遊戯王GX ~もしもOCGプレイヤーがアカデミア教師になったら~   作:紫苑菊

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いやぁ遅くなって申し訳ない(パリストン風)

今回はデュエル回です。でももうちょっとだけ続くんじゃ・・・。だってデュエルだけで19500文字超えたし。


第4話

「先行後攻はタイタン、君が決めていい。」

 

 沖田の言葉に頷き、タイタンは先行を選択する。デュエルモンスターズは先行絶対有利。先行の展開に後攻側が妨害することが難しいからだ。

 

「なら、遠慮なくいかせてもらうぅ。私のターン。ドロォー。」

 

 手札を勢いよく引いたタイタンは、その手札で考える限りの動きを開始する。

 

 タイタン

  手札10→12

 

「私はインフェルノクインデーモンを召喚。更に二重召喚を発動し、ジェノサイドキングデーモンを召喚する。」

 

 インフェルノクインデーモン

 効果モンスター

 星4/炎属性/悪魔族/攻 900/守1500

このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振る。2・5が出た場合、その効果を無効にし破壊する。このカードがフィールド上に存在する限り、スタンバイフェイズ毎に「デーモン」という名のついたモンスターカード1体の攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップする。

 

 ジェノサイドキングデーモン

 効果モンスター

 星4/闇属性/悪魔族/攻2000/守1500

自分フィールド上に「デーモン」という名のついたモンスターカードが存在しなければこのカードは召喚・反転召喚できない。このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に800ライフポイントを払う。このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振る。2・5が出た場合、その効果を無効にし破壊する。このカードが戦闘で破壊した効果モンスターの効果は無効化される。

 

「『デーモン』か。」

「正確には『チェスデーモン』ですね。」

 

 十代がつぶやく。沖田が答えたが、これらは所謂『チェスデーモン』に属すカードである。チェスデーモンは強力なカテゴリ。だが、同時にデメリットも存在する。

 

「確かにデーモンは強力なモンスター。だけどそれはスタンバイフェイズにライフポイントを支払わなければならないカードだぜ。」

 

 その言葉にタイタンは笑って返した。そんなこと関係ないと言わんばかりにカードを発動する。

 

「心配ご無用。私はフィールド魔法、万魔殿-悪魔の巣窟を発動。これにより私はフィールド魔法の維持コストを払わなくていい。」

「これで踏み倒すって訳か。十代君、君の言うコストは無くなったも同然だね。」

「その通りだ。」

 

 周りが悪魔の巣に変わる。元々禍々しい雰囲気を纏っていたこの廃屋だが、さらにおどろおどろしい雰囲気に包まれた。

 

 万魔殿-悪魔の巣窟

 フィールド魔法

「デーモン」という名のついたモンスターはスタンバイフェイズにライフを払わなくてよい。戦闘以外で「デーモン」という名のついたモンスターカードが破壊されて墓地へ送られた時、そのカードのレベル未満の「デーモン」という名のついたモンスターカードをデッキから1枚選択して手札に加える事ができる。

 

「手札を3枚伏せてターンエンド。」

 

 タイタン  

  手札→6

 

「じゃあ先生、次は俺が行かせてもらうぜ、ドロー!」

 

 次は十代のターン。十代は手札を見て即座に行動に移した。

 

 十代

  手札5→6

 

「クレイマンを守備表示で召喚!更にカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

 十代

  手札6→4

 

 手札に融合のカードが来なかったのだろうかと沖田は推測する。十代のデッキ、E・HEROは融合を駆使して低級モンスターから上級、最上級の融合モンスターを出していくスタイルのデッキだ。本来事故の可能性が大いにあるカテゴリなのだが、本人の引きの強さ、そして秘めている精霊との親和性がそのデッキのポテンシャルを最大限以上に発揮していた。

 だが、今回十代は手札から融合のカードを使わない。彼の性格は沖田が思うに決して出し惜しみをするような性格じゃない。相手の出方を見たかったのかもしれないが、そうでないなら融合素材か融合のどちらかが来なかったのだろうと考えた。

