東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

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 『ご注文はウナギですか?
  はい、心がぬるぬるするんじゃァァァっ !!』
 『超絶・怒雷蜂』
 ボーボボ、天の助、二人の力と二つの大技で
 遂にフェニックスを倒した首領パッチ。
 しかし代償は大きく天に召されてしまった…



輝夜! 妖怪たちと会う !? …の巻
事の発端は蓬莱の玉の枝


 

 

 怒雷蜂の威力の底上げと引き換えに文字通り全エネルギーを注ぎ込んだのだろう…

 白く燃え尽き…崩れた首領パッチ。

 

 超絶・怒雷蜂をまともに浴びたフェニックスもまた力尽きたのか…

 ゆっくりと倒れ…マットに沈む。

 

 リングの上で立っている者はいなくなった。

 

 

 この場合はどうなるのか…? と実況席の天狗の少女・(あや)に顔を向けると…

 

 

「 勝ちました… 」

 

 

 口の端から血を流しながら、こちらに親指を立てて見せる。

 その足元にはうつ伏せになって倒れている先代の帝・スグル。

 

 

「「 倒しとる !? 」」

 

 

「 引退して現役から退(しりぞ)いたとはいえ… スグルを倒すとは…

 あの娘、只者ではないな… 」

 

 

 ――なんてことを(のたま)うソルジャーさん。

 

 

 いやいや、あんたらの親玉が倒れているんですけど !?

 

 

「 それよりも、この場合はどうなるんですか…?」

 

 

 メリーは天狗の少女に訊ね…

 文は「 えーっと 」と上着のポケットから黒い手帳のような物を取り出して読み上げる。

 

 

「 " 30カウント内に立ち上がった者が勝者 " …と書いてありますね」

 

 

「「 天の助! 」」

 

 

 声をかけるよりも早く駆け寄り、リングに上がろうとするも――

 

 

「 あややや… 天の助選手はダメですね 」

 

 

 …は? 思わず間の抜けた声を出してしまう。

 

 

「 30カウント以上リングの外にいましたからね。

 参加資格とっくに失ってますね 」

 

 

 と懐から一枚の書類をこちらに向けて見せて一部分を指差す。

 

 そこには決闘に関するルールが事細かに書かれており…

 署名のところには関わった貴族たちと

 

 

 母母母ー母・母ー母母 

 悲劇のヒロイン、パチ美 

 ぬの使者

 

 

 見覚えのある筆跡で心当りのある名前が書かれていた。

 

 

「「 天の助ェェェ !? 」」

 

 

「 なぜわかった !? 」

 

 

 むしろなんでこれでバレないと思った !?

 

 

「 心配する必要はない… 」

 

 

 その声はリングの上から聞こえてきた。

 長身にアフロの後ろ姿。

 どうやらボーボボが復活したようだ。

 

 ただしアフロが黒くなって角のように尖った二本の髪を生やしており

 サングラスがビンの底のようなぐるぐるメガネに変わっている。

 

 

「「 微妙に違う!? 」」

 

 

「 俺の名は『W(ダブル)T(ツイン)マーク2セカンドβ(ベータ)改弐式』」

 

 

 2がいっぱい! というかこれもボーボボなの !?

 

 

「 …おれにはわかるぜ。お前ボーボボだろ…?」

 

 

 天の助が涙をぼとぼと流しながらリングの下から見上げている。

 「 ああ 」と返答して頷くボーボボ。

 

 

 リングの上にいるのがボーボボなら…下にある組み立て途中のは…?

 

 

「 待たせたな。俺がこうしてリングに立っている以上この決闘は… 」

 

 

  " 俺たちの勝ちだ!"

