モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。

カントー日報『灯火』⑥

Q 自分の弱さのためにポケモンの才能を潰してしまいました

　暗い出だしで恐縮ですが、数年前、パートナーの浮気が原因で離婚しました。そして、パートナーとの思い出が残る町並みに耐えきれず、故郷を離れ別の町に移住しました。

　さて、故郷の近くには広い平原があり、ドードーが群れで生息しています。その群れの中に、ゲットしていたわけではありませんが、子どもの頃からよく遊んでいた子が1匹いました（2つの頭が喧嘩していたところに、木の実を1つずつ与えたのが仲良くなったきっかけです）。陽気で元気な子でした。塞ぎ込んでいる私を放っておけなかったのか、その子は単身群れから離れ、移住する私に付いて来てくれました。

　幸い、移住先では人間関係も仕事も大過なく、精神的にも持ち直してきています。

　ただ、今になって思うのは、私の精神的な弱さのために、ドードーの将来を捻じ曲げてしまったのではないかということです。

　私が今住んでいる町の周りは凸凹した道が多く、ドードーが全力で走り回って遊べるような場所はありません。実際、ドードーはこちらの町に来てから、あまり走ることがなくなりました。

　もし私が移住することなく故郷にいたままなら、ドードーは今も伸び伸びと自由に走り回ることができていたのではないでしょうか。相当に脚が速い子でしたから、群れのリーダーにもなれていたかもしれません。ですが、全力で走る機会が減った今ではもう、その脚力も衰えていることでしょう。

　ドードー本人は気にした様子はなく、今も隣でのんびり寝そべっています。しかし私は、この子の才能を潰してしまったような罪悪感を覚えています。

　ポケモンにとって、才能が活かせない場所に住むことは幸せなのでしょうか。私がこの子のためにできることは何かあるのでしょうか。

(30代男性　医者)

A　ほとんどおのろけだよこれ。

　思わずめまいがしてしまいそうなほどに甘いお悩みですね。トレーナーである自分から見れば本当に微笑ましい、しかし、質問者の方は本当に悩んでいるようで、このような機会をいただけただけでも、僕が回答者の一人に加わった意味はあったなと思いますね。

　確かに、イメージ的に走っていないドードーを窮屈に感じてしまうのも無理はないだろう。そして実際に、ドードーにとっては凸凹した道よりもだだっ広い平原のほうが生活しやすいだろう。

　これはあくまでも僕の推測だが、ドードーの脚力というのはそう簡単には衰えない、もちろん多少の衰えはあるかも知れないが、それでも人間をはるかに凌駕するスピードで走ることができるだろう。つまり、あなたのドードーはそのつもりになればいつでもあなたから逃げることができる。

　それでもドードーがあなたから逃げ出さないのは、単純にあなたのことが好きだからだろう。

　あなたはドードーが群れから離れてあなたについてきたと書いているが、ドードーは群れから離れたつもりはないだろう。群れが移動したからそれについて行ったという意識に近いものがあると思う。あなたは自信を持っていい、ドードーにとって、あなたこそが平原であり、きのみであり、群れだったのだ。幸せがどうとかという問題ではない、あなたのそばこそがドードーのいる場所なのだろう。

　これは質問者だけの話ではない、僕だって、ゴルダックの本来の住処は水辺だろうし、何ならアーマルドやユレイドルはそもそも現代のポケモンですら無い。だが、彼等は少なくとも今現在僕から離れることはないし、僕が彼等から離れることはない、そんなもんだ、パートナーとは、本来そんなものだよ。

　もしあなたが、ドードーのために何かをしたいというのであれば、あなたの思う愛を注いでやることだ。そして、たまの休みにはだだっ広い高原に行って、彼と一緒に走ればいい、追いつけないなら自転車にでもバイクにでも乗ればいいじゃないか。ドードーの持つ世界を二人で共有しよう。

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