魔法少女リリカルなのはStrikers~風と桜の記憶~ 作:strike
穏やかな日常からうつって久々の戦闘シーンですw
これから物語がどう進展していくのか、ご注目下さい!!
それでは第4話スタートです!!
少し遅い昼ご飯を食べ終えた3人は再度買い物へと向かい目的を果たしてしまった翔馬はこの後の予定について気になり隣で歩くなのはに話しかける。
「それで、これからどこへ行くんだ?」
「今度は食器と、お部屋のインテリアとか見に行こうかなって」
なのははもうすっかり着ている服に慣れたようで、少し前のように恥ずかしがったりせずいつもの様に翔馬の隣を歩きながらそう答えると、唐突に間に挟まれていたヴィヴィオが2人の手を引っ張る。
「ママ、パパ、あれ!!」
「「ん?」」
翔馬の手を離して、ヴィヴィオが指さす先にはこのショッピングモールの制服を着たお姉さんが子供たちに無料で風船を配っていた。
「なるほど。 さっきから風船を持った子供が多かったのはこれの所為か」
「そうみたい。 ヴィヴィオもあれ欲しいの?」
「うん!!」
ヴィヴィオは笑顔を浮かべて頷くとなのはの手を引っ張ってお姉さんの方へと駆けて行く。
「ちょっとヴィヴィオ!? も、もぅ……」
「あはは」
なのはは急に手を引かれたため少し体勢を崩しながらヴィヴィオに付いて行き、翔馬は2人の姿を見て一度微笑むとその後をゆっくりと歩いて行った。
「こんにちは!!」
「はい、こんにちは。 元気一杯だね? 風船どうぞ。」
ヴィヴィオがお姉さんの元まで到着すると、丁度人が捌けた所だったのか直ぐに風船を手に入れることができた。
そして、お姉さんはヴィヴィオとなのは、そして翔馬の姿を見ると優しい笑みを浮かべる。
「今日はお父さんと、お母さんとお買い物?」
「うん!! 久しぶりのお出掛けだから、すっごく楽しいの!!」
「そっか、よかったね」
ヴィヴィオの言葉になのはと翔馬は顔を見合わせて微笑み、従業員のお姉さんに軽く会釈をすると向こうも会釈を返してくれた。
そして、何か気になる事でもあるのか一度ヴィヴィオの喜んでる姿を見てから翔馬達に目を向け直した。
「こんなこと言うのもどうかと思うんですが、とてもお若いご夫婦ですね? こんなに大きいお子さんがいるのに……」
「え、えっとぉ……」
なのははお姉さんの夫婦と言う言葉に、少し顔を赤らめるがどう返答したものかと詰まってしまう。
それに対して翔馬は仕方がないという表情を浮かべてからヴィヴィオを抱きかかえるとお姉さんに笑みを向けた。
「実際の所、お互いにまだ若いって言うのもありますが、この子に関しては妻に色々と頑張ってもらいましたからね」
「えっ!? 翔馬君!?」
翔馬の言葉を普通に受け取ってしまったお姉さんは驚いて感嘆の溜息を漏らすが、驚いたのはお姉さんだけでは無かった。
いきなりの翔馬の妻発言になのははボンッと音を立てて顔を瞬間沸騰させ、恥ずかしそうに顔を伏せていた。
それを見たお姉さんは驚きも引っ込み笑顔で2人を見つめていた。
「うふふ、お2人は結婚してもアツアツなんですね。 羨ましいです」
との事で、翔馬は自慢げに頷き、なのはは言うまでも無く恥ずかしさの限界値を越えてオーバーロードしていた。
「それでは、この後も楽しんで行って下さいね」
「バイバ~イ!!」
翔馬に抱かれたヴィヴィオは大きく手を振って、お姉さんもそれに習って小さく手を振って翔馬達を見送る。
翔馬となのはは歩きながら軽く会釈して、完全に風船を貰った場所から離れるとなのはが照れ顔で翔馬を睨み付けた。
「翔馬君!! あんな場所で私達に関する嘘は良くないと思うよ!?」
「ん? 別に向こうも俺達が誰かなんて気づいてなかったみたいだし、あの流れで否定するのも逆におかしく思われるだろ?」
「そ、それはそうだけど……」
なのはは翔馬の言葉に言い返すことができず勢いを無くすと、少し項垂れるようにしていた。
それを見て翔馬は少し照れくさそうにヴィヴィオを片手で抱きかかえると、頬を掻いて続きの言葉を告げる。
「それに俺は一言も嘘は言ってないしな……」
「え? それって、どういう……」