 

 

 拳を上に突き上げて勝利宣言をする。

 しかしそこへ水をさすように…

 

 

「 喜んでいるとこ悪いですが…

 ボーボボ選手はフェニックス選手に倒されてから10カウント経過していますので… 」

 

 

 申し訳なさそうに説明する文。

 それにてゐは反論、異議申し立てる。

 

 

「 残念だけどボーボボは倒れてたわけじゃないよ? ちょっとの間…

 " バラバラになってただけ "

 ――というわけでそのルールには適応されないよね?」

 

 

 その説明というか… 言い分もどうかと思うとこだが…

 

 

「 なるほど… それもそうですね… 」

 

 

 反論するかと思いきや、あっさりと受け入れられる。

 ただし一人を除いて…

 

 

「 ふざけるなっ! そんなもの認められるか!」

 

 

 全身を煤で真っ黒にしたフェニックス。

 ある程度、回復したようだが… その足下はふらふらしていておぼつかない。

 

 

「 そんな状態にも関わらず立ち上がるとはな…

 そこまでして『 月 』が欲しいのか?」

 

 

「 当然だ! お前たちだってそうだろうが !? 」

 

 

「 オレは『 月 』が目的でも『 不老不死 』のために戦っているのではない

 オレはオレの仲間のために戦っているにしかすぎない…

 お前はなぜそこまで『 月 』にこだわるのだね? 話してみたまえ 」

 

 

 ボーボボが大きい机とそこにあるゆったりとしたイスに腰かけて葉巻を吸い始める。

 

 

 何その態度 !?

 

 

「 …あれは 20年前のことだ 」

 

 

 フェニックスが過去について話始めたとき――

 

 

「 お前、回想に浸りすぎ―― !!!! 」

 

 

 アフロに青筋を立てながらフェニックスを右ストレートでおもいっくそ殴る。

 

 

「 ぶべらっ !? 」

 

 

「「 ええ――――っ !? 」」

 

 

「 だいたい話はわかった… 」

 

 

 まだなんも言ってなかったよね !?

 

 

「 いいだろう、お前の望んだ通りに今度こそケリをつけてやろう…

 喰らうがいい鼻毛真拳奥義ぃぃぃぃぃっ…!」

 

 

 両手は半開きに、身体は相手に対して側面を見せる半身の構え、

 鼻からは鞭のようにしならせた長い毛が数本。

 

 

「 違う! 俺が言いたいのは―――― 」

 

 

 声に耳を一切貸さず渾身の力を込めた右手を高速で突き上げて

 ――フェニックスは上空に打ち上げられる。

 

 

『 廬山昇龍波(ろざんしょうりゅうは) !! 』

 

 

 伸ばした鼻毛の意味は !?

 

 

 勢いを失い落下。リング――その外に頭から「 げふっ !?( 吐血 ) 」落ちる。

 

 

「 な、納得いかねぇ… 」

 

 

 ですよねー。

 

 

 それを最後に沈黙。気を失う。

 

 

「 天の助… 俺がいない間よくぞ持ち堪えた。

 この勝利はお前がいてこそ成し遂げたといっても過言ではない 」

 

 

「 あれ? 首領パッチは?」

 

 

「 そんなヤツは知らん 」

 

 

 いやいや、どう見ても首領パッチのおかげですよね…?

 

 

 なおもしつこく首領パッチについて追及する私たちに

 ボーボボが本音を漏らす。

 

 

「 やだい! やだい! 首領パッチが活躍したなんて認めたくないやい!」

 

 

 わんわん泣きながら地面に寝っ転がって手足をじたばたさせる。

 

 

 ただのワガママじゃん !? 

 

 

 そんな私たちのやり取りを横に文は血のついたゴングを打ち鳴らし試合終了を告げる。

 コロセウムが歓声に包まれて貴族たちの求婚争奪戦は幕を閉じた。

 

 

 リングの上での決闘に一応の決着がつき… 試合を見届けていた見物客が出ていく。

 今、コロセウム内には負傷者を含んでだが関係者だけが残った。

 その内の一人、ボーボボ( 戻った )は――

 

 

「 不本意だが首領パッチを復活させるか… 」

 

 

 さすがの首領パッチでも今回のダメージは大きかったのか自力では元に戻れず

 大きなタライに粉状の首領パッチと少量の水を入れてゆっくりたちが棒でかき混ぜている。

 ほのかな甘い香りが漂って鼻腔をくすぐる。

 

 

 何この復活方法?

