ブラック・ブレット 紅き守り手   作:フルフル真

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最近ダンスにハマってしまいました...

書かなきゃいけないんですがね...

ようやく少しずつ進んでいきますよ!


第26話

多田島「よう、来たな民警、早速だが現場を見てもらうぞ」

 

エラの張った顔をした捜査一課の多田島茂徳(ただじましげとく)は蓮太郎の顔を見て一瞬同情っぽい表情をしたが、努めて淡々と振る舞う

 

蓮太郎は青白くなった手で自分の顔にそっと触れると、肌はパサつき、唇はひび割れていた

 

いったい今、自分はどんな表情をしているんだろうか...

蓮太郎は重い頭を振って左右を見渡す

窓枠も何もないコンクリが打ちっぱなしになっている床面は弾痕で穴だらけになっているら蓮太郎がいるのは建設途中のビル6階だった

 

周囲にはせわしなく現場刑事や鑑識の人間が行き来している

 

殺人課とも揶揄される警視庁捜査一課の活動内容に事件性の高いガストレア犯罪全般も含まれるようになって久しい

 

科学捜査研究所の仕事も一部民営化されて、弾道分析のような複雑な計算式を使用するものは、証拠保全と守秘を徹底した上で、司馬重工や他の大企業に委託されている

 

蓮太郎は首を振った、自分は何を考えているのだろうか...

 

初めてだった、なにしろ、被害者は自分のよく知っている人間かもしれないのだ

頭が上手く働かない、自分が今地面に立って呼吸をしているのがテレビの向こうの映像のように、妙に他人事めいて感じられる

 

多田島「おい、大丈夫か?民警」

 

方を揺すぶられて脇腹の痛みとともに我に帰ると多田島の手を払う

 

蓮太郎「.....いいから、現場を...見せてくれ」

 

多田島は物問いたげな表情を見せたが、黙って蓮太郎に道を開ける

奥に歩いて行くと、青いツナギを着た鑑識の人間たちが蓮太郎に気付き、気まずそうに俯く

蓮太郎はやがて立ち止まると地面を見つめた

 

コンクリの床面なそこだけひときわ弾痕だらけになっており、飛び石状に無数の血痕が飛び、その周辺はチョークで小さな丸が書かれている

 

連日、今年の最高気温を更新しつつある昨今だが、今日は格別な蒸し暑さを感じ、蓮太郎はネクタイを緩める

 

多田島「ここで被害者(ガイシャ)は撃たれている」

 

ちょっとキツイぞと断って差し出された写真を見た瞬間、吐き気がこみ上げてきて蓮太郎は口元を抑える

 

多田島「.....最近暑かったからハエがたかってて仕方なかったんだ、だからキツイと言ったろ」

 

こみ上げてくる嘔吐感を飲み下し、もう一度蓮太郎は束ねられた写真群を見て、次々とめくっていく

 

それは主に肉片が写っている写真だった

時折その中に見える白いものは骨片だろうか、見ているだけなのに、蒸せ返る血臭さえする気がする

 

蓮太郎が口元を押さえているとポンと肩を叩かれる

蓮太郎は首だけその方を向くとそこにいたのは頬から若干の出血をしているが元気そうなアカネと真剣な表情をしながらも無事だった事にホッとした様に息を吐いた真莉がそこにいた

 

 

蓮太郎「...無事だったのか」

 

真莉「まぁな...まぁ、現状を見る限りある程度予想はつくんだが...」

 

蓮太郎「...延珠が...負けた...んだ...」

 

真莉「...延珠も充分強いんだがな...わりぃ、俺らのどちらかでもいりゃあちょっと違ったんだろうが...」

 

蓮太郎「.......」

 

すると多田島は真莉を見た

一瞬険しい表情をするが直ぐに蓮太郎と話しているのを確認すると表情を戻した

蓮太郎と真莉、アカネは多田島の所までに来た

 

多田島が指差す方向を見ると、多田島から見て右、左、正面、斜め右上の四方向にあるビルを指差した

 

