Tales of Zero【テイルズオブゼロ 無から始まるRPG】   作:フルカラー

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第36話「音を立てて壊れゆく」 語り:ソシア

鮮筆(せんひつ)のメリエルに禁霊(きんりょう)のフィアレーヌ! なんでお前達がヴィオに!?」

 

 鋭い目付きで警戒するゾルクさん。黒いザルヴァルグを引き連れてきたのは彼女達だった。

 

「なんでって、任務に決まってるじゃん。っていうか、それはフィアレの台詞だしー。救世主達がこの町に来てるなんて思ってなかったもん。……あれ? 魔皇帝の姿が見えないね。どっか行っちゃったの? それか死んだ?」

 

 ジーレイさんの不在にフィアレーヌが気付いてしまう。意識不明の重体である、などと正直に明かせるわけがない。そこでゾルクさんは嘘を教えた。

 

「急用があって別行動してるんだ!」

 

 しかし、あまりにも下手。すぐばれるのではないかとハラハラしてしまった。……けれども。

 

「そっかぁ急用かー。霊術と魔術で本気の対決ができると思ったのになー。仕方ないから、あんた達で我慢してあげる。最近、戦って遊べる任務が無かったから退屈してたんだよね、フィアレもこの子達も♪ なんか強そうな武士さんが増えてるし、楽しみー♪」

 

「フィアレーヌったら、あんな見え透いた嘘を信じるなんて……。でもいいわ。ジーレイ・エルシードにさして興味は無いし」

 

 流石にメリエルには通用しなかったが真実は隠し通せたので、ほっと胸を撫で下ろした。

 だが、危機が去ったわけではない。フィアレーヌは小柄な身体を覆い尽くすかのように白や紫の死霊魂(しりょうこん)の玉を浮かび上がらせ、私達と交戦する意思を明確に表示している。

 

「逃げたいけど、そうも言ってられないか」

 

「ゾルクよ、お主の心情は察するが今は耐えるのだ。こやつらを倒し黒の巨鳥を止め、人々を救わねばならぬ……!」

 

「うん、わかってる……!」

 

 怯える気持ちを無理矢理に抑えると、ゾルクさんは両手剣を背の鞘から引き抜いた。……その腕は微かに震えている。

 彼を支えるかのように、まさきさんも抜刀。メリエルとフィアレーヌへ対峙する。

 

「ひっさびさの戦いだー! 殺したいからウズウズしてきた~♪ メリエルも頑張ってね!」

 

「勝手に話を進めないでくれるかしら。……でも総司令からは『ジーレイ・エルシード以外なら殺しても構わない』と仰せつかっているから、問題ないわね」

 

 嬉しそうに踊る藤紫色のツインテールを尻目に、メリエルは溜め息混じりで呟く。けれども大筆を構えた。文句を言いつつも、私達を始末する気はあるようだ。

 ちなみにフィアレーヌだが「殺したい」と軽々しく発言しているあたり、ドルド火山でのミッシェルさんのお説教は効果が無かったらしい。

 ――以前のエグゾア六幹部はデウスの命令により、わざと実力を発揮せずにいた。だからこそ私達はどうにか勝利できていたのだ。しかし、もう手加減は存在しない。気後れしていると簡単に仕留められてしまうだろう。

 尋常ではないほどに緊迫する状況。マリナさんはメリエルを威嚇するかのように声を荒らげた。

 

「あの黒いザルヴァルグはなんだ!? ヴィオの人々を誘拐してどうするつもりなのか答えろ!」

 

「怒鳴らなくても、少しなら教えてあげるわ。あれは量産型のザルヴァルグで、怪翼機(かいよくき)ギルムルグと呼ぶの。そしてこの町のリゾリュート人は……」

 

 勿体振るように言葉の間隔を空けた後、悠々と続きを語った。

 

「ギルムルグに取り込まれた時点で体内から魔力を抽出され、体組織も余すことなく魔力に変換されたわ。人としての形を失い、機内の貯蔵タンクに蓄えられたの。つまり、もう生きてはいないということよ」

 

 定員を超えてもなおヴィオの住民を収容できる理由は、とてつもなくおぞましいものだった。けれどもメリエルとフィアレーヌは平然としており、憐れむ様子は微塵も無い。

 

「まさか、師範とキラメイがスサノオに加担し、みつね姫から魔力を抜きとらせていたのは……!」

 

「そう。あれは今回の任務に必要なデータを採るための、魔力抽出実験だったの」

 

 微笑するメリエルを、私は激怒の眼差しで刺した。

 

「なんて非道な行いなの……!? 許せません! なんのために魔力を集めているんですか!!」

 

「ウフフ、それは教えないわ。せいぜい考えてちょうだい」

 

 私達をみくびり余裕綽々な態度を見せている。

 

「上等だ……! そしてお前達をここで倒し、被害を食い止めてみせる!」

 