 まあ、だからと言って自分のやることは変わらない。沖田は自分の左腕にかかっているディスクからカードを引き抜いた。

 

 沖田

  手札5→6

 

「・・・俺はカードを1枚伏せる。ターンエンドだ。」

 

 だが、何もしない。そのことに少々訝し気に思うタイタンと十代。タイタンはさっきの彼の口ぶりから彼の実力はおそらく並大抵ではないのだろうと考えていたし、十代からすれば今までに少しだけ見ていたデュエルからあの先生が初手から何もしないのはおかしいと感じていた。十代は何度か沖田に挑もうとアカデミア内を探し回った(そして見つけてもすでに予約がいっぱいでできなかった)ので、今まで観戦した試合の中からどのデッキを考えても様子が違うと思い、ある推測に至った。

 

(もしかして俺が見たことないデッキなのか?!)

 

 十代はおかしなことではないと思った。沖田はアカデミアに来てかなり多く試合をしていたが、メタを避けるためかいろんなデッキで勝負をしていた。

 アロマージや革命ビート。蟲惑魔にシーホースにモリンフェン。果てにはゴキボールやドマなどのデッキまで。共通なのは、どれも高打点とは言えないモンスターばかり。上級や最上級を出されればすぐに負けてしまうようなモンスターで彼は勝ち抜いていた。その手腕は実際に対戦していた十代の友人でラーイエロー主席の三沢も感嘆していたほど。彼のその異質なデッキの凄さを知った人は皆、彼を高く評価していた。

 そんな中、一つ疑問が生徒内に沸き上がった。もし、彼が高打点主軸のデッキを組めばどうなるのか。もしかしたらあのアカデミアの皇帝、カイザー亮すら上回るのではないか。そんな意見まで出るほどになっていた。それは噂に疎い十代の耳にまで来るほどに。

 デュエリストとしての感。そしてそこまで考えた十代はこう思った。

 

(戦ってみたい・・。)

 

 十代は人質のいるこの状況で不謹慎だとは思いながらもそう感じる。彼もまた、デュエリストなのだから。

 だが、今優先はこのデュエル。絶対に勝たなくてはならない。だが、手番は敵に回る。ライフは4000あるが先生のフィールドはがら空き。もし何かモンスターを召喚して、そのダイレクトアタックが全て先生に向いたとしたら・・・。十代は不安に思った。万が一は先生のためにこのカードを使おうと決心する。

 

「私のターン、ドロー。特殊ルールによりもう一枚ドローする。」

 

 タイタン

  手札6→8

 

 タイタンは考える。あれだけハンデを与える男がリバースカード1枚だけでターンを終了したことを。つまりあれは何らかの強力な攻撃、もしくは召喚を阻害するカードなのだろうか。いや、もしかしたらあの手札にクリボーのようなカードがあるのかもしれない。

 大嵐は手札にある。だが、フィールド魔法を破壊することになるのは避けたかった。二枚目は手札にない。それにカードの伏せ枚数も自分の方が圧倒的に多いこの状況、たとえ発動してもうまみが少ない。

 

 よって、大嵐の選択は消えた。タイタンは別の魔法を発動する。

 

「私は手札抹殺を発動。お互いに手札をすべて捨て、その枚数分ドローする。」

 

 これで総員の手札が変わる。手札誘発があるならこれで墓地に行くうえ、タイタンはデッキに入っているサイクロン等の使いやすい除去カードを引くチャンスを得た。

 

 タイタン

  手札8→7

 十代

  手札3→3

 沖田

  手札5→5

 

 案の定というべきか、タイタンはお目当てのカードを引き当てる。

 

「サイクロンを発動。そこの教師の伏せカードを破壊する。」

 

 だが、これは不発に終わった。

 

「チェーンして速攻魔法、超再生能力を発動。このターンに捨てられた、もしくはリリースされたドラゴンの枚数エンドフェイズにドローする。」

 

