モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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27-そうだ、イッシュに行った

 ご存じの方も多いかもしれないが、先日、僕はイッシュ地方に行ってきた。イッシュ地方で行われるエキシビションマッチに招待されたからである。

 クロセ君が本誌でも度々話題にしていたイッシュのアイリスと、僕や他のリーグトレーナーはイッシュリーグの面々との手合わせをしてきたのである。

 クロセくんとアイリスちゃんは共に超有望株で、いずれどちらかがチャンピオンになるとこの対戦は中々見ることができなくなるので、非常に有意義だったと思う。まあどちらもチャンピオンになってしまえば年末に顔を合わせざるを得なくなるのだが。

 僕はBリーガーとしてはたった一人(クロセ君は昇格を決めているから正確には二人だが)だけ選出されている。その他はみーんなAリーガーである。

 なぜ僕が選出されてBリーグ全勝一期抜けのオグラ君が選出されていないのか、議論尽きないところではあるが、恐らくこのエッセイでイッシュについて書きすぎたのが原因だと僕は推測している。要するに思い知らせてやろうという事だ。なるほど、つまりこれはカントー・ジョウトとイッシュの対抗戦という側面があるのかと思うと、僕は飛行機の中で俄然やる気が湧いてきたわけである。エキシビションで大切なことは自分が本気かどうかではなく、相手が本気かどうかなのだ。

 

 イッシュ地方の地名の由来は、一種二種の一種からきているらしい。遠くから見ると一種に見えるからだそうだ。

 しかし実際には多種多様な人とポケモンからなる集合地方である。今回の来訪で、僕はそれを思い知った。

 正直な所、僕はイッシュ地方にあまり良い印象を持っていなかった。一番好きで大雑把、何でもかんでもデカい方がいい位の事を考えているのがイッシュ人だと思っていた。

 ところが、実際には多種多様な人間たちがそれぞれの考えを持ち寄り、理解し、更に洗練された、明るく愉快な地方であった。いやまったく、楽しかった。

 

 クロセ君や他のトレーナーがポケウッド(最近イッシュで流行中の全く新しいスタイルの映画)を見ている間、僕はフカマルの経験値を稼ぐために、トレーナーたちと手当たり次第野良試合をしていた。僕はこういう野良試合を結構重要視していて、新しい地方に行くたびに暇を見つけてはやっている。特に海の向こうの地方の場合は、目ざとく僕の正体を見破るマニアもいないのでのびのびと出来る。

 フカマルはメスではあるがかなりやる気がある、親代わりのアーマルドや古株でポケモン達のリーダー格のゴルダックの真似をしようと好戦的だ。

 イッシュのリーグトレーナーの考え方は結構直線的で、待つより自分から動いてこじ開けていくのを良しとしていると言うのはポケモンバトルのマニアには結構知られていることなのだが、イッシュ地方のアマチュアトレーナーもそのような考え方に近いようだ。

 

 イッシュには多種多様な人間がいるとは知っていたが、まるで千里眼のようにポケモンのことを理解している青年がいたのには驚いた。

 バトルを終えた僕がフカマルに木の実を上げている時にツカツカと歩み寄ってきて「その子はバトルが好きなようだね」と何の前置きもなく言うのである。それ以前にまさか僕はこの地方で言葉が通じる人間に出会うと思ってなかったのでソッチのほうに驚いた。

「ありがたいことだね、僕もバトルが好きだから」と言うと「でも戦っているのは君じゃないだろう?」と言う。

「戦ってるさ、こいつらが勝つか負けるか、気持ちよく戦えるかどうか、そういうところで勝負してる」

「フカマルは早くドラゴンダイブや逆鱗を教えてくれと言っているよ」

「目立ちたがりやだからな、そういうのをぐっと我慢させるのが僕達の役目なわけ。この体でそんな技したら将来いい事にはならんさ」

 なるほど、と青年は一人納得して消えた。マイペースでポケモンの理解が深い良いトレーナーだった。向こうでは有名人だったりするのだろうか。




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