霊夢と巫女の日常録   作:まこと13

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第82話 : フランドール・スカーレットの日記

 

 

 

 

 きょうからにっきをつけてみたいとおもいます

 きょうわおねえさまがけーきをつくってくれました

 うれしかったです きょうのことわわすれません

 

 ふらんどーる すかーれっと

 

 

 

 

 おねえさまが、ご本をよんでくれた。

 ちょっとかなしいおはなしだったのでわたしはないちゃったけど、おねえさまはやさしいかおでだいじょうぶよってぎゅってしてくれた。

 また、よんでほしいな。

 

 ふらんどーる すかーれっと

 

 

 

 

 第1274回目

 

 お姉様からもらった本も、だいたい読めるようになってきました。

 文字もだいぶ書けるようになって、私がこうやって日記なんて書いてるって知ったらお姉様はどんな顔をするのかな。

 ちょっと楽しみです。

 

 フランドール・スカーレット

 

 

 

 

 7年5月19日

 

 最近、お姉様が食事にピーマンを入れてくる。

 体にいいからって言うけど、私は好きになれないなあ。

 吸血鬼がピーマンとか(笑)ってバカにしたら、ちょっと叱られちゃった。

 でも、私は悪くないよね。

 明日も出てきたら、私もちょっと怒ってみようかな。

 

 フランドール・スカーレット

 

 

 

 1年1月1日(7年5月20日)

 (今まで適当な日付で日記をつけてたけど、この日を私にとって始まりの記念日にしたいと思います!)

 

 お姉様が、久しぶりにケーキを焼いてくれた。

 フランって文字をチョコレートで書いてくれて、ロウソクが立っていた。

 外の世界に、何かを記念する日にそうする風習があるんだとか。

 まぁ、本当は今日は何の記念日だった訳でもないんだけどね。

 でも、今日はお姉様と一日一緒に笑ってお話しして、本当に楽しかったです。

 昨日のピーマンのこととか文句言おうと思ってたけど、そんなことどうでもよくなっちゃった。

 面と向かっては恥ずかしいから絶対言わないけど、ここには書いてみようかな。

 

 大好きだよ、お姉様。

 

 フランドール・スカーレット

 

 

 

 

 

「……これ、さっきの奴の日記なんだよな」

 

 レミリアは確か、あの扉から出てきた奴に「フラン」って言ってた。

 恐らくあいつが、この日記にあったフランドール・スカーレットっていうレミリアの妹なんだろう。

 最初の方から適当に何冊か読んでみたけど、その成長がはっきり見て取れた。

 それが今やあんな状態になったと思うと何があったのか気になるけど……でも、違和感があったのはフランよりもレミリアのことだった。

 ここに書いてあるレミリアは、今とは全然違うイメージだ。

 表情豊かな、優しいお姉さん。

 それが、一体どうしてああなってしまったのか。

 

「もう少し、読んでみるか」

 

 私はもう少し、時間が経ってからの日記を読んでみた。

 

 

 

 

 

 最近、お姉様の様子が少しおかしい。

 家を空ける機会が増えてきたのもそうだし、私がわがままを言っても怒らない。

 一番気になってるのは、お姉様が涙脆いこと。

 今日も本を読んで知ったことをお姉様と話してる内に、なぜかお姉様は「ごめんね」って言ってきた。

 私が外に出られないのは自分のせいだなんて言って、泣いていた。

 私は別に謝ってほしい訳じゃないのに、お姉様といろいろ話したかっただけなのに。

 今後は、あんまり部屋の外の話はしないようにした方がいいのかなぁ。

 

 87.9.14 Frandle Scarlet.

 

 

 

 

 明日は、100年目の記念日!

 私が勝手にそう言ってるだけなんだけどね、お姉様は覚えてるかな。

 覚えてなかったら、少しイジメてあげようと思います。

 最近ずっと元気がないみたいだし、明日をきっかけに元通りになれたらいいな。

 

 99.12.31 Frandle Scarlet.

 

 

 

 

 しばらく間が空いちゃったけど、今日からまた日記を書き直そうと思います。

 100年目の記念日のこと、結論から言うとお姉様は覚えててくれました。

 だけど、全然楽しくありませんでした。

 お姉様は、一回も笑ってくれなかったから。

 今までにないくらい、ずっと「ごめんね、ごめんね」って言い続けて。

 私はお姉様が来てくれるだけで嬉しいって伝えたのに、全然納得してくれなくて。

 もう少しで何とかしてあげるからって言って、すぐ出て行っちゃった。

 そんなこと、どうでもいいのに。

 私は外に出られなくてもいい、この日くらいお姉様と一日ずっと一緒にいたかっただけなのにな。

 

 100.1.7 Frandle Scarlet.

 

 

 

 

 158.3.30

 

 外で戦争があるみたいで、お姉様は明日からしばらくここに来られないみたい。

 お姉様がケガしちゃうのは嫌だけど、もう止められないんだって。

 私も協力できればよかったんだけど、やっぱり私は外には出られないって言われちゃった。

 

