魔法少女リリカルなのはStrikers~風と桜の記憶~ 作:strike
申し訳ありません!!
今回は、サブタイの通り少し重い話になるかも
いつになったら明るい話が書けるのだろうかと思う今日この頃です。
さて、お待たせしました。
第9話スタートです!!
なのはの検査が無事に終わってからヴィヴィオを迎えに行くと、そこには翔馬達が想像していた通りの光景があった。
「ヴィヴィオ、すまない……ここまで遅くなるとは思わなかったんだ」
「待たせちゃったお詫びに今日はヴィヴィオの好きなところに連れて行ってあげるから……ね? 機嫌直して?」
翔馬達はヴィヴィオの機嫌を取り戻すために先ほどから何度かこのやり取りを続けているのだが、ヴィヴィオは黙ったままで翔馬達と目を合わそうともしなかった。
そんな様子のヴィヴィオを見て翔馬達は困ったように顔を見合わせると、唐突にか細い声が聞こえたため2人は耳を傾けた。
「……結果はどうだったの?」
「え?……ああ、うん。 大丈夫だよ!! 記憶はまだ取り戻せないけど……体の方は異常無しだって」
「そっか」
ヴィヴィオはなのはの言葉を聞くとやっと顔を上げて笑顔をなのは達に向けた。
「それじゃ、わたしを1人にしたバツとしてオムライスをご馳走して下さい!!」
「うん、 今日はヴィヴィオの行きたい所に行こうね」
なのははヴィヴィオの笑顔を見て安心したように微笑むとヴィヴィオの手を取って歩き始めた。
そして、翔馬はその様子を後ろから眺めながらさっき模擬戦で戦ったときのなのはのことを思い出していた。
「記憶が完全に消えているはずなのにあの行動……一体……」
「パパ!! 遅いと置いて行っちゃうよ!!」
翔馬が少し考え事をしているうちになのは達は先に行ってしまったようで少し遠くからヴィヴィオが手を振っていた。
「今は考えても……か」
翔馬は一旦考えるのを止めると未だに手を振り続けるヴィヴィオに苦笑いして、早歩きで声の持ち主の場所まで歩き出した。
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翔馬達は病院を出ると、行く先を何処にするか考えていた。
そんな時、ヴィヴィオはなのはの手を解くと翔馬達の前に回り込んで笑顔を見せる。
「昨日のショッピングモールに行きたいな」
ヴィヴィオは昨日食べたオムライスが余程気に入ったのか、同じ店をご所望のようだった。
しかし、翔馬となのはは少し厳しそうな表情を浮かべている。
「ヴィヴィオ、あの場所は昨日の事件の所為で封鎖中になっているから行けないんだ」
「やっぱりそうですよね……あ!! ヴィヴィオ、あそこは? あの商店街の所のオムライス専門店」
そう言って、なのはは昨日の洋食店の代わりにヴィヴィオと1度だけ入ったことのある商店街のオムライス専門店を挙げてみる。
すると、ヴィヴィオは嬉しそうに表情をキラキラさせた。
「ホント!?」
「うん、ヴィヴィオ、あそこも気に行ったみたいだったから」
「へぇ、そんな店あったんだな。 全然気が付かなかったよ、商店街のどこにあるんだ?」
なのは達の楽しそうに話をする様子を見て、そこで決まりかと思った翔馬はその店を知らなかったため場所を尋ねる。
だがその途端に、ヴィヴィオは何かに気が付いた様子を見せると少し元気がなくなり俯いてしまった。
「やっぱり、……いいや」
「え? ヴィヴィオ?」
「どうしたんだ? 結構おいしい店だったんだろ? 遠慮なんてしなくていいんだぞ」
なのはが翔馬に場所を説明しようとした瞬間に、ヴィヴィオの寂しそうな声が2人の行動を遮った。
急なヴィヴィオの変化に2人は戸惑ったように様子を伺う。
しかし、翔馬達がその原因を見付けることができない内にヴィヴィオは俯いていた顔を上げ、笑顔を浮かべて2人を見上げた。
「今日は……ママのオムライスが食べたいな」