 

 

「 時間かかるんですか?」

 

 

「 大丈夫だメリー。こんなこともあろうかと完成品を用意しておいた!」

 

 

 ――と首領パッチを置く。

 何事もなかったかのように「 やぁ♪ 」片手を上げて声をかけてくる。

 

 

「 コレの意味は !? 」

 

 

 ゆっくりたちがかけ混ぜているタライを指差すメリー。

 

 

「 特に意味はない 」

 

 

「 だったら―― 」

 

 

 「 ――するな… 」と続くのだろうがそのタライから白い煙が沸きだし地面を煙で充満。

 中から紫のローブを纏った、人ならず者が現れる。

 

 

『 りゅうおう が あらわれた 』

 

 

 なんか変なのが出た! そして何このメッセージウィンドウっぽいのは !?

 

 

「 ゆっくりたちがかき混ぜるときに使った棒の動きが

 りゅうおうを呼び出す印を結んだのだろう… 」

 

 

 天の助が冷や汗を垂らしながら件のりゅうおうを見つめる。すんごい偶然。

 りゅうおうが口をパクパクと開き――

 

 

『 わし の みかた に なれば

  せかい の はんぶん を おまえ に やろう 』

 

 

 セリフがメッセージウィンドウ !? そして、どう見てもワナ!

 それに対してボーボボたちの返答は――

 

 

  → はい 

 

 

 迷うことなく「 はい 」を選ぶな!

 

 

『 やみ に そまった

  せかい の はんぶん を な 』

 

 

 竜の頭を模した杖から黒色の霧が噴き出してコロセウム上空が暗黒の雲に覆われる。

 

 

「「 しまった わな か 」」

 

 

 ワナだって… あんたらも !?

 

 

「 今ならまだ間に合う! いくぞ首領パッチ! 天の助!」

 

 

 それぞれ剣士、魔法使い、僧侶の格好をした三人がりゅうおうとやらに挑みかかる。

 

 

 ……ハジケリスト戦闘中。

 

 

「 ボーボボたちが戦っている間に… こちらの方の決着もつけようかね?」

 

 

 ボーボボたちの戦闘を余所にソルジャーの目前。彼に視線を向けて、てゐが対峙する。

 

 

「 ね? 黒幕さん?」

 

 

 視線と視線が交差。沈黙。ボーボボたちの争う音だけが響く。

 身長差ゆえにどうしてもてゐが見上げる形になっているが…

 

 

「 黒幕って… あの貴族たちをけしかけたのが――この人なんですか…?」

 

 

「 …少なくとも根っこの部分で関わっているでしょうね 」

 

 

  " ――いや、黒幕はこの私だ "

 

 

 土を踏みしめる音を鳴らしながら近づくのは――

 

 

「「 先代の帝 !? 」」

 

 

 キン肉スグル。その人。

 天狗――(あや)にゴングで殴られたのか頭から出血しているが… 

 

 

「 なんでまたこんなことを…? 」

 

 

 (いぶか)しげるメリーにスグルは

 腕を組んだりアゴを擦ったりして「 どこから話せばいいのやら… 」

 …と悩みながらも彼は私たちの知っているモノの名を口にした。

 

 

「 事の発端はそちらが所持している『 蓬莱の玉の枝 』かな…?」

 

 

 私が持ってきた月の枝。

 首領パッチの穢れを吸って七色の玉が実ったモノ。

 

 

「 そちらのてゐ殿――白兎明神なら、ご存知だろう… 」

 

 

 蓬莱の玉の枝といい、てゐのことといい… いろいろと調べているようである。

 

 

「 月人が時折、地上の権力者に蓬莱の玉の枝を渡すことと… 」

 

 

 ――その後で蓬莱の玉の枝を求めて戦争が起こることをな…

 

 

「 …… !? 」

 

 

 さすがにそれには予想外だったのか驚くメリー。

 だが彼女を除く面々は知っていたのだろう顔色一つ変えていない。

 

 

 スグルは自分たちが調べたこと… その一部だろう――私たちのことを話始める。

 

 

 空からの落下物。続くド派手な戦闘。

 突如、現れた鉄の建造物。私――輝夜を含む、そこに住まう人外の住民。

 

 

「 ――そして、そこの建物から『 蓬莱の玉の枝 』の反応が強く出た。

 …となれば邪推したくもなるじゃろ?」

 

 

 確かに… 得体の知れない連中が戦争の引き金になるようなモノを持っている。

 統治者として調べるのは当然といえよう…

 

 

「 蓬莱の玉の枝は… 人の手に渡っていれば欲を突き動かし争いに駆り立てる。

 でもそれが人ではない――例えば、月の民ならば?」

 

 

「 戦争を未然に防げる――起きない、と…?」

 

 

「 実際、あんたたち貴族が現れるまで小さなイザコザはあっても…

 こんな争いにまでは発展していない 」

 

 

 山賊、海賊とけっこうド派手な戦闘を引き起こした気がしなくもないが…

 過去に貴族たちとやりあったことがないのも事実か…

 

 

「 それじゃあ… てゐさんは戦争を起こさないために接触してきた?

