東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

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 首領パッチは薬の副作用で真っ白に
 仇を討たんとボーボボが出るが…
 「 ここは俺に任せてくれ 」と天の助が出る。
 序盤有利に試合を進めていた天の助だったが――
 マッスル・インフェルノを受けてゼブラとともに遥か上空に…




マッスル・インフェルノと決着

 

 

 人間の肉眼では確認できない遥か上空に二人はいる。

 それをわかりやすく説明するならば矢を上に向けた(つる)の無い弓矢だろうか…?

 ゼブラが両足で天の助の体を弓のように下から反らせているのだ。

 

 

 常人ならば背骨にかかる圧力は計り知れないだろう。

 だが幸いか天の助には " 骨 " というものが存在しない。

 それでも身体にかかる負担は大きいでしょうけど…

 

 

「マッスル・インフィルノはこれで終わりではない。

 今のように相手を上に打ち上げて下からの蹴りで背骨を痛めつける…」

 

 

 上空を見上げているソルジャーが腕を組みつつ私たちに説明する。

 

 

「そのあとに相手の頭を上にして… 天井にぶつける。

 そこまでが第一段階目だ」

  

 

 このコロセウムには天井がない。

 天井との激突によるダメージは避けられる。

 だが、あの高さからの落下した場合。その意味するモノは…

 

 

『ゼブラ選手! 空中で技を解除! 体勢を変えております! これは!?』

 

 

『来るぞ! マッスル・インフィルノのフィニッシュ・ホールドが!』

 

 

 騒がしい放送席の会話を余所にソルジャーが静かに語りかける。

 

 

  " ここから第二段階目に入る "

 

 

 ――と… 

 

 

 ゼブラは両足を離して技を解除。

 解放され空中に投げ出された天の助。

 しかし、思いのほか背中のダメージが大きいのか動けないでいる。

 

 

「よく見ておくんだな… (シャチ)白鷺(しろさぎ)をくわえる瞬間を!」

 

 

 右手で左腕を掴み

 天の助の側面に背中をつけるように横に半回転しながら接近。 

 

 

 そこから背負い投げの要領で

 背中に天の助を乗せるようにして上下逆さまに天の助とともに縦に半回転。

 

 

 直後に身体を海老反りに後ろに反らして曲げる。

 反らした両足で両脚を挟み固定。

 同時に左手で顔面を掴む。

 

 

 頭頂部を地上に向けるように動きを止めて――――

 

 

 その姿は… 体が魚で… 頭が虎で… 常に尾を空に向けているという鯱が…

 獲物の頭をくわえるさまのようで…

 

 

「「鯱が白鷺をくわえたァァァっ!!!!」」

 

 

「インフィルノとは地獄という意味だ。

 水平移動で壁に激突? 屋外だったらどうやってケリをつけるんだ?

 その先に地獄があるのか? 地獄というものはだな――――」

 

 

 

 

  " 真下にあるものなんだよ "

 

 

 

 

 その言葉を合図に…

 

 

 

 

 

 

 ――――落ちる。

 

 

 

 

 

 

『ゼブラ選手、天の助選手の両脚・左腕・頭をクラッチして落ちる~~~!

 このままでは天の助選手の頭が地上と激突してしまう!

 天の助選手このまま終わるのか~~~!?』

 

 

『如何に不死身に近い再生能力を持っていてもただでは済まんぞ…』

 

 

 遥か上空にある二つの影が…

 空気を切る音を鳴らしながら徐々に大きくなっていく。

 

 

 天の助の再生能力は凄まじく、例え(さい)の目に切られても…

 数分、数秒も経たないうちに元通りに復元してしまうほどである。

 

 

 だがそれは怪我の度合いが軽度のときの話。

 

 

 背中をやられ… さらに高所からリングに頭から落下した場合のダメージは…

 死にはしないが確実に意識を失うほどのダメージを受けること請け合いである。

 

 

「天の助ぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

 落ちてくる天の助に向かってボーボボが叫ぶ。

 なにか考えがあるのだろうか…?

 

 

 「こんなこともあろうかと…」とリングを指差す。

 そこには鋭い剣が無数についてあるX字型の置物が中央に置かれていた。

 もう見た目からして危険極まりない。

 

 

 一体いつの間に…

 

 

「パニッシュメントXを用意した!」

 

 

 なにそれ…?

 

 

「安心してそこ(パニッシュメントX)に落ちろ!」

 

 

「「死ぬよ!?」」

 

 

『リングにはパニッシュメントX!

