム三人。っていうか何アレ?

 永琳は何か知っているのか、と彼女の方に目を向けると視線を逸らした。

 おいっ… 月の叡知…

 

 

「ソルジャーさん、三日月の男って説明されましたけど…」

 

 

「ああ、そう言ったハズだが?」

 

 

「まんま三日月なんですけど !? 」

 

 

「俺に聞かれても困る」

 

 

 メリーに聞かれて返答に困るソルジャー。

 まぁ、そうでしょうねぇ…

 

 

「あなた方が月の使者ですか、初めましてボーボボです――と言いつつ先手必勝!」

 

 

 途中まで歩いて進むと… 

 突然、気を纏って飛び――月の使者たちとの距離を一気に縮ませる。

 その両手には黒板消しが二つ。

 

 

『 黒板消しの粉落とし煙幕! 』

 

 

 黒板消し同士ではたき合わせて、大量のチョークの粉が煙幕の役目を果たす。

 

 

 後ろに回り込み月の使者たちの背後に立つ私、首領パッチ、天の助。

 無防備の背中に向けて金属バットをフルスイング。 

 

 

『『 協力奥義「三人官女が撲る!」 』』

 

 

 ――だが、三本の金属バットはどれも身体をすり抜けて空を切る。

 

 

『よくできた立体映像だろ? 俺の名はザンボットだ』

 

 

 女の声ではない――三人の月の使者の一人… おそらく、あの侍モドキ。

 上の煙を引き裂いて何かが飛んでくる… 

 

 

「 危ない! 私! 」

 

 

 天の助を両手で持ち上げて飛来物に向けて…

 

 

『 天の助・ミサイルゥ! 』

 

 

「ちょ、お前!?」と手足をバタつかせて抵抗するも構わず投げる。

 

 

「 天の助、上だ! 」

 

 

 首領パッチの警告の声で上を向くと… 天の助の行く手に両手剣を上段に構えた満月伯爵。

 振り下ろされ――肉体が二つに分断された。

 さらに返す刀で何度も斬られて細切れにされ…

 止めに片手から生み出した衝撃波で空中で塵と化す。

 

 

「「 天の助 !? 」」

 

 

 突風が巻き起こり、煙幕が飛ばされる。

 玉兎が翳した水晶で出来た華から起こしたモノのようだ。

 

 

「私の名はミサト。この銀水晶は不浄なるモノ、穢れた存在を浄化する力がある」

 

 

「 はん、浄化だと !? この首領パッチ様が穢れた存在なわけ…ねーだろーがっ! 」

 

 

 銀水晶から光が発射され、あっという間に溶けて一塊の塩と化す。

 

 

 うん。わかってた。

 

 

「首領パッチと天の助を簡単に倒すとはな… ところで素晴らしい剣だな…

 ちょっと見せてはくれんか? どうした? 怖いのか?」

 

 

 ボーボボに剣を放り投げて渡す満月伯爵。

 片手で受け取り、剣をつぶさに眺めてから満月伯爵に近づくボーボボ。

 

 

「お前が天の助を倒したのはこの剣があったからだ。そうは思わんか?」

 

 

「何が言いたいのですか?」

 

 

「つまりこの剣がなければワシに勝つことは…」

 

 

 肩パッドのついた黒い戦闘服に身を包み薄紫の肌に角を生やしたボーボボが…

 両手で剣を握りしめて満月伯爵目掛けて上から振り下ろす。

 

 

「 できんのだ !!!! 」

 

 

 しかし、その全力を込めたであろう一撃を… その刃を左手一つで受け止められてしまう。

 

 

「そうでもなかったようですね?」

 

 

「うぐぐぐ…」と剣を押したり引いたりと試みているが微動だにしない。

 やがてボーボボの心臓付近に手のひらを向けると…

 

 

「 ま、待て! 」

 

 

 静止の声を無視。エネルギー弾がボーボボを貫通。

 吹き飛ばされ岩盤と激突。岩にもたれかかるようにして倒れる。

 

 

「かぐや殿、上をご覧くださいまし…」

 

 

 巨大な宇宙船の船体のあちこちに光が灯されている。

 

 

「これ以上抵抗をするならば、この平安京に砲撃を開始いたしますが…?」

 

 

 私は両手を上げて無抵抗の意を示し――――彼らは満足するように頷いた。

 ほどなくして小型艇が降りて来て、私は乗せられた。

 メリーとてゐ、三人を残して私は宇宙船へと向かっていく。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 時間をずらしての連続投稿。
 前話が短い会話なので、こういう形を取ったおー。

 ここまで読んでくれて、ありがとう。

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