 あのとき手を貸す代わりに要塞を貰うってのは… ウソ? 建前?」

 

 

「 自分ちの近くに物騒なモノが落ちれば動かないわけにはいかないでしょ?

 要塞の話は本当。誰だってタダ働きはイヤでしょ? それに――

 ――見ず知らずの人間、妖怪を助けるお人好し。 

 ()()()()()接触したって過去に言わなかったけ?」

 

 

 そういえばそんなこともあったわねと… 過去を思い出す。

 

 

「 ウソは言っていないが… 全てを語っているわけでもない、な… 」

 

 

「 そして私たちがあなたたちに教えてやる義理も義務もないよね?」

 

 

 再び相対し静かになるソルジャーとてゐ。

 

 

「 ――かといって力づくではフェニックスたちの二の舞になるか… 」

 

 

 踵を返して後ろを見せる。

 去り行く背中にスグルが声をかける。

 

 

「 兄さん、いいのか?」

 

 

 兄さん? この二人は兄弟?

 

 

「 ああ、この者たちの人となりは知った。ここにいる必要はもうない。

 お前も理解しただろう。

 ここにいる連中は仲間のために動く者たちだ 」

 

 

 そのまま出口へと消えていき…

 

 

「 おぬしらには迷惑をかけた。すまぬ… 」

 

 

 頭を深く下げてスグルもソルジャーのあとを追った。

 

 

「 ……えーっと、このまま帰っていいんでしょうか…?」

 

 

「 んー、いいんじゃないの? アイツら私たちに仕事押しつけていったけど… 」

 

 

 仕事…?

 

 

 疑問に思った私たちにてゐが指差す。

 そこには紫色の鱗の巨大な竜と戦っているボーボボたち。

 

 

 変身しとる…

 

 

 しばらく観戦して眺めていると…

 何の前触れもなく、その竜の上空の空間が縦に裂けて… 穴が開く。

 穴の奥には無数の目玉が浮かび――穴の向こう側からこちらを覗きこむように見ていた。

 

 

 その穴から何者かが飛び出して舞い降りる。

 複数の尻尾を持った白と青を基調にした導師姿の女性。

 

 

 木の葉のようにゆったりした動きから一転。

 右足爪先を下にした蹴りによる急降下。

 上顎に突き刺さり「 …… !? 」声にならない悲鳴を上げて怯み、後ずさる。

 

 

 さらに上顎から後ろへバック転。

 地面に向かって降りていく…

 その手前。胴体部分でピタリと止まり、宙に浮く。

 

 

 手を(かざ)すように胴体にそっと置くと――

 圧縮された見えない力の塊が膨張。胴体が窪む。骨が砕く痛そうな音が耳に入る。

 

 

 白目を剥き、口から体液を垂れ流して… 後ろへ倒れ――

 その背後に巨大な裂け目が生まれ広がり巨大な穴ができあがる。そこへ落ちていく。

 巨大な竜を飲み込むと穴は塞がれて跡形もなく消える。

 

 

 あとには九本の尻尾を持った金髪の短髪の女性が残った。

 

 

 どうやら次のお客様が来たようだ。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 忘れがちだけど、これ東方Projectとボーボボのクロスなのよね。
 「ハーメルンのバイオリン弾き」みたいな
 シリアスとギャグを交ぜた作品を目指しているハズなんだが…

 あとタイトルに「東方かぐや姫」がつきました。
 元ネタはかぐや姫だし「竹取物語」だとピンとこない人いるので…

 コメントとツッコミがあると助かるです。
 ここまで読んでくれて、ありがとうです。
 

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