東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

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 粉状の首領パッチを復活させるための儀式で誤って「りゅうおう」を召喚。
 ボーボボたち三人は戦闘に突入した!

 そんな戦いを横目に輝夜たちは貴族たちをけしかけた人物が先代の帝と知る。
 その発端が「蓬莱の玉の枝」であり、素性を調べるための決闘であった。
 先代の帝たちは目的を達成すると、りゅうおうを彼女たちに押し付けて立ち去り
 そのりゅうおうは突如、現れた「九尾の狐」に倒されたのであった。



八雲を冠する妖怪たち

 

 

 ファンファーレの音楽とともにボーボボ達の頭上に “ LVUP ” の文字が出現。

 「やったー♪」と子供のように、はしゃぎ喜ぶ三人。

 例の如く黒いメッセージウインドウに白文字で文字が書かれていく――

 

 

  力を 失った。

 

 

 弱体化しとる !?

 

 

「「 あれれ―――― !? 」」

 

 

 予想外のことが書かれて思わず声を上げる三人。

 メッセージはそれだけではとどまらず――

 

 

  体力を 失った。

  知恵を 失った。

  信仰を 失った。

  素早さを 失った。

  運を 失った。

 

 

 途中、心が折れたのか全身を白く染め上げ、目は白く濁り、身体が灰の山と化す。

 そこに苔を生やして風化した三つの墓石が――

 「でれでれでれでれ、で~れっ♪」と呪われそうな音楽とともに立つ。

 

 

「「 ………… 」」

 

 

 誰からともなく墓石に合掌。目を閉じて黙る。

 

 

 場に残るのは私たち三人と件の狐の妖獣、妖狐。

 その中でも最高峰と呼ばれている九尾。

 それが目の前で両腕を袖の中に互い違いに入れて静かに佇んでいる。

 

 

 ボーボボたちの攻撃を受けて負傷していたとはいえ…

 あの「りゅうおう」を何の苦もなく打ち倒す――

 未知数だが、かなりの実力者だということは言うまでもない。

 

 

「相手の雰囲気に呑まれないように気をつけた方がいいよ。

 目の前で力を誇示して交渉を有利に運ぶのは強者の常套手段だからね?」

 

 

 てゐの忠告。私というよりもメリーに向けて言っているのだろうが…

 そのメリーがさっきから見ているのは――

 

 

「いえ、それよりも尻尾が気になるんですけど…」

 

 

 その視線は妖狐の背後に稲穂のように揺らめく尻尾に向けられていた。

 それはなんというか、もふもふしていた。後ろ姿だけ見ると毛玉。冬は暖かそうだ。

 その魔力にメリーはやられたのだろう…

 

 

「姫様、それ違うからね。魔力、関係ないからね?」

 

 

 てゐに効いていないのは狐を天敵の一つとしているウサギゆえだろう…

 

 

「試合前にも言ったけど、あの狐の後ろに強いのがいるからね?」

 

 

 噂をすれば、なんとやらか…

 空間に穴が穿(うが)たれ、奥から日傘をさした紫のドレスを着た女性が顕現(けんげん)

 妖狐が影のように後ろにつき従い(うやうや)しく頭を下げる。

 

 

「初めまして、月のお姫様。八雲紫(やくもゆかり)です。

 後ろにいるのは従者の八雲藍(やくもらん)よ」

 

 

 ――とスカートの一部を白手に包まれた指先で軽く摘まんで会釈する。

 随分といいタイミングで現れる。

 きっと、どこかで覗き見してたのだろう。

 

 

「初めまして妖怪さん? アルフレッド・ガーナソン・エルとその仲間よ」

 

 

 得たいの知れない者に馬鹿正直に名乗る必要もないと判断し、偽名を使う。

 相手の名前を使って呪う術が、この世にあると先生が言っていたし…

 

 

「輝夜、てゐ、メリー、ボーボボ、天の助、首領パッチと――」 

 

 

 前もって調べてたわけか…

 

 

「いや、そんな悔しそうに言われても困るんですが…」

 

 

「…というより試合中ずっと名前で呼び合ってたからね。

 むしろ知らない方がおかしいからね?」

 

 

 メリーとてゐが困ったような、呆れたような顔でこちらを見つめる。

 そういえばそうだった。

 

 

 …ん?

 

 

 あの三人は天狗――(あや)の実況で知ったとして…

 私を含む、てゐ、メリーの名はいつ知った?

