モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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18-オーキド博士に会った話

 『週刊ポケモン生活』の読者の皆様は、ラジオを聞いたことがあるだろうか?

 僕がまだリーグトレーナーに成り立てだった頃、ポケギアと言うものが世の中に現れた。電話と地図と時計とラジオがポケットに入る、その感動と興奮は僕達にとってとんでもないものだった。

 その頃の僕は、取り敢えずスイッチがあったら押してみる時代だった。まだ寒い時期だった、僕の後ろに並んでいるお兄さんからおもむろに手渡された温かい缶コーヒーをカイロ代わりに手の平で転がしながら、開店を待った記憶がある。まあその後ポケギアは地方で開かれるトーナメントの賞品になったりして、僕の苦労は完全に空振りに終わるわけだが。

 今ではポケッチと言う新型になっているが、その頃の感動と興奮は今も進化を遂げて僕の胸ポケットにあるわけだ。

 

 とにかくポケギアを持っているトレーナーにとって、家でしか見れないテレビよりも今そこで聞けるラジオのほうが大きな娯楽だったのだ。中でも僕は「オーキドはかせのポケモンこうざ」と言う番組がお気に入りで、いつもそこにチューニングを合わせていた。

 この番組の素晴らしいところは、ポケモンの大量発生情報をリアルタイムで放送してくれるところにあった。いやー、おかげで僕は随分といい経験をさせてもらった。

 若いクルミちゃんとオーキド博士の掛け合いも絶妙だった。特に僕にとってオーキド博士は憧れであった。なんといっても氏はトキワジムリーダーシゲルの祖父であり、レッドの才能をいち早く見抜いた人物の一人でもあるのだ。

 さて、何故このようなことを書いているのかというと、件の『オーキドはかせのポケモンこうざ』になんとこの僕が出演させていただくことになったからだ。これまで氏の番組では幾多ものゲストが登場していたが、リーグトレーナーとしては初めての選出である。これは栄誉あることである。密かに自慢だ。

 僕は一週間ほど、ポケモンの特性とそのバトルへの応用について話すことになった、後はポケモンの孵化についてのリアルタイムトークもする、ポケモン学の権威の前でなんと光栄なことか。

 

 と、言うわけでつい先日僕はコガネシティのラジオ塔に打ち合わせにお邪魔した。向かうのは二度目である。

 いやはやびっくりしたのは随分と綺麗になっていた事である、勿論ラジオ塔とクルミさんのことである。

 特にクルミさんの美貌には頭が下がるばかりである、番組中に進化したという伝説を持つペルシアンと合わせて素晴らしいコントラストだった、同じペルシアンでもこうも違うかね、と書くとクシノにぶっ飛ばされると思うので、書かない。

 オーキド博士も年齢に似合わず随分と元気な方だった、特に感激にしたのは僕の事をご存知だったことで「お互いに、本職以外で有名じゃのう」と言っていただいた。

 

 打ち合わせの内容はラジオ番組に直接関わることなのでここに書くことは出来ないが、ふと氏とレッドの事について話になった。

「初めは丸腰で草むらに入ろうとしていた無謀な少年にポケモンを与えただけだったんじゃ」

「何処らへんで才能を?」

「シゲルに勝ったのを間近で見たのと、トキワへのお使いに行かせただけでポケモンが懐いていたのを見てからじゃな」

「へー、やっぱ違いますね」

「シゲルのいい競争相手になると思ってポケモン図鑑を与えたんじゃが……その判断は失敗じゃったな」

 ポケモン図鑑とは、氏の考案したポケモンの生態を記録する機械である。

 余り知られてはいないが、レッドとシゲルがポケモントレーナーになったのは、オーキド博士の助手としてポケモン図鑑の完成を託されたからである。

 シゲルが殆ど完成させたこのポケモン図鑑無くして、この世界は無いと僕は思っている。

「レッドの奴、強くなりすぎて図鑑の完成などとてもとても、今じゃシロガネ山にこもっとるし、才能がありすぎるのにも困ったもんじゃよ。その点君は信用できるな、どうかね? 実はカロスのポケモン図鑑を向こうのポケモン学者と一緒に制作する計画があるのじゃが、協力する気はないかね?」

 僕は苦笑いしてやんわりと断った。提案自体は全国のレッドフリークが泣いて喜びそうなものだったが、それとこれとは話が別である。


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