魔法少女リリカルなのはStrikers~風と桜の記憶~   作:strike

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なんと、今回は連日投稿です。
時間を空けてしまったので、気合を入れましたw
って、なんかデジャブを感じる……
今回はそれほど時間を空けないように努力します。

さてさて、今回は……もしかしたら皆さんの期待を裏切る結果かも?
今回はいつも以上に緊張しながらの投稿です……w
楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。

それでは、第15話スタートです!!



第15話 翔馬の失態

 

「なっ!?」

 

 スバルが拳を目の前の魔力の弾にぶつける直前にその拳を止めると、スバルが纏っていた魔力はその場で拡散してしまう。

 その様子を面白そうに顔を歪めて見下ろすのはテトラであった。

 そして、それから少し遅れてテトラが下りてきた穴から飛び降りてきたのは翔馬達3人だ。

 

「くっそ、間に合わなかったか」

「それよりも翔馬さん!!」

「クロノ!!」

 

 翔馬達はテトラから少し離れた場所に降り立つと、苦い表情を浮かべ、フェイトはテトラの腕の中にいた人物の姿を見て焦るように声を上げる。

 

「この人を落とすのにどれだけ時間のかかった事か……やっぱり時空管理局のトップ集団は侮れないな~」

「テトラ……よくもっ!!」

 

 テトラの飄々とした態度と言葉にフェイトは怒りに駆られてその場から飛び立とうとする。しかし、それにストップをかけたのは片腕でフェイトを制した翔馬だった。

 

「フェイト落ち着け!!」

「翔馬?……止めないで!! クロノが……クロノがあそこにっ!!」

「わかってる、だが、今俺達が単独で動いていたら助けられるものも助けられないぞ。今は時を待て、絶対にクロノは俺達で助け出すんだ」

 

 翔馬の落ち着きながらも怒りで胸を焦がす姿に、フェイトはやっと落ち着きを取り戻したのか、湧き上がる怒りを自制してその言葉に頷き、その場に留まった。

 そして、後ろから近付いてきたのは先行してこちらに来ていたなのは達3人だった。

 

「藤田君、ごめんなさい、止められなかった」

「気にするな、俺達もテトラを足止めできなかった。今は目の前の状況をどうするかだ」

 

 翔馬の言葉に5人全員が頷くとテトラに視線を戻す。

 

 「さてさて、方針は決まったかい? と言っても、僕をこのまま見逃す以外に選択肢はないと思うけどね?どうだい?折角情報を掻き集めてここまで来たのに見逃すしかない心境は。さぞ悔しいだろうね~、さぞ苛立つだろうね~。ねぇ、そこのところどうなんだい?」

 

 翔馬達はテトラの挑発的な言葉に歯を食いしばって睨み付けるが、必死に自分の感情に蓋をした。テトラは人質を確保して余裕なのだろう。後は時間を稼いで出発するだけ。そう考えると、翔馬達は圧倒的不利な状況にいる。しかし、翔馬はこの状況でも無理矢理口元に獰猛な笑みを浮かべて見せた。

 

「随分と余裕だな?俺達6人相手に人質1人で逃げられるとでも思ってるのか?こんな状況、武装隊の任務に比べればどうってことない状況だけどな?お前こそ内心焦ってんじゃないのか?」

「ん~?余裕が無いのはどっちでしょうね?まぁ、誰が見ても一目同然だろうけど……あ、そんなこともわからないくらいに焦ってるんですか?それじゃ、仕方ないかもしれないですね~」

 

 翔馬は少しでも隙を見つけようと会話に乗って、視線を動かさずに周囲の状況を探る。しかし、今の状況が不利なのは変わらない。人質が相手の手に渡っている以上、下手に動けば確実に追い込まれるのは明白だからだ。後は時間の問題、レストの言葉を信じるなら後残り一時間とちょっとはあるが、これ以上もたついていては緊急発進されて時空空間へ逃げられてしまえば、追う手立てが今は無い。

 そうなれば、地球へテトラを逃がすことになってしまう。そうなる前になんとかテトラの身柄を確保したいところだが。

 

(フェイト、硬直状態は愚策だ。隙を作ってから俺と最速で挟撃を仕掛ける。行けるか?)

