霊夢と巫女の日常録   作:まこと13

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第34話 : あっきゅん突撃リポートの巻

 

 

 

「では妹紅さん、一つ目の質問です。 貴方は今、一体何歳なんですかっ!?」

 

 さぁ、森も奥まってきた、というよりも私が妹紅さんのスピードにやっと慣れてきたところで、そろそろ質問タイムに移りましょう!

 最初はおんぶしてもらうのが嬉しかったんですけど、スタートと同時に初動から時速百キロくらい出てるんじゃないかこれみたいなスピードで軽快に走り出すもんですから本当に死ぬかと思いましたよ、ええ。

 

「ダメだぞ阿求。 女性にいきなり歳を聞くなんてデリカシーがないと思われるぞ」

「いいんですっ! デリカシーなんて気にしてたら聞けることも聞けなくなるとか文さんが言ってました」

 

 いきなり妹紅さんに難色を示されたけど、私はへこたれない。

 あ、ちなみに文さんっていうのは、『文々。新聞』っていうゴシップ記事を書いてる烏天狗の射命丸文さんのことです。

 私もあのくらい図々しく取材ができればいいなぁと、目標にしてる人なのです。

 

「まぁ、いっか。 そうだな、多分紫よりは後に生まれたと思うけど」

「そんなの当たり前じゃないですか。 紫さんより歳くってる人なんてそうそういませんよ!!」

 

「―――ぴんぽんぱんぽーん。 皆さーん、減点のお知らせでーす。 妹紅・阿求ペア、マイナス10ポイント」

 

「ふえっ!?」

 

 そして、突然耳元で響く謎のアナウンス。

 えっ、こんなので減点とか横暴なっ!?

 

「ど、どうしてですかっ!? そんなの、ゲームに関係…」

「諦めろ阿求、まだ良かった方だぞ。 霊夢がそれ言ったらマジで今頃ボコボコにされてる禁句だからな」

「お……気を、つけます」

 

 うぅぅ、私、さっきから本当に足引っ張ってるだけですよね。

 初動から目を回していた私を気遣うようにスピードを落としてくれた妹紅さんの紳士的な振る舞いに甘えて、3チームの中で完全に取り残されてますから。

 

「じゃあ、質問を変えます。 貴方の特技は……もとい、貴方の持つ能力は何ですかっ!?」

 

 でも、だからといって妹紅さんの質問タイムを終わらせるつもりは毛頭ありませんけどねっ!

 

「えっと、能力ってもねぇ……霊力や妖術とか色々使えるからそんな感じで」

「もっと具体的に!」

「って言われても、割と何でも応用効かせられるからね。 お札使って簡単な式神作ったりできるし……あ、特に炎系の術とかは得意かな」

「なるほど、じゃあ「便利な術を使う程度の能力」って感じですかね。 それと、妹紅さんってけっこう口調が変わってたりしてますけど、何か意味とかあるんですか?」

「……本当にズカズカ来るな、阿求は」

 

 ふっふっふ、当然です。 私はもう、ただの根暗は卒業したんですよ!

 まぁ、前々から個人的に妹紅さんの不安定な口調は前々から気になってたんですよね。

 別に私みたいに相手で使い分けてる訳じゃなくて、本当に話してる途中にいつの間にか変わったりするので。

 

「……まぁ、なんというか、多分これは昔やさぐれてた頃の名残かな」

「名残?」

「昔の私はもっと棘のある感じだったんだけどさ。 霊夢の母親になってから、あんまり教育によくないと思って少しくらい母親らしい口調に直してこうとしてね」

 

 うわぁ、つくづく思うんですけど、妹紅さんっておちゃらけて見えるのに内面はほんっとに真面目なんですよね。

 紫さんみたいに飛び抜けてないというか、しっかりすべきところはしっかりしてるというか。

 なのに霊夢みたいに器用にこなせずに、どこか不器用でうまくいかないところとかはちょっと可愛い。

 

「けどあんまりうまくいかなくて、あんまり女っぽい感じで話してたら紫に笑われて。 それから思考錯誤してる内にいろいろ入り混じってきて自分でもよくわからなくなって今に至る感じかな」

「ああ、苦労してるんですねえ」

 

 私も人によって口調とか結構使い分けてるんで、よくわかりますからねぇ、その気持ち。

 稗田家とか、何か全体的に堅苦しくてあの雰囲気に合わせるのが億劫なんですよね。

 まぁ、魔理沙に会う前の私もあそこにいるのがお似合いのつまらない子供だったんですけどね。

 と、のんびり考えてたら叫び声が一つ。

 

「ぎゃっ!? 熱っ! なんだこれなんだこれ!?」

「お、やっと一人目か」

「え、何ですか?」

「とりあえずさっきから阿求にロックオンしてた妖怪とか適当に焼き払いながら来たんだけどさ」

 

 焼き払いながら……?

 何か物騒なことが聞こえてきた気がしたんですけど、大丈夫ですかね。

 ってよりも、今まで一人も妖怪がいなかったのは、私が気付く前に妹紅さんがいつの間にか退治してたってことですか。

 本当にいろいろと次元が違いすぎますね、妹紅さんは。

 

「一発で逃げないってことはそれなりの強敵か、もしくは力量差がわからない馬鹿か。 いずれにしろ、霊夢や魔理沙が会う相手になりそうだな」

 

 そして、声のした方を見ると……何か、黒い塊から小さな金髪ショートの女の子が飛び出してきました。

 私と同い年くらいに見えますけど、あれは見覚えがあります、確か……

 

「ふぅー、死ぬかと思った」

 

「……妹紅さん、あれはルーミアです」

「ルーミア?」

「はい。 暗闇を操る人食い妖怪です。 危険度「中」、人間友好度「低」ってとこですね」

「なるほどね。 ま、最初の相手としてはちょうどいいくらいか」

 

 低級妖怪とはいえ、見かけ倒しの適当な中級妖怪なんかよりはずっと危険で警戒した方がいい相手。

 といいますのも、ルーミアは他の妖怪にはない『闇を操る程度の能力』を使って相手の視界を遮断できるので、油断してるとそれなりに腕に自信があってもやられかねません。

 まぁ、妹紅さんクラスなら寝ながら勝てる相手だとは思いますけど。

 

「まぁいいや。 じゃあ阿求、ちょっと降りてて」

「え? あ、はい、妹紅さんは?」

「痛めつけない程度に、軽く力量を測っておこうかなと。 スペルカードルールを理解してるかも見ておきたいし」

 

 そうして、妹紅さんは私から離れてルーミアのもとに歩いていく。

 って、私はどうすればいいんですか私は! 

 こんなところで一人で他の妖怪に襲われたら、ってほらあああ何か熊みたいな大型の獣がこっちにいいいぃぃ……って、いうのは杞憂でした。

 お札でできた式神ってやつですかね、ふわふわとその獣に飛んでって炎を出して簡単に撃退しましたよ。

 紙きれ一枚であんな大きい相手が無様に敗走していくのを見てたら、もう何が来ても怖くない気がしてきました。

 

 ……と、いう訳で私は安心して実況に移らせていただきます。

 それでは、先代巫女の妹紅 VS 宵闇の妖怪ルーミアのスペルカード勝負、レディ……ファイトですっ!!

 

 

 


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