 

 

 私はまだいい、ある意味騒動の大元。

 てゐは神格を持った妖怪、知る人は知る。…といったところだろう。

 

 

 でもメリーは…? 私たちのことをいつ知った?

 それに今頃出てくるのは、なぜ? 

 

 

 あの兄弟との会話を待って、りゅうおうが弱まるのを待って――

 いや、彼女たちが律儀に待つ必要は? 妖怪が? 理由は?

 

 

 目的はわからないが相手は九尾を従う存在。警戒を強める。

 てゐも無言で頷き、メリーは新たな人物の出現に緊張を高める。

 

 

 私たちの様子を見て彼女は愉しそうに口と目を弧に細めて――

 

 

「あの三人が復活するのを待ちましょうか?

 少々、話の通じない部分のある方たちですが――」

 

 

 あの三人は " 少々 " というレベルでは済まない気がする。

 

 

 ――会話を遮って「ボコッ」と土が盛り上がり墓の下から三人が這い出る。

 その隣には黒い衣服の額に一本角の鬼が一人。目付きがやたらと鋭い。

 

 

「困るんですよ、未来の住人がこの時代に死んでもらっちゃ…」

 

 

「「 すいません。以後、気を付けます 」」

 

 

 (こうべ)を垂れて謝る三人に、不機嫌そうに立ち去る鬼…

 メリーは口をひきつらせて…

 

 

「速攻で未来からやって来たのがバレたんですけど…?」

 

 

 そうだね。 

 

 

「ああ、悪い。ちょっと地獄に行ってた」

 

 

 私たちの心情なぞ関係なしにボーボボが言う。

 地獄って気楽に行けるような所だったかな…?

 

 

「おお、 " ゆかりん " じゃないか… こんな所で会うとはな」

 

 

 親しそうに八雲紫に声をかけ――

 彼女は片眉を上げてひそめ、従者の藍が身構える。 …ゆかりん?

 

 

「未来では私たちは親しい間柄なのかしら?」

 

 

 扇子で顔の半分を覆い隠し、ボーボボたちに冷たい視線を送る。

 ボーボボは「ああ、そうか」とポンと手を叩く。

 自分たちの知る彼女ではないことを理解したのか、短く簡潔に告げる。

 

 

「店主と客の間柄だ」

 

 

「――にしては " ゆかりん " というのは馴れ馴れしいと思いますが?」

 

 

「いろいろ説明したいのは山々なんだが、俺たちは未来から来たからな…」

 

 

 彼女は顎に手を当て、考えるような素振りをしばらく見せてから――

 

 

「知識を持てば、情報を得れば――未来が変わる。

 ゆえに " どこから、どこまで " 話していいものか、と…?」

 

 

 ボーボボは「ああ」と頷き…

 短い会話から推理し導いた――その結論に私は感心して感嘆の声を漏らす。

 今まで出会ったのが力業で解決するような連中ばっかのせいもあるが…

 

 

「何を今さらって感じもするんですけどね」

 

 

 メリーも同意見か、ポツリと漏らす。

 

 

「 " 鬼は嘘を嫌う " ――からして先ほどの鬼が口にした『未来の住人』

 その言葉が嘘偽りのないモノと判断できますが――

 ()()()()()()()()()()()()証拠はございませんよ?」

 

 

 それはそれはとても愉しそうに、嬉しそうに、面白いものを見つけた。

 そんな少女のような()()()()でボーボボに疑問をぶつけてきた。

 …なんとなくだが彼女の性格――その一部だが理解してきた。

 要するに暇なんだろう、ヘタをすれば単に話し相手が欲しかった()()の可能性もありうる。

 

 

「なぁ、ボーボボ… あれなら――写真なら証拠にならないか?」

 

 

 二人のやり取りを今まで黙って見てた天の助が助言を与える。

 「そういえば…」とアフロが開き、中から一枚の紙切れ――写真を取り出した。

 一同がボーボボを中心に集まり、覗きこむように写真を見入る。

 

 

 それは神社の庭、境内(けいだい)で宴会をしている光景。

 三人は勿論のこと、妖怪、天狗、鬼、さらに人間までが参加している。

 その中に紫と藍の姿があった。

 

 

 彼女の膝の上で黒髪に赤いリボンをつけたゆっくりと、

 頭に黄色いアフロを(かぶ)っている紫が写っている。

 

 

「間違いない、私だわ…」

 

 

 手を震わせ驚愕した表情で写真を見つめる。

 

 

 いや、その前に何でアフロ !?