 どうして戦争なんてあるんだろう。

 本当はお姉様は優しいのに、すぐ泣いちゃうくらい弱いのに。

 お願いだから私からお姉様を奪わないで、無事にお姉様が帰ってきてくれれば私は他に何もいりません。

 

 

 

 

 163.2.20

 

 なんで、うまくいかないんだろう。

 今までいろいろ試してみた。

 お姉様とゲームで遊んでみたり、恥ずかしいけど私がこっそり書いてる小説を見せてあげたり。

 何かきっかけがあれば大丈夫だって、思ってたのに。

 なのに、お姉様は笑ってくれない。

 最近は、涙も見せてくれなくなっちゃった。

 どうしてかな。

 私、何か悪いことでもしたのかな……

 

 

 

 

 175.12.10

 

 今日もまた、お姉様はどこかに行っちゃった。

 ボロボロの服で、やつれた顔で、私に食事だけを置いて。

 もういいって、私は一生外に出れなくてもいいって、あれだけ言ったのに。

 どうしたらいいのか、わかんないよ。

 私なんて、もういなくなった方がいいのかな。

 

 

 

 

 185.11.25

 

 久々にお姉様の様子がいつもと違った。

 顔色も少し良くなったような気がした。

 何があったのか本当はすぐに聞きたかったけど、もうちょっと待とうかな。

 私をこれだけ待たせたんだから、お姉様の方から話をしてくれてもいいはずでしょ!

 私がどれだけ心配したのか、わからせてやりたい気もするしね。

 だから、お姉様が何か話してくれるまで、もうちょっとだけ様子を見てみようと思います。

 

 

 

 

 185.12.23 

 

 ……もー我慢の限界!!

 お姉様の方から話してくれるのを待ってたのに何も話してくれない。

 我慢しようと思ったけど、もう待ってらんない。

 という訳で明日、お姉様を問い詰めてみようと思います。

 

 

 185.12.24 

 

 重大発表。なんと、お姉様にお友達ができたみたいです!

 お姉様は「付き纏ってくる変な奴」とか言ってるけど、これは間違いなく友達です!!

 よかった、ここのところずっと暗い目をしてたから心配だったんだよね。

 でも、私はちょっと怒ってます。

 次からは何かあったら必ず私に教えてって、お姉様に言っときました。

 これでお姉様も少しは笑ってくれるようになるのかな。

 

 

 

 

 220.5.10

 

 お姉様が、笑ってくれない。

 また新しい友達ができたみたいなのに、笑ってくれない。

 お姉様と話してるのに、淡々と人形とでも喋ってるように感じた自分が嫌になります。

 そんな風に感じちゃう私がおかしいのかな。

 

 

 

 

 235.6.2

 

 お姉様の顔を見たくない。

 きっと全部、私のせいなんだ。

 私なんかがいるから、お姉様はあんな目をしてるんだ。

 

 

 

 

 240.8.5

 

 もう嫌だ。これ以上お姉様に会いたくない。

 

 

 

 

 241.1.30

 

 何もなかった。

 

 241.1.31

 

 何もなかった。

 

 241.2

 

 何もなかった。

 

 241.3

 

 何もなかった。

 

 241.4-

 

 何もなかった。

 

 242

 

 何もなかった。

 

 243 -

 

 

 

 

 

 

 日記は、これで終わっていた。

 この、最後の日がいつのことかはわからない。

 だけど、もうこの頃には2人とも壊れてたんだと思う。

 それもきっと、お互いへの愛ゆえに。

 

「……止めないと」

 

 パチュリーの選択は、別に間違ってはいないと私は思う。

 だけど、そこには誤解があるんだ。

 あのフランって奴がレミリアを苦しめているんじゃない。むしろ、レミリアにとってはかけがえのない大切な妹なんだろう。

 フランの日記からは、フランがあんな風になることは全く読み取れなかった。

 つまりは、フランはこの部屋にいる限りは、普通の女の子なんだ。

 そしてレミリアは、この部屋を出ればフランがああなってしまうことを知っていた。

 その原因なんてわからない、だけど……

 

「私は認めねえぞ」

 

 こんなの悲しすぎるじゃねえかよ。

 一体、あいつらが何をしたってんだ。

 ずっと苦しんで、何百年も苦しみ続けて、なのに何も解決できなくて。

 もしこの世に神様がいるのなら、私はそいつをぶっ飛ばしてやりたい。

 でも、私じゃきっと何もできない。

 もう私が異変を解決するなんて言ってる場合じゃない、そんなちっぽけなことにこだわってても誰も幸せになれない。

 私の頭なんかじゃ、何も解決策が浮かばないのなら――

 

「呼んだ?」

 

 いつの間にか、私の後ろから声がした。

 タイミングが良すぎる気もするけど、それがこいつらしいところだと思う。

 

「……ああ、呼んだよ」

 

 困ったのなら、相談すればいいんだ。

 私が何だかんだで一番信頼する相棒……とか言うと生意気ってぶっ飛ばされるけど。

 アリスなら、こういう時はきっと力になってくれる。

 この状況を打破するために、知恵を貸してくれるだろうから。

 

 

 

 


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