なのはは翔馬の言葉にハッと顔を上げて、少しの不安と少しの期待が入り混じった瞳を翔馬に向けて見つめていた。
しかし、顔を上げてみると当の本人である翔馬は既にいつものように振る舞っておりなのはの頭に軽く手を乗っけるとおどけた様に首を傾げる。
「さぁな?」
と、翔馬が言った途端なのはは今までとは全く異なる理由で顔を赤くすると翔馬の脇腹に一撃放ち、下に降りたヴィヴィオと共にその場から動けなくなる翔馬を放って置いて自分の買い物に行くのであった。
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「はぁ、なのは達は何処に行ったんだ?」
翔馬はなのはの一撃から回復すると、あても無く広いショッピングモールの中を歩いていた。
なのはは先程、食器とインテリアを見に行くと言っていたのでそこに行けば会えるだろうと翔馬は軽く考えていたのだが、その2つを取り扱っている店は多く何処に行ったのか見当もつかない。
そのため、先程からデバイスを通して連絡を取ろうとしたり、念話で話しかけたりしているのだが一向になのはからの返事が無く、翔馬はお手上げ状態だった。
「こんな事なら、変なこと口走らなければ良かったか……なんてな」
翔馬は独り言を呟くと、苦笑いを浮かべてなのは達の行方を根気よく探し始めるのだった。
そうして早、何軒目かの店を訪れその中にもなのは達がいない事を確認すると、翔馬は疲れが出て思わずベンチに腰を落としてしまう。
「ここまで外れが続くと結構精神的に来るものがあるな……子供が迷子になったら大変だぞ?」
翔馬は思わず今の状況から現実逃避するように、子供の心配をしてみたりする。
実際、翔馬が迷子の状態なのだが……。
そんなくだらない事を考えながら、翔馬は再度立ち上がるともう1回りするために足を踏み出そうとした。
「止めて下さい!!」
そんな時に背後から聞き覚えのある声が聞こえて、ホッとしたようにその方向へと足を向ける。
「いいじゃん。 俺達と遊ぼうぜ?」
「ママ!!」
「おっと、ガキはこっちで俺と遊んでような?」
そこには男がなのはとヴィヴィオに群がっており、それぞれ体格の良い男たちに腕を掴まれていた。
なのはならばそんな男達に後れを取る筈はないのだが、きっと優しい彼女の事だから一般市民に軍人が怪我をさせてはいけないと考えているのだろう。
しかし、娘であるヴィヴィオまで手を出されなのはの我慢も限界を振り切りそうになっていた。
そんな時、場違いな男がその場に乱入する。
「悪いな、待たせて。 さて、行くか」
「翔馬、君」
翔馬はいつもの様に軽い感じでなのは達に話しかけ、今から買い物の仕切り直しだと言わんばかりに誘った。
それを呆然として見ていた男達はやっと我に返り、怯えた様子も無く普通に自分の狙った女に手を出そうとする翔馬に対して脅しをかける。
「なんだお前……この女は俺達と遊ぶ約束してんだよ。 さっさと消えねぇと痛い目見んぞ?」
そう言って、男のうちの1人がなのはを他の男に任せると翔馬の胸倉を掴んでガンを飛ばす。
しかし、そんなことをされても微動だにしない翔馬に男は苛立ちを隠せなくなりついに拳を振り上げて翔馬に叩きつける。
……筈だった。
「わざとあんたらの事を認識していないように見せていたんだが……。 はぁ、気付かない振りをしてやってる間に消えてれば良かったものを」
そう言った翔馬は、片手で軽々と受け止めた男の拳を握り潰さんとばかりに力を込めて行く。
「ぐあぁ!! こいつどんな握力してんだ!! 離せよコラァ!!」
自分の拳に激しい痛みを感じ、さらに嫌な音を立て始めたため慌てて男は膝蹴りを翔馬に当てると力の緩んだ隙に距離を取った。
しかし、翔馬は蹴られた腹を気にする様子も無くただ男達に憐みの目線を投げかけるだけでその場から動こうとはしなかった。
そんな表情に更に苛立ちを募らせる男達の集団だったが、その内の1人が何かに気付いたようで表情を強張らせる。
「こ、こいつ!! 管理局魔導師の藤田翔馬じゃ……」
「なっ!? ……こ、これってヤバくないか?」
