ブラック・ブレット 紅き守り手   作:フルフル真

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pixivの方にもこれとは別に俺ガイルのオリ主作品を投稿しており、こっちを投稿したらつぎはpixivの方というやり方をしているので登校が遅れてますが良ければこの作品もこのまま愛してやってください(苦笑)

それではVSアルデバラン編、第3話をお楽しみくださいm(__)m

駄文に注意でござる(^_^;)


第3話

 

様々な質問に対応した蓮太郎はなかなかの疲労度だったが途中で木更に代わったり真莉に代わったりとなんとかひと段落していった

 

今現在の質問は木更の学校の事だった、木更の学校、美和女学園(みわじょがくえん)の話になりそこに聖天子も在籍していると説明をする木更だったが歓声が上がる少女たちの中から申し訳なさそうに肩を丸めた女生徒の一人がおずおずと手を上げる

 

「私、聖天子様見たことない...」

 

それを聞いた木更は顔を暗くする

 

「.....あら」

 

「聖天子様とはあんな奴だぞ!」

 

延珠が立ち上がって指差す方向を、なにを馬鹿なと思いながら蓮太郎たちは振り返ると...飛び上がりそうになった

 

 

草原の二十メートルほど向こうの路肩に停車したリムジンの中からいままさに聖天子が降り立ち、レース付きの日傘を片手に一直線にこちらに歩いてくる

ウェディングドレスに似た白い礼装に身を包んだ絶対的な美貌の持ち主、間違いなく本物の聖天子だった

 

蓮太郎や木更だけでなく、珍しく真莉も驚いた表情をしていた

聖天子は絶句している蓮太郎を尻目にさっと横を通り抜けて生徒たちの前に立ちにっこりと微笑んだまま小さく手を振る

 

「ごきげんようみなさん、勉強は楽しいですか?」

 

生徒たちは口を開けたまま固まってしまった

 

「ふぁ?」という声を上げていままで寝ていた二人、ティナと夏世が目を覚ました

やがて聖天子は振り返り真っ直ぐ三人を見る

 

「里見さん、天童社長、古畑さん、国家の存亡に関わる非常事態です、あなたたちにお願いがあります」

 

聖天子の言葉に三人の表情が変わった

 

 

 

 

ハッピービルディング三F、天童民間警備会社事務所内には、重い沈黙が流れていた

応接ソファセットの向かいには聖天子、ガラステーブルを挟んで反対側ニの二人掛けソファには蓮太郎と木更が並んで座り、その近くの真莉が実費で買ったリクライニングチェアに真莉が座り真莉の肩にアカネが、膝にはティナと夏世が座っておりバランスを取るのが大変そうになっている

 

真莉の実妹の朱音は全員分のお茶を用意しにキッチンに向かった

朱音が戻ってきて全員分のお茶を配り終えようやく話が始まった

 

しばらくして話を聞き終えた面々は渋い顔をした

チリンチリンと場違いに澄み切った風鈴の音が室内に響く、不快な顔の汗を拭う、抑えたこめかみは熱く脈打っていた

蓮太郎はゆっくり首を振りながら顔を上げる

 

「聖天子様、確認させてくれ、あと六日でモノリスが倒壊してガストレアが乗り込んできて、東京エリアはパンデミックで壊滅するんだな?」

 

「なにも対策を打たなければそうなります」

 

蓮太郎たちは改めてガラステーブルの上に広げられたモノリス白化写真と目をそらしたくなるおぞましいガストレア頭部の写真を見た

 

「昨日たまたまニュースを見たが...モノリスに近づいたガストレアはすぐ追い払えたと言ってたような気がしましたが?」

 

真莉は聖天子を見て言う

 

「マスコミの方には、事情を話して協力していただきました」

 

「言論の自由が聞いて呆れるな」

 

「いま東京エリアが昨日不全に陥るのは里見さんたちも望まないはずです、知るべきではない情報、毒にしかならない情報は私の元で管理させていただきたいのです」

 

「独裁者も、あんたとそっくりのこと言うぜ」

 

「おい、蓮太郎...」

 

「ちょ、ちょっと里見くんッ?」

 

聖天子が「構いません」と言いながら小さく首を振る

 

「どちらにせよ、数日のうちにはモノリスの白化が遠方からでも確認できるようになります

いま、アルデバランの号令の下、モノリスの外にガストレアが集結しつつあります、最終的には集結したガストレアは二千体に及ぶと予想されています」

 

「二千体!?冗談でしょッ!?」

 

木更の驚愕に蓮太郎も深く俯き、流石の真莉も表情を曇らせる

 

「無茶だ、殺される、全滅だ...」

 

「それが起こらないように、私たちも全力で奔走しているのです」

 

真莉はふと考えた事を言う

 

「アルデバランは....何で近くまで来れた?」

 

真莉の言葉に聖天子はゆっくりと首を振った

 

