モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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週刊ポケモン生活創刊30周年特別企画『モモナリマナブのおてんき質問室』

 時間が立つのは早いもので『モモナリですから、ノーテンキにいきましょう』は今年で八年目、『週刊ポケモン生活』の中でも屈指の長寿連載となったらしい。これもすべて出版社の皆様と読者の皆様のおかげである。ありがとうございます。

 現役リーグトレーナーによる観戦記以外のエッセイは一部界隈でかなりの反響(知り合いも含め)で、この八年の中で何通もの応援のメールやお手紙をいただきました。その中にはいくつか僕に質問をしているものもあり、僕としてはその全てに答えたいと思っていたのだが、どうもその全てに答えるとエッセイの話がブレることもあり、さらにあまりSNSが体に馴染まなかったので気楽に答えることもできなかった。

 今回は『週刊ポケモン生活』の創刊30周年の企画として、頂いた質問に答える機会をいただいた。もちろん僕の返答全てが正しいとは限らないし、この歳までバトルのことしか考えてこなかった残念な人なので返答に過度な期待はしないで欲しい(そもそもあまり悩んだことがない)

 好評なら何週かに渡って続けると編集部は言っていたが、続くとは思えないので最初から答えたい質問を抜粋した。

 

 

 

 

Q 様々な場所でバトルを嗜んできたモモナリ選手に質問です。今まで訪れた中で最もレベルが高いと感じた地方はどこですか?(30代男性)

A 基本どの地方もレベルは高い

 

 これは自信を持って答えることができる質問だ。

 この質問の通り、僕は世界のあらゆるところでバトルを行ってきた。多分だけど歴代チャンピオンの誰よりも多くの地方に行ったんじゃないかな? チャンピオンやトップトレーナーに比べれば圧倒的に時間がある立場だったし。協会も僕のそういう性分を知っているから他地方での仕事はとりあえず僕に振ってくることもあるし、僕もカントー地方の斥候としての立場が気に入らないわけじゃない。

 その上で答えるならば、基本的にリーグがある地方には大抵強いトレーナーがいる。いや、リーグがない地方でも強いトレーナーはいた。近年だったらポケモンリーグを新しく誘致したアローラ地方はかなりレベルの高いトレーナーたちがいたし(フェアリータイプに対する習熟度だったらカントーより上だったかも)、みんなが知らないような小さな地方でも、カントー・ジョウトリーグに参加できるような才能のあるトレーナーはいた。

 人がいてポケモンがいて、それぞれが協力するという概念さえあれば、ある一定のレベルにまでは達するんじゃないかなと思う。時代も場所も関係なくね。

 でもその上で『地方のレベル』が高いなと強いて感じたのはシンオウ地方とガラル地方かな。

 シンオウ地方はまずポケモンが強力! 気候が厳しいからなのか土地が険しいことが要因なのかはちょっとわからないけど、とにかく野生のポケモンたちが強力で、当然トレーナーたちもそれに対応しなければならないからレベルが高かったね。カントー・ジョウトリーグの歴史を語る上でシンオウ地方のポケモンたちは外せないんじゃないかな。当時まだ無名だったシロナがカントーのトレーナー達をバッタバッタとなぎ倒したのはもう昔話かもしれないけど、その様な衝撃がある地方だった。

 余談だけど僕は本当にシンオウ地方を気に入っていて、一時期は本当に移住を考えていた。最終的にはハナダを選んだんだけど。

 今でも時間を見てシンオウ地方には行っている、パートナーの一人であるユキノオーに会いにね。

 もう一つ、ガラル地方はリーグとファンとの距離が近くて一般人でもバトルのことに詳しかったね。でもあれだけ人気だとガラルのリーグトレーナーは大変だね。少し話もあるのでまた行くかもしれないんだけどすごく楽しみだ。

 

 

 

 

Q モモナリ選手はガブリアスと共同生活を行っている数少ないリーグトレーナーの一人ですが、ドラゴンとの生活で楽しいことと難しいことをそれぞれ教えて下さい(20代男性)

A 生まれてはじめて鱗が欲しいと思った

 

 僕の手持ちの中には半野生の状態(ピクシーとかアーボックとか)のポケモンもいるし、それが割と社会の役に立つこともあるんだけど、ガブリアスは卵の頃からの付き合いで帰る野生がないから共同生活をしている。

 難しいことと言うかエッセイを書き始めてから最大の事件はやっぱり彼女に腕を噛まれたことなんだけど、あれは一概に彼女の口癖が悪いと言うだけの問題でもなくて、例えばドラゴン同士であったりポケモン同士であったらなんの問題もないコミュニケーションだった。

