病みつき物語   作:勠b

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病みつきセイバー~合流1~

彼女、ジャンヌダルクと出会ってすぐの話し。

俺は懺悔室で彼女の話を聞いた。

 

サーヴァント

 

その名前はセイバーから聞いたことがある。

かつての英雄がどうのこうの……

正直な話し、詳しくは理解していない。

いや、できない。

現実場馴れしすぎているからだ。

それでも、目の前の彼女からも同じ言葉を聞くということは実在する話しになるんだろう。

 

そのサーヴァントが今問題になっているらしい。

ジャンヌダルクはそれを止めるために俺の前に現れたとか……

問題というのは単純明快。

英雄に相応しくない行いを起こす可能性があるから。

セイバーはそれこそ歴史の教科書に名を乗せる程の偉人だ。

 

そんな彼女が一人の男を愛すために、愛されるために、愛されたいがために暴力を振るう行為に問題があるとのこと。

もしも仮にセイバーが俺を……俺を傷つけたとしてもそれを咎めるものはいない。

かといって、その可能性があるのに放置しておくわけにはいかない。

だからこそ、公平なる者としてルーラーであるジャンヌが助けに来てくれた。

 

……らしい。

正直、未だに理解はできていない。

それでも、時は進むんだ。

無知な俺を一人置いて

英雄達は動き出すんだ。

 

 

 

━━━━

「それでは、今後の話をしましょう」

古びた教会を共にでて、共に街へと戻るために散歩を始めて直ぐにジャンヌは俺に声をかける。

「先ずは当面の衣食住に関してです」

「は?」

急な発言に思わず気の抜いた返事をしてしまう。

そんな反応に疑問を持ったのか、ジャンヌは首をかしげる。

「別に俺は住んでる場所はあるよ。狭いアパートだけど……食事と服だって問題はないけど」

「貴方は大丈夫ですが、私が困ります」

「……?」

「これからは二人分の食費に服を買うことになるんですから」

「はぁ!?」

急な問題発言に思わず足を止める。

ジャンヌは俺の顔を覗きつつ共に足どりを止めると。

「これから貴方を守るのですから、朝から晩まで私が傍にいます。そうしないと、守れませんから」

 

守る。

そのために共にいる。

それは分かる……分かるけど。

 

「一緒に住むって言われてもそんな急に……それに、服だって……」

急な話に戸惑っているとジャンヌは微笑む。

「では、買い物にいきましょう」

「買い物って……俺は何もいってない」

「色々とこの世界の物を買ってみたいんです、つきあってください」

「一人で買いにいけばいいだろ」

「その間に貴方の元にセイバーが現れたら誰が貴方を守るんですか?」

「それは……」

 

何も言えない。

ジャンヌがいない間にセイバーに会ったら……それは、もう見に染みている答えだ。

俺が口を開く前に身体中の傷痕に痛みが走る。

顔が苦痛で歪むとジャンヌは優しく頬を撫でてくれた。

 

「そのために、私と買い物に行きましょう」

 

俺は何も言わずに歩くことしかできなかった。

そんな俺の手をジャンヌは優しく握る。

手から伝わる優しい温もりに何とも言えない心よちさを感じながらゆっくりと歩いていった。

 

 

 

━━━━━

二人して何も言わずに歩くこと数時間。

日も落ちかけてきた夕暮れの中、俺達は古びた商店街へと来た。

ここにはよく来る。

人気が少ないからこそ、セイバーに会わないからだ。

そう思っていた。

 

「奇遇じゃないか」

 

商店街に一歩踏み出すと同時に聞きなれた声が後ろから聞こえた。

ジャンヌはその声に反応して振り向くが、対する俺は振り向く事ができない。

身体中が震える。

怯えているのだ。

聞き慣れた声の主に。

彼女に

 

「そなたが中々姿を表さないと思えば、まさか余以外の女を連れて買い物とはな……」

 

地を這うような冷たい言葉と共に背中ならでも感じる冷たくて痛い視線に俺は顔を伏せることしかできない。

逃げなきゃ。

頭の中にその言葉が埋まる。

だが、身体は動かない。

逃げれないことを知ってるから。

 

「どうした?

余が話しかけているのに顔を見せないのか?

そなたはそんなにも不躾な輩とはな

それとも、横にいる余に似た女と居ることに対する言い訳でも考えてるのか?

