魔法少女リリカルなのはStrikers~風と桜の記憶~   作:strike

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さて、今回は翔馬となのは達の団欒の回です。
楽しんで読んでいって下さい。

あ、感想やご意見があればどしどしお願いしますw


それでは第2話スタートです!!


第2話 お出掛けの約束

区民センターからなのはの家まで車を走らせた翔馬はなのは達を家の前まで送り届けると車の窓を開けて車を降りたなのは達に声を掛ける。

 

「お疲れさん。 それじゃ、俺は帰るな」

 

そう言って翔馬は軽く手を上げて窓を閉めようとしたところでヴィヴィオが窓から頭を突っ込んで不満そうな声を上げる。

 

「パパ、帰っちゃうの……? 一緒にご飯食べよ。 ね? 良いでしょ? ママ」

 

ヴィヴィオは今にも泣きそうな潤んだ目でなのはを見上げるとなのはは苦笑いを浮かべながらヴィヴィオを抱きかかえ、翔馬に顔を向けた。

 

「えっと……翔馬君、明日早くない?」

「まぁ……、明日から夜勤だからな。 俺は問題ないが……いいのか?」

「やったぁ!! パパとご飯だ!!」

 

翔馬の言葉になのはが反応する暇も無くヴィヴィオの表情は一転し、喜びを全身で表現するかのように両手を上げて喜ぶとそのままするりとなのはの腕から抜け出して翔馬の元へ行こうとする。

が、なのはに片手を掴まれて急ブレーキがかかったようにその場に停止してしまう。

 

「こら、ヴィヴィオ。 はしゃぎ過ぎ」

 

なのははすまし顔でヴィヴィオの頭にチョップを入れ、ヴィヴィオはその直後に頭を押さえて涙目になった。

 

「あいった~。 ヒドイよ、ママ~」

「ホントに退屈しない親子だな……」

 

翔馬は苦笑いしながら高町親子の様子を眺めていると、ヴィヴィオが翔馬の言葉に反応して涙目ながらも笑顔を向けた。

 

「そりゃ、ヴィヴィオとママだもん!! それにパパもいるし、当然だよ!!」

「……そうか」

 

翔馬は一瞬ヴィヴィオの言葉に驚きを見せるが直ぐに優しい笑みに変えてヴィヴィオに微笑むと、車のエンジンをかけ直して発進の準備をする。

 

「それじゃ、車を停めて来るから少し待っててくれ」

 

翔馬はそう言うと車を近くのパーキングに停めて鍵を閉めると、なのは達の待つ家の玄関まで戻ってくる。

すると、ヴィヴィオがなのはの手を離して翔馬の手に縋りつくと笑顔を浮かべながら急いで家まで引っ張って行こうとする。

 

「パパ。 早く早く!!」

「分かったからそう引っ張るなって」

 

翔馬はヴィヴィオに振り回されて戸惑った表情を浮かべると目線でなのはに助けを求めるが、なのははただ笑って後をゆっくりと付いてくるだけで手助けはしてくれず翔馬は玄関に入るまでヴィヴィオの成すがままにされていた。

そして、玄関に辿り着くとなのはがカギでドアを開けて中に翔馬を招き入れる。

 

「いらっしゃい。 翔馬君」

 

なのはが先に中に入ると先を促す様に手を家の方に向けて翔馬を家の中に招いた。

しかし、何を思ったのかヴィヴィオは頬を膨らませるとなのはの背中を押して廊下に押し上げた。

 

「な、何? どうしたの、ヴィヴィオ?」

「もう……。なってないな~ママは。 ママ、旦那さんを迎えるときはね? こうやってやるんだよ!!」

「だ、旦那さんって///」

 

ヴィヴィオは何故か不満げにしていた顔を人の知らない事を自慢げに披露する人の様な笑みに変え、一方でなのはは、ヴィヴィオの旦那さんと言う言葉に赤面していた。

そして翔馬は、何故か居心地の悪い気分を味わ居ながらその光景を黙って眺めているとヴィヴィオに手招きされたため、訳も分からずしゃがんでヴィヴィオの目線に合わせてやる。

すると、ヴィヴィオは一度だけなのはの方を見ると少し笑みを零してとんでもない爆弾を落としていく。

 