(うん、了解)

(スバルとエリオは魔力をチャージして突撃するように見せかけてくれ、攻撃の合図は俺がする)

((はい!!))

(なのははスバル達に気を取られた瞬間にシューター展開、シエルは俺と来い、奴の動きを一瞬でいい、止めてくれ)

(了解だよ)

(わかりました)

 

 翔馬は念話で作戦内容を伝えて、目を細め、機を見極める。

 そして、翔馬達の動きが無い事を確認したテトラが翔馬達を鼻で笑って一瞬後ろの戦艦に視線を投げた瞬間。

 

「スバル、エリオ!!」

「マッハキャリバー!!」

「ストラーダ!!」

 

 翔馬の言葉にスバルとエリオが即座にカートリッジを叩き込んで魔力を圧縮させる。その様子を横目で見たテトラはため息を付きながら手に隠し持っていたのか大型のナイフをクロノの首に突き付けようとして、そのナイフを後ろへ振り払った。

 

「クロノは返してもらいます!!」

「小賢しい真似をっ!!」

 

 フェイトがバルディッシュをナイフに叩きつけてその腕ごと跳ね上げると、テトラは表情を険しくして、その跳ねられた手で自分の得物である斧を手にした。しかし、そこから反撃をさせまいと翔馬が割り込む。

 

「そう何度も思い通りにさせて堪るかよ!!」

「本当に面倒な人達だ……とう言うとでも?」

 

 翔馬の言葉に表情を一転させて笑みに変えたテトラは、クロノを腕で抱え込むとその手にはあの悪魔の笛が握られていた。

 しかし、同じ手を何度も食らう翔馬ではなかった。

 

「シエル!!」

「IS発動!! エキスポイテーション!!」

「なにっ!?」

 

 翔馬の後ろから伸びた手がテトラを捉えると、急激にテトラの身体は重くなり思わず体勢を崩して浮遊魔法が解ける。

 その隙にフェイトは最速でクロノをその手から奪い返した。テトラは唇を噛みしめながら伸びた手を振り払って体制を整えると、気だるい感じがまだ体に残りその手の持ち主を見据える。

 

「シエル・アウローラ」

「貴方の魔力、頂きました。翔馬さん!!」

「なのは!! スバル!! エリオ!!」

「くそっ!! 貴方達は何処まで邪魔をすればっ!!」

 

 そこには、片手を翔馬と繋いだシエルの姿と、シエルのIS効果によってテトラから奪い取った魔力を譲渡され、いつもに増して光り輝く翔馬の4つの魔法陣、そして後ろにはレイジングハートを構えるなのはと下にはスバルとエリオが突撃準備を整えていた。

 完璧な包囲網が完成し、人質もいなくなった今、テトラに遠慮することなどない。故に翔馬は声を張り上げる。

 

「総員、撃ち抜けぇぇ!!! クアッド・エアリアルブラスター!!」

「エクセリオン・バスター!!」

「ディバイン・バスター!!」

「紫電・一閃!!」

 

 翔馬の声に触発されて全員の魔力が吹き荒れると、ほぼ全力で叩きつけた4つの砲撃はテトラに着弾した瞬間に衝突し合い、全てを吹き飛ばさんと暴風が巻き起こる。その勢いは戦艦を揺らすほど。手応えから確実に着弾したことは分かっている4人だが、それでも油断せずに魔力衝突による爆煙の中を見守る6人。

 すると、数秒にも満たない内に爆煙の中から力なく落下していく人物を見て、翔馬は即座にその場所へ急行する。地面に横たわっていたのは当然ながらテトラであり、殺傷モードではないため外傷は殆ど無いが、意識は完全に失っているようだった。翔馬は警戒を最大限まで高めつつその場に降り立ち、ゆっくり傍まで近づくと、しゃがみ込んでテトラの意識の有無を確認し、緊張の糸を解いた。

 

