東方かぐや姫 竹取ボーボボの物語   作:にゃもし。

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 浦島太郎率いる陸の上なのに海賊襲撃事件は終わった。
 おツルの説得のお陰で浦島太郎は改心…? 
 元海賊になったモヒカンたちに首領パッチカーを牽かせて
 ボーボボたちは迷いの竹林へと向かうが…
 



輝夜! 貴族たちと遭遇する !? …の巻
貴族たちとその護衛


 

 

 迷いの竹林に帰る道中。その途中――

 念には念を入れて浦島太郎率いる… いや、今はおツルさん率いる元海賊たちかな…?

 彼らとは別れた。別れ間際、私はおツルさんに――――

 

 

 月人を――――私たちを恨んでいないのですか?

 300年以上もあなたたち夫婦を引き離した月の住民を…

 

 

 気がつけば口に出して訊いていた。

 彼女は困った顔して頬を掻きながら…

 

 

 過去は大事だよ。今があるのは過去があるお陰だからね。

 でも、過去に(こだわ)りすぎて今を(ないがし)ろにすべきじゃない。

 それに恨み恨まれるだったら… アタシら海賊もそうだよ。

 アタシらにアンタらをどうこういう資格はないよ。それにアンタらは――――

 

 

「恩人だよ。アタシら夫婦のね。それで十分だろ?」

 

 

 彼女はそういい残して去っていた。

 なんというか… 女傑。そこら辺の男よりも男らしい。男前である。

 彼女が女として生まれたのが悔やまれる。

 

 

 私たちは遠ざかる彼らの姿が見えなくなるまでずっと眺めていた。

 未来と過去の違いこそあるが浦島太郎と同じく神隠しに遭ったボーボボたちとメリーは

 胸中にどんな思いを抱いているのか…

 

 

   □ 少女待機中 □

 

 

 天の助がイナバたちを呼びに行って、どれくらい経ったのか

 いい加減待つのも飽きてきた頃…

 フロントガラスの遥か前方。土煙を上げて爆走する小さな影の大群が映し出される。

 

 

 天の助か…? 近づく影が黙視できる位置までくると、その正体を(あらわ)にした。

 先頭は二輪の荷車を前に押しながら進む二人のイナバ。その後ろにはイナバたちの集団。

 荷台の上には身体をくの字に曲げた天の助が突っ伏していて、その背には大量の矢が…

 

 

「「いったい何があった!? 天の助!」」

 

 

 首領パッチカーの横まで来ると持ち手部分を上に押し上げて、天の助を乱暴に振り落とす。

 地面を数回転がり仰向けになって止まる。その顔は白目を剥いていて気を失っていた。

 

 

 何があったのか確認するため車内を飛び出し天の助の元へ駆け寄る一同。

 ボーボボが肩を二、三度ほど横に揺さぶると意識を取り戻し…

 

 

 戻ったところを「よし!」と、確認したのち左右の頬をひっぱたいて

 さらに「おらぁ!」気合一閃からのボディブロー。鈍い音が響く。

 「うごぉぉ…」お腹を押さえながら身体をプルプルと震わせて(うずくま)る天の助。

 

 

「ふぅ… 意識を取り戻したようだ」

 

 

 そう言いつつ、額の汗を腕で拭う。

 

 

「「明らかに意識が戻っているのを知っててやってましたよね!?」」

 

 

 背中には矢を刺したまま満身創痍でボロボロにながらも

 天の助は竹林で遭ったことを弱々しく話す。

 

 

「妖怪に……間違えられて……撃たれた…」

 

 

 一同「あー」と納得した。パッと見ても妖怪にしか見えない天の助。

 というよりも首領パッチ同様によくわからん。本人はところてんだと言っているが…

 いつもは一緒に行動しているせいか、いきなり弓矢で射られることはないのだが…

 

 