 マリナさんは負けじと両腰のホルスターから拳銃を引き抜き、二つの銃口をメリエルに向けるのだった。

 続いて、ミッシェルさんが決然とした面持ちとなり口を開いた。

 

「メリエル、久しぶりね」

 

「あなたはバレンテータルで私を惑わした……ミッシェル・フレソウムね。同じ名前に同じ容姿、本当に不愉快。あの時の分も含めて、たっぷりといたぶってあげるわ!」

 

 眉間にしわを寄せて露骨に不快感を示すメリエル。敵対心が剥き出しだ。私はその迫力を自分に対するもののように受け取ってしまい、怖じ気付く。けれども当のミッシェルさんは。

 

「すごい闘気……前みたいに意識を揺るがす隙も無いじゃない。洗脳が強力になったっていうのは本当みたいね。でも、いいわ。何度戦うことになっても絶対に目を覚まさせてあげるんだから! 来なさい、メリエル!」

 

 落ち着いて姉を見据え、大筆を大胆に振り回し、覚悟を決める。ここぞという場面で冷静になれるのはミッシェルさんの素晴らしい長所。私も彼女を見習い、心を落ち着かせて無限弓を構えるのだった。

 ――曇り空の下。火薬の都市ヴィオの住宅地で、エグゾア六幹部との戦いの火蓋が切られる。

 

「あれっ? メリエル、ちょっと待って」

 

 ……張り詰めた空気をぶち壊す、フィアレーヌの一言。メリエルは決まりが悪そうに返事する。

 

「これからっていう時にどうしたの?」

 

「救世主から何か感じるの。しかもたくさん」

 

 ツインテールを揺らし、不思議そうに首を傾げている。

 

「お、俺から?」

 

「どういうことなんでしょうか?」

 

 予想だにしない発言に、ゾルクさんも私もわけがわからない。

 

「え~? なんでなんだろ……こんなの初めて。でも面白そうだし、試してみよっかな」

 

 フィアレーヌは悩む。けれどもその時間は短かった。

 にぱっと無垢な笑顔を浮かべた後、明るい掛け声と共に両手の平をゾルクさんへと突き出し――

 

「それー♪」

 

 

 

 

 

 鬼 畜 の 如 き

 

 所 業 を 始 め た

 

 

 

 

 

「うぐっ!? ……う……ああ……!」

 

 両手剣が、カランと街路を跳ねた。

 ゾルクさんは胸の中心――エンシェントビットが埋め込まれた部位を押さえて(うずくま)り、苦しみ悶え始める……。

 

「まずい! フィアレーヌを止めるんだ!!」

 

 焦るマリナさんが号令を発した。私達はそれぞれの方法でフィアレーヌを狙う。しかしメリエルが黙って見ているはずがない。

 

「させないわ」

 

 まさきさんがいち早く突撃したのだが、刀身は大筆で受け止められてしまう。

 

「邪魔立てするでない……!」

 

「邪魔なのはあなたの方よ。せっかくフィアレーヌが面白そうなことを始めたのだから、おとなしく待っていて……ちょうだいっ!」

 

「ぬあっ……!?」

 

 大筆で強引に押し込み、まさきさんを大きく突き飛ばした。だが、これはチャンスでもある。

 

「皆の者、今ぞ……!」

 

 彼は体勢を立て直すより先に合図を送る。メリエルの注意が偏っている今こそ、フィアレーヌを攻撃する絶好のタイミング。私達は即座に従った。

 

雷駆閃(らいくせん)!」

 

流蓮弾(りゅうれんだん)!」

 

魔神線(まじんせん)!」

 

 稲妻のような挙動の矢、三連続の渦巻く水弾、地を走る絵具の波を一斉に放つ。

 フィアレーヌはゾルクさんに意識を集中したまま。攻撃に対処する動きは見せない。これなら確実に阻止できる。私達は揃って確信した。

 

氷牙線(ひょうがせん)!!」

 

 ……だが、その確信は一瞬で打ち砕かれる。

 とてつもない瞬発力でフィアレーヌの前に躍り出たメリエルが、ギリギリで私達の攻撃を――

 

「全て防御してしまうなんて……」

 

 円を描き、その中心で大筆の石突きを地に突き刺す。すると彼女とフィアレーヌの周囲から幾つもの氷の刃が突き出し、全方位を守護する壁のように形作った。おそらく攻撃のための技だろうに、盾として見事に転用したのだった。

 氷刃の壁が崩れ去ると同時に、フィアレーヌを阻止する唯一の機会を失った。次の手を打とうにもメリエルが目を光らせている上、もう時間が……。

 

「おとなしく待ってくれるはずがなかったわね。フィアレーヌ、早く終わらせてくれないかしら」

 

「はいはい、もうすぐおしまいだから。えーいっ!」

 

