東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

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 ゆかりんパワーを大量に消費して、その反動で眠ってしまった紫。

 ゆっくり妖怪に化けたモヒカンの侵入。
 そして、モヒカンが持ってきた封筒と手紙とウニ。

 そこに書かれていた「人質」の文字。

 だが夜で真っ暗になってたので、救出は明日にすることになった。
 


ニンジャ=ゲッコウ

 

 

 ――翌朝。

 

 

 二階の自室から一階の居間に降りると、すでに藍が朝食の支度を整えていた。

 テーブルの上に置かれている料理がほのかに湯気を立て、香りが漂ってくる。

 

 

 さすが藍、ボーボボが " できる女 " と評価するのも頷くというもの。

 もっとも紫は未だに居間の一角で布団にくるまってスピスピ眠っているが…

 ついでに布団の上と周辺にゆっくりたちがたむろしていたりする。

 

 

 コイツはもしかしてダメ人間ならぬ、ダメ妖怪なのでは…?

 

 

 そんなことを思いつつ席につく。少し遅れて私以外の面々も食卓について――

 昨日のモヒカンと脅迫状に書かれていた人質の事が話題になる。

 

 

「十中八九、ワナだろうね。でも私たちは行かざるを得ない。人質がいるからね?」

 

 

 てゐの言葉に静かに耳を立てる私たち。

 

 

「今朝、配下の因幡たちが竹林の外で鉄でできた乗り物らしい物を見つけてきたよ。

 それが連中のいう乗り物で犯人の元に辿り着く唯一の手掛かり…」

 

 

 鉄でできた乗り物… 現在の地上の文明では作れるとは思えない。

 過去の遺物か未来の技術か、それとも月の忘れ物か…

 

 

「ただの山賊にこんな物を用意できるとは思えない。

 そんな連中が私たちの事を調査しないとは考えられない。

 おそらく対抗手段の幾つかが――ヤツらの指定する場所で用意されてる」

 

 

「上等だ。ワナだろうが多次元宇宙だろうが何だろうが

 それらを乗り越え突破するのが俺たちボーボボ団だ! おかわりっ!」

 

 

「ん? ああ…」

 

 

 ――と激を入れ、藍にご飯を要求するボーボボ。

 

 

 いつからボーボボ団になったんだろう…

 たぶん今思いついて言ってみたかっただけ。

 

 

 【少女食事中】

 

 

 全員が食事を終えても紫は未だに寝ていた。

 首領パッチが紫を叩き起こそうとしたが、藍の手刀で縦に二つに裂かれて断念。

 八雲の二人は要塞に残しておくことになった。

 

 

「さて行くか…」

 

 

 白く足元まで伸びたカツラを被り、金と黒の派手な衣装を纏った三人が扉をくぐる。

 メリーはその衣装を知っているのか…

 

 

「なぜに歌舞伎の格好…?」

 

 

 私たちは因幡たちの誘導の下、誘拐犯の用意した乗り物へと向かう。

 道中「暑い、動きづらい」と言って脱ぎ捨てた。なら何故、着た…

 

 

 【少女移動中】

 

 

「――で、これが例の乗り物ね… 随分と物々しいね…」

 

 

 てゐがポツリと漏らす。

 彼女の前にあるのは窓のない車体に、左右合計八つのタイヤがある乗り物。

 迷彩色のボディが竹林の緑に溶け込んで風景の一部と化している。

 素人目にもこれが軍用目的に作られた物なのは目に見てわかる。

 ボーボボ曰く「装甲車」

 

 

『 くっくっく… 』

 

 

 その装甲車から機械による音声――含み笑いが流れてきた。

 ボーボボが両隣にいる首領パッチ、天の助に視線で合図を送り――二人が頷き…

 いったいどこから用意したのか、テーブルの上にあるカレーを一口食べると――

 

 

「「 このカレーはカレー 」」

 

 

 私たちの間に流れる沈黙。

 

 

『 くっくっく… 』

 

 

 だが、装甲車からの含み笑いは絶えず続いていた。

 それが心の琴線に触れたのか、むせるように泣きながら…

 

 

「「 ううっ、俺たちのギャグが大ウケ… 」」

 

 

「「 ――んなわけ、あるか !! 」」

 

 

 三人の場違いな言動と行動に私とてゐが声をハモらせ…

 

 

「 そうですよ! カレーが日本に伝わったのはもっと先ですよ !? 」

 

 

 メリー、それも違う!

