モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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24-『生命賛美流』リベンジ

 毎日毎日、うだるような暑さである。これでまだ夏一歩手前だというのだから嫌になる。水ポケモンを所有している皆様はパートナーの脱水症状に気をつけて欲しい。

 僕が住んでいるハナダは水の町であるから、ゴルダックはなんとか持ちこたえている。泳いでかき氷食って寝る。暑い休日はこれである。

 

 夏といえば、全トレーナー参加のシルフトーナメントの予選が始まった。

 一年で優勝者を決めるリーグ戦とは違い、短期間の弾丸型トーナメントである。手持ちのポケモンは六匹の登録制で、アクシデント等があっても変更は許されない、運と勢いがそのまま反映されるエンターテイメント性の高いトーナメントである。

 試合前のプロモーションビデオや入場演出も非常に凝っており、本戦に出場するだけで知名度がグッと上がるという僕達にとっても魅力的なトーナメントだ。

 そして優勝者にはその後一年シルフカンパニーとのスポンサー契約が結ばれるのである。シルフ社の新商品のコマーシャル出演や、優勝者限定グッズなどを作られたりする、ちなみに僕は限定グッズのコレクターで、これまでに出てきた限定品は全て持っていたりする。特にイツキモデルのスーパーボールはデザインに優れていて素晴らしいと思う。

 

 僕は前年度ベスト4(どんなもんだい)なので予選を免除されているが、組み合わせ次第では予選でも好カードがあるので、予選会場に顔を出すことがある。

 クシノはクロセ君と当たり、健闘したが一歩足りなかった。「ツイてないでほんま」とボヤいていた。クシノは現在Bリーグでも負けが込んでいるが、そんなところで足踏みを続けるような男ではない、この経験は必ず糧にするだろう。

 シンディア氏はAリーガーのキリューを受け潰すという大波乱を見せて本戦出場を決めた。キリューは独特の感覚を持つ攻めっけの強いトレーナーで、受け派のトレーナーを尽くカモネギにしてAリーグに上がった実力者なのだが、それをも受け潰すとは恐れ入る。クロセ君とシンディア氏はCリーグの器ではない。Cリーグの昇級戦線が今から楽しみである。

 

 さて、僕が予選で最も注目していたのはオグラ君とシバさんの対戦である。両者ともリーグ戦で調子がよく、シバさんは新戦力のハガネールを加えてから全盛期の輝きを取り戻しつつある。しかし対戦相手のオグラ君も『生命賛美流』にスタイルチェンジしてからは中身が変わったかのように勝ち続けている。シバさんとの対戦自体にもなにか思う所があるはずだ。

 

 僕の目論見は見事に的中し、この試合は名勝負となった。予選とあってケーブルテレビでしか放送されていなかったのが他人ごとながら惜しいと感じるほどだった。

 オグラ君はシバさんに対して正々堂々真っ向からの勝負に持ち込んだ。以前の彼からは全く想像できない、これが『生命賛美流』なのだ。

 そしてシバさんもそれに乗り、カイリキーとキノガッサによるバチバチとした叩き合いになった。手数にまさるキノガッサと一撃にまさるカイリキーの戦いである。

 こうなってくるとお互いに精神力の戦いである。ポケモンはトレーナーを信頼しているから痛みに耐えるし、トレーナーはポケモンを信頼しているから後に引かないのである。そして、そういう戦いに持ち込めば現役トレーナーでシバさんの右に出るものはいない、と僕は思っていたのである。

 しかし、最後に立っていたのはオグラ君のキノガッサであった。これには会場大盛り上がりである、関係者控室にいた何人かのリーグトレーナーも「これはえらいことだ」と大騒ぎであった。

 オグラ君はBリーグ上位、対するシバさんはCリーグであるから紙面上では妥当だと思われる人もいるかもしれないが、それは全くの考え違いである。

 かつての四天王が、最も力を発揮できる舞台に立ち、その力をあらんばかりに発揮しながらもそれに勝利している。そう書けばこの勝利の大きさがわかっていただけるだろうか。

 

 その後、会場でオグラ君とすれ違いざまに「やるじゃん」と声をかけた。

 こちらに振り向きながらニカッと笑ったオグラ君の白い歯が印象的だった。




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