 よくよく考えれば貴族がいれば当然――それを守る護衛が居てもおかしくはない。

 ましてや私たちが拠点にしているのは迷いの竹林と呼ばれているところ。

 ちょっと前までは山賊やら人喰い妖怪がいた場所である。

 そんな危険極まりない物騒なとこに貴族が一人で行くわけがない。

 

 

「でもこれは使えるかもしれないわね」

 

 

 右手の人差し指と親指でL字を作って、アゴに当てながらてゐがにんまりと笑う。

 

 

   □ 少女移動中 □

 

 

 竹林を目指して移動する一団がいる。私たち一行だ。

 家一軒ほどの大きさもある乗り物を人間よりも小さな集団が引っ張って進んでいる。

 引っ張っているのは人ではない。

 

 

 小さな少女にウサギの耳を生やしたような妖怪――イナバたちが肩に縄を引っ掛けて

 沈痛な表情を下に向けながら進み…

 

 

 ボーボボのアフロに住んでいる頭だけの妖怪――ゆっくりたちは身体に縄をくくりつけて

 カエルのように跳ねながら進んでいる。全員が全員とも涙を流しながら…

 

 

 人間よりも小さな身体の彼女たちに牽かせて大丈夫なのかと思ったが… 

 ここに来る少し前、てゐに訊いてみると――

 

 

「忘れたのかい? コイツらは妖怪だよ? 

 んで、妖怪は人間よりも身体能力は高いんだよ」

 

 

 その場にいなかったイナバはともかく…

 ゆっくりたちが海賊たちをモノの数分で全滅させたことを思い出す。

 なるほどと、海賊たちよりも早く進む彼女たちを見てそう思う。

 

 

 そして、迷い竹林の入り口付近にて…

 

 

 その集団の先を私が無表情で静かに前を見て歩き… 

 私の横を歩くのは天の助の遺影を胸に抱いて子供のように泣きじゃくる首領パッチ。

 

 

 そして一団の先頭には黄色いアフロ頭の長身の男ボーボボ。

 その腕の中には背中に矢が突き刺さり、目を眠るように閉じた穏やかな表情の天の助。

 サングラスで表情が読みにくいが… 怒りに満ちていることだけは肌で感じ取れる。

 

 

 ちなみに他の面々は車内にいて隠れながら外の様子を(うかが)っている。

 てゐ曰く姫様の美しさを際立てる布陣…?

 

 

 私たち一行の先には例の貴族たちだろうか、雅な格好に身を包んだ男たちと

 彼らを守る武装した集団が竹林の入り口でたむろしている。

 

 

 私たちが近づくと水が二つに割れるように人垣が二つに別れていき…

 その間にできた道を私たちはゆっくりと歩き… 進む。

 場を静寂が支配し… 土を踏みしめる足音と風の音だけが流れる。

 

 

 自慢じゃないが私は人前に出ることはほとんどない。

 月にいたときも自宅から外へは出ることはなく。

 このように大勢の人を目にすることは… 初めてであり…

 正直、内面では大いに戸惑っている。

 

 

 無論、てゐにもそのことは伝えたのだが… 

 姫様は黙って歩くだけでいい。…と言われ渋々承諾し、現在に至る。

 

 

 場の空気がそうさせないのか、その場にいる誰もが私たちに声をかけることができずにいる。

 やがて貴族の一人が声をかけるために近寄ってくる。しかし、その前に――――

 

 

「うおぉぉぉぉぉっ! 天の助ぇぇぇぇぇっ!」

 

 

 突如、ボーボボが腹の底から声を出し、周囲の貴族と取り巻きたちをビクッと驚かせる。

 

 

「姫様の大事な仲間の天の助をぉぉぉ! いったい誰がぁぁぁっ!? こんなことをぉぉぉ!?