「私にもわかりません、現在調査中です」

 

「え?どういう事?」

 

木更が困惑の声を上げる、それに答えたのは蓮太郎だった

 

「木更さん、アンタ、アルデバランについてどれくらい知ってる?」

 

「えーっと、確か結構早い段階から確認されている ステージIVのガストレアで、ガストレア同時多発的に暴れまわった十年前、アジアを中心に猛威を振るった個体よね?」

 

「何でアルデバランなんて識別コードが与えられてるか分かるか?」

 

「それは...知らないけど....」

 

真莉は膝に乗っていた二人と肩に乗っていたアカネを下ろし立ち上がり話す

 

「アルデバランはステージV・金牛宮(タウロス)にいつもくっついて現れた古参のガストレアだ

タウロスは群れで行動していた珍しいステージVでアルデバランは奴の右腕的なポジションにいたんだ、だから十二星座の牡牛座の中で一番明るい星であるアルデバランの名前が個体識別コードに据られたらしい」

 

「で、でも、古畑くん、タウロスって確か...」

 

聖天子がその疑問を引き取って頷く

 

「その通りです、十一体存在するゾディアックガストレアの中で、現状四体の撃滅が確認されています

一体は里見さんが倒した天蠍宮(スコーピオン)、一体はドイツのイニシエーターにして現在の序列二位が倒した処女宮(バルゴ)

そして一体は古畑さんのお父様でいらっしゃる古火田一族、現当主の古火田和眞さんが倒したとされる人馬宮(サジタリアス)

最後の一体はかつて無敵のガストレアと恐れられていた金牛宮(タウロス)の軍団は現在序列一位、世界最強のイニシエーターによって撃滅が確認されているのです、そして、一番重要なのはアルデバランは完全体(ステージIV)であってステージV(ゾディアック)ではないという事」

 

木更は口に手を当て「あっ」と小さく漏らす

 

「アルデバランはステージIV、本来ならステージV以外のガストレアはモノリスの磁場の影響を受ける、中に入ってくる事はおろか近くに寄ってくる事すら出来ないはずだ」

 

真莉は淡々と言うが目は何かを見据えているようだった

 

「でも、アルデバランは現実にモノリスに取り付いてバラニウム侵食液を注入して撤退している.....」

 

「そう、それなんだよなぁ...ありえない事が現実に起きてる...それなんだよなぁ」

 

木更も考え込んでしまった、蓮太郎は「ただ」といって聖天子を見る

 

「そっちはわからないけど、アリの一件はきっと陽動だったんだろうな」

 

「陽動、ですか?」

 

聖天子たちは目を白黒させる、真莉は成る程と頷く

 

「里見さん、それは考えられません、幼体(ステージI)ではモノリスへの侵入は不可能です、入ってこれないガストレアは陽動には使えません」

 

「聖天子様、アンタ、『アリの自己犠牲』って知ってるか?

南米のアリの一種は日暮れどきになると巣を守るために巣穴を覆って塞ぐんだけど、その際働きアリのうち何匹かが外に残って外から作業を行い、翌朝までには死んでしまう

つまり、巣というネットワークを守るための捨て石として職務をまっとうするんだ」

 

「里見さんは、自衛隊施設を襲ったモデル・アントの行動は自己犠牲の末のものだとお考えなのですか?」

 

「そうとしか考えられねぇだろ、百歩譲って完全体(ステージIV)がモノリスに取り付く事ができる何かがあって末端の幼体(ステージI)まで侵入できるはずが無い」

 

体内にガストレアウィルスを保菌しているだけの『呪われた子供たち』でさえ、モノリスに至近距離まで接近すると体調が悪くなったり、失神したりする場合がある

ステージIのモデル・アントならば、自衛隊や真莉の肉体を使ったキャンサーが殲滅するまでもなく放っておいても磁場の影響で衰弱死しただろう

 

「つまり奴等はアルデバランがモノリスに取り付いてバラニウム侵食液を注入するまでの時間を稼ぐためにモノリスを突破したんだ、自分たちが死ぬ事は百も承知でな」

 

「随分と...組織的な行動ですね.....今までになく、統率がとれている.....」

 

今まで黙っていた真莉が口を開きある事を告げた

 

「そりゃ統率が取れるだろ、アルデバランは特別な『フェロモン』を使う、それによって周りのガストレアを自在に動かしてるんだ、めんどくせぇ相手だな.....」

 

「何故、古畑さんはそこまで知っているのですか?」

 

「.....まぁ、昔一度だけやりあった事があるだけだよ...」

 

真莉の言葉に一同は驚愕した、蓮太郎が驚きながらも真莉に聞く

 

「結果は?」

 

真莉はその言葉に遠くを見て言う

 

「アルデバランが生きている事で察しろ.....俺が負けたんだよ....全くダメージを与える事もなく完膚なきまでに、俺の負けだ」

 

一同に更に重たい雰囲気が流れた


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