 気怠(けだる)げに急かされたフィアレーヌは追い込みをかける。両手の平を更に突き出した。それに応じてゾルクさんの悲鳴は、より凄惨なものとなっていく。

 

「ぐ……あああ……うわああああああ!!」

 

 四人で攻撃を続けるが、やはりメリエルの大筆捌きが全てを防いでしまう。

 ――この時、ゾルクさんはフィアレーヌの謎の行動へ抗うのに限界を感じていた。彼女が「おしまい」と宣言した通り、もう耐えられないのだ。この先に待つのは暴走かもしれない。だからこそ、壮絶の渦中にあるというのに彼は……。

 

「み、みんな……逃げ、ろ……」

 

 私達を心配し、声を絞り出すのだった。そしてこの言葉を最後に、彼は全身の力を失い……地に伏せてしまう。

 フィアレーヌは謎の行動を完遂してしまった。突き出していた両手も自由になっている。だがマリナさんはそんな彼女に目もくれない。

 

「ゾルク!! しっかりしろ、ゾルクッ!! 返事をしてくれ!!」

 

 駆け寄り、抱き起こして必死に呼びかけるも目は閉じたまま。それどころか、まだ不測の事態が。

 

「邪魔だなー。みんな、これ取っちゃって」

 

 フィアレーヌの不満そうな声と共にゾルクさんの胸部から、赤の文字で祈りの言葉が刻まれた白き紙――封印護符が、蒼い胸当ての表面に浮き上がる。見えない存在、死霊によって剥がされたのだ。そのまま細かく刻まれていき……。

 

「有り得ぬ……。魔に耐性を有する封印護符が、いとも容易く破られるなど……!」

 

 ついには霧散。まさきさんはひどく動揺した。

 そして衝撃は走り続ける。

 

「……くぅっ!?」

 

 なんということか。不意に目を覚ましたゾルクさんが、マリナさんを乱暴に突き飛ばしたのだ。彼女は勢いのまま座り込んでしまう。

 

「やはり暴走なのか……? しかし……」

 

 戸惑う彼女をよそに、ゾルクさんは無言で両手剣を拾う。そして握り締めると。

 

「いかん!! マリナよ……!!」

 

 有無を言わせず斬りかかってきたのだ。

 

「はっ……!?」

 

 辛くも、まさきさんの咄嗟の叫びは間に合った。

 

「ありがとう、まさき。助かった。これで二度目だな」

 

「二度も三度もあってはならぬ。拙者の声が遅ければ死んでいた! 集中を切らすでないぞ……!」

 

「……ああ。すまなかった」

 

 マリナさんが元いた場所にあるのは振り下ろされた両手剣と、その一撃によって抉られた街路。まさきさんが喝を入れるかのように(たしな)めるのも頷ける。

 無言のゾルクさんは背を六幹部の二人に、持ち上げた両手剣の切っ先を私達に向ける。蒼眼からは光が失われており、正気でないのは明白だった。

 ……けれど不可解な点がある。暴走と呼ぼうにも彼の挙動は乱れておらず、攻撃の狙いも安定しているのだ。話に聞いたエンシェントビットの光の放出現象も起こっていない。

 

「ねえマリナ。あれが暴走ってやつなのね……?」

 

「いや、何かがおかしい。前に暴走した時と違って、ある種の理性を感じるんだ……!」

 

 恐る恐る尋ねるミッシェルさんへ、マリナさんも違和感を打ち明ける。そこへ慎みもなく飛び込んできたのは、フィアレーヌの喜ぶ様だった。

 

「わーい! 思った通りに動いてくれてる! ほんとに霊操(れいそう)できちゃったー! それじゃ、しっかり働いてね。フィアレ達の救世主♪」

 

 

 

 ‐Tales of Zero‐

 

 第36話「音を立てて壊れゆく」

 

 

 

 無邪気に明かされた、豹変の真実。ゾルクさんは暴走しているのではなく、フィアレーヌに操られているのだ。……しかし。

 

霊操(れいそう)……霊を操るだと? ふざけたことを抜かすな! ゾルクは生きているんだぞ!! 貴様が霊術師としてどれだけ優秀だろうと、生きた人間を操るなど出来はしない!!」

 

 マリナさんの反論は当然のもの。……なのだが。

 

「フィアレもそう思うけどさぁ、実際に操れちゃったわけだし。ピリピリするより現実を見なよ、マリナ・ウィルバートン」

 

 その言い分も、もっともなのである。現にゾルクさんは操り人形と化しているのだから。

 

「フィアレーヌ、戦うのならさっさと始めましょう」

 

「そだね。んじゃ、遊んじゃうよー♪」

 

 いよいよ仕掛けてくる。ゾルクさんと戦いたくはないが、それでも弓を引かなければ……。

 

「お友達召喚♪ 突撃しちゃえー!」

 

