剣姫の弟ですが何か 〜ジャガ丸君の好みは豚キムチ味〜   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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剣術

「さてベル。

 

お前冒険者登録したのいつだ?」

 

 

「一ヶ月くらい前ですかね?」

 

 

「それで最高到達が7階層か…………エイナさんに頼まれた理由が何となく分かったよ」

 

 

モンスターが出てきて居ないせいか談笑する暇さえある。

 

 

『キシャァァァ』『シャァァァァ』

 

 

二体のコボルトが現れる。

 

剣を抜こうと手を掛けるがそれよりも早くベルが走り出していた。

 

黒いナイフを構え一直線に走る。

 

コボルトが防御体制をとる前にコボルトの左胸にナイフを突き立てる。

 

 

「はぁ!!!」

 

 

黒い煙を四散させ消えるコボルトその背後ではもう一体のコボルトが武器を振り上げていた。

 

ベルは振り向く際の回転を利用して後ろ回し蹴りを放つ。

 

ベルの回し蹴りを受け尻餅をつく様な形で倒れこむコボルト。

 

慌てて立ち上がろうとするがベルはコボルトの顎を蹴り上げる。

 

そして隙だらけの身体にナイフを突き立てる。

 

一体目と同じようにして四散して消えるコボルト。

 

 

「(速いな………これが冒険者になって一ヶ月かよ、才能に満ち溢れてるな)」

 

 

「どうですかレオンさん?」

 

 

「思ってたより凄いわ。

 

これなら…………7階層ぐらいまでなら大丈夫だな。

 

よし、今日はとりあえず8階層まで行くか」

 

 

レオンハルト9階層まで潜れる。

 

だがベルの実力とカバー出来る範囲を考えたら8階層が丁度いいところなのだ。

 

その後もモンスターが出てくるが基本的にベルが攻めてそのカバーをレオンハルトが務めた。

 

レオンハルトの感想としては実力は駆け出しそのものだがポテンシャルと戦闘への意欲は駆け出しのそれとはかけ離れているというもの。

 

剣姫、アイズ・ヴァレンシュタインに憧れ渇望するベル。

 

その実力差を埋めるためなら何だってする意識すらある。

 

そんな彼の主神であるヘスティアは友神の鍛冶神ヘファイストスに頼み込み一本のナイフを作ってもらった。

 

憧憬一途〈リアリス・フレーゼ〉というレアスキルの影響で飛躍とも呼べる成長速度を見せるベルと共に成長する神のナイフ〈ヘスティアナイフ〉。

 

スキルの存在に関して本人は認知して居ないがその成長速度に本人ですら疑心暗鬼になっていた。

 

 

「そう言えば、お前良くヘファイストスファミリアのナイフなんてゲット出来たな。

 

言い方悪いけどまだ一ヶ月くらいじゃそんなに稼げないだろ」

 

 

「神様が僕にくれたんです。

 

僕が高みを目指すのを応援してくれてる神様が頼み込んでヘファイストス様自身が打ってくれたナイフなんです。

 

僕はこのナイフと一緒に強くなっていつか……………」

 

 

嬉しそうにナイフを握り締めるベル。

 

ベルの目指す所は剣姫だ。

 

それは途轍もなく高い壁であるがナイフと共になら目指せると確信している。

 

そんなベルを見て駆け出しと軽んじた事を心の中で謝罪したレオンハルトだった。

 

 

「俺のこの剣…………エリュシデータは冒険者になった時に団長とロキ様から貰ったんだ。

 

まあベルと違ってゴブニュファミリアっつー穴場なんだけどクオリティだけならヘファイストスファミリアと互角じゃないかな?

 

っと話してる間に囲まれたみたいだな」

 

 

カラカラと笑うレオンハルト。

 

そんなレオンハルトに驚きツッコミたくなるベルだが上級冒険者としての余裕と考えたら関心するばかりだった。

 

 

「ベル、ちょ〜〜っと動くなよ?

 

『臆することなかれ兵達よ、敵は眼前にあり』

 

オーバーパワー」

 

 

瞬間、レオンハルトを中心に空気が変わった。

 

このオーバーパワーという魔法は簡単に言えば威圧する魔法だ。

 

威圧なのだが魔力を乗せたその魔法はかなり利便性がありこのように上層のモンスター程度なら暫く動きを止められるくらいだ。

 

また、フィン達レベル6にも効くのだが動きを一瞬遅らせるくらいにしかならない。

 

自分より格下の相手の動きを封じる事は出来るが同格以上は動きを遅らせる程度という事だ。

 

モンスターに向けて放った魔法なのだがレオンハルトを中心に発動している為隣にいたベルにも少なからずの影響が出た。

 

ぺたんと座り込んでしまったベル。

 

そしてレオンハルトは少しだけ腰を低く落とし右手に持ち肩に担ぐようにして構える。

 

 

「俺流剣術、其の一『旋☆風』」

 

 

肩に担ぐような状態から自身を軸にして駒のように回転しながら周囲の敵を斬りつける技。

 

レオンハルトには何故か恩恵を貰った直後からあるアビリティが存在していた。

 

そのアビリティというのが〈剣気〉。

 

魔法を使うには魔力がいるがこの剣気は『剣術』を使う際に使う。

 

『剣術』とは剣気を纏わせた剣で繰り出す技の事。

 

つまり剣気と魔力は似て非なるものという事だ。

 

 

「あ、あの…………あれは魔法なんですか?」

 

 

「まぁこれ話すと時間かかるから帰りの時にでも話してやるよ」

 

 

それから暫く狩りを続けて時間も丁度いいと言うことでダンジョンを出る事にした。

 

道中レオンハルトの魔法と剣術の話に目を輝かせていたベル。

 

本来ステータスの話はファミリア間の諍いの原因になり易い為御法度なのだがロキファミリアと対等にやり合えるのはせいぜいフレイヤファミリアくらいなものだから零細ファミリアであるヘスティアファミリアくらいなら問題無いだろうと考えたのだ。

 

魔石を換金したら3万バリスと大儲け。

 

その後ベルは嬉しかったのかダッシュで自身のホームへと戻っていった。

 

 

「おーい、レオンくーん」

 

 

振り返るとそこには仕事を終えたエイナがいた。

 

仕事終わりで制服じゃなく私服な為かギルドの男性職員がソワソワしている。

 

 

「エイナさん………めっちゃ似合ってます」

 

 

「ふふっ、ありがと。

 

お姉さん機嫌が良いから晩御飯は奢ってあげる、豊穣の女主人でいいよね?」

 

 

「俺今日は結構稼げたし自分で払います、ていうか僕が奢ります」

 

 

人差し指をレオンハルトの口火に当てながら

 

 

「だーめ。

 

年上の言うことはちゃんと聞くものよ?」

 

 

余裕のある笑みでそんな事を言われてしまっては赤面必死だ。

 

恥ずかしそうにしているのに気づいているのかエイナは心無しか楽しそうだ。

 

今のエイナを形容するなら悪戯好きなお姉さんだろう。

 

そのまま豊穣の女主人へと向かったがそれから暫くの間、ギルドの男性職員達はレオンハルトに対して視線もとい死線を送るというのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 




魔法のオーバーパワーは七つの大罪に出てくるスレイダーさんの魔法が強くなった感じです。

剣術ですが特に良い名前が思いつきませんでした。


コメントとか貰えたら嬉しいです。

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