ブラック・ブレット 紅き守り手   作:フルフル真

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UAが20000を突破しました!

みなさん!どうもありがとうございます!!

今回、書き方を少しだけ変えました

前の方が良いという方がいればまた考えてみます!

みなさんのご意見、ご感想、お待ちしておりますo(^▽^)o


第27話

蓮太郎は逃げるように家に帰った

そして絶望を抱きしめながらその日は眠った...

 

次の日、蓮太郎は学校を休んだ、布団から一歩も出る気になれなかった

 

八畳一間と言うのは2人で使うには狭すぎるのに、1人で使うには広すぎる

(真莉の家はそこそこ広いが)

 

蓮太郎は携帯電話の電源を入れるとそこには木更、未織、菫や綾夜、沙耶からもメールが届いていた

すると新着のメールが届いた

しかし蓮太郎は携帯電話の中身を見る気になれず放り出す

 

眠りはなかなか訪れず、意識は散漫だった

 

何かがぽっかりと失われてしまった喪失感があるのに、心が麻痺してしまったかのようだった

 

何時間も寝て起きるとだんだんと昼夜の区別がつかなくなっていく

昨日のうちに遮光カーテンを引いて窓という窓、隙間という隙間にマスキングテープを張っていたので、蓮太郎の居住空間は闇が充満していた

 

胃が痛いほどに空腹を訴えていたが、聞いてやる義理はない

薄い微睡みの中、蓮太郎は何度も夢を見た

 

インターフォンが押され、表に出ると惨たらしく殺された延珠の死体が置いてあるのだ

ある時は胎児の様に体を丸めた焼け焦げた死体、首に索状痕がついた締殺死体。

首を切り落とされたもの...全ての延珠は不言のの言を放っていた

 

【どうして妾を助けに来てくれなかったの?蓮太郎?】

 

蓮太郎は枕を顔に押し付け、必死に妄想を振り払おうとのたうち回った

更に数時間程度経過すると、脳裏を渦巻いていた自罰的な被害妄想すら見なくなる

 

もう胃は空腹すら訴えてこない

耐えかねて自分の内臓を消化する算段をつけたのかもしれない

 

延珠が死んだら...これから自分はどうすればいいのだろうか...

 

左に行けばいいのか?

何を成せばいいのか?

何もしなければいいのか?

生きればいいのか?

死ねばいいのか?

それすらもわからない...

 

「延珠...延珠...」

 

帰ってきてくれ...会いたい、延珠...

 

ふと、気が遠くなっていく、絶食による昏倒だろうか?

もう何も考えたくない

 

自分を呼ぶ声がする、幻聴かと思ったが違った

 

ガゴォォォン!!

 

勢いよくドアが吹き飛ぶ

あまりの音に蓮太郎は飛び起きる

そしてすぐにあまりの眩しさに目を眇める

 

そして中に入ってきたのは息を切らしている木更と真剣な目をしてふぅと息を吐いている夏世

そして蓮太郎の無事が確認できたことに安堵しているアカネがいた

 

木更は潤んだ瞳で、両手を口にあてがっていた

 

「延珠ちゃんが...延珠ちゃんが...」

 

 

 

 

 

 

蓮太郎は体当たりする様な勢いで病室に飛び込んだ

生けた花瓶にかすみ草、開けっ放した窓から吹き込む風にカーテンが揺れている

病室中央、盛り上がったベッドの膨らみの上に少女が横たわっていた

小さく胸が上下しているので呼吸をしているのがわかる

 

見間違えようなど...なかった

 

蓮太郎は忘我の表情でベッド脇に跪き、両肘をついて延珠の手を握ると、震えながら祈った

 

(神様!神様!神様!)

 

声も無く、蓮太郎は延珠の無事を感謝し続ける

ふと、後ろから木更にきつく抱きしめられる

 

「こんなにやつれて...怪我も治りきってないのに、お馬鹿...どうして自分にひどいことするの?る延珠ちゃんに続いて里見くんまでいなくなっちゃったら私...どうすればいいのよ.....」

 

「ごめん、木更さん...本当に...」

 

語尾は涙でかすれて消えそうだった

 

蓮太郎は木更の掌の上に自分の掌を重ね目を閉じる

 

蓮太郎は後ろめたさを感じつつも、延珠の病院服の裾をたくし上げると、安堵の吐息をつく

すると夏世が声をかける

 

「里見さん、良かったですね、銃創は痕も残らないそうですよ」

 

「そうか...木更さん...これで全部終わったのか?」

 

一度狙撃に失敗した暗殺者が危険を冒してまで二度目の狙撃に出た

さすがに三度目は...