 上機嫌のフィアレーヌは、ドルド火山で交戦した時のように白い影――死霊の軍団を出現させた。

 私達に攻撃干渉できるよう具現化された死霊は耐久力が無く、一体ずつであれば大した脅威にはならない。問題は、その数にある。大群で押し寄せてくる死霊を各個撃破していては処理が追いつかないのだ。

 

「フィアレーヌ……いい加減にしろっ……!!」

 

 人っ子一人いない、随分と広い街路。ここを簡単に埋め尽くす死霊軍団を前にし、マリナさんは怒りに震える。そして流れるように二丁拳銃を融合させ、両腕で抱えられる小型の大砲として装備。内蔵されたビットを最大限に活性化させ、死霊軍団の真っ只中に照準を合わせると。

 

「返せ!! ゾルクを返せえええええ!!」

 

 絶叫と共に極太のレーザービームを発射した。それは彼女の秘奥義、ファイナリティライブ。光線が死霊軍団の大半を掻き消していくが、同時にヴィオの町へも被害が及んだ。一連の騒動によって既に住民が避難していて幸いだった。そして肝心のターゲットは光線を避けてしまう。

 

「ちぃっ、外したか!!」

 

 いくら街路が広いと言っても町中で巨大な光線を発射すれば、家屋は少なからず損壊する。普段のマリナさんであれば、このように周りを顧みない行動は決してとらなかっただろう。しかし今は怒り狂い、適切な判断を下せなくなっている。ゾルクさんに対する想いは、それほどまでに強いのだ。

 

「ならばもう一撃だ!! 消し飛べ、ファイナリティライブ!!」

 

 そしてなんと秘奥義を連発。一射目を免れていた死霊達も、二射目に呑まれていった。

 巨大な光線は死霊軍団を消滅させた後、フィアレーヌに向かって猛進していく。けれども彼女は取り乱さず、ゾルクさんに命令する。

 

「しつこいなー。救世主、フィアレ達を守って♪」

 

「はい」

 

 従順な態度で無機質に返事をし、光線に立ちはだかる。そして発動したのは。

 

「秘奥義。一刀両断剣(いっとうりょうだんけん)

 

 彼が得意としている大技、一刀両断剣(いっとうりょうだんけん)であった。

 柄に付加された蒼いビットを輝かせて両手剣を巨大化させるという、お馴染みの動作。しかし発声はごく静か、冷徹なまでの鋭い気迫が備わっているなど、もはや別人と言えるほどの変化を伴っている。

 巨大な両手剣は振り下ろされ、真っ向から光線を……その名の通り一刀両断した。

 

「うわはぁー! すっごいすっごーい! レーザービームがフィアレ達を避けてくよー♪ やるじゃん救世主♪」

 

「ゾルク・シュナイダーったら、それなりに実力があるのね。キラメイを夢中にさせる理由が、ほんの少しわかったわ」

 

 二つに断ち斬られた光線はゾルクさん達の両側に軌道を逸らされた。挙句、家屋に到達。幾つもの建造物を破壊していくのだった。

 崩れるヴィオの町並みを気にも留めず、マリナさんは激昂する。

 

「ただでさえゾルクはエンシェントビットに苦しめられているというのに、まだこんな目に遭わせるのか!!」

 

「はぁ~? 救世主がどんだけ苦しもうが知ったこっちゃないもーん。普通に戦って遊ぶより、救世主を霊操して遊ぶほうが何倍も面白いしー!」

 

「貴様ぁぁぁっ……!!」

 

「仲間同士で殺し合ってグッチャグチャになるところ、早くフィアレに見せてね♪ あとで霊操を解いた時、救世主がどんな顔するか楽しみ~! いーっぱい絶望してほしい♪」

 

「……ふざけるなああああああああ!!」

 

 響き渡る咆哮。マリナさんは怒り狂う。無邪気に笑うフィアレーヌの邪悪な態度に耐えろと言うほうが無理だ。

 彼女が再び引き金を引かぬよう皆で取り押さえると、ミッシェルさんが説得する。

 

「マリナ、頭を冷やして! さっきはフィアレーヌの命令のおかげで無事だったけど、こんなこと繰り返してたらゾルクにも当たっちゃうわよ!! そもそも被害を食い止めるんじゃなかったの!? あなたが町を壊してどうするのよ!!」

 

「……くっ……!」

 

 抑えきれない怒りのせいでまだ呼吸は荒いが、マリナさんは動きを止めた。間髪を容れず、まさきさんも声をかける。

 

「あの霊能娘、純真なる外道と見受けた。故に、お主が憤激するのも致し方なし。しかし、だからといって闇雲に動いてしまえば救えるものも救えぬぞ。普段のお主を取り戻すのだ……!」

 

 二人の言葉を黙して聞き入れ、険しさを取り除いていく。

 