「お帰りなさい。 あ・な・た」

 

そう言って、翔馬の頬に可愛らしいキスをすると子供には似合わない流し目を送ってリビングの中に駆けて行った。

そして、呆然とそれを見送る翔馬は嫌な視線を斜め上から感じ、無言で立ち上がるとそのまま何事も無かったかのように靴を脱いで家の中へ入ろうとする。

 

「翔馬君?」

 

が、そういう訳にもいかなかったらしく翔馬は苦笑いでなのはに説得を試みた。

 

「あ、あれは、子供の遊びだろ? そんな本気にしなくても……と、言うか最近の子供って結構マセてるんだな……」

 

そう言って、翔馬は恐る恐るなのはの表情を伺うとそこには笑いを堪え切れなかったのか翔馬を見ながら体を震わせて笑っているなのはの姿があった。

 

「あははっ!! お腹、痛いっ……。 私が本気にする訳ないよ。 相手だってヴィヴィオなんだから。 私、子供に嫉妬する程子供じゃないよ?」

 

なのはの言葉に翔馬は胸を撫で下ろすと額に伝った汗を拭ってなのはを睨み付けた。

 

「ったく……、冷や汗搔いただろうが。 そう言う冗談は勘弁してくれ……」

 

なのはは相変わらず笑いながらゴメンと謝ると、笑って出た涙を拭いながらヴィヴィオの見えなくなったリビングを見つめる。

 

「でも……、なんか嬉しいな。 こうやって、ヴィヴィオと一緒に暮らせて、翔馬君も隣にいて。 私今、すっごく幸せ」

「……まぁ、俺も同じだ。 俺も、なのはも、ヴィヴィオもちゃんと欠けずにここに居る。 何気ない普通の暮らしをしっかりと歩めてるんだ。 ……これも、なのはのおかげだな。 今、俺も最高に幸せだよ」

「あ…、翔馬、君」

 

なのはの言葉を聞いて翔馬は自分も同じことを思っていると伝えると自分の体になのはの肩を引き寄せた。

そんな翔馬の突然の行動になのはは体を引き寄せられて頬を真っ赤に染めると、自分の顔が火照っていることに気付いて翔馬に見られないように俯く。

しかし、なのはは翔馬の様子が気になって顔を覗き見るように上目遣いで見上げた。

すると、そこには丁度なのはの方を向いた翔馬の顔があり、翔馬はなのはの表情を見て悪戯な笑みを浮かべた。

 

「ん? なんだ、なのは顔真っ赤だぞ?」

「翔馬君の所為だよ!! ……もう!!」

 

なのはは翔馬の言葉で更に顔を赤くすると、ふいっと顔を背けてしまう。

それを見た翔馬は思わず彼女の可愛さに微笑みを零し、悪戯心が芽生えてしまった。

 

「それで、お帰りのキスは結局してくれないのか……」

「えっ!? な、何言っ……て……」

 

なのはは翔馬の言葉に驚いて思わず顔を翔馬の方に向けてしまう。

すると必然的に密着してる今、そのような事をするとお互いの顔がすぐそこにあって……なのはは少し恥ずかしそうに目を背けて体の力を抜くとそのまま体重を翔馬に預けた。

 

「今日だけ……だよ? 翔馬君」

「ん? あ、ああ。」

 

翔馬としては何故なのはは何時もキスをしているのに(と言っても、まだ回数はそんなに多くは無いが)今日だけなどと言ったのかは見当がつかず、言葉に詰まってしまったがなのはは緊張しているのか翔馬の声は届いていないようだった。

そして、翔馬はその時を待ち、なのはは心の準備が整ったのか少し瞳を潤ませながら顔を翔馬の真正面に向けると近づけていった。

 

「お、お帰りなさい。 あ、あなた……んっ」

「っ!?」

 

翔馬はそこまでヴィヴィオの真似をするとは思わず、不意打ちに心臓が跳ね、さらになのはの柔らかい唇の感触に鼓動が高鳴る。

そして、なのはの事を愛おしく感じた翔馬はなのはを包み込むように抱き寄せ暫くの間優しいキスを続けていた。

 