 姫様の大事な仲間の天の助をぉぉぉ! こんなになるまでボロボロにしやがってぇぇぇ!」

 

 

 ボロボロにしたのはあなた(ボーボボ)でしょうが… と喉元まで出かかっていたが――飲み込む。

 あと、姫様という言葉を連呼しないでほしい。

 目立つのは嫌いではないが… 晒し者となると話は別になる。

 

 

 周囲の視線を感じて左右の人垣に目を向けると――

 弓矢を持った連中が私の視線に気づいたのか慌てて背中の後ろに隠す。

 天の助を射ったのはこの連中で間違いないようだ。

 

 

 目的の人物の親しい者を射った手前

 さすがの貴族でも求婚を… という話などやりづらいのだろう。

 

 

 だが世の中には面の皮が分厚いのがいるようでカエルとブタを足したような貴族が

 足音をドスドスと立てながら――――

 

 

「おい! そこの女、マロと…」

 

 

「お前が犯人かぁぁぁっ!?」

 

 

 言い終える前にボーボボの鼻毛真拳を受けて空に舞い上がり…

 顔面を下にして落下。地面に横たわり口から泡を吹いて動かなくなる。

 あーあ、貴族をやっちゃったよ、この人… でもよくやった。心の中で賛辞を送る。

 

 

「テメー!? よくもカエルブタを!?」

 

 

 味方にもカエルブタと言われてる… 本名なのかアダ名なのか… たぶん悪口。

 カエルブタの取り巻きの護衛だろう、武装した集団の一部がボーボボに襲いかかる。

 ボーボボは天の助の右足を掴むと――――

 

 

「ちぇすとぉぉぉぉぉっ!」

 

 

 取り巻きの一人に勢いよく上から振り下ろし――頭と頭がぶつかり、痛そうな音を鳴らす。

 さらに天の助の両足を両手で掴んでコマのように回転し始める。

 周囲にいた取り巻きたちを天の助の身体で撥ね飛ばす。

 

 

 埒があかないと判断した数人が刀を抜いて駆け寄る。

 ボーボボは回転したまま掴んでいた手を放し――――回転の勢いを乗せた天の助が滑空。

 武装した取り巻き数人と派手な音を立てて激突。団子状態になって天の助と一緒に沈黙する。

 

 

「「仲間を武器にしたぁぁぁっ!?」」

 

 

 傍観していた貴族たちと武装集団が驚き、声を上げるが――

 私たちにとっては見慣れた光景なのでスルー。

 そしてトドメと言わんばかりに数本の鼻毛を伸ばして構えを取ると…

 

 

「鼻毛真拳奥義ぃぃぃぃぃ…」

 

 

 数本の鼻毛をムチのようにしならせて――――

 

 

『キノコタケノコ戦争勃発!!』

 

 

 蛇のようにうねりながら取り巻きたちに伸びていき、上空に打ち上げる。

 やがて地面に向かって落下。時間差を置いて次々と激突。

 辺りは瀕死の貴族と取り巻きたちで埋め尽くされる。

 

 

 立ち上がる者がいないことを確認したあと…

 倒れているボロボロの天の助を腕で抱き上げて

 涙を流しながら小さく「許さん… 許さんぞ…」と呟いたあとに―――― 

 

 

「毛狩り隊のヤツらめぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

 それは魂の慟哭。頭上に向かって大声を発し、空にボーボボの声が響き渡る。

 

 

「「ええええぇぇぇっ!?」」

 

 

 驚く声で辺りは騒然。次に私の方に視線を向ける。その顔は…

 「毛狩り隊って何!? ボロボロにしたのはアイツだよな!?」

 と書いてあるのが見てとれる。すいません。わかりません。

 

 

「なぁ、お前らもそう思うよな!?」

 

 

 ボーボボがいまだ困惑している貴族たちに同意を求める。

 貴族たちは貴族同士で視線を送り合うと… 一斉に首を縦にコクコクと振る。

 なんかよくわからんが同意しておこう。そんな感じである。

 

 

 私たちは呆気に取られた貴族たちを尻目に迷いの竹林に入っていく。

 

 

   □ 少女移動中 □

 

 

 迷いの竹林に入って数刻。貴族たちの姿が見えなくなった頃。

 ボーボボが一言「重い」と言って天の助を下に落とす。

 