 

 

『 くっくっく… あーっはっはっはっは――、く、くるしいぃぃぃっ… 』

 

 

 マジかっ !?

 

 

 しばらく笑い続けたが、それもやがて収まって…

 

 

『 お前ら、いくらなんでも遅すぎだぞ 』

 

 

 すいません。

 

 

「悪いな " カツオ神教 " の教えで夕方以降の人質救出は堅く禁じられているんでね」

 

 

 ボーボボがすぐバレるようなウソをついた。

 

 

『 ああ、あのスケボーに乗った変なのか… それなら仕方がないな 』

 

 

 バレなかった !? しかも知ってる !?

 

 

『 早速で悪いがその装甲車に乗って、俺の指示に従ってもらおう。

  運転できないと言わせんぞ。

  お前たちはあのおかしな乗り物で移動していたんだからな? 』

 

 

 おかしな乗り物――首領パッチカーのことか、五つの神宝を探していたときの…

 

 

「おかしな乗り物って… 首領パッチカーのことかァ――――っ !?」

 

 

 自分の所有している乗り物がそのような呼ばれ方されているのが気に入らないのか

 怒りを露に叫ぶ首領パッチ。

 

 

「おかしいだろ?」

「ぬの車にすべきだった」

「物凄く目立って恥ずかしかったですよ」

「外見さえ気にしなければ、私はいいと思うけどね」

 

 

「 ちっきっしょ――――っ !!!! 」

 

 

 やり場のない怒りを大空に向かって声にして叫んだ。

 首領パッチに賛同する味方はいないようである。

 

 

 上部にあるハッチを開けて装甲車の内部へと入っていく。

 中は広く作られており全員が入っても尚、空間が余る。

 

 

『 全員、乗ったようだな 』

 

 

 どこかに仕掛けられている機械でこちらを見ているのだろうか車内にあの声が響く。

 

 

『 まずは真っ直ぐ進め… 』

 

 

 ボーボボが運転席に座り、ハンドルを握りしめ発進させる。

 道なき道を進むと街道に出て――

 

 

『 右に曲がれ… 』

 

 

 すぐに次の指示が出され、言う通りに街道を右折。

 やがて川が見える。

 

 

『 川を渡れ… 』

 

 

 水しぶきを盛大に上げながら川を横切っていく。

 その先には水害を防ぐために土を積み上げて築いた斜面、土手が…

 

 

『 空を飛べ… 』

 

 

 アクセル全開、ノンブレーキで斜面を駆け抜けていき――

 頂上を乗り越え――装甲車が宙に舞う…

 

 

『 冗談だ… 』

 

 

 装甲車が空を飛べるわけもなく車体の前面から地面に激突、砂塵が舞う。

 

 

「 おのれ! 言う通りにしたというのに! 」

 

 

 激突の際、頭を強く打ったのかダラダラと血を流している。

 

 

「「 言う通りにすな! 」」

 

 

 憤慨するボーボボに私たちがツッコム。

 今度は慎重に装甲車を運転。辿り着いた場所は…

 寂れて捨てられた廃村。元は身分のある人間が住んでいたであろう屋敷。

 そこが誘拐犯の指定した場所だった。

 

 

「いかにも罠があるぞ… といわんばかりだな、気をつけて進むぞ」

 

 

 ボーボボの警告に一同、黙って頷く。

 装甲車から降りると一人のモヒカンが待ち構えていたのか近寄ってくる。

 

 

 「へっへっへ… 待っていたぜ、ここから先はこの俺――田吾作が案内するぜ」

 

 

 見た目と名前が一致してない。

 

 

「本来なら、お宅んとこに手紙を渡したアルベルトの役目だったんだけど、

 どうやらアンタらの怒りを買ったみたいだな…」

 

 

 え !? あの変態そんな名前だったの !?

 

 

 モヒカン――田吾作の案内の下、移動する私たち…

 屋敷の中に入るかと思いきや… 建物の横を抜けていき裏にある雑木林へと入っていく。

 それに首領パッチが不満をぶつける。

 

 

「おいおい? どれくらい俺たちを歩かせる気なんだ?