 僕はポケモンの育成やしつけのプロフェッショナルじゃないし、そうじゃないから油断して腕を噛まれたわけなんだけど、一つ実感していることは「人間はドラゴンの親として力不足」だなってこと。僕にドラゴンポケモンやアーマルドのような硬い鱗や装甲があればなんの問題もないコミュニケーションだったんだよ。やっぱりそれはドラゴンや強力なポケモンと生活する上での問題点だね、脆すぎるんだよ、人間は。

 でも結果的に彼女はすごく心優しいドラゴンになったと思うし、あれ以来人間相手に問題は起こしていない、かと言って油断してはいけないんだけどね、彼女も、我々も。

 最近ではドラゴンポケモンの日常生活を一任するサービスもあるしそれを利用しているリーグトレーナーもいるけど、それも一つの形なんじゃないかなと最近は思う。歳をとったのかな。

 楽しいことはそれこそいくらでもあるね、彼女がドラゴンだからどうとか関係なく、楽しいことはいっぱいあった。

 まず僕の手持ち達の表情が明るくなったよね、一番顕著なのはアーマルドだったんだけど、実はゴルダックも彼女が生まれて前より少し回りに気を使えるようになった。

 あとはエッセイにも書いたけど彼女自身がかなり甘えたの可愛らしい性格をしてて、やっぱり愛嬌は大事だというか、微笑ましく思うような瞬間があるよね、アーボックとうまくやれるかどうかとか結構心配してたんだけど、今のところうまく行ってる。あと、結構界隈のガブリアスからモテるんだようちの子は。

 バトルにおいてはどうしても彼女のドラゴンとしての強さは避けては通れない話だ。彼女が手持ちに入ってから僕の成績が高いレベルで安定し始めてるのは間違いのない事実だし、彼女の『すながくれ』の特性は今のガブリアスのトレンドとは少し違うんだけど、パーティとしてはうまくハマった。それと他の手持ちたちもガブリアスというドラゴンがより近くにいるようになったから対戦相手のドラゴンに対しての慣れと言うか、細かい機微に気付けるようになった。

 いろいろなことはあったけど、結果として彼女と生活してよかったなと思うよ。

 

 

 

 

Q 息子をリーグトレーナーにしたいと考えています。今の所ポケモンに恐れている様子はありませんしジュニアクラスでは好成績を残しています。経済的にも余裕があるので設備投資も可能です。リーグトレーナーであるモモナリさんから見てプロになるために必要な練習とはどのようなものでしょうか?(40代男性)

A 少なくとも僕の頃はリーグトレーナーってのはなるものじゃなくて「なってた」ものだったよ

 

 この手の質問は僕や他のリーグトレーナーにはつきものというか、必ず通らなければならない質問であったりして、それぞれのトレーナーがそれぞれの答えを持っている。

 その中で、僕がこの手の質問に対して持っている答えというのはかなり独特というか、色々と議論になったりするんだけど、まあそれでも僕にこの質問を送ってきたのだから遠慮なく答えようと思う。

 僕の答えは『この質問をしてくる時点で大成しない』だ。こういう事を言うと怒られるんだけど、未だにこれは正しいと思っているし、トップクラスのトレーナーってのはこの手の質問をしたことはないだろう。

 この質問者の息子さんはジュニアクラスで好成績を残しているらしい、ジュニアクラスというもののレベルがわからないけど、好成績というからにはぶっちぎりの一番じゃないんでしょ? だったら無理です。リーグトレーナーってのは各地の神童というか「どうやったら倒せるんだよこの天才」みたいな人間の集まりで、本人が目的を持ってリーグトレーナーになったというよりも、気づいたら周りがリーグトレーナーとして生きる方向にレールを敷いているようなタイプばっかりだ。

 例えばキクコさんは優秀なトレーナー、研究員として知られていたし、ワタルはドラゴンつかいの一族として強いことが常識という環境だった。キシやカリンさんも子供の頃から明るい将来をみんなが想像していただろうし、現チャンピオンのクロセは言わずもがなだろう。

 Aリーガーの面々だって物心ついた頃からその才能がずば抜けていた連中ばかりだ、例えばキリューなどは生まれてはじめてポケモンに触れ合ったその日にピジョットで空を飛び回ったと言うし、もうエピソードがおかしい。

 ジュニアクラスで好成績を残している程度では才能がずば抜けているとは言えないと思うし、この質問をわざわざ送ってくるあたり、お父さんが先走ってるだけのように思える。

 僕の知る限り才能がないのにリーグトレーナーとしてやっていた人間の代表はクシノなんだけど、彼の最高位はBリーグ四位だし、僕は彼がどのくらい自分を追い込んでいたかをよく知っているから、あれだけやってAに上がれないのかと今でも思ってる。現にリーグ引退してからはのびのびと楽しそうにしながら社会的に徳を積んでいる。どう考えても向いていなかったよ。

