東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

25 / 40
 
 紫の能力で無敵要塞ザイガスに戻ってきた一同。
 中で待ち構えていたのは従者の藍と布団にくるまって寝ている紫。

 そして藍が夕食に出した品物がいったい何処で手に入れたのか
 「ジュエルミート」

 しかし、ボーボボたち三人は無視して紫のために用意してあった
 「虹の実プリン」を喰い始めて…



脅迫状と人質とウニ

 

 

 拳大ほどの大きさに切り取られた虹の実プリン。

 三人に半分以上食われたが、大きさが大きさだけに結構な量が残っている。

 それが私たちの目の前、皿に乗せられた状態で置かれている。

 

 ちなみに三人は罰として首だけ出した状態で外に埋められている。

 もっとも首領パッチだけは首の位置がわからず土の中に埋められたが…

 

 

「口の中で味が変わる… 不思議な食べ物だね。

 長いこと生きてきたけど虹の実なんて見たことも聞いたこともないよ。

 いったい何処で手に入れたんだい?」

 

 

 てゐがスプーンをくわえたまま二人の妖怪――八雲紫、八雲藍に問う。

 彼女は短くボソッと――

 

 

「地球」

 

 

 期待はしていなかったが子供のよう回答に呆れた表情を彼女に向ける。

 私たちのその表情を見たかったのか、にんまりと笑い…

 

 

 ――ただし、平行世界のね…?

 

 

「「 …………………… 」」

 

 

 不覚にも彼女が何を言っているのか理解できずに思考が停止した。

 力を――能力を持っているとはいえ、一介の妖怪にそんなことが可能か?

 その話が本当ならば時間移動もできるのでは…?

 

 

「嘘だけど嘘じゃない。本当だけど本当じゃない…」

 

 

 てゐがテーブルの上に一冊の書物を置く――タイトル名は『トリコ』

 ボーボボたちの所有物の一つ。

 

 

「お前さんは能力を使って、この書物の中の世界に入り込んで…」

 

 

 パラパラと捲り、途中で止めて…

 開いたページをこちらに見えるように向ける。

 

 

「これらの食材を手に入れた…」

 

 

 本来、虹の実の一つが描かれた部分だろう…

 その箇所が白く塗り潰されて空白になっている。

 平行世界ねぇ… 

 

 

「――そのウサギの耳は飾りじゃないってわけね、

 要塞内にウサギがいないから油断してたわ…」

 

 

「そういうこと」

 

 

「いや、そう判断するのは早計というものだ」

 

 

 いつの間に穴から抜け出したのか、ボーボボたち三人が――

 その手には一冊の書物…『桃太郎』 記憶が確かならば物語の最後に財宝を手にする昔話。

 

 

「「 オレたちをこの本の中に送り込んで確かめる必要がある !! 」」

 

 

 ないよ!

 

 

 紫は無言で能力を使用――三人の足下に穴が開き、そこへ落ちる――

 …と思ったら、間を置かずに天井付近に穴が開いて三人が床に落下。

 

 

 二人は両手の松葉杖で体を支え、天の助は車イスに乗っており

 全員が全身をミイラのように包帯でくるまれた格好で戻ってきた。

 

 

  ボーボボ  HP 1

  首領パッチ HP 1  

  天の助   HP 0.5

 

 

 死にかけているぅ―― !!!?

 

 

「「 猿、犬、雉… つえぇ―… 」」

 

 

 しかも強奪しょうとしてた !?

 

 

「猿、犬、雉といっても " 鬼 " を退治してますから…

 負けてもしょうがないと思いますよ?」

 

 

 メリーが三人を弁護し、そのあと紫が…

 

 

「世界に(ことわり)があるように、本の中にも絶対に変えられない筋書きというものがある。

 そう、例えば――桃太郎は桃から生まれる。鬼は退治される。――感じにね…

 自分の都合で世界を書き換えようものなら… 当然、反撃されるに決まっているわ。

 自分たちの世界を守るために、本そのものの意志が異物を排除しようと動く…」

 

 

 逆に排除されない程度なら、自由に動ける。

 紫か藍、もしくは二人が自由に動ける範囲内で手に入れたと――でも…

 

 

「――なんだって、こんなことを?」

 

 

「人間… 未来において妖怪たちはどうなっている?」

 

 

「それは…」

 

 

 言葉に詰まり、言い淀む――それはつまり…

 

 

「貴女を見る限り、妖怪たちの未来は明るくないでしょうねぇ…

 故に私が動くのです。より良き未来のために…」

 

 

 胡散臭い。

 彼女の言っていることは立派なのだが… 理解できるのだが…

 どこか信用できない部分がある。

 

 

「まー、そんなことより " ゆかりんパワー " で元の時代に戻せないのか?」

 

 

「そんなことって、貴方… まぁ、結論からいうと不可能ね」

 

 

 ゆかりんパワーという名称に指摘しなくていいのか、ゆかりん…?