ならば、問題ない」

「何が問題ないのすか?」

 

俺の変わりにジャンヌが応える。

そんな彼女は俺の手を更に強く握りしめてくれた。

落ち着いて下さい

まるで、そう言われてるように感じると、少しだけだが気持ちは落ち着いた。

俺はゆっくりと振り向く。

目の前にいるセイバーを見るために。

 

「決まっているだろう」

 

得意気そうな顔で話すセイバー。

彼女は赤い服に身を包んだ英雄

ネロ・クラウディウス

 

「余と共に歩くのが恐れ多いから余に似た歩いて練習だろう」

 

彼女は優しく微笑みながら言う。

冷たい口調で

冷たい目線を俺の手を見ながら。

 

「だが、練習にしては見過ごせない。

そなたの手は余と繋ぐためにあるというのに、何故他の女と繋ぐ?

こんなにも余は欲していると言うのに、そなたは余を置いて他の女と買い物か?

何時もは一人で来るのにな

何時もよりも3時間以上遅れて来るのはその女が理由なのか?」

「何時もって……何で知ってるんだよ」

「決まっているだろう、余は何時でもそなたの事を見ているのだから」

 

その言葉を聞くと吐き気が襲う。

そんな俺を心配してか、ジャンヌは優しく俺の頭を撫でてくれた。

 

「何時も見ていたというのに、私が彼と出会ったことは知らないのですか」

「ここ最近この街から出られないのはそなたの仕業か?

おかげでそなたのような気色悪い虫が美しい花に集ることになるとは」

「えぇ、これ以上彼に被害が起こらないようにするための配慮です」

「被害?そなたのような者が余とこやつの邪魔をする方が被害ではないのか?」

「彼は嫌がっています。もう、付きまとうのは止めなさい」

「嫌がっているはずがなかろう。こやつと余は相思相愛の中なのだからな」

「……」

「……」

 

お互いに会話が進まない。

平行線がたどり着いた先は重い沈黙だった。

人気がない商店街に漂う重苦しい沈黙。

それを崩したのは、意外にもジャンヌだった。

 

「これ以上の説得は無理のようですね」

 

その言葉と共に何処からともなく現れた大きな旗を手にするジャンヌ。

それに応じるようにネロも大剣を手に取った。

 

「これ以上そなたを汚すものは許さぬ。

美しい花は美しい花瓶に飾ってこそ映えるもの。

少し早いが、そなたを飾る時が来たようだ。

そのために、そなたの周りを蝕む虫を叩くとしよう。

美しいそなたを汚さないように。

迅速に、確実に、徹底的に

余とそなたのために戦おう。

そなたも応援するといい。

そなたのための戦いを」

 

目前にいる武器を構えたジャンヌを無視して、微笑みながら語るネロに恐怖を覚える。

温もりが消えかけてくる手を必死に握りしめる。

暖かい温もりを忘れる前に。

 

互いに言い残した言葉は無くなったのだろうか。

再び沈黙が周りを包み込む。

そして━━━━

激しい音が俺の世界を包む。

数秒に渡る音が聞こえると同時に二人の互いの武器をぶつけあっていた。

過程なんて見えなかった。

見えたのは結果のみ。

 

どうすればいいのだろうか。

二度三度と続く激音に包まれている中、俺は何も出来ずに立ち尽くす事しかできなかった。

そんな中、気がつくと俺の身体は急な圧を感じる。

俺は一瞬にして何故か宙を浮いていた。

 

「お団子食べに来たらあなたに会えるなんて幸運ですね。

日頃の行いがいいからですかね?」

 

いや、浮かんでいたんじゃない。

宙に運ばれていた。だ。

「 ふふっ、2日振りに会えるなんて幸運ですね。

最近一緒にお団子食べてませんし、せっかくだから積る話でもしながらお団子でも食べませんか?」

 

男一人を軽々と軽々と抱えながら微笑む彼女。

美しいピンクの着物を着こなした彼女の横顔は俺が見知った顔。

 

「いいですよね、沖田さんがたまたま会わなかったらあなたは今頃大怪我する所だったんですから。

そんな命の恩人の頼みを聞いてくれますよね、やさしいあなたなら。

取って食おうなんてしませんよ、取るのも食べるのもお団子だけにしますから。

久しぶりに会ったんですから、それぐらいの我が儘聞いてくださいよ」

 

優しく微笑む横顔に俺は安堵のため息をつく。

 

「ありがとう、沖田」

 

彼女、沖田総司に感謝の言葉を述べながら。

 




暫くは文量短めでなるべく早めの更新を頑張りたいと思います。

一話完結の話がいいか、数話かかるストーリーがいいか、どちらがお好みでしょうか?

  • 一話完結
  • ストーリー物

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