モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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34-がむしゃらに、そしてがむしゃらに

 雨季を抜け、少しづつ暑くなってきたように思う。もう一月もすれば本格的な夏到来だろうが、その前に僕は一仕事ある。クチバシティで行われるサントアンヌ杯だ。

 世界中を回る豪華客船サントアンヌ号は来航した先々で水タイプのエキスパートによる海上バトルを企画している。現在各地で行われているポケモンリーグは地上戦を主に想定されているが、その現代バトルの感覚はサントアンヌ杯ではあまり通用せず、普段注目を浴びない水タイプのエキスパートが輝く数少ないトーナメントとなっている。

 そもそもサントアンヌ号に乗っている人々は海が好きなのである、釣りが好きで潮風が好きで波の揺れがたまらないのだろう。

 

 サントアンヌ杯は招待制である。ポケモンバトル好きの乗客の意向が大きく反映され、過去には一般トレーナー時代のミクリさんも出場している。僕が言うのも何だが、選出は結構通好みで、乗客の方々のバトルに掛ける思いが伝わってくる。

 僕はクチバでサントアンヌ杯が行われるたびに招待されていたりする。と言ってもこの時期(シルフトーナメントが近い)に普段と勝手の違う大会に出場するカントー・ジョウトリーグトレーナーが少ないというところもあるのだろうが。

 僕は水の町ハナダ出身である。もちろんジムリーダーのカスミさんにビシバシ鍛えられているし、初めて手に入れたポケモンもコダックである。リーグトレーナーになった今でも、水上でのバトルには一家言あるつもりだ。これは自慢だが、僕は一度だけこの大会で優勝したこともある。優勝者はその晩にサントアンヌ号で行われるパーティで主役級の扱いを受ける事ができる。何より飯がメチャクチャに美味いのだ。

 

今回僕は新戦力としてアズマオウをパーティに組み込んだ、いつかエッセイにもかいたあのトサキントが進化したのである。

 あのトサキントはまあとんでも無い怪物だった。放流しなかったご老人の判断は賢明だったと思う。完全体ではないにしろドラゴンポケモンであるガバイトをビビらせるトサキントなんて聞いたことがない、ゴルダックが居なかったら手懐ける事もできなかったであろう。

 挙句勝手に何かと戦って勝手に進化するしもう無茶苦茶である。今でこそ懐いてくれたが、本当にどうなることかと思った。

 このアズマオウの特徴として特殊な特性がある。本来水ポケモンは電気タイプに対して弱いはずなのだが、このアズマオウはツノで電撃を受け止めることができるのだ。理論上は存在するものの、実際には初めて見た。

 海上バトルでは電気タイプの技に対してどのような対策を取るかは非常に重要なポイント(草タイプの技は海上では威力を発揮しづらい)になるので、何かスパイスになればと投入したのだ。

 

 結果として、僕はサントアンヌ杯二度目の優勝を果たした。ほとんどアズマオウの力である、ホエルオー相手につのドリルを決めたのにはこちらも驚くばかりだ。

 アズマオウは喜びとともにこちらに顔を出すのだが、ちょっとだけ怖い。しかし、強さに貪欲なその姿は、美しいと思う。

 

 最近僕はこだわりをあまり持たず、ただひたすらに勝とうと考えている、それがいい方向に作用しているのかはどうかは知らないが、調子がいい。取り敢えずはこのまま走り続けようと思う。




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