「テトラ・エドウィン。ロストロギア強奪罪、国家反逆罪、並びにその他罪状により逮捕する」

 

 翔馬は懐から取り出した手錠でテトラの身柄を拘束すると、深く息を吐きだした。そして、その様子を見ていた周囲のメンバーも少しだけ安心したように表情を緩めて翔馬に微笑みかける。

 

「これで何とか一件落着かな?」

「だな。後は刑務所へ放り込んで事情聴取だ。そっちは専門にやらせればいいだろう」

「……終わったんだよね?」

 

 安心した表情のフェイトと翔馬の後ろで、そう呟いたのはなのはだった。まだ実感があまりないのか、緊張の糸は多少緩めているものの、まだ完全に割り切れてはいないようだ。

 

「多分、終わったのだとは思いますが。なんだかあっさり終わってしまって拍子抜け、というと不謹慎ですね……」

「ええ!? 十分大変な目に遭ったと思うんですが」

「スバルさんに同意です。 主犯であるテトラを捕らえた以上、何か起こるとは思えないのですが」

 

 シエルの言葉にスバルとエリオがげんなりとした表情で答える。それに隊長陣が苦笑していると、フェイトの腕に抱かれていたクロノが身動ぎをしてフェイトはハッとした表情で視線を落とす。

 

「クロノ!? クロノ、大丈夫!?」

「フェイ……トか?」

 

 まだ意識が混濁しているのか、視界いっぱいに映ったであろうフェイトの姿を見たクロノは少し気怠そうに呟きを零した。その瞬間に、意識が覚醒したのか、フェイトの頭に激突しそうな勢いで慌てて体を起こして、周囲を見回す。

 

「そうだ奴は!! あいつが、あいつが戦艦を、っ!!」

「ク、クロノ? 落ち着いて、まだ安静にしてないと」

「していられるか!! 今はっ、あいつを……」

 

 取り乱すようなクロノの姿にフェイト以外の面々は呆然としてしまう。普段から冷静沈着な彼が見せる姿は、普段のそれとはかけ離れている。しかし、全員が決着のついたことであると認識しているので、取り敢えず落ち着くようにクロノを宥めた。

 

「クロノ君、大丈夫?」

「ああ、すまない。格好悪いところを見せてしまったな」

「いえ、それは大丈夫です、多分洗脳される前の出来事を思い出されたのでしょう、ならば慌ててしまうのも無理はありません」

 

 落ち着いたクロノを気遣うなのはと、慰めるように言葉を紡ぐシエル。フェイトは先程から兄の背中を支えながら落ち着くように諭していた。

 そして、やっとクロノが本調子になり始めた所で翔馬が今回の主犯をクロノの前に差し出した。

 

「クロノ、多分こいつが主犯だと思う。悪夢の笛の封印処理は俺達の方でやって置いた。この状況でもまだ無様な姿を晒すか?」

「なんだと?」

 

 翔馬がクロノの緊張を解いてやるついでに面白いものを見れた礼として軽く弄ってやろうと言葉を発したつもりが、何故かクロノは表情を強張らせて警戒レベルを最大限まで引き上げるのを感じた。

 翔馬は少しだけ怪訝そうな表情でクロノに視線を合わせる。

 

「おいおい、そんな顔すんなって、少しからかっただけだろう?」

「そんなことはどうでもいいんだ……。翔馬、他に(・・)捕えた人間は?」

 

 クロノの表情、そしてその言葉で、ここにいる全員が凍り付いた様に表情を固める。そしてその瞬間を狙っていましたと言わんばかりのタイミングで銃声が鳴り響き、次いで何かが壊れる音が耳に届く。

 

「なっ!? 悪夢の笛が!!」

「そこかぁぁぁ!!」

 

 エリオの持っていた悪夢の笛が何者かの攻撃で吹き飛ばされ、粉々になった瞬間、スバルはその方角に顔を向けて視界の中に何かを捉えると、直ぐに拳を突き出し、リボルバーシュートを放つ。しかし、それが何かに当たったような感覚は無く、スバルは表情を引き締めると周囲の警戒をし始め、一連の出来事が起きている間に隊長陣も周囲の警戒を行いながら視線を忙しなく動かして攻撃の犯人を見つけ出そうとしていた。