 このまま落ちたら二人とも串刺しになってしまう! どうする!?』

 

 

『二人ともやられると… ボーボボ選手はこのあと二人と戦うはめになるわいな…』

 

 

「いや、リングがこの状態ならば己の身を守るために… 避けるために…

 ゼブラは技を緩める必要がある。場合によっては解ける可能性が生まれる。

 そのためのハッタリか… 」

 

 

 ソルジャーがもっともらしいことを述べて

 ビッグボディがポップコーンを片手に「へぇー」と相槌を打つ。

 

 

 ソルジャー… それ違う。たぶん天の助もろともゼブラを倒すため。

 あと、ビッグボディ。お前はどんだけ食うんだ…

 そしてお前がここにいる必要性があるのか…?

 

 

「ちぃぃぃっ… ならば、コイツを下にすれば済むことだ!」

 

 

 両足・右手のクラッチを外して…

 天の助の顔面を掴んだままの左手を下に――剣への盾として使う。

 

 

 当然、天の助は抗う。どうにかして左手を外そうと試みる。

 それを煩わしいと感じたのか… 何を思ったのか…

 

 

「金をやるから落ちろ!」

 

 

 はい…?

 

 

「そんなんで落ちるヤツがいるか!?」

 

 

 怒りを露にごもっともな意見を言う天の助。

 

 

「金銀財宝に屋敷に美女をつけるぞ!

 さらにところてんを広める手伝いもするぞ! どうだ!?」

 

 

 動きを止めて地上をチラッと見る。

 

 

 悩むな!

 

 

「騙されるな天の助! 俺たちが負ければ輝夜はソイツらの嫁になるんだぞ!?」

 

 

「「じゃあ、それ(パニッシュメントX)を退けろ!」」

 

 

 ボーボボは左手を左耳に…

 人差し指を立てた右手をぐるぐる回して「聞こえてません」のポーズ。

 

 

「おいっ!? アイツ本当にお前の仲間なのか!?」

 

 

「「当然だ! 俺たちを誰だと思っている!!」」

 

 

『首領パッチ・バズーカ!』

 

 

 ボーボボが意識を失っている首領パッチを

 彼の身体を伸ばして左腕に巻きつけ弾力性のあるコイル状にする。

 弓の弦を引くように足を引っ張り… そして――――

 

 

「これが俺たちの友情パワーだ!」

 

 

 足を掴んでいた右手を放し――バネの戻る力で射出。

 一直線に空を駆け抜けていき――ゼブラの背中に命中。

 衝撃と痛みで天の助を放してしまう。

 

 

「バカな… あの男はコイツ(天の助)を見限ったハズでは…!?」

 

 

 リングへと落ちていくゼブラ。

 ゼブラの上空には首領パッチを右手に掲げた天の助。

 その首領パッチは身体が「エ」の字に変化。上部には鋭いトゲがついている。

 

 

 なんか有り得ない形になっとる!?

 

 

「これが良くも悪くも俺たちなのさ…」

 

 

 自虐的な笑みを浮かべてから高速回転する天の助。

 首領パッチをゼブラに向けながら螺旋を描いて落ちていく。

 その軌跡は縦に細長い風の渦を――竜巻を造り出す。

 そして… 狙い違わず竜巻の先端、首領パッチの上部がゼブラの背中に突き刺さる。

 

 

『 双龍牙斬烈破(そうりゅうがざんれっぱ)バリエーション・パート2! 月からカグヤ落とし!! 』

 

 

 なんかスゴい技出したァァァ! それに何その技の名前!?

 

 

『ゼブラ選手たまらず絶叫! これは痛い! さらに真下に直行!』

 

 

『これで決着が着くぞ…!』

 

 

 技の勢いは尚も止まらない。リングにあるパニッシュメントXへと落ちていく。

 

 

「長かった戦いよ! さらばだ!!」

 

 

 まだ一人目ですけどォォォ!?

 

 

 ゼブラは胸部からリングに置かれたオブジェと激突。

 木の折れる音。金属が砕く音を響かせて破壊。

 剣の欠片と木片が辺りに散らばり、砂塵が空中に舞い二人を覆い隠す。

 

 

 やがて一陣の風が吹いて砂塵を運び去っていく。

 砂塵が消え去ったあとには…

 

 

 身体中に破片が刺さり観客席に背中を見せて倒れているゼブラと

 片膝をマットにつきながらもリングに立っている天の助。

 その背中にはゼブラによってつけられたと思われる傷跡が「ぬ」を象っていた。

 

 

 何その傷痕!?

 

 

『ゼブラ選手ダウ~~~ン! ピクリとも動けません!』

 

 

『これは誰が見ても勝敗は明らかじゃのぉ…』

 

 

「だが、ゼブラは良い仕事をしてくれた…」

 

 

 ロープを(また)いで入ってきたのはフェニックス。

 身構える天の助だが… 彼の横を素通りしてゼブラの元へ――

 

 

「ビッグボディ、コイツ(ゼブラ)はもう戦えない。天幕のとこで休ませてやれ…

 ついでにキズを癒やすために薬を飲ませてやった方がいいかもしれんなァ~?」

 

 

 倒れているゼブラを上に蹴り上げて…

 そのあとを追って跳躍。追い越して。身体を回転しつつ――

 

 

『デスボディ・シュート!』

 

 

 蹴りを――ミドルキックを叩き込みリングの外へと飛ばす。

 

 

 デスボディ。死体って… 本人(ゼブラ)まだ生きてますけど…?