「……完全に、頭に血がのぼっていた。みんな、迷惑をかけて申し訳ない」

 

 マリナさんは反省し、謝罪を述べた。

 けれども、おかげで死霊軍団はいなくなったので動き易くなっている。また召喚される前に打って出なくては。

 

「そんなところで固まっていたら、いい(まと)にしかならないわよ」

 

 容赦なく割り込んできたのはメリエルの声。密集した私達を一度に葬るべく、大筆を振るい緑色の線で地に文字を描いていた。

 

翠風(すいふう)、剣を成せ!」

 

 その文字とは「斬」。描かれた「斬」は完成を機に薄れていく。文字そのものが完全消滅した直後に放たれるのが、メリエルの筆術の特徴なのだ。

 

「いい(まと)ですって? 大きなお世話ね。なんのためにあたしが居ると思ってるのよ!」

 

 メリエルの嫌味に反発し、ミッシェルさんも大筆を巧みに操る。足元では、澄んだ海色の小さな魔法陣が完成しようとしていた。

 

「ビリジアンブレード!」

 

 その間に「斬」の文字が消え去り、メリエルの筆術が襲いかかってきた。遥か上空から降り注ぐ、疾風を纏った無数の緑剣(りょくけん)である。

 一方で海色の小さな魔法陣は拡大し、私達四人を覆って余りある大きさとなる。仕上げに、ミッシェルさんは大筆の石突きを魔法陣の中心へ突き刺した。

 迫り来る剣の雨。しかし私は臆することなくミッシェルさんの傍にいる。

 

万物(ばんぶつ)遮断(しゃだん)せし、誠実なる土耳古石(とるこいし)!」

 

 何故ならば、彼女がこれから発動するのが。

 

「ターコイズグラスパー!!」

 

 堅牢堅固(けんろうけんご)を誇る筆術だから。

 

「ビリジアンブレードが防がれた……!?」

 

 メリエルは目を見開き、現状を信じられずにいた。

 ミッシェルさんが発動した上級筆術ターコイズグラスパー。魔法陣全体を半球状の澄んだ海色の光で包み込んで外部からの攻撃を一切無効化する、非常に有用な防御の筆術である。無数の緑剣は先端を海色の光に触れさせた途端、例外なく全て跳ね返され消えていった。

 私は百日の旅の中で、この筆術に何度も助けられた。だから、ミッシェルさんが済んだ海色の線を走らせた時点で安心していたのだ。

 

「どうかしら? これがあたしの、絶対無敵の作品よ!」

 

「……へえ、やるじゃない」

 

「筆術がぶつかり合うの、修行を思い出さない? ついでにあたしのことも思い出してくれたら嬉しいんだけど」

 

 自信満々で誇らしげなミッシェルさんとは対照的に、メリエルは余裕の態度をどこかへ追いやり、低く唸るような声を出す。そして思い出話は無視された。

 呼びかけには応じてもらえなかったが仕方ないと割り切り、ミッシェルさんは次の行動に移るつもりだ。

 

「さ! 今の内にみんなを強化してあげなきゃね!」

 

 ターコイズグラスパーを解くため魔法陣から大筆を引き抜こうとする……が。

 

土鎧(どがい)、立ちはだかる!」

 

「え?」

 

 既にメリエルは、土色に光る線で新たな文字「鎧」を描いていた。仕上がった「鎧」は消えていき術名が叫ばれる。

 

「アンバーウォーリア!」

 

 地属性の魔力が集まり、瞬く間に人型のシルエットを成していく。召喚されたのは、岩石で造られた猛々しき巨人だった。ミッシェルさんの『ソルフェグラッフォレーチェ』を余裕で超えるくらいの長身である。

 早速、岩石の巨人は二本の剛腕を振るって半球状の海色の光を殴り始めた。ズシン、ズシンと重い音が何度も轟く。

 

「ちょ、ちょっと! なにすんの!? 術を解けないじゃないの!」

 

「一回で決められないのなら隙間なく連続で攻めさせてもらうだけよ。その絶対無敵とやら、どのくらい保てるのかしら?」

 

 いまターコイズグラスパーを解除すれば、その瞬間に岩石の巨人から致命傷を貰ってしまう。それに絶対無敵の防御も永遠ではない。早くメリエルを攻撃してアンバーウォーリアを中断させなければ、どのみちミッシェルさんは倒されてしまうのだ。

 

「ひいぃ~!! これはさすがに想定してなかったわぁ~!!」

 

 メリエルのしたり顔を前に、涙目で慌てふためくミッシェルさん。防御が決まった時は最高にカッコよかったのに……などと嘆く余裕も無い。

 筆術師同士の対決に気を取られていると、前進してくる人影が。

 

「ゾルクさんがやってきます!」

 