多田島「それぞれのビルの屋上三箇所から重機関銃の残骸が見つかった、証拠を残さないためなのかはわからんが、使用された機関銃はプラスチック爆弾で破壊されて放置されている

 

司馬重工に鑑定に出しているが、今わかっているのは、銃は製造番号などが削り取られていること、あと、本来の機関銃のパーツ以外にもおかしな装置が取り付けられて......」

 

蓮太郎「延珠は、死んだのか?」

 

蓮太郎は視線を上げる

 

多田島「....わかんねぇ、今飛び散ったガイシャと思わしきDNAとお前のイニシエーターのDNAを照合している最中だ」

 

蓮太郎「....延珠だ、間違いない、写真のコートの切れっ端が写っていた」

 

多田島「そうか....」

 

多田島は沈鬱そうな顔で俯き、やがて現場を見渡す

 

多田島「ヤケになるな、弾が当たったのは土手っ腹じゃないかと言われているし、現場に死体がない

 

そして回収された弾丸に使われていたのはバラニウムじゃなくて普通の鉛だ

 

イニシエーターは心臓か脳を一撃されない限り死なないんだろ?」

 

蓮太郎「だとしても!!延珠が敵に連れ去られたんだぞ!!いっつ!?」

 

蓮太郎が叫ぶと肩から徐々に痛みが溢れてくる

蓮太郎が肩に手をやっている人物、真莉を睨む

 

真莉は蓮太郎の目をしっかりと見て発言する

 

真莉「落ち着けっての...確かに連れ去られたのは色々とマズイだろ...お前の気持ち、分からんでもない

 

それでもここで吠えていても何もかわらねぇ、今何すべきかを考えろ」

 

真莉の言葉にグッと口を紡いだ

 

真莉はそのあと多田島に言った

 

真莉「それと警部さん?あんたはどんだけイニシエーターたちのことを知っているのかはしらねぇが...

 

あの子達をそうゆう風に見るのは感心しねぇな、確かにイニシエーターは普通の鉛なら心臓か脳を撃たれなければ直ぐに死ぬことは無い

 

だがな、それでもこの子たちは人間でもある、それに今回延珠に直撃したのは対戦車ライフルの弾丸だろ?

 

そんなもの普通にガストレア相手でも撃ちどころが良けりゃ殺せるほどの威力を誇る

 

この意味、理解出来ねぇわけじゃないでしょ」

 

多田島は真莉の言葉にギュッと目を瞑りすまんとぼそりと呟く

 

真莉「はぁ...蓮太郎、延珠の捜索は俺とアカネに任せろ」

 

真莉の言葉に蓮太郎はパッと顔を上げた

 

真莉「とりあえず俺とアカネは直ぐに動く、何かあれば夏世に知恵を借りろ、あいつ俺なんかよりも遥かに頭いいから色々といい作戦も思いつくはずだ」

 

真莉はそこまで言うと傍にいるアカネに行くぞと目で合図し走って去っていく

 

後ろから蓮太郎の声が聞こえたが真莉はそれを無視しスピードを上げ暗闇に消えた

 

真莉「(とりあえず無事ならいいんだが...時間がねぇからな...キャンサー!)」

 

キャンサー(分かってるよ)

 

真莉の中に存在しているキャンサーは真莉の言いたいことがわかっているかのような声色を出した

 

すると直後に真莉に変化が現れる

 

真莉「アカネ!捕まれ!」

 

アカネ「はーい!」

 

真莉「匂いでわかるか?」

 

アカネ「うん!延珠ちゃんの匂いは覚えてるよ!」

 

真莉「頼んだ」

 

アカネの眼が赤くなりしきりに鼻をクンクンと動かす

 

真莉も眼が赤く染まり更に髪も同じく赤く染まった

それだけでなく真莉の脚にも変化があった

明らかに真莉の年齢の平均よりも何倍も膨らんでいた

 

真莉「行くぞ!」

 

真莉はギリギリと脚に力を込めそれを解き放つ

 

真莉とアカネはかなりのスピードを持って夜の街へと駆け出した


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