 超再生能力

 速攻魔法

このカードを発動したターンのエンドフェイズに、このターン自分の手札から捨てられたドラゴン族モンスター、及びこのターン自分の手札・フィールドからリリースされたドラゴン族モンスターの数だけ、自分はデッキからドローする。

 

「ブラフだったか。」

 

 そう、ブラフ。このカードは決して彼を守るような効果はない。つまりサイクロンの意味は実質なかったようなものだ。それならばターゲットである遊城十代の伏せカードを破壊しておけばよかったと後悔するタイタンだが、今はそんなこと言っていられない。

 

「私はリビングデッドの呼び声を発動!墓地の迅雷の魔王-スカル・デーモンを蘇生させる!」

 

 リビングデッドの呼び声

 永続罠

自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される

 

 迅雷の魔王-スカル・デーモン

 効果モンスター

 星6/闇属性/悪魔族/攻2500/守1200

このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振る。1・3・6が出た場合、その効果を無効にし破壊する。

 

 これがタイタンの切り札。対象になると2分の1の確率でその効果を無効にしてしまう強力なモンスター。だが・・・。

 

(私にはこれがある。)

 

 それは先ほど十代に見せたパズル。それにはある特殊な仕掛けが施されており、催眠術のために必要な光を放つほかに、デュエルディスクのサイコロ判定を意のままにできる。そう、イカサマだ。だがバレなければ犯罪じゃないように、この仕掛けもまた、バレなければいいのだ。そしてそれをタイタンは実行してきた。

 

「まだ私には召喚権が残っている。ヘルポーンデーモンを召喚。これにより相手はこのカード以外のデーモンを攻撃できない。」

 

 ヘルポーンデーモン

 効果モンスター

 星2/地属性/悪魔族/攻1200/守 200

このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振る。3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。このカードがフィールド上に存在する限り、相手は自分フィールド上に存在する同名カード以外の「デーモン」という名のついたモンスターカードを攻撃できない。

 

 迅雷の魔王やキング、クイーンを守るために召喚された兵士のデーモン。だがこの攻撃力は1200。下級の攻撃力の中でも低い数値であるために戦闘で簡単に破壊できる。だが・・・。

 

「私はデーモンの斧をヘルポーンデーモンに装備。攻撃力が1000アップする。」

 

 デーモンの斧

 装備魔法

装備モンスターの攻撃力は1000アップする。このカードがフィールドから墓地へ送られた時、自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。このカードをデッキの一番上に戻す。

 

 これにより、デスルークデーモンの攻撃力は2200となった。十代の切り札、フレイムウィングマンでは決して突破できない数値。沖田は思わず歯ぎしりする。自分ならともかく、次の十代がこれを突破できるかと聞かれたら頷くのは難しい。

 

 タイタン

  手札7→5

 

「バトルだ、迅雷の魔王-スカル・デーモンでそこのがら空きの教師に攻撃!!怒髪天昇撃!!」

 

 雷が沖田を襲う。だが、タイタンのミスは沖田を警戒して十代のリバースを何ら警戒しなかったことだろう。

 だから、こうなる。

 

「先生をやらせはしないぜ!聖なるバリア -ミラーフォース-を発動!お前のモンスターは攻撃表示、すべて破壊されてもらおうか!」

 

 聖なるバリア -ミラーフォース-

 通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 

 ミラーフォース。それは強力な罠カード。あの遊戯王、武藤遊戯のデッキにも入っていたカードである。

 

 これによりスカルデーモンの雷が反射され、フィールドのデーモンが全て破壊された。だが・・・。

 

「残念だったな。」

「何?」

「手札からデスルークデーモンの効果発動、手札から捨てることで破壊されたジェノサイドキングデーモンを特殊召喚する。そして悪魔殿の効果で手札にデスルークデーモンを手札に加える。更にリビングデッドの呼び声を発動!対象は迅雷の魔王-スカル・デーモン」

「な、2枚目?!」

 