 

 

「くっ、思った以上にゆかりんパワーを消費したわね…

 悪いけど少し休ませてもらうわ…」

 

 

 布団に入り、横になる。

 しばらくして「zzz」という文字が頭上で浮かべては消える。

 意外と余裕があるな彼女。

 

 

「ゆかりんパワーを否定しませんでしたね、彼女」

 

 

 そうだね、メリー。

 

 

 再度、彼女の周辺にゆっくりたちを置いていくボーボボたち…

 その中になぜか藍の姿も…

 

 

「ん? ああ、こうすると紫様がいつもより回復が早まるのでな…」

 

 

 え? なにそれ? もしかして、癒し効果でもあるの?

 驚きの真実である。私もいずれ試してみるか…

 

 

「おーい、見ろよ皆! すっげぇデッカイゆっくりがいたぜ!」

 

 

 首領パッチが私たちに呼び掛け、彼に視線が注がれる。

 彼が手に持っているのは体育座りして膝を抱えたモヒカン。

 ゆっくりたちの鳴き真似だろうか「ゆー、ゆー」と鳴いていた。

 

 

「「 それ、モヒカン! 」」

 

 

「おお、スゴいな」

 

 

 ボーボボがモヒカンを受け取り、同じように置いていくと…

 そのモヒカンは布団を捲って、紫の隣で添い寝を始めた。

 

 

「「 …………………… 」」

 

 

 いきなしの行動に呆気に取られる藍を含む私たち女性陣。

 

 

「ええい、このモヒカン! 紫様から離れんか!」

 

 

 布団を捲って乱暴に蹴飛ばす。

 蹴飛ばされて顔面から床に「ぶべらっ !?」と突っ込む。

 

 

「くっくっく… さすが九尾の狐、俺様の変装を見破るとな」

 

 

 地味に痛かったのか… 目の端に涙を浮かべつつ、手で鼻を抑えるものの

 その隙間から鼻血がポタポタと垂れ落ちる。

 

 

「まさか、ゆっくりに化けて侵入してくるとはな…」

 

 

「ちぃっ… 俺が手に持ったときに気づいていれば、どうする? ボーボボ?」

 

 

 どこをどう見たら、コレがゆっくりに見える?

 

 

「まあ待て、俺は手紙を届けに来ただけだ。争う気は毛頭ない」

 

 

 身構える三人に待ったをかけて、懐からピンクの封筒を取り出し首領パッチに手渡す。

 それには丸っこい文字で「迷いの竹林に住んでいる皆様へ」と書かれていた。

 

 

「モヒカンのくせに随分と可愛らしいモノを使っているじゃねぇか――」

 

 

 デフォルトされたクマのシールを剥がして逆さにして振ると…

 鋭いトゲを生やした黒い物体が三つ、首領パッチの手のひらに落ちて――――刺さる。

 

 

「 ウニがァァァっ !? 」

 

 

 薄い封筒のどこに入っていたのか、黒い物体の正体は「ウニ」だった。

 

 

「テメー、よくもこの首領パッチ様に味な真似をしてくれるじゃねぇかァ !?