 

木更は不安に揺れる瞳で上目遣いに蓮太郎を見る

 

「里見くん、メール送ったけど...みた?

.....聖天子様の第3回の非公式会談の日取りが昨日決まったのよ」

 

「っ!?いつだ!?会談の日時は!?」

 

「明日の夜8時だそうです」

 

「...明日?」

 

「そ、明日〜」

 

蓮太郎の言葉にアカネが腕を後ろに回しふらふらと揺れていた

 

蓮太郎が何か言おうとした瞬間にドアを引き上げる音がして振り返ると、壮年の医者と看護師が入室してきた

 

蓮太郎はハッとして詰め寄る

 

「延珠は大丈夫なのか?後遺症は?延珠はどこで見つかったんだ?彼女と話したい、起こしても...構わないか?」

蓮太郎の矢継ぎ早の質問に対して医者は看護師と顔を見合わせ困った顔をする

 

「はっきりとしたことは彼女が起きてからですが、おそらく後遺症の心配はないでしょう、ただ、今は無理に起こさないほうがいい

 

致死量の何十倍もの麻酔を静脈注射されて廃墟の一室に放置されていたところを、君の友だと言う男の人が保護してここに連れてきてくれたのだ

 

彼女が一命を取りとめられたのは迅速に適切な処置をしてここに連れてきてくれた彼とガストレアウイルスが宿主を守ったからなんですよ」

 

致死量の何十倍もの麻酔.....?

医者と看護師は言い辛そうにチラチラと目配せをする

 

「一つ、里見さんにお伝えしなければならないことがあります...あなたのイニシエーターの体内侵食率ですが...今回の大きな傷を修復する過程で少し上昇していました」

 

蓮太郎は拳を握り、歯噛みしながら俯いた

 

(俺の...せいだ)

やがて、悔恨に下唇を噛みながら顔を上げる

 

「.......延珠はどれくらいで起きるんだ?」

 

「そうですね...二日は見てもらいたいですな」

 

「二日...」

 

何か、おかしい

 

蓮太郎は違和感の正体を探ろうとこめかみを抑えるが、唐突に視界が瞬き体がぐらりと傾く

 

気付けば木更に抱きとめられていた

そう言えば自分は死にかけていたのだったか...

 

自覚してしまうと今までどうやって立っていたのかと思うほど気だるい疲労と傷の痛みに襲われ、視界が闇に閉ざされた...

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッとしてベッドから跳ね起きる

食べ散らかしたジャンクフードの袋と、惣菜の発砲トレイが少女...ティナの視界に写る

 

首を巡らせると自室の仮住まいに青白い月光が窓から差し込んでいた

 

水道の蛇口から水滴が滴り、ピチョンと音を立てて茶碗の中に落ち、壁掛け時計が秒針を刻む音が徐々に大きく耳に迫ってくる

 

時刻は午前三時だった

 

汗で下着がぐっしょりと濡れており瞼の裏がズキズキして首を振りながらこめかみをさに手を当てる

 

ティナが起きるのを見計らったかの如く、傍に転がった携帯電話が鳴る

 

「私です」

 

『何をしていた、何度もコールしたのだぞ』

 

「すみません、マスター....少し仮眠を取っていました」

 

『第三回の警護計画書が流れてきた、今からそちらの端末に送る』

 

ティナの端末器に警護計画書が流れてくる

ホロディスプレイモードに切り替えて空中に画像を投影しざっと目を通す

 

ティナは眉をひそめた.....これは.....?

 

『愚かな連中だ.....いったい何度同じミスを繰り返すことやら、まあ我らとしては期せずして三回目の暗殺の機会を得たわけだ』

 

「しかしマスター.....これはおかしくありませんか?」

 

『何がだ?』

 

「なぜこんな遠回りな護送ルートを使うのでしょうか?それにこのルート、まるであつらえたように一箇所絶好の狙撃ポイントがあります」

 

ティナは言葉に出さず、しかも、と付け加える

この狙撃ポイントは、お互いの正体が露見する前

蓮太郎と一度だけ足を運んだ外周区の第三十九区だ

わずかなれど、ティナには土地勘さえある

 

『....つまり、お前は何が言いたいのだ?』

 

「罠ではないかと」

 