そんな1人の声に周囲はざわめき始めるが怒りのボルテージが振り切ってしまったリーダー格の男はそんな言葉に耳は貸さず、怒鳴り散らした。
「んなこたぁ関係あるかぁ!!! ケンカ売られて黙ってるつもりか!? 前ら!! こいつはぶちのめさねぇと気が済まねぇ!!」
余程気が立っているのか目の前の人物がどのような人間なのかをまるで理解しようとせず、無謀にも翔馬に向かって再度拳を振り上げた。
そんな男の行動に翔馬はそっと目を閉じて溜息を付くと、拳が顔面に当たる寸前に体を低くして男の懐に潜り込む。
「少し眠って頭を冷やして来い」
そう呟くと翔馬は握った拳を男の鳩尾に叩き込み一撃で意識を刈り取った。
そして、体から力が抜けて倒れ込みそうになる男を片手で支えると男達の集団の方に投げ飛ばす。
「そいつを連れ帰ってやれ。 今回は一般人に被害を加えてない事から見逃してやるが、二度と人前でこんなことはするな」
翔馬は最後に脅しをかけるために表情を険しくして睨み付けると、男達は体を一度振るわせて気絶した男を抱きかかえるとその場から即座に去って行った。
「はぁ……。 2人共、大丈夫か?」
翔馬は去って行く男達を見て呆れた様に溜息を付くとなのは達の様子を伺う。
すると、2人に怪我等は無いようで翔馬に声を掛けられると翔馬の元へ歩み寄った。
「うん!! パパが来てくれたから大丈夫」
「ありがと。 翔馬君」
ヴィヴィオは笑顔で翔馬の足に抱き付き、なのはは翔馬の足にくっ付くヴィヴィオに微笑みながらそう言った。
そして、翔馬はなのはを目の前にすると先程の事で少し気まずいのか困ったように頭を掻く。
「なのは。 その……、さっきは悪かった。」
翔馬は少し視線を逸らしながらそう言うと、なのははキョトンとして翔馬の顔を見つめ、それからほんの少し時間が掛かってから何かを思いついた様に表情を笑顔に変えた。
「いきなりだったから何のことかと思ったよ。 大丈夫、あれは冗談だから。 だけど……もしそんな時が来たら……その時は誤魔化さないでね?」
なのははそう言ってにっこり微笑むと翔馬はその笑顔に少し鼓動を速くさせた。
しかし、それは表情に出さないように翔馬は微笑み返すのだった。
「ああ。 その時は必ず」
翔馬となのははそう遠くない未来の約束をすると、最後の買い物を済ませるために歩み出すのだった。
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それから、翔馬達は会話を楽しみながら必要な買い物を済ませてショッピングモールを後にしようと出口に向かって歩いていた。
「1日って早いね~。 もっと今日が続けばいいのに……」
ヴィヴィオはなのはと翔馬の間に挟まれながら少しだけ不満そうな呟きを漏らすと翔馬は軽く微笑んでヴィヴィオを抱きかかえてやった。
突然抱きかかえられてしまったヴィヴィオは嬉しそうにしながらも目で何で?と問いかける。
「今日はこれで終わりかも知れないけど、またいつか一緒に3人でどこかへ出かけよう」
「あ……、うん!!」
ヴィヴィオは翔馬の言葉に元気よく頷くと、なのはの手を解いて翔馬の首に思いっきり抱き付くのだった。
そして翔馬達はショッピングモールを後にしようと出口から数歩歩いた所で突然後ろからサイレンの音が鳴り響き、ショッピングモールの中に目を向ける。
「今……」
「ああ、俺にも聞こえた」
「ママ? パパ?」
なのはと翔馬が突然振り返ったため現状を理解できないヴィヴィオは険しい表情を浮かべる2人に首を傾げる。
そして、翔馬達は暫くショッピングモールの中の様子を伺い、サイレンの音が誤動作であることを、自分達の予想が外れることを祈った。
だが、それは叶わず慌てた様に大勢の客が出口に向かって走ってきておりその先頭にはここの警備員が客を先導していた。
「っ!! 何でこんな時に……」
「そんなこと言ってもしょうがないよ……翔馬君」
翔馬の悪態になのはは険しい表情を崩さずに視線を翔馬に向けると翔馬も表情を引き締めて頷いた。
そこから、翔馬は警備員に近づくと何が起こったのか状況を聞きに行った。