 

 

 ビッグボディが両手で受け止め脇に抱えて例のゆっくりたちがいる天幕へ。

 蹴りで意識を取り戻したのか――

 

 

「放せビッグボディ! あの毒薬だけはやめろ!!」

 

 

「だけどそのキズだとゼブラ死ぬ。俺、悲しむ。おろろーん」

 

 

 コーラを片手にストローでちゅーちゅー吸いながら天幕の中へと入っていく。

 

 

「どこが悲しんでいるんだ!?」

 

 

「40本あるけど、どれがいい?」

 

 

「話を無視するな! 増えてるぞ! おい!? あっ!?…あばばばばば――――…」

 

 

 ビッグボディが後ろからゼブラを羽交い締めにして

 ゆっくりたちがどんどん口の中に流し込んでいく。

 

 

 そして…

 

 

 ――燃え尽きたぜ… 真っ白にな…

 

 

 全身を真っ白に変色したゼブラがイスに腰かけて微笑んでいる。

 縞模様も白くなっているので、ただの白い変な人に…

 一体どこから紛れ込んだのか一匹のシマウマが彼の近くで佇んでいる。何アレ?

 

 

「ゼブラぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 両手両膝を地面につけて涙するビッグボディ。 

 

 

「まさか、こんなことになるなんて…」

 

 

 いや絶対わかってて、やったよね…?

 

 

『ゼブラ選手、一命を取り留めたようですが…』

 

 

『試合復帰は無理ですな… それ以前に第三者(ビッグボディ)の手を借りましたからなァ…』

 

 

 部外者って… タツノオトシゴとシャチはいいのか…?

 タツノオトシゴは武器でギリギリいいとして…

 

 

「シャチはリング入りする前に死んましたから…

 でもタツノオトシゴが武器扱いって… 無理がありますよね?」

 

 

 メリーが頬をぽりぽり掻きながら話しかけてくる。

 そういえばリングの外で死んでたわね。シャチ軍曹。

 

 

 コロセウムの空にはシャチ軍曹の上半身姿。

 こちらの視線に気づいたのかヒレをぶんぶんと振る。

 

 

 まだいるし… とりあえず手を振って返す。 

 すると恥ずかしいのか顔を紅くして視線を逸らす。

 

 

『これで二対二になりましたが…』

 

 

『天の助選手はゼブラ選手との試合でぼろぼろじゃ』

 

 

『おーっと! フェニックス選手、動き出しました!』 

 

 

 リングの真上に飛び上がり… リング中央に頭を下に落ちる。

 しかし、その先には天の助の姿はなく――激突。

 対角線上にマットに亀裂が入る。

 

 

『フェニックス選手のフライングヘッドバッドが誤爆だ~~~!?』

 

 

『彼にしては珍しいのゥ…』

 

 

 すぐさまソルジャーが実況者たちのコメントを否定する。

 

 

「いや違う。あれはわざとだ――――」

 

 

 

 

  " あれは次の技へと繋ぐための下準備だ!"

 

 

 

 

 ソルジャーの言葉通りフェニックスが次の行動を起こす。

 前を向きつつ後方に跳び――ロープを飛び越えてリングの外へ。

 そして境目にある亀裂を谷にしてリングの端と端が盛り上がり…

 

 

「「 残虐技キャンパス・プレッサー!! 」」

 

 

 リング外からマリポーサとフェニックスが

 両端をドロップキックで持ち上げ… 二つ折りにして…

 中にいる天の助ごと押し潰す。

 

 

「「天の助ぇぇぇぇぇ!?」」

 

 

 彼の名を呼ぶ叫び声が木霊(こだま)となってコロセウムに反響する。

 

 




 

 (´・ω・)にゃもし。

 今回は文字数、他の話数と比べると少ない。
 私が言うのもなんだが運命の五王子。手強いな。
 見た目と名前が一緒なだけで別人なのだが…

 ちなみに今回出てきたマッスル・インフェルノは
 非公認のフリーソフト『 マッスルファイト 』が元ネタ。
 このマッスル・インフェルノを初めて見たとき思わず身震いしたよ。
 いつかコレを小説にしたいなァと思っていました。
 余談ですが原作者は存在を知っているようです。

 コメントとツッコミがあると助かります。
 ここまで読んでくれてアリガトウです。

 ※カッコと空白部分を修正したよ。

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