 

「やっと、やっとここまで来ることが出来ましたよ!!」

「誰だ!!」

 

 何者かの声が響き渡り、即座に翔馬が反応するが人の気配がない上に声も反響していて出所が分からない。そのため周囲に警戒を張り巡らせていつでも動けるように全員が得物に手をかける。

 

「これはこれは、初めまして。藤田翔馬三等空佐。 私はゼルリヒト・フォーレンと申します。この度はこのような場所までご足労頂きありがとうございます。そして、高町なのはさんも、ね」

「……馬鹿正直に名を名乗る奴がいるなんてな、テトラの一味か?」

 

 翔馬は姿の見えない声、そしてねっとりとした声色に嫌悪感を隠そうともせずにそう尋ねた。

 

「テトラの一味……はて、何のことでしょうなぁ? 私はただ私の目的を果たすために彼にお願いをしたんですよ。このミッドチルダでも有名な地球育ちのあらゆる困難さえ打ち勝って見せた高町なのはさんを手に入れ、私を地球まで運びなさい、とね」

「「「「っ!?」」」」

「お前が黒幕ってことかよ……!! なぜこんなことをする!! 何の意味があってなのはを手に入れようとした!!」

 

 情報を次々と明かすゼルリヒトに斗真はその声を聞くのも堪えられない苦痛だったが、情報を引き出すためと、会話を続けるが、その言葉でなのはは怯える様に体を震わせ、その他の面々は怒りで体を震わせた。

 

「ああ、そこまで私に興味を持って頂けるなんて恐悦至極でございますが……申し訳ありません。そろそろいいお時間ですので私はお暇させて頂きたく」

「何? ……まさかっ!?」

 

 翔馬は何かに気が付いたかのように視線を戦艦に向けると、そこにはいつの間にやら出発準備が整っている戦艦の姿があり、舌打ちしながら戦艦に取り付こうと足を踏ん張った瞬間。

 

「全員、ハッチの奥へ避難しろぉぉぉ!!!」

「「「え?」」」

 

 自分が起こそうとした行動と全く逆の指示を飛ばした。そして、未だに硬直しているなのはを腕に抱きかかえると、戦艦の出撃ハッチの通行者用出入り口へと駆けだした。他の面々もクロノはフェイトにエリオはシエルに抱きかかえられながらも全員が翔馬の先を走っている。そして、翔馬達が走り出した直後に轟音と共に戦艦の出発ゲートが今にも開こうとロックを外しにかかっている。

 

「ちょっと、マズくないですかね? このままあれが開いたらいきなりここ真空ですよ?」

「だから逃げろって言ってんだ!! 口を動かしてる暇があったら走れ!!」

「わかってますよぉぉ!!」

 

 シエルの泣き言に翔馬は突っ込みを入れながら足を止めずに前へ前へと進む。そして腕の中にいるなのははやっと我を取り戻したのか、翔馬の顔を見て少し申し訳なさげな表情をしていた。翔馬は気にするなと一瞥しただけで今は全力で走ることに集中する。

 

「翔馬、急いで!!」

「翔馬さん!!」

 

 通用口の向こうは翔馬達以外の全員がすでに退避したのか、フェイトとシエルが翔馬を読んでいる。切迫した表情から、ゲートの解放まで時間がないのだろう。翔馬は舌打ちすると、大声を上げた。

 

「そこから離れろ!!」

「「へ?」」

「ふ、藤田君!?」

 

 残り、数十メートルの距離を斗真は思いっきり地面を蹴り飛ばして自身を魔力強化する。言わずもがな翔馬のエアリアルブリッツである。急激な速度変化になのははギュッと翔馬の身体にしがみ、翔馬は通用口を目指す。そして、ゲートが開いてこの戦艦の出撃ハッチ内が真空に引かれる直前に翔馬がなのはを抱えながら通用口へと飛び込んだ。

 

「閉めろ!!」

「「はい!!」」

 