「……そんなのでいいの? ヴィヴィオがいいのなら私は構わないけど……」
「ヴィヴィオ……、……それじゃ、材料の買い出しだな」
翔馬はヴィヴィオの様子に何か引っかかりを感じて声を掛けようと喉まで出かかるが、それを飲み込んで買い物を提案した。
言葉を飲み込んだのは、今のヴィヴィオに何を尋ねても恍けて答えてはくれないだろうと感じたからだった。
すると、なのはは何かに気付いたかのように少し緊張した声でヴィヴィオに尋ねる。
「え~と、それなら家で作らないとだよね……」
「……? うん、そうだよ?」
なのはの言葉に当然とばかりにヴィヴィオが頷くと、なのはは躊躇いがちに翔馬に目を向ける。
翔馬はその視線を受けて納得したように苦笑いを浮かべた。
「それなら俺は昼食の間、席を外そうか?」
「あ、いえ、そんな」
「ダメッ!!」
「「っ!?」」
翔馬の言葉になのはは慌てて家に招こうと声を出そうとするが、それよりも前にヴィヴィオの悲痛な声が響いた。
「……ヴィヴィオ?」
「あっ……え、え~っと、パパも一緒がいいなぁって、おもって」
なのはがヴィヴィオにそっと声を掛けると、ヴィヴィオはハッとした表情になって少し頬を掻きながら誤魔化すようにそう言った。
しかし、先程から様子がおかしい事に気が付いている2人は放って置けるはずも無く、なのはがヴィヴィオの目線に合わせて屈んで瞳を見つめる。
「どうしたの? まだ、怒ってる?」
「……ううん、怒ってないよ? 大丈夫、なんでもないから!! 早くお買い物に行こう」
そう言っていつものように笑顔を浮かべて前を歩き始めるヴィヴィオは……何故だか少し寂しそうに見えた。
しかし、翔馬達はそれを見送る事しかできず、少しだけ不安そうに顔を見合わせてヴィヴィオに付いて行くのだった。
「それじゃ、車を回してくるから2人はここで待っててくれ」
「うん!!」
「すみません、お願いします」
翔馬達は取り敢えずヴィヴィオのことは少し注意しながら様子を見ることにして、買い物に向かう事にした。
そして、翔馬が回してきた車に2人が乗り込むとなのはの家に近いデパートに向かい始める。
「藤田三佐は車をお持ちだったんですね」
「ああ、一応公的にも私用にも使えるようにしてあるんだ。 これの方が地上での移動が楽でいいしな」
「パパは運転がとっても上手なんだよ?」
翔馬達の会話にヴィヴィオが後部座席から顔を覗かせて割り込むと、なのはは少し苦笑いになった。
「ヴィヴィオが知ってるってことは私も乗せて貰った事があるんですね……」
「まぁ、それなりには乗せてるな」
「多分いっぱい? って、昨日も乗ってショッピングモールに行ったんだよ?」
「あはは……、そうだったんだ」
なのはは少し困ったように表情を曇らせると、翔馬は少し笑みを零してチラッとなのはの方を見る。
「あんまり記憶の事は考えるな、今は買い物だ。 っと、そうだ、俺の事三佐って呼ぶの止してくれないか? 今は仕事中でもないんだしな」
「あ、すみません!! つい……、藤田さん……でいいですか?」
翔馬は記憶に関することから話を変えると、なのはは少し躊躇いがちに呼び方を変えてみる。
そして、翔馬がそれに反応しようとするとまたしてもヴィヴィオがそれを遮った。
「ママ、前みたいに翔馬くんって呼べばいいのに」
「ヴィヴィオ!?」
「確かに俺もその方が呼ばれ慣れてるし、そうしてくれないか?」
「藤田三佐まで!?」
「ほら、呼び方戻ってるぞ?」
翔馬とヴィヴィオは少しニヤニヤしながら、慌てふためくなのはの様子を観察していた。
そして、なのはは少し恥ずかしそうにしながら翔馬の名を呼ぶために口を開く。
「そ、それじゃあ……しょ……しょう……うっ!!」
「なのは!?」
「ママ!!」
なのはは翔馬の名前を呼ぼうとした瞬間に頭を押さえて車の窓にもたれ、突然の事に驚いた翔馬はその場に車を一旦停止させてなのはの肩を掴む。
