霊夢と巫女の日常録   作:まこと13

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今回は橙視点です。




第68話 : お姉ちゃんパワー、注入!

 

 

 うぅぅ、さっきから緊張の連続でお腹痛くなってきた。

 霊夢たち本当に大丈夫かな。こっそり話を聞いた感じ、何か凄い不穏な空気があるんだよね。

 でも、吸血鬼の意向で藍様たちは動けないみたいだし、これ以上どうしようもないのかな。

 私も少しでも力になれたらいいんだけど……

 

「だから、私は橙にもう一度視察をお願いしようと思うんだけど」

 

 おっ、噂をすれば来たよ私の出番!

 でも焦りは禁物、ここで飛び出しちゃだめだ。

 この前の視察じゃ、途中でやられちゃって結局最後の場面は私だけ除け者にされちゃったんだよね。

 霊夢たちと同じで私もまだ未熟なんだから、ちゃんと最後まで話を聞かないと。

 

「一人じゃ心もとないから慧音にも協力を仰ぎたいのよ。でも……最近どうしたのよあの子、大丈夫なの?」

 

 ……ふにゃぁ、やっぱり私じゃまだ紫様の信頼は勝ち取れないか。

 今の私じゃ力不足だろうし当然だとは思うんだけど……ちょっとくらい期待してもいいでしょ?

 でも、今回の件についてはむしろ先生が一緒でよかったかもしれない。

 最近元気ないみたいだけど、それでも一人で行くよりはずっと心強いしね。

 

「あー、大丈夫だと思うけど、そっとしといてやってくれ。私の方から一応打診はしとくから」

「お願いね」

 

 よし、じゃあ私も早速準備しとこう!

 いつ声をかけられてもいいように、まずは準備運動から……

 

「そんじゃ、私は早速っ、悪い紫すぐ紅魔館に向かわせてくれ!」

「え?」

 

 だけど次の瞬間、妹紅さんはすごい剣幕で紫様に詰め寄っていた。

 

「え、いやどうしたのよ妹紅、だから私たちは行けないって…」

「そんな場合じゃないんだよ! 詳しいことは後で説明するし、責任は私がとる。だから紫も一緒に、早く!!」

 

 ……どうしたんだろ妹紅さん、さっきまでけっこうのんびり構えてたはずなのに。

 何か大事なことでも思い出した? でも、そういうレベルの焦り方じゃないよね。

 

「それは聞けないわ妹紅。理由もなくレミリアを怒らせる訳には…」

「じゃあ紫、今の紅魔館は普通か?」

「普通? それって、どういう意味?」

「咲夜の力のせいで中に入れない、本当にそれだけの状態か?」

「そんなの当然……っ!? 妹紅、貴方一体何をしたの!?」

 

 ……え? 何、一体どうなってるの?

 何か、紫様まですごく焦ってるみたいなんだけど……

 

「どうかされましたか、紫様」

「紅魔館が、存在しないのよ」

「え?」

「いつの間にか紅魔館内部の座標だけ、全く観測できない空間に飛ばされてるの」

 

 観測できない空間って?

 どういうことかは私にはよくわからないんだけど、霊夢たちがさっきまでいた場所が存在しない?

 それって、もしかして霊夢たちが消えちゃったってこと!?

 

「どういうこと妹紅。どうしてこんなことに…」

「私も詳しいことはわからない、だけどこれは紫の想定内の出来事か? 違うだろ、だったら早く行かないと霊夢と魔理沙が危ないんじゃねーのか!?」

「……そうね。確かにこれは、約束とか言ってられる状況じゃなさそうね」

 

 あわわわわわ、どうしようどうしよう、何かとんでもないことになっちゃってるみたい。

 そうだ、こんな時こそ慌てず騒がず「人」って三回手の平に書いて飲み込むんだ!

 人、人……あれ、私の場合は「ねこ」の方がいいのかな? でも、「ねこ」ってどんな漢字書くんだっけ、どうしようわかんない! えっと、えっと確か……

 

「とにかく時間がないんだ、行くぞ!」

「ええ。藍もすぐ行ける?」

「勿論です。橙、そこにいるんだろう?」

「苗、苗……え? あ、あわっ、は、はい藍様! 私も…」

「お前は留守番を頼む。危ないから、来るんじゃないぞ」

「あ……待ってください藍様…っ!!」

 

 だけど、私がしょーもないことを考えてる間に、もう藍様たちは境界の中に消えていた。

 私が陰から飛び出した時には時すでに遅し、境界は閉じてて……うにゃああああ、完全に取り残されたあああああああ!!

 ……ああ、でも今回ばっかりはしょうがないのかな。

 紫様ですら予測できない異常事態に私なんかが行っても足手まといにしかならないし。

 それなら、大人しくここで待ってた方がいいのかも……

 

「……何やってんだろ、私」

 

 今度こそ役に立とうって思ってたのに。

 また一人でバカみたいに慌てて何もできないままで。

 結局今回も、私だけ最後まで蚊帳の外、なんて。

 ……そんなんじゃダメだ。

 私は霊夢のお姉さんなんだから、霊夢がピンチなら私が頑張らなきゃいけないんだ!

 

「先生は、多分まだ人里にいるんだよね」

 

 さっきの話だと、紫様は慧音先生にも協力を仰ぎたいって言ってた。

 今は呼びに行く余裕がなくなっちゃったみたいだけど、それなら私が代わりに呼びに行けばいいよね。

 私じゃ直接何かできる訳じゃない。だけど、間接的にでも役に立てるよう頑張ればいいんだ。

 

「待ってて霊夢。私も、お姉ちゃんも今から助けに行くからね!」

 

 だから、私は思い立ったままに、紅い霧が覆いつくす暗闇の空へと一直線に駆け抜けた。

 

 

 


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