ランドが電話の向こうで黙考する

 

『まだ聖居の内通者が露見した形跡はない』

 

「マスター、嫌な予感がします、今回ばかりは様子を見たほうがいいと思います」

 

『ならぬ!二度も絶好の機会をふいにして、我らが依頼主はご立腹だ、失敗は許されぬのだ!』

 

そこで何を思い出したのか、そこで彼女の主は声を落としていう

 

『おい、ティナ.....ティナ・スプラウトよ』

 

「はい」

 

『私が殺せと命じた警官と、あのイニシエーターが生きているという情報が入った』

 

不意に居心地の悪い沈黙が降りる

 

「とどめを刺したと思ったのですが...」

 

ティナは少し大げさに驚いてみせる、すぐにやりすぎたかもしれないと自戒した

 

『ティナよ、私の可愛い作品、貴様...よもや私の命令に背いてはおらぬよな?』

 

「もちろんです、マスター」

 

『ティナよ、お前の主は誰だ?私に聞かせておくれ』

 

「あなたです、マスター...いえ、プロフェッサー・ランド」

 

『お前は誰のおかげで生かされている?』

 

「全てあなたのおかげです、プロフェッサー・ランド」

 

『お前はなんだ?』

 

「あなたの道具です、プロフェッサー・ランド」

 

『.......まぁいい、やることに変わりはない、だが、わかっていると思うが、失敗は許されんぞ』

 

「もし罠だった場合は?」

 

『自力で突破せよ、それくらいの力はお前にあるはずだ、だが万が一、敗北するような事態になったら...』

 

ランドはふむと呟くと言葉を切って言葉を続ける

 

『死ね』

 

ティナはスカートの裾を両手でぎゅっと握った

 

『自害せよ』

 

ティナは呼吸を落ち着けて心臓に手を当て、そのまま目を閉じる

 

「了解しました、マスター」

 

 

それだけ聞くとランドは挨拶もなしに通話を切った

 

ティナは首を巡らせてアパート内部を眺める、もうここも引き払わなければ

 

ティナはベッドの傍らにあるポリタンクのフタを開けるとら、中身のガソリンを部屋の中に全てぶちまける

 

 

頭が痛くなるガソリンの気化臭の中、ティナは扉まで下がりライターをこすると中に放る

 

炎蛇が伸び上がり部屋の中央まで行くと、部屋中を紅蓮の炎が包んだ

火災報知器が作動したのを確認してからアパートを離脱する

 

すぐに消防車が現れ、野次馬が詰めかけ喚声を上げ始める

 

ティナは少し離れたところから、夜天に火柱を吹き上げ、燃えるアパートを眺めた

柱が燃え落ちると、大量の火の粉を巻き上げながらアパートが倒壊していく

 

ランドも科学者とはいえ、今はさらに上の人間に命令されている立場の人間なのだ

 

彼に不満を訴えたところで彼が意見を翻すことなどありえない

ならばティナは与えられた命令を履行するだけ

 

それに警護計画書が罠だとして、それがなんなのか

 

自分のイニシエーターとしての戦績は今の所百戦不敗、誰も自分に届かない...

 

だが、黒服の少年と矛を交えた時、かつてティナは思ったのだ

 

自分を倒すことが出来る存在がいるとしたら...もしかしたら...と

 

そしてまだ矛を交えてはいないが自分の狙撃に瞬時に反応し銃弾を蹴り飛ばしたもう1人の人

 

おそらく、今まで戦った中で最も強いであろうその人...

 

かつて私を助けてくれた(夜モードでは無かった)人

 

 

 

肌に当たる熱波は火傷しそうなほどだというのに、ティナは自分の体をかき抱き、寒さに震え俯いた

 

すると暗闇から今は聞きたくない声が聞こえてきた

 

 

 

「随分と...勿体ねぇ事してんだなぁ...ティナ・スプラウト」

 

ビクリ...ティナは体を震わせ顔をパッと上げる

目の前にいたのは先ほど頭の中に浮かんできた人物が佇んでいた

 

 

「直接会うのは久し振りってな感じだな...随分と元気無さそうだな、そんなんで...『聖天子』暗殺なんて出来んのかよ」

 

 

ティナ「なんで....ここに....真莉さん...」

 

 

その人物は眼を紅蓮に染め、同じく髪も紅蓮に染まり殺気を辺りに撒き散らしながらこちらにゆっくりとティナに近づいて来た


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