 

 背中に刺さってある矢が地面に落ちた際に接触し、押し出す形で体の中へと食い込み

 それが物凄く痛いのか体を弓なりに反らせてブリッジ体勢。

 

 

 その後、体を横に引っくり返して背中の矢を無言で何度も指差す。

 どうやら抜いてほしいようだ。 

 

 

 私は無言で能力を解放。周りの時の流れが遅くなり… 私だけが通常通りに動く。

 その流れの違う時間の中を天の助の背中の矢を一本ずつ引き抜いていき…

 全ての矢を抜いたあとに能力を解除。なんだろう、この能力の無駄遣いした感じは…

 

 

「これで貴族連中が減ってくれると助かるんだけどね」

 

 

 私の隣にはいつの間にかてゐが矢を手に取って(かが)んでいた。

 ちなみに矢は魔を滅する破魔矢の一種らしく、当たり所が悪ければ弱小妖怪は滅びるそうな。

 妖怪じゃないから無事だったのか、強力な妖怪だから平気だったのか… 

 ますます、よくわからん連中である。

 

 

「あの、てゐ様? 村が心配ですのでここらでお(いとま)を頂きたいのですが…」

 

 

「ん? ああ、わかったよ。手下の一人に案内させるよ」

 

 

「すいません。助かります」

 

 

 イナバの一人をお供に竹林の外へと出ていく村長トモヒロ。

 見た目が見た目だけに娘を連れて歩いている父親に見えなくもない。なんか微笑ましい。

 場合によっては誘拐犯、もしくは人さらいにも見えるが…

 

 

 でも、あの小さな妖怪が竹林の外へ出ていって大丈夫なのか…?

 今はあの貴族たちのせいで武装した連中がいるし…

 しかし私の心配を余所にてゐは――――

 

 

「大丈夫だよ。ウサミミさえなければ、幼女だからね。

 そんな姿をしたモノをいきなし攻撃してくるようなヤツはほとんどいないよ。

 それに私らイナバは逃げ足は速いし、隠れるのも得意だからね」

 

 

 それに竹林でウサギ妖怪を見つけたら小さな幸せが手に入る。

 ――という噂を流しているからね? 

 

 

 余談だがここ――迷いの竹林では… この場所に入り迷った人間はイナバたちの案内の下

 外へ送り返している。ただし、善人に限る――だが。

 他の人たちはどうか知らないが、自分たちが住んでいるところで死人が出たら

 気分の良いものではない。ボーボボたち… とくにメリーが強く要望を出したのだ。

 

 

 そしてイナバたちは迷いの竹林から外へ出ることはほとんどない。

 イナバに会いに行くには竹林へ入らなければならず… 入れば当然、迷い… 

 迷ったところをイナバたちが発見して外へ返す。そして感謝されると――

 

 

「お願いした私が言うのもなんですが… 一種のマッチポンプ。自作自演ですよね、それ?」

 

 

「みんなが幸せになれるんだから、いいんじゃないの?」

 

 

 首領パッチカーから降りてきたのかメリーがジト目で見つめ、てゐがさらりと流す。

 少し先には私たちのオレンジ色の巨大な建物、無敵要塞ザイガスが見えてきた。

 

 




 

 強引な貴族と取り巻きたちを蹴倒し、張り倒し、殴り倒し
 ボーボボたちは迷いの竹林へと帰ってきた!


   □ □ □


 (´・ω・)にゃもし。

 ボーボボの身長はアフロを含むと201cmらしい。そして声はDIO様である。
 ちなみに天の助は冥王レイリー。
 ゴメンね。首領パッチは首領パッチしか思い付かない…

 次回は五人の求婚者ということであの方たちを出す予定。
 屈強な体つきの5人組。

 よく月、金に投稿しているので違う曜日に投稿しよかなと思っている。
 コメントとツッコミあると助かるです♠

 ※カッコと空白部分を修正しました。

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