「おい!! 大丈夫か!?」
「あ、は、はい、驚かせてすみません、ほんの一瞬、頭痛が走っただけで今はもう収まってるので……大丈夫です」
「ママ?」
「ごめんね心配かけて、もう大丈夫だから……ね?」
なのははヴィヴィオを安心させるように頭を撫でながら笑顔を見せた。
それに対して、翔馬は不安が消えないのか少し険しい表情でなのはを見つめる。
「本当に大丈夫なのか? 病院ならまだ近いし……」
「いえ……、本当に大丈夫です、今は完全に治まってますから」
なのはは翔馬に対しても笑顔を見せると、アピールのつもりなのか力こぶを見せるようにしていた。
その様子を見て翔馬は少しだけ安心したのか運転席に戻って背もたれに背中を預ける。
「もしダメそうならその時点でちゃんと声を掛ける事、いいな?」
「はい、お騒がせしてしまってすみません」
「気にするな、暫くは仕方が無い事だ」
翔馬はそう言って、ウィンカーを出すと再度デパートに向かって走り始める。
「名前、呼べないんだ……」
「まぁ、できないなら仕方ない、三佐と呼ばれるよりはマシだ」
「それなら、藤田さんでいいですか?」
「ああ、それで頼む」
翔馬はなのはの呼び方に了解して笑みを浮かべるとそのまま暫く車を走らせてデパートに辿り着き、3人は車から降りるとデパートの中に入って行く。
「それじゃ、オムライスの材料を買おう!!」
「お~!!」
「……相変わらずテンションの高い親子だな」
デパートの中に入りなのはが買い物かごを腕に掛けると2人は楽しそうに買い物を始め、翔馬は目の前の光景に苦笑いを浮かべながら2人の後を付いて行くのだった。
そして、翔馬は何もしないのは悪いと荷物持ちを買って出て食材売り場を回り、それからはなのはの様子も変わったような雰囲気は無く買い物は無事に終了した。
買い物を終えてなのはの家に到着すると、翔馬は一度荷物をなのはの家に運んでから車を駐車場に置きに行って再度なのはの家に上がる。
そして、キッチンの方を少し覗くとヴィヴィオとなのはが買い物した材料を並べて早速料理に取り掛かっているのが見えた。
すると、見られてる事に気が付いたなのははハッとした表情になって翔馬に声を掛ける。
「すみません、案内もせずに……今、お茶を……」
「いや、気を使わなくていいさ、飯をご馳走になるのに……それよりもこんなやり取りしてる時間が無駄だろう? ヴィヴィオもお腹空かせて待ってるぞ」
「あ……、それでは少し待っててもらっていいですか?」
翔馬はなのはの言葉に頷いていつもの定位置であるソファに腰掛けた。
すると、暫くもしなうちにヴィヴィオがやって来てチョコンと翔馬の膝に乗っかってグラスを差し出す。
「ありがとな、なのはに言われたか?」
「うん、持って行ってって」
「そっか……」
翔馬はまたヴィヴィオの元気がなくなっている事に気が付いたがその事には触れずにグラスに口を付けてお茶を飲み下した。
ヴィヴィオは膝の上でじっとして顔を俯かせており、部屋の中にはなのはが料理をする音だけが響いていた。
そして、暫くの時間が経ってなのはの料理もそろそろ出来上がるかと思っていた時、ぼそりと呟いたヴィヴィオ声が翔馬の耳に届いた。
「ママの記憶……いつ戻るの?」
「……正直分からない、戻るかもしれないし、戻らないかもしれない。 今言えるのはそれだけだ……悪いな」
「うん」
たったそれだけの会話を終えると翔馬の予想通りなのはの料理が出来上がったらしく、キッチンからなのはがヴィヴィオを呼ぶ声が聞こえた。
「ヴィヴィオ~、料理運ぶの手伝って!!」
「は~い!!」
ヴィヴィオが顔を上げた時には笑顔を浮かべており、翔馬の膝から降りるとなのはの元へ駆けて行った。
翔馬は首を横に捻って横目でなのはと楽しく料理を運ぶヴィヴィオを見ると、少しだけ目を伏せて何かを悩むように拳を額に当てた。