「なのは!! 警備員に変わって避難誘導を」
「了解。 皆さん!! 慌てずにこちらへ!! 出口から出ても暫く走って下さい!! お子さんをお連れの方は絶対に手を離さないで!!」
翔馬は先頭にいた警備員を先頭から引き抜くとなのはに代わりを務めさせた。
「何するんですか!! 今はお客さんを……」
「すみません。 私達はこういうものです。 現状を簡単にで構いません。 教えて頂けますか?」
そう言って翔馬は相棒のインテリジェントデバイス【ゼフィロス】を掲げて自身となのはの身分証明を提示すると、警備員は安心したように表情を綻ばせてショッピングモール内での出来事を話し始める。
それを聞き終わった翔馬は、目を見開いて表情を引き締めるとなのはの元へと向かった。
「なのは、現状はさっきモニター回線で繋いでいたからわかるな?」
翔馬の言葉になのはは避難誘導をしながら頷く。
「それなら、なのはは引き続き客の避難誘導を頼む。 俺は中で避難が遅れた人達がいないか調べて来る」
「翔馬君1人で!? それじゃ危ないよ!! 私も一緒に……」
翔馬の言葉になのはは身を乗り出してそう言ったが、目の前で逃げ惑う一般市民を放って置くことは彼女には出来ず、その言葉は最後まで口にすることはできなかった。
「 ……分かった。 私もお客さんの避難誘導が終わったらそっちに行くから……絶対に無茶はダメだよ?」
「ああ。 行って来る!!」
翔馬はなのはの言葉に頷くと一度ヴィヴィオの元に戻り、ここで大人しく待ってるように告げると客の流れに逆らってショッピングモールの中へと引き換えすのだった。
翔馬が警備員から聞いた話はこうだった。
始まりは警備員がお客さんから怪しい人物がいるとの報告を受けた事から始まる。
その報告を受けた警備員はその客に連れられてその現場まで行ってみたのだが、そこにはただ人の流れがあるだけで不審な点は見つからなかった。
しかし、客はある個所を見つめて怯える様に体を震わせており、事情を知らない警備員はただ困惑するだけだった。
そして、その客がベンチに座る黒いフードを被った男を指をさすと、男は突然不気味なデザインの横笛を取り出し口に当てて笛の音を紡いだ。
その瞬間……、普通に歩いていた周囲の人が突然倒れ、異様な光景に不信感を抱いた警備員はその男に近づくのではなく、近くの警報器を作動させて警備会社に通報しながら無事な客を引き連れて逃げ出してきたのだと言う。
「笛の音か……そんな魔法、聞いたことが無いな」
『私も。 今、ユーノ君にそれらしい情報を見つけてもらってる。 取り敢えず今分かってる事だけ伝えるね。 効力はその笛の音が届く範囲で、人数にも限りがあるみたい。 今、警備員さん達が集まってきたから避難誘導を交代して詳しい状況を聞いてみたんだけど、周囲にいた人達全ての人が倒れた訳では無いんだって』
なのはの情報を聞いて、翔馬はその事件の起きた現場へと向かいながら逃げ遅れた人々を探す。
「倒れてしまった人達の救助もまだだろう……救助隊と地上の武装隊への連絡は?」
『もう出来てるよ。 あと、15分で到着だって……今、私も向かうから逃げ遅れてしまった人の避難誘導と倒れてしまった人達の救助を最優先で行こう』
なのはの言葉に翔馬は軽く頷くとエスカレーターを駆け上がり、事件現場へと到着する。
そして、その場の一見何の変哲もない廊下だが、今現状を聞いた後では確実に異様な光景に翔馬は驚いた表情を隠せなかった。
「……どういうことだ?」
『翔馬君? 何かあったの?』
翔馬の呟き声がなのはの耳に入ったのかなのはは、不安げに翔馬へと尋ねた。
「違う……。
すると、返って来た言葉も理解することができず、丁度翔馬の近くまで来ていたのでエスカレータを上るとたった1人で事件現場で佇む翔馬の姿があった。
「っ!? これは……」
「ああ、倒れた筈の人が誰1人としていない……あの警備員が嘘を言っているとは思えない。 だが、ここで倒れた人達が自力で逃げ出したとも思えない」
翔馬達は疑問を解消するためにその場の調査を始めよう足を踏み出した時、2人の耳にかすかな人の声を感じた。