「ん……はぁ。 こ、これでいいかな!?」

「ああ。 十分過ぎる位だった。……まさか、あそこまでヴィヴィオの真似するとは……相変わらず天然は抜けないな?」

「え!? えぇ~!! しょ、翔馬君ヒドイよ~。 私、そこまでして欲しいのかと思って……」

 

なのはは翔馬の言葉に顔を別の意味で真っ赤にすると翔馬はそれが面白くて笑い

 

「ま、俺は役得ってことで。 今回に関してはヴィヴィオに感謝だな」

 

そう言って翔馬が靴を脱いで廊下に上がると翔馬はなのはと共にその場で固まってしまう。

そして、2人はぎこちない動作で首をリビングの方に向けると、そこには小さいツインテールの一房と紅の瞳があり、それは目が合った瞬間にピョコっと姿を消した。

この後の2人がどれだけ気まずい思いでニヤニヤと笑顔を浮かべるヴィヴィオと共に過ごしたかは想像に容易いだろう。

 

 

 

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それから、翔馬とはのは、ヴィヴィオの3人でご飯を食べ終わるとなのはは食べ終わった食器を洗い、ヴィヴィオはソファーに座る翔馬の膝でテレビを見ていた。

そして、なのはが食器を洗い終えたのかエプロンを外してソファーにやってくると翔馬の隣に腰を下ろして座る。

 

「あ、ところで翔馬君、確認するのを忘れてたんだけど……」

「ん? どうした?」

 

なのはは何かを思い出したように翔馬に声を掛けると翔馬はなのはの方へ顔は向けずに、ヴィヴィオの頭を撫でながら尋ねた。

 

「あの、今週の土曜日って問題なさそうかな?」

「あ!! パパと一緒にお出掛けって話!?」

 

なのはの言葉にヴィヴィオは突然、翔馬を見上げるようにして笑顔を向けたため翔馬は驚いて咄嗟に手を退けた。そして、翔馬はこの前なのは達と話をした内容を思い出したようでヴィヴィオに笑ってみせるとなのはの方に視線を向ける。

 

「ああ、このまま事件とか厄介な事が起きない限りは大丈夫だ。 オフも変わらなそうだし、補勤も今週は無しにしてもらってるからな」

「そっか」

「それじゃ今週の土曜日はパパと一緒だ!! やったぁ!!」

 

ヴィヴィオは翔馬の膝から降りると今度は翔馬の正面から抱き付いて、翔馬となのははヴィヴィオの喜ぶ姿に顔を見合わせて笑顔を浮かべた。

そして、その笑顔を浮かべたなのは自身も少しだけいつもより嬉しそうな笑顔で、こうして2人が喜ぶのにも少し訳がある。

翔馬は武装隊の隊長として仕事が多くあり、今日のようになのはと帰ることは滅多に無く休みの日もバラバラであるため中々会える機会は少なかった。

翔馬となのはが付き合い始めて1年半位になるが、デートと言えるデートは両手で数えられる程。

月に2回も会えれば凄くラッキーと思える位なのだ。

だからこそ、ヴィヴィオとなのはは今週の土曜日に翔馬と出かけられることがとても嬉しく楽しみで、もう既にヴィヴィオは土曜日の予定を立て始めていた。

 

「それじゃ、新しいショッピングモールに行こう!! いろんなお店があるんだよ」

「そうなのか。 俺もそろそろ新しい服とか買いたいと思っていた所だし、いいんじゃないか?」

「うん。 そうだね、私も色々と家のものも買いたいし……それにヴィヴィオのお洋服もね」

「うん!!」

 

ヴィヴィオはなのはの言葉に元気よく頷くと、2人の間に座ってご機嫌のようだった。

そして、もっと詳しく話を進めたいのかなのはのレイジングハートに頼んでショッピングモールの見取り図を開いて貰った。

 

「ね!! どこに行こうか?」

 

ヴィヴィオは今から楽しみなのかウキウキ顔で翔馬となのはに尋ね、なのはは顎に人差し指を当てて考える仕草をすると悩んだ末に現状で欲しいものを羅列する。

 