そして、ほんの一瞬だったその格好を崩すとなのは達か声が掛かり、ヴィヴィオと同じように笑みを浮かべてなのは達の食卓に入って行った。
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「はぁ~、おいしかった!! やっぱり、ママのお料理は最高だね!!」
「ああ、それには俺も同感だな」
「もぅ……2人して」
食事を終えて今は食後のお茶の時間。
ヴィヴィオと翔馬はなのはの料理を絶賛すると、なのはは少し照れくさいのか少しだけ頬を染めて困ったように笑っていた。
そしてそれから暫く3人で取り留めも無い話を続けていると、ヴィヴィオが何かに気が付いたかのように椅子から降りると時計に目を向ける。
「あ、いっけない!! これから練習するんだった!! ママ、パパ、ごめんなさい。 私これから出掛けなきゃいけないんだけど……」
少し申し訳なさそうにするヴィヴィオになのはと翔馬は笑顔を向けた。
「いってらっしゃい、ママ達の事はいいから、約束があるんでしょ?」
「ああ、行って来い」
「あ……、ありがとうママ、パパ。 それじゃ、行ってきます!!」
「はい、気を付けてね」
ヴィヴィオはなのはの見送りを受けると、玄関を飛び出して行った。
そんな様子のヴィヴィオを見送ってから2人は少しだけ不安そうに誰もいない玄関を見つめる。
「大丈夫、ですよね……」
「ああ、きっとあいつなら大丈夫だ」
なのはの問いに対して翔馬はそう答えると後ろ髪を引かれる思いはあったが2人でリビングに戻って行った。
そして、ヴィヴィオは……未だに玄関に背中を預けたまま動いていなかった。
「ううっ……っ……」
ヴィヴィオの瞳には溢れんばかりの涙が溜まり、それが零れないように必死に堪えていた。
しかし、ほんの数秒でもう限界だと感じたヴィヴィオは一目散にその場から逃げるように駆け出した。
走っても、走っても、目から溢れる物を拭っても、それは絶え間なく目の前の視界を歪ませた。
そして、気が付けば自主練でストライクアーツの練習をしている公園に来ていた。
きっと一心不乱に走ったせいで、体が覚えてるいつもの道を無意識に走って来てしまったのだろう。
ヴィヴィオはそっと周りを確認する。
今は昼過ぎの時間帯だが、今日は利用者が少ないのかヴィヴィオの見える範囲に人はいなかった。
「うっ……くっ、ううっ……」
だから抑える必要のない今、限界にまで来ていたヴィヴィオは堪える事が出来なくなってしまった。
なのはが大好きな
「うっ……うわぁぁぁぁっ!!!」
今までの悲しみを全てを吐き出すかのようにヴィヴィオは大声を上げて泣いた。
泣いて、泣いて、声が枯れるまで泣いた。
そして、暫くの間そうしているといつの間にか涙は止まっていた。
帰ろうかとも思ったがまだ目と鼻が赤くなって、さっきまで泣いていた事がばれてしまう。
だから、ヴィヴィオはその場で構えるとストライクアーツの練習を開始した。
真剣な表情で、今度こそ大切な人達を守れる自分になるために。
ヴィヴィオはステップを踏みながらシャドウボクシングのように回避しては拳を突き出し公園を動き回りながら練習し始める。
そして、何度目かのカウンターを放った時その拳が何者かに掴まれて動きが止まってしまう。
顔を上げると、そこには少しだけ厳しい表情をしたノーヴェが立っていた。
「なんですか?」
「なんだその動きは、そんなんじゃ体壊すぞ?」
ノーヴェは手に持った荷物を適当に放り投げるとヴィヴィオに見せつけるようにステップで敵の攻撃を躱して相手に出来た隙を見逃さず拳を放つ。
まるでそこには本当に戦う相手がいるかのような、綺麗な回避と攻撃だった。
「す……すごい」
「まぁ、あたしも修行中の身だし、教えられることなんてたかが知れてると思うけど……強くなりたいなら手伝うぜ?」