 私が最初に気付き、皆に知らせた。フィアレーヌから命令を受けたのだろう。しかも新たに召喚された死霊軍団のおまけ付きである。

 

「拙者が相手を務めるしかあるまい。マリナとソシアは向こうの二人を攻めるのだ……!」

 

 伝えるや否や、まさきさんは単身で海色の光の外へ飛び出した。愛刀を鞘に収め、死霊軍団へと駆け抜ける。どうして納刀したのか……その理由は。

 

神空豪破刃(しんくうごうはじん)……!!」

 

 渾身の居合い抜きによって生まれた衝撃波を刃とし、広範囲の敵を斬りつけ、威力のままに吹き飛ばす奥義。これを見舞うためだった。

 この一撃で死霊を(ことごと)く抹消。加えて、余波でゾルクさんの足止めに成功する。そして息つく暇も無く、両手剣へ自らの刀を打ちつけた。フィアレーヌが居る限り、たとえ封印護符を貼り直そうとも無意味。力ずくで動きを制限するしかないのだ。

 

「これほど短い間隔で再び刃を交えることになろうとは。味方に刀を向けるこの感覚、やはり慣れぬ。一刻も早く支配から逃れるのだ、ゾルクよ……!」

 

 ……応じる様子は無い。それどころか両手剣を強引に振り切って鍔迫り合いを中断し、抵抗する始末。

 

「発動。瘴魔哮(しょうまこう)

 

 ゾルクさんの全方位を包むように、足元から闇色の瘴気が噴き出した。雄々しき魔神の如き絶叫音を伴っている。

 

「ぬうっ、手強い……!」

 

 術技を喰らってまで足止めを続けるわけにはいかない。まさきさんは後方に跳躍して難を逃れるのだった。

 剣士と武士が一進一退する中、私もマリナさんと共にターコイズグラスパーの外へ出て六幹部の二人を狙っていた。

 まずは私から。無限弓の中央部にある上下二つのビットに挟まれた空間から矢を五本生み出し、弦を引く。そして技の名を叫んだ。

 

散・降雨閃(さん こううせん)!!」

 

 上空に向けて同時に放った五本の矢を破裂させ、細かな破片を針のような雨として飛び散らせる奥義である。

 

「かすり傷にしかならないけれど小癪(こしゃく)ね……!」

 

「あーもう! うっとーしいー!」

 

 二人の集中力が揺らいだ。今こそ好機。

 

氷柱降(つららこう)!!」

 

 破片の雨に紛れて飛び上がったマリナさんが、氷柱のように鋭い急降下蹴撃を叩き込む。

 

「ぐうっ!? ……しまった、アンバーウォーリアが!」

 

 見事、メリエルの背中へ直撃。海色の光を延々と殴っていた岩巨人は、みるみるうちに消滅していった。

 やっと自由になれたミッシェルさんは名誉挽回に向けて意気込む。

 

「ありがと、助かったわ! この調子でフィアレーヌをやっつけましょ! ゾルクを助けたらメリエルもお願いね♪」

 

「……そうしたいのは山々だが、簡単ではないな」

 

 深刻に零すマリナさん。その理由を私も見つめる。

 

「ゾルクさんを盾に……!」

 

 まさきさんとの攻防を打ち切り、フィアレーヌを守護するため舞い戻っていた。秘奥義ファイナリティライブを両断した時と同様である。

 

「なーんで今さら戸惑ってんの? さっきだって派手に光線を撃ってきてたじゃん。気にしないで、もっともぉーっと撃ってきて良いんだよー。ぜんぶ救世主がなんとかしちゃうから♪」

 

「なんと純真な卑劣さか……!」

 

 悪びれる様子が全く見られない、フィアレーヌの言動。まさきさんは、根本から捻じ曲がった彼女の心を理解した上で「卑劣」と呼ぶのであった。

 ゾルクさんを霊操から解放しようにも、彼自身を盾にされてはフィアレーヌに攻撃が届かない。そればかりか彼女はたった今、三度目となる死霊軍団の召喚をおこなった。そしてもう一人の実力者メリエルの存在も忘れてはならない。

 この多勢に無勢の状況でゾルクさんを救出するのは困難を極める。

 

「フィアレーヌを直接倒すのは無理か。…………こうなったら」

 

 一人、マリナさんは何かを決意した。

 

「みんな、ゾルクの救出は私に任せてほしい」

 

「えっ! なんとか出来るの!?」

 

 驚くミッシェルさんへ、落ち着いた様子で答える。

 

「策を思いついたんだ。頑張って、あいつを連れ戻してくる」

 

 我を忘れていた時とは違い、確かな意志を持っての宣言。これならきっと大丈夫だろう。私達は安心した。

 

 

 

 ――しかし後悔することになる。ここでマリナさんを止めていれば、と――

 

 

 

「でしたら善は急げです。行ってください! メリエルとフィアレーヌは引き受けます!」

 