「取り敢えず、3人の新しいお洋服を探しに行って、後、食器もこの前割っちゃったから新しいのが欲しいかな……」

「その後はご飯!! お外でご飯は久しぶり!!」

「そうなのか? ならうまいもの食わせてやらないとな。 そのモールにも飲食店はあるだろ。 ヴィヴィオの好きなとこ選んでいいからな」

「やった!!」

 

翔馬の言葉に喜びの声を上げたヴィヴィオを筆頭に翔馬達は土曜日のプランを楽しげに立てていった。

そして、それから暫くの時間が経ち、夜も遅い時間になると徐々にヴィヴィオの元気がなくなり舟を漕ぐようになってしまった。

それを見たなのはは壁掛け型の時計を見てヴィヴィオの様子にも納得がいったのか微笑んでヴィヴィオの肩を揺する。

 

「もうこんな時間なんだ……ヴィヴィオ。 こんな所で寝たら風邪引いちゃうよ。 もう遅いし、ベッドに行こう?」

「う~ん。 まだだいじょうぶ……」

 

なのはの言葉に目を擦りながらもそう言って起きてようとするヴィヴィオの姿に翔馬は微笑むとヴィヴィオの頭に手を置いて声を掛ける。

 

「今日、無理して頑張った所為でヴィヴィオが土曜日出掛けられなくなったら嫌だろ? だから、今日はもう寝て、また土曜日に楽しもう。 な?」

 

翔馬の言葉にヴィヴィオは少しの間唸っていると、思考が回らないのか諦めたのか、静かに頷いてなのはに手を引かれて寝室へと上がっていった。

そして、暫くもしない内になのはが上から降りて来ると翔馬は立ち上がって廊下に出てヴィヴィオの様子を尋ねる。

 

「ヴィヴィオは?」

「もうベッドに入った瞬間グッスリだよ。 翔馬君に会えてきっと嬉しくてはしゃいじゃったんだね……」

 

そう言ったなのはの言葉に翔馬は少しだけ申し訳なさそうに顔を逸らして頭を掻いた。

 

「悪いな、なのは。 俺がもっと融通の利く部署だったら良かったんだが……」

 

そう言って翔馬は軽く項垂れると、なのはが翔馬の手を掴んで胸の位置まで持ち上げて微笑みを向ける。

 

「翔馬君のこの手は誰かを救うためのものだよ。 折角のエースストライカーを宝の持ち腐れにする訳にはいかないでしょ? それに私は、翔馬君にもっと多くの人を救って欲しいって思ってる。 確かに危険な部隊だし、できることなら私も翔馬君に傍にいて欲しい。 だけど翔馬君のこの手は誰かを救う事の出来る手。……だから翔馬君には1人でも多くの人を助けるために今できることを頑張ってほしいな」

「なのは……」

 

翔馬はなのはの言葉に顔を上げると、なのはは少し照れくさそうに翔馬の手を離して玄関のほうに歩いていった。

そして、翔馬はここで再度今いる部隊で人を助けるために尽力しようと誓い、なのはの後を付いて行き靴に手を伸ばす。

 

「ありがとな。 なのは」

「ううん。 お礼を言われることなんて何にもしてないし、私達はもう遠慮し合うような仲じゃないでしょ?」

 

なのはは笑ってそう言うと翔馬もそれに倣って笑い返した。

そして、翔馬は靴をしっかりと履くとなのはに向き直って別れを告げる。

 

「それじゃ、遅い時間まで悪かったな。 なのはの料理、うまかった」

「お粗末様でした。 また金曜日の夜に連絡するね」

「ああ。 そうしてくれると助かる」

 

翔馬はそう言うと、なのはに背を向けて玄関に向かって足を踏み出す。

すると、突然なのはから声が掛かり何かと振り向いた瞬間、唇に何かが触れたような感覚がして、目の前にはなのはが笑顔で微笑んでいた。

 

「それじゃ、お休みなさい。 翔馬君」

「……ああ、お休み。 なのは」

 

最後に不意打ちを喰らった翔馬は悔しそうにしながらも嬉しそうな笑みを浮かべて今度こそなのはに別れを告げると玄関の外へと足を踏み出した。

そして、翔馬は自分の家に帰宅後、夜勤に備えて準備を整え今週の業務をおさらいし土曜日に仕事を残さないよう段取りを立てて行くのだった。

 

 

 

 


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