「た………け……」
「「っ!!」」
翔馬達はその言葉の意味を即座に理解し、翔馬は既にその場から消えて、なのはもその方向に向かって走り出した。
そして、翔馬はなのはよりも早く声の持ち主らしき女性を確認すると、さらに速度を上げる。
その人は刀を持った不審者に対して腰が抜けて思うように動けないのかギラリと光る刃に怯えながら後退りを繰り返すが背中が壁に当たると恐怖で顔を歪ませてきつく瞳を閉じた。
そして、その刃を向けて振り上げると不審者は口元を歪ませて女性に向かって振り下ろそうと最後に声を掛けた。
「それじゃ、バイバイ!!」
「っ!!」
そして振り下ろされた刃は綺麗に何もない壁を切り裂いていた。
「って、あれ?」
不審者は目の前に広がる白の壁と、自分の手の感触が思っていたものと違う事に首を傾げながら周囲を見渡す。
すると、そこには女性を抱えた翔馬の姿があり、翔馬は一度、不審者に視線を向けると女性を腕の中から降ろした。
「大丈夫ですか?」
「あ、は、はい……。ただ、その腰が抜けてしまって……」
翔馬は女性が少し恥ずかしそうに言うのを見て、小さな魔法陣を描くと腰のあたりに支えとなる風を巻き起こした。
「あなたを出口まで送ることが出来ればよかったのですが……、これで何とか歩けそうですか?」
「あ、これなら何とか歩けそうです!!」
「それでは、気を付けて出口まで逃げて下さい。 出口の近くになれば警備員さんもいらっしゃいます」
そう言って翔馬は出口へと向かう女性を見送って、視線を不審者の方へと向け直す。
「折角、久々に血が見れると思ったのに……、何で邪魔しちゃうかな? 藤田翔馬一等空尉。 いや、今は三等空佐でしたっけ?」
「……俺のことを知っているのか?」
翔馬の言葉で何かに気が付いたのか不審者は乾いた笑みを浮かべてフードに手をかけた。
「ああ、これが有るからわからないんですね……これの顔を見たら思い出してくれますか? 三佐」
「っ!! お前は……テトラ。 犯罪からは足を洗ったんじゃ……」
翔馬はその顔を見て目の前にいる不審者が誰なのかを思い出した。
そのテトラと呼ばれる人は2年前、翔馬が機動六課に転勤する直前に捕まえた犯罪者のうちの1人だった。
そして、テトラは翔馬の言葉を鼻で笑い飛ばした。
「僕が足を洗う? そんな訳無いじゃないですか!! 何のために今まで我慢してきたと思ってるんですか? 分かって下さいよ……僕は貴方へと復讐するために出てきたんですから」
「……復讐の相手が俺だと言うのなら、相手になってやる。 だが、ここに居る人達は関係無いだろ!! 倒れた人々は何処へやった!!」
「翔馬君!!」
翔馬は強気にそう尋ねるとそれと同じタイミングでなのはが翔馬の元へとやって来て肩を並べる。
「黒いフードの男……もしかして、あの人が?」
「ああ、俺が2年前に検挙した男だ……だが、何かが」
翔馬はなのはの問いにテトラを気にしながら答えるが、何かに引っ掛かりを覚えるのか翔馬は必死にその何かを探そうとする。
が、それはテトラの行動により、中断せざるを得なかった。
「2人でおしゃべりもいいけど……僕も一緒に混ぜてよ!!」
そう言ってテトラは魔法弾を正面に展開させるとそれを一斉に放ち、翔馬達は回避行動に移ろうとするがその瞬間に頭上から何かが迫っていることを感じ2人は目を見開き、正面と頭上の同時攻撃を真面に浴びて土煙により姿が完全に見えなくなってしまった。
その様子を嬉しそうに見つめるテトラは、土煙の中に光るものを見つけて更に嬉しそうに口角を釣り上げた。
「なのは!!」
「うん!!」
「ゼフィロス!!」
「レイジングハート」
「セット・アップ!!」
その掛け声と共に、土煙は掻き消されてその中から出てきたのはバリアジャケットに身を包み桜色の光を纏うなのはと、緑色の光を纏う翔馬の姿だった。
「そんなに混ざりたいなら混ぜてやる……ただし、お前と俺達がまともに喋るのは検問室でのみと知って置け」
「ふふ、あははは!! いいよ。 その表情、久々に僕を楽しませてよ!!」
そして、ここになのは&翔馬VSテトラの戦いが始まるのだった。