 翔馬が扉を抜けると同時に声を張り上げ、スバルとエリオが通用口の扉を閉めた。そして、全員が何と宇宙空間に投げ出される前に間に合ったことに一息ついた面々だが、直後放送で流れ出した不快極まりない声に表情をしかめる。

 

「皆さん、しっかり生き残れたようで何よりですね~。それでは私共は先に地球へと向かいますので、準備が出来次第ちゃんと追って来て下さいね?あ、そうそう。もちろん高町なのはさん、いえ、私のお姫様もちゃんと連れて来て下さい。絶対ですよ?それでは、失礼します」

 

 ゼルリヒトの言葉の後に、壁一枚越しに響き渡る戦艦の出発するエンジン音を聞いて、翔馬はきつく歯を食いしばりながら拳を壁に叩き付けた。

 

「くっそ!!」

「藤田君……」

 

 翔馬は戦艦を止められなかっただけでなく裏で動いていた存在すら気付けなかった自分に苛立ちを隠せず、打ち付けた拳に更に力を込めた。

翔馬なら気付けたはずなのだ。初めてテトラに会ったときの違和感、そして、あのロストロギアの出所が不明だったこと、管理局に潜り込んでそれを掌握するその手腕。どれを取ってもテトラ1人で行動しているとは考えづらいと言うヒントが目の前に並んでいるのにも拘らず、テトラの逮捕に固執してしまったがゆえの失敗。しかも、それは大きな事件をここで未然に止められたかもしれないという、機動六課にとっての大きなチャンスを不意にしてしまったのだ。

傍から見れば、未然にテトラを捕まえられたこと、管理局の占拠を救ったこと、評価するべき点は多岐に渡る。しかし、この失敗が確実にゼルリヒトを有利に動かしてしまうのは目に見えている。

何故この状況が見えていながらも、テトラの逮捕に固執してしまったのか。理由は簡単だ。目の前の女性の記憶を一秒でも早く解放するため。なのはの記憶を奪った張本人を捕らえれば何かがわかるかもしれない。ただそれだけを願ってこれまで尽力してきた。その結果、ロストロギアは破壊され、黒幕は地球へと飛び立っていってしまった。

自分の未熟さに、力の無さに、翔馬は苛立ちを募らせることしかできなかった。

 

「俺のせいだ……。テトラの雰囲気は最初に見たときから違和感があった。それに気が付いていながらこれで全てが終わると、この一連の事件を解決できると思っちまった……もっと他の可能性を考えられる余地はあったってのに……」

 

 翔馬の言葉に全員が視線を逸らすが、たった1人だけ、翔馬に寄り添う存在があった。

 

「……そうかもしれない、でも今は後悔している場合じゃない。地球で何をするのかわからない犯罪者を野放しにしておくわけにはいかない。少しでも早く私たちが現地に行って、この事件を解決しなくちゃ。藤田三佐はこのまま犯罪者を黙って見送るの?」

 

 なのはの言葉に翔馬は何故か心が軽くなるのを感じた。ただ励まされてもきっと翔馬は納得しなかっただろう。だが、なのはは違う。翔馬の失敗を失敗と認めたうえでこれからどうするのかと翔馬に問うているのだ。頭から冷水をかけられた気分になりながら、ちゃんと頭を冷やした上で、翔馬は心の中でホントになのはには頭が上がらないなと感じながら視線を動かし、深く息を吐いて表情を引き締めた。

 

「そう、だな。俺が落ち込んでいても何も変わらない。……これから機動六課に戻って対策を練るぞ」

 

 翔馬の言葉に全員が表情を引き締めると、しっかりと頷いた。

そして、翔馬は目線だけを動かしてなのはを見ると、そこには安心したように微笑む姿があり、翔馬は少しだけ表情を緩めた。

 

「ありがとう、なのは」

「ううん、藤田君にあんな姿は似合わないからね。大変だけど、頑張ろう」

 

翔馬はなのはの言葉に頷くと、全員を先導して歩き始めた。

これから巻き起こるであろう、大きな事件に立ち向かうために。

 

 

 


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