 あと、僕から見て才能があるのにバトルに向いていないからとリーグをやめたトレーナーも何人も知っている、それも含めて才能と言えばそれまでなんだけど、難しい世界です。

 ポケモンを恐れている様子がないこととバトルが強いことをイコールだと思っているのも良くない。ポケモンと仲がいいからってバトルが強いわけじゃない、むしろポケモンの痛みがよく分かるからバトルが苦手だという子もいた。

 全体を通して、この質問をしているお父さんが先走りすぎてるね、本当に優れたトレーナーならばほっといても結果を出すだろうし、その分周りがほっとかない。キクコ一門のキリューなんかが苦労することはスカウトする子の両親を説得することらしいしね。

 最後に僕が提案するのは、普通にお父さんがトレーナーになるのはどうだろう。子供をリーグトレーナーにしたいくらいこの業界に熱意があって、経済的にも余裕があるらしいし、じゃあお父さんがトレーナーになれば良いんじゃないの? と純粋に思いました。意外と楽しいですよトレーナー。

 

 

 

 

Q モモナリ選手が天気変更戦術嫌いなのはマルマインとか起動役の扱いが雑だということが大きな理由との事でしたが、もし起動役ペリッパー・エースガマゲロゲみたいなパーティが相互に弱点を補いあえるような構築だったらあそこまで嫌う事はなかったんでしょうか?(SNSでの質問)

A あの頃は虫の居所が悪かった。

 

 これは難しい質問だね。自分でもどう答えていいかわからないけど、自分の考えも整理したかったから載せました。

 質問の人の言う通り、たしかに僕は天気変更戦術(雨)に対してはものすごく怒ってた。その理由の一つには確かに起動役のマルマインの扱いが雑というのはあったと思う。ただ、全てが全てこの理由だけってことじゃないと今では思っている。

 まず大前提として言っておきたいのは、僕は別に天気変更戦術(雨)の第一人者であるササモトさんのことは全然嫌いじゃないし、素晴らしい戦略家として尊敬している。引退していた今では本業であったポケモンレンジャーの仕事で活躍しているらしいし、僕よりもよっぽど社会に貢献している。この辺の話になると決まって僕とササモトさんの仲がどうこうという話になるので先に言っておいた。

 あと僕は天気変更戦術自体が嫌いなわけでもない、そもそも僕は『すなあらし』の人だし。

 ただ、マルマインの扱いを含む一連の戦術を、リーグトレーナーたちがなんの疑問もなくコピーしているような現状に思うところがあった。きっとこれは僕が古い人間だったからだろうし、まあ、古い人間の最後の抵抗だったのだろう。

 もう一つ要因としてあるかもしれなかったのは、あの頃の僕はバトル以外の部分で人生がちょっとうまく行っていなかったところがあったので、少し虫の居所が悪かった。あまりにもダサいけど、まあ無くはないんじゃないかと思う。

 そもそも僕ってあの頃雨戦術に対してはかなり高い勝率だったんだけど、それでも僕に天気変更戦術(雨)をぶつけてくるトレーナーがいたりして思うところもあったんだよね。それで天気変更戦術(雨)の本家であるササモトさんに照準を合わせていっちょ戦術そのものを否定してやろうという結論になったんだと思う。

 結果として、あのときの僕とササモトさんの試合はすごくいい試合だったと思うよ、ササモトさんはしっかりと僕の対策をしていたし、僕は僕でその対策の対策をしっかりと披露できた。なんだかんだで、練習が本番で花開く時って最高に気持ちいいんだよ。

 でもあの試合がきっかけで天気変更戦術(雨)の数がぐっと減ったから、僕としては損だったね、あれがなかったらもっとAを維持できたかも。

 質問の後半だけど、起動役ペリッパーとエースガマゲロゲの組み合わせは良いね! 電気タイプが天敵のペリッパーと草タイプが天敵のガマゲロゲの組み合わせが良いし、ガマゲロゲは雨では素早さが早くなる。自然界でもうまく共生しているんじゃないかな。でも僕とゴルダックなら勝つよ!




感想、評価、批評、お気軽にどうぞ、質問等も出来る限り答えようと思っています。
誤字脱字メッセージいつもありがとうございます。
ぜひとも評価の方よろしくおねがいします。
また、もしあればモモナリへの質問などもよろしくおねがいします(全てに答えることができるわけではないと思います

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