「ああ!」

 

 返事と共に走り始めるマリナさん。私達は彼女の往く道を切り開くため、死霊軍団を瞬く間に蹴散らした。

 次にミッシェルさんとまさきさんがメリエルを、私がフィアレーヌの動きを牽制しにかかる。

 

「懲りずにフィアレ達の邪魔をするなんて。どーしても救世主を取り返すつもりなの? そんなのムリムリ! 霊操はフィアレにしか解けないんだから♪」

 

「マリナさんは仲間想いですから、きっとどうにかしてくれます! ゾルクさんだって、あなたの霊操に屈し続けるような人ではないんですからね!」

 

 信頼を以て強く反論した。だがフィアレーヌはそれが気に食わなかったらしい。

 

「むっ、生意気ー。あんたなんか燃えて死んじゃえ!」

 

 右手の平を突き出し、炎を帯びた霊力を練り上げる。するとフィアレーヌの小柄な体躯をすっぽり包み隠すほど巨大な火炎球が出来上がった。

 

霊砲鬼火玉(れいほうおにびだま)ぁー!」

 

 撃ち放たれた火炎球。速度はそれほどでもない。これなら簡単に見切れる……はずだった。

 

「きゃああああっ!?」

 

 きちんと回避運動をとったつもりであったが直撃を受けてしまう。……実はこの火炎球、追尾能力を有していた。一度避けて油断した私を、背後から容赦なく包み込んできたのだ。

 

「ソシア!!」

 

「無事か……!?」

 

「だ……大丈夫です。こんなもの、あまり効きませんから……!」

 

 ミッシェルさんとまさきさんが咄嗟に心配してくれた。私は気丈に振る舞ったが……実のところは痩せ我慢。たったの一撃で全身を焼かれ、限界を迎えている。

 

「こ、こんなもの!? 効きませんってなに!? 焦げ焦げになってるくせにぃ~っ!!」

 

 フィアレーヌが憤慨している隙に治癒術ヒールを発動し、私は命の危機を乗り越えた。まだ火傷は多少残っているけれど、それは戦闘が終わった後で癒せばいい。

 

「あんた、ほんっと生意気ね! フィアレ超ムカついたー!! ……ねえ救世主! 早くマリナ・ウィルバートンを殺して、こっちに来なさいよ!!」

 

「はい」

 

 怒るフィアレーヌがゾルクさんを急かす。無機質に応答した彼は虚ろな蒼眼でマリナさんを捉えると、両手剣の切っ先を向けた。そして力強く足を踏み出し、刺し殺すつもりで駆け始める。

 真正面からの特攻に対してマリナさんは……何故か棒立ちのまま。避けようとしていない。それどころか二丁の無限拳銃を……両腰のホルスターに収めてしまった……!

 

「フィアレーヌ。その命令は、かえって都合がいい」

 

 ゆっくりと両手を広げて呟いた。

 

「……えっ、まさか!? マリナさん、駄目です!!」

 

 彼女の思惑に気付いた時には、もう――

 

 

 

 ――ぐさり、と刃の根元に達するまで貫く両手剣。

 

 永久に記憶してしまいそうな、生々しくて短い音。

 

 マリナさんは分厚い刃で……

 

 胴体を串刺しにされた――

 

 

 

 私達は言葉を失った。

 反対に、フィアレーヌとメリエルは歓声をあげている。

 

「やったー! これでマリナ・ウィルバートンは殺せたも同然だね♪」

 

「あなた達もすぐに後を追わせてあげる。観念なさい」

 

 二人が攻撃の手を休めることはない。マリナさん達のところへ一歩も近付けなかった。

 マリナさんは激痛を必死でこらえる。けれど表情は優しさに満ちていた。

 

「ゾルク、救いに来た」

 

 震える両手で、彼の身体をぎゅっと抱き締める。

 

「頭が固い、と笑ってくれ。やはり私は自分に責任があるとしか思えない。だから、お前の身に何かあれば命を懸けてでも救いたいと考えていた」

 

 ゾルクさんは虚ろな蒼眼を見開いたまま、両手剣を突き刺したまま、ぴくりとも動こうとしない。

 

「もう戦わなくていいんだ。エンシェントビットなんかに振り回されてはいけないんだ。お前をエグゾアの思い通りになど……させてたまるものか」

 

 霊操されているのに、まるでマリナさんの優しさを受け入れているかのよう。

 

「暴走するなら止めてみせる。操られるなら解放する。お前を救うと決めた。そして今が、救うべき時だったんだ」

 

 よりいっそう強く彼を抱擁し、小さく笑う。

 

「だが、こんな無茶をしたから……お前は怒るかもしれないな。あとで謝りたい。それに、みんなも……心配している……。だから……」

 

 段々とマリナさんの声量が弱まっていく。そして最後の力を振り絞った。

 