 

 

「オレが売っている物のうちの一つだ。

 ちなみにゆかりんは他にも " ゆっくり霊夢 " を買っている」

 

 

 え、これも売り物(ゆっくり)だったの !?

 っていうか、ゆかりん未来で買うの !?

 

 

「30万円で売れました」

 

 

 たかっ !? 

 

 

 

「輝夜も未来で同じ値段で一体お買い上げになります」

 

 

 私も !?

 

 

「他に " 首領パッチの毛 " なんてのも扱っているぞ」

 

 

 心底いらない!

 

 

「え !? オレ、毛なんてあったけ !? 」

 

 

「あるぞ、ここに」

 

 

 首領パッチの胸の部分(たぶん)を、扉を開けるように開放させると

 中には長い毛がびっしりと生えたハート型の物体が心臓のように「ドクンドクン」と脈を打つ。

 

 

「あら、ヤダ! 私ったらムダ毛の処理を忘れるなんて!

 こんなんじゃヤッ君に会わす顔がないわ…」

 

 

 体の中からその物体を取り出してカミソリで毛を剃り始める。

 毎度のことながら、おかしな身体の作りをしている。

 

 

「まぁ、バカはほっといてだ。それなら十分信用に値するだろ?」

 

 

 バカって…

 

 

「ええ、後ろにある署名から私の力が残っているし… 間違いないわね」

 

 

 手にした写真をヒラヒラと動かす。

 その裏には「永遠の17歳 " ゆかりん " 」と書かれていた。

 

 

「未来への帰還ですが… そこまで気にする必要はないと思うわよ?」

 

 

 疑問に思った私たちに空間に穴を空けて、そこから一枚の金貨を取り出した。

 手のひらに金貨を乗せて――

 

 

「これが起点であり " 今 " であり、枝分かれする " 未来 " への分岐点の始まり…」

 

 

 それを指で(はじ)き、空中で回転する。

 

 

「地面に落ちるまで幾つもの分岐点が生まれる。でも…」

 

 

 金貨が地面に落ちて、乾いた音が響く。

 

 

「最終的には " 裏 " か " 表 " しかない」

 

 

「つまり分岐点は減る? ――ということですか?」と、メリー。

 

 

「余程のアホなことをしない限りは貴方たちがいた未来に辿り着けるでしょう。

 それまでは私の能力か、そこのお姫様の能力で " 時間凍結 " をすれば…」

 

 

 帰れる? 戻れる?

 

 

「なんかクマの冬眠みたいな方法だな」――とは、天の助の弁。

 

 

「妙な例えをするわね貴方、実際その通りだけれど。

 それでも確実とは言えないからやって来たときと同じ方法で戻るのが一番でしょう。

 今いるところが " 裏 " で貴方たちは " 表 " からやって来た可能性もありうるからね?」

 

 

 となると当初の予定通りメリーの「能力」を用いた方法での帰還になるか…

 

 

「あの迷いの竹林に発生した時空の穴をもう一度開くことが安全な方法といえるわ」

 

 

 メリーは自分の目を指差して、

 

 

「ですが私の目には、穴が塞がって見えるんですが?」

 

 

「穴が塞がっているのは何かしらの力が働いて閉じているのでしょう。

 もっともそれに関してはそこのウサギが「幸運」を用いて開けさせようとしていますが

 まだまだ足りないみたいのようね」

 

 

「いくら私でも、さすがに1300年先に続く穴を開けるのは簡単じゃないからね」

 

 

 「ふー、やれやれ」と肩をすくめて首を左右に振る。

 その彼女にメリーはぶつぶつと呟きながら――

 

 

「…『幸運』『奇跡』――てゐさん? もしかして、五つの神宝はそのための特価交換?」

 

 

「そゆこと、でもまだまだ足りないみたいけどね。

 でもいずれは成し遂げて見せるよ。私の名にかけてね?」

 

 

 因幡の白兎は「にしし」と口元に手を当てて笑いながら肯定する。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 ボーボボたちがいると話が進まなくなる可能性があるので、
 途中で退場させたりして話を進ませた。
 ゆかりんの説明に物凄く悩んだよ。
 
 ここまで読んでくれて、ありがとうです。
 コメントとツッコミがあると助かるです。かしこ。

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