ヴィヴィオはノーヴェの言葉にハッとすると、少し俯いて目を擦り、次に顔を上げた時には真剣な瞳をノーヴェへ向けていた。
その視線を受けるとノーヴェも表情を引き締めてヴィヴィオの言葉に耳を傾ける。
「私……強くなりたいです、もう、守られてばかりの私は嫌だから……大好きで、大切で……私に勇気と優しさを教えてくれた。誰よりも幸せにしてくれた。そんな人達がもう悲しまないように!!今よりももっと強く……、大切なものを守れる私になりたいんです!!」
ヴィヴィオの言葉を受け止めたノーヴェは少しだけ目を閉じて、もう一度頭の中でヴィヴィオの言葉の意味を反芻させる。
そして、その言葉に込めた思いをしっかりと受け止めたうえでノーヴェは目を開いて笑って見せた。
「そっか、……それならまずは基礎からだな!! あたしの真似してみろ」
「……はいっ!!」
ヴィヴィオは少しだけ目に残った涙を振り払うと、それからノーヴェとの練習を開始するのだった。
場所は変わり、高町家。
そこではリビングで向き合うなのはと翔馬の姿があった。
「すみません。大したおもてなしもできなくて……」
なのははリビングに座って開口一番にそう言うと、翔馬は静かに首を振った。
「今日はそれが目的じゃないし、そもそも記憶を失う前の高町は俺がここに来る時そんなに気を使っていなかった」
「……そうでしたか」
なのはは翔馬の言葉に肩を落とすと少し俯いたが、それも少しの間の事で顔を上げると真剣な瞳で翔馬を見つめる。
「教えて頂けますか? 私と藤田さんの関係……私達が今までどんなことをして過ごしてきたのか」
なのはの言葉に翔馬は軽く頷くとまずは翔馬自身の事からと言って話し始めた。
「俺は時空管理局空戦魔導師。武装隊の空士101部隊隊長、藤田翔馬三等空佐だ」
「はい、それは……大体」
「ああ、そして、俺達が出会ったのは10年前、そこから8年の時が空いて2年前に再開した」
翔馬の言葉になのはは目を見開いて、口を震わせる。
「10年も前から……、それよりも2年前って……まさか」
「想像通りだ、俺達は機動六課で共に戦っていた……だから、ヴィヴィオとも高町と同じ時間を過ごしている」
「パパって呼ばれているのは、もしかして……」
「まぁ、それもあるな……だけど、他の意味合いもある」
翔馬はそこで一旦言葉を区切って、呼吸を整えるとなのはのを瞳を見つめて真実を口にする。
「多分これがお前の聞きたかった事なんだろうが、……俺達は1年半前から付き合ってる。つまり恋人同士だった」
「……やっぱりそういう事だったんですね、はやて三佐やフェイト執務官、ヴィヴィオの反応を見てたら結婚しててもおかしくないのかなって少し思ってました」
なのははそう言うと、途端に体を震わせて頭を下げた。
「ごめんなさい!! 私、貴方の事全然知らなくて……色々と、酷いこと言ってしまいました!!」
「なのは……」
「……普段は、そう呼んでくれていたんですね」
「っ!? すまない、今のは……」
翔馬はなのはの行動に驚いたのか無意識にいつもの呼び名で呼ぶと、なのはは笑顔を見せる。
「いえ……、そうじゃないか、大丈夫、しょ……藤田君にそう呼ばれるの嫌じゃないから。あはは、やっぱり下の名前自体がダメみたい」
「……なのは」
そう言って無理に笑顔を作るなのはに翔馬は少しだけ顔を伏せて、先程考えたことをなのはに伝えようと真剣な表情をなのはに向けた。
「ありがとう、そうやって砕けた口調で話してくれるだけで気分が楽になる」
「ううん、私が色々と忘れてるせいで……だし」
「やっぱり意識してないと口調を戻すのは辛いみたいだな?」
「あはは、ごめんなさい、でもきっと」
「だから、提案がある」
翔馬はなのはの言葉を遮ると深呼吸をして、震える手を隠しながら口を開いた。
「俺達…………別れよう」
「……え?」
そう言って翔馬は真剣な瞳で別れの言葉を告げるのだった。