 

 

「お願いだ……。本当の、お前を……取り戻してくれ……ゾルク…………」

 

 

 

 抱き締めていた両腕がぶら下がる。マリナさんは彼にもたれかかる形で……翡翠の眼を閉じてしまった。

 時を同じくして、天から水滴がぽつりぽつりと。すぐに勢いを増していく。

 

「マリナさん!!」

「マリナ!!」

「マリナ……!!」

 

 降りしきる雨の中、一斉に叫ばれる彼女の名。しかし返事は来ない。そしてフィアレーヌは献身を嘲笑う。

 

「キャハハ♪ なーに無意味なことやってんだか。あんなので霊操が解けるわけないじゃん!」

 

 けれども嘲笑はすぐに止んだ。

 

「う……わ……なんだよ……なんだよこれ……!?」

 

 ゾルクさんが正気に戻ったからである。

 しかし彼は惨状に直面して混乱に陥った。思わず柄を手放し、後退りしてしまう。当然マリナさんは、その身に刺さった両手剣と共に濡れた街路へ倒れた。

 許容できない現実。逃げ出したいほどの恐怖。これらが一挙に押し寄せる。

 

「なんで……マリナに、剣が刺さって……俺がやったのか……? そんな……そんなっ…………うわああああああああ!!」

 

 何も飲み込めないまま、ただ絶叫。その末に彼は気を失い、膝から崩れ落ちてしまった。

 一連の光景に最も動揺したのは、私達ではなくフィアレーヌだった。

 

「え……なんで解けちゃったの!? フィアレの霊操は完璧なのに……」

 

 能力に対する自信を失っているのだろうか。これはチャンスである。

 

「覚悟せよ、フィアレーヌ……!!」

 

 まさきさんは怒りを込めて名を呼んだ。刀をかざし急接近する。

 

「ひぅっ……! どうしてそんな怖い顔するの!? フィアレなんにも悪いことしてないよ! 遊んでただけじゃん!!」

 

「理解できぬとは哀れなり……!」

 

 最早、貸す耳は無かった。

 

爪龍円月刃(そうりゅうえんげつじん)……!!」

 

 乱れた太刀筋で刀を振るい、一歩ずつ踏み込んでいく。前進しながらの連続斬撃である。その剣速たるや、刃に触れた雨粒が目に見えるくらい激しく破裂するほど。

 

「ぎぃっ!?」

 

 最後の一太刀がフィアレーヌを通り過ぎた。彼女に刻まれた斬撃痕からは、赤い血が雨に流され痛々しく(したた)っている。だが致命傷と呼ぶには至っていない。

 

「こ、こっち来ないでぇー!!」

 

「仕留め損なうとは……不覚……!」

 

 慌てて後退するフィアレーヌを見て、詰めの甘さを恥じた。

 確実に斬撃を与えたはずが、どうしてまだ動けるのか。彼女の身体から離れていく白い(もや)から察するに、霊術によって防御力を上昇させていたのだろう。まさきさんは華奢な見た目に騙され、力の加減を間違えてしまったのだ。

 

「ううっ……あああ……いたい、いたいよぉ……。メリエル、いたいよぉぉぉ……!!」

 

 やっとの思いでメリエルの元に辿り着き、すがりついた。自身から流れる血を見て痛みを実感する。戦意喪失し、雨に負けない大粒の涙を流した。

 

「戦闘続行は不可能ね。リゾリュート人の回収も切り上げていい頃合いだし、退却するわよ」

 

 メリエルは速やかに撤退を決定。すると泣き喚くフィアレーヌを抱え、一機のギルムルグを呼び寄せる。

 

「……あなた達、命拾いしたわね。マリナ・ウィルバートンはどうか知らないけれど」

 

 そして捨て台詞を置いて迅速に飛び移り、残りの四機を従えて雨空に消えていった。今はゾルクさんとマリナさんを介抱するのが先決。六幹部の撤退は有り難かった。

 ゾルクさんの方は再び封印護符を貼り付ける必要があるため、まさきさんに手当てしてもらうことに。私とミッシェルさんは、重傷を負ったマリナさんにつく。

 

「早く治癒術をかけましょう!」

 

「ええ。剣をちょっとずつ抜きながら迅速に、出血を最小限に抑えながらね! 雨でけっこう流されてるはずだから…………」

 

 ――ここで私達は、やっと気付いた――

 

「…………えっ!? どういう、ことなんでしょうか……!?」

 

「あ、あら? おかしいわね……。あたし達、夢でも見てるのかしら……」

 

 貫通した両手剣でせき止められているかもしれないと思い、引き抜きながら傷口を確認する。しかし見れば見るほど、その可能性は無いと知らされた。

 私達が愕然とした事実、それは。

 

「マリナさんから……血が……」

 

 ただの一滴も零れていなかったのだ。


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