 こっちはテメーらに付き合うほど暇じゃねぇんだぞ?」

 

 

「すぐそこだ。俺は依頼を受けただけで、あとは知らん。

 文句なら依頼人に直接言ってくれ――」

 

 

 田吾作の言葉を遮って木々の合間を横に回転しながら飛来する影が一つ。

 鋭利な刃を四つ合わせてできた一つの凶器が私たちに向かって飛び込んでくる。

 

 

 ――――手裏剣 !?

 

 

「え? おれ…?」

 

 

 手裏剣の狙いは――――私たちではなく田吾作、

 いわゆる口封じというやつか…

 

 

「「 危ない !! 」」

 

 

 そうはさせまいと三人が体を張って盾になり、その身で凶器を受け止めた。

 

 

「「 ぐわァァァ――っ !!!! 」」

 

 

 その体には、複数の手裏剣、刀、針、鋼鉄の拳、鉤爪のついた手甲、柄の部分が捻れた二又の槍

 等々が三人の体に突き刺さっていた。

 

 

 なんかいろんなモノが刺さってるゥ―― !?

 

 

『安心せい、峰打ちでゴザル』

 

 

 前方頭上から、ややくぐもった男の声が聞こえてきた。

 白い忍者衣装に白い面頬で顔半分を隠した全身を白で固めた男が、

 どういう原理か逆さまで木の幹に腕を組んで立っている。

 その目は鋭く研ぎ澄ました刃物を彷彿させる。

 

 

 でも「カレーはカレー」で爆笑してたんだよね、この人。

 

 

「「 なーんだ 」」

 

 

 男の言葉に安心し安堵の息を漏らし、額を拭うボーボボたち。

 

 

 どう見ても致命傷ですけどぉぉぉ !? それに峰打ちじゃない!

 

 

 田吾作が自分を(あや)めようとしたその忍者に青ざめた表情で問い詰める。

 

 

「どういうことだ !? てゐちゃん着せ替え人形くれるから依頼を受けたのに!」

 

 

 お前もか! 

 

 

『秘密を知った者が口封じで殺される… よくあることだろ?

 貴様もフリーのモヒカンをしているならば覚悟をしていた筈だ』

 

 

 悪びれもせずに言い放ち、木の幹から離れて一回転――地上に降り立つ。

 私たちに向かって手を合わせて軽く頭を下げる――――

 

 

『ハジメマシテ、ボーボボ=サン。

 コペルニクス=スティーブン

 ゲルガッチャ=ニコス=ヴィル

 メイ=トロウ=ジャクソン三世です』

 

  

 名前、長っ !!

 

 

『言いにくいのであれば――「ニンジャ=ゲッコウ」…とお呼びください』

 

 

 名前のどこに月光の要素があったの !?

 

 

 ニンジャ=ゲッコウと同じく手を合わせてお辞儀をするボーボボ。

 

 

「これはご丁寧に、ハジメマシテ、

 コペルニクス=スティーブン

 ゲルガッチャ=ニコス=ヴィル

 メイ=トロウ=ジャクソン三世さん。

 ボボボーボ・ボーボボです」

 

 

 一回で覚えてる !? スゴっ!

 

 

 

 

   君はこの光景を見て異様と感じた事だろうが…

   ニンジャのイクサにおいてアイサツは絶対の礼儀だ。

   どんなに憎しみがあろうとも絶対に欠かしてはならない。

   だがアイサツ前のアンブッシュ(奇襲攻撃)は一度だけ認められる。

   古事記にもそう書いてある。

  

 

 

 

「――とこんな感じでどうだ?」

 

 

「最高だ、さすが天の助… お前のその才能に畏怖すら抱くぜ」

 

 

「よせよ首領パッチ、お前らしくないぜ」

 

 

 天の助が書いたであろう原稿を受け取った首領パッチが身震いする。

 

 

 やっぱしお前らの仕業か!

 

 

「お前一人で俺たちとやり合うつもりか…?」

 

 

 問うボーボボにゲッコウは懐から紅白二色のボールを取り出すと…

 

 

『お前たちとは「闇のゲーム」で挑ませてもらう…』

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 月の使者まで、もうちょっとなった。週一でガンバる。

 ここまで読んでくれて、ありがとうなのです。

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