 ウニ・テニスの的にすっぞ、こらァっ !? 」

 

 

「ひいいぃぃっ !? オレじゃねぇよ! オレはただ渡してこいと言われただけで…」

 

 

 血塗れの手で胸ぐらを掴まれ、モヒカンは慌てて言い訳をする。

 ウニ・テニスって何だろう… まあ、だいたい想像つくが…

 なんというかスゴく痛そう…

 

 

「嫌がらせと決めつけるのは、まだ早いぞ首領パッチ」

 

 

「このウニ旨いぞ?」

 

 

 天の助とボーボボがウニを割って食べていた…

 

 

 ウニ、食っとる…

 

 

「あっ !? ズルいぞ! オレにも食わせろよ!」

 

 

 二人はラケットを握りしめ、ウニを真上に高く放り投げて… 

 落下したところをラケットで、

 

 

 打った。

 

 

「「 ダブル・ウニ・ショット !!!! 」」

 

 

 二つのウニが首領パッチの顔面に突き刺さり、

 

 

「 ギャァァァァァっ !!!? 」

 

 

 さらに次々とウニを打ち込んでいく二人。明らかに食べた数よりも多い。

 力尽き倒れた首領パッチの背にボーボボと天の助が蔑むように眺めて言葉を吐き捨てる。

 

 

「ウニがウニを食おうとしてんじゃねぇよ」

 

 

「ウニはウニらしく、ウニウニしてな… けっ」

 

 

 意味わからん。

 

 

「ウニ以外にも手紙が入ってますよ? これ」

 

 

 メリーが手にしているのは三つ折りにされた薄いピンクの便箋が一枚。

 それを読み上げていく…………

 

 

 

 

 『 拝啓、迷いの竹林の皆様へ御元気でしょうか…?

   此方は隣の国の山賊集団「マッチョが売りの少女」です。

 

 

   此の度、私達は不愉快に思われるでしょうが誠に勝手ながら

   あなた方の知己を人質として誘拐し監禁させて頂きました。

 

 

   御手数ですが解放を御所望ならば、御足労ですが私達の指定する場所へ

   あなた達の仲間と御同伴の上、足を運んで頂くと幸いです。

   その際にはこちらが用意した乗り物をご利用してみてはいかがでしょうか?

 

 

   追伸。一緒に送ったウニは皆さんでお分けください。 』

 

 

 

 

 えーっと… 要は「人質を取った。来い」ってことでいいのかな…?

 ツッコミどころが満載なんですが…

 

 

「山賊集団に珍しく礼儀正しいな… なぁ、ボーボボ?」

 

 

「そうだな天の助。これなら誘拐、監禁も許したくなるな…」

 

 

「「 許すな、許すな 」」

 

 

 手をパタパタと振って拒否を促す私たち。

 ふと気づいたてゐがモヒカンに尋ねる。

 

 

「ところで人質って誰のことなんだい?」

 

 

「いえ、自分はフリーのモヒカンなので詳しいことは何も…」

 

 

 返ってきた返答は期待したものではなかったが…

 フリーのモヒカンって… なに? 

 

 

「流れの何でも屋みたいなもんッス。

 今回は手紙を渡すだけでいい、って仲介人に言われたので…」

 

 

「仲介人ってことは、依頼人の顔は…?」

 

 

「ええ、仕事の斡旋所の決まり事なんで… 見てないッス」

 

 

「ちなみに依頼人から何を貰ったんだい?」

 

 

 彼の荷物が入ったリュックなのだろう、中から…

 細長い抱き枕と、等身大の人形を取り出す。

 どちらも見覚えのある人物が元になっている。

 

 

「ちょっとキワドイてゐちゃん抱き枕と等身大てゐちゃん人形ッス」

 

 

 モヒカンは物凄く真剣な表情で答えた。

 

 

「奈落の底へ捨ててしまえ」

 

 

 突如、開いた穴へ蹴落とされた。

 

 

「オレの宝が――――――――っ !!!?」

 

 

 よほど大事な物だったのだろう…

 何の躊躇いもなく後を追って穴に飛び込み――宝とともに消え去り、

 穴は小さくなっていき… 跡形もなく消え去った

 

 

「ところでボーボボさん?」

 

 

「どうしたメリー?」

 

 

「人質どうしましょうか?」

 

 

 「ふむ」と短く頷くと窓の外へと目を向ける。

 日が沈んで真っ暗になっていた。

 

 

「今日はもう遅いから明日にしよう」

 

 

 非情なことを(のたま)った。

 

 

「ああ、よかった。今から行く――って言ったらどうしようかなと思ってたんですよー」

 

 

 薄情にもメリーは賛同した。

 

 

「それじゃ明日のために早めに休もうかね、姫様?」

 

 

「そだね」

 

 

 そして私たちも同意し、夜がふけていく…

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 思った以上に早く仕上がったので連日投稿。

 ここまで読んでくれて、ありがとうです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。