 デスルークデーモン

 効果モンスター

 星3/光属性/悪魔族/攻1100/守1800

このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振る。3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。自分フィールド上の「ジェノサイドキングデーモン」が破壊され墓地に送られた時、このカードを手札から墓地に送る事で、その「ジェノサイドキングデーモン」1体を特殊召喚する。

 

 現れたのは復活した悪魔が2体。更に言うなら手札にデスルークデーモンが加えられたことで実質的に手札消費なし、おまけにもう一度ジェノサイドキングデーモンは復活する。

 

「これで終わりだ。ジェノサイドキングデーモンで攻撃!!炸裂!五臓六腑!」

 

 だが、タイタンにとっては予想外なことにその攻撃も阻まれた。他ならぬ沖田によって。

 

「手札の速攻のかかしの効果発動。」

「何?!」

 

 手札から飛び出したのは田舎にある案山子を機械化したような風貌のモンスター。召喚されていないからか若干色が薄く半透明になっているがそのカードはきっちり本文を果たした。

 

「このカードを手札から捨てることでバトルフェイズを終了する。どれだけモンスターを並べてもこのターン攻撃できない。更に言うならこいつは対象を取らない。チェスデーモンお得意のダイスによる無効は対象に選ばれなければならないので発動できない。勝てると思ったか?悔しいでしょうねぇ。」

「・・・カードを1枚伏せてターンエンドだ。」

 

 タイタン

  手札5→4

 

 攻撃は阻まれ、モンスターの総数は攻撃するよりも前に比べ減ってしまった。このターンは無理に攻撃するべきではなかったかと思うタイタンだったが、それも仕方ないだろうと思い次にターンを回そうと思ったが。

 

「何を勘違いしているんだ?」

「何?」

「まだ貴様のエンドフェイズは終了していないぞ?」

「・・・何を言う。お前の伏せは0。モンスターも0。何ができる?」

「忘れてないか?お前がサイクロンで破壊しようとした(・・・・・・・・)カードを。」

 

 そこまで言われてタイタンも理解した。

 

「・・・そうか、手札抹殺でドラゴンが捨てられていたのか。」

「ご明察。さて、超再生能力の効果で俺はデッキから4枚ドローする。さて、手札は9枚になった。ドローすれば10枚。そして次は十代君と俺のターン。さて、貴様に次のターンは来るのかな?」

 

 このゲームは手札の枚数だけ可能性がある。それが10枚に増えるのならば尚更。

 

「さて、十代君。」

「な、なんだよ先生。」

 

 思わず声が上ずってしまう十代。彼は沖田の発する異様な空気に飲まれていた。

 

「次のターンのことなど考えなくていい。」

「へ?」

「・・・全力でやりなさいってことだよ。手札抹殺で行ったカードを俺が確認していないと思ったのかい?・・・君の手札で思う存分あいつを殴りにかかりなさい。」

「・・・もう、先生を守るのは出来ないぞ?」

「別に構わないよ?防御手段を講じないほど俺は愚かでないことぐらい君でも分かるだろう?」

「でもさっき全然行動してなかったじゃないか!」

「展開しようと思えばできたさ。でも手札に速攻のかかしがあったからね。使うべきだと考えた。抹殺で墓地に行ったが2枚目が来てくれたし、そこまでピンチだったわけでもない。」

 

 それを聞いて、十代は思いきって存分行動することにした。顔に笑みを浮かべ、心底嬉しそうにデュエルを再開する。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 十代

  手札4→5

 

「強欲な壺を発動!2枚ドロー!死者転生を発動し手札を1枚捨ててスパークマンを手札に戻すぜ。」

 

 強欲な壺

 通常魔法

 デッキからカードを2枚ドローする。

 

 死者転生

 通常魔法

手札を1枚捨て、自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

 捨てられたのはガードブロック。がら空きになった先生を守るために伏せていようと考えていた十代だったが、その本人から必要ないといわれたので思う存分展開することにしたため、必要なくなった。そこまでお見通しだったのかと十代は驚いていたが、先生ほどのデュエリストならば仕方ないと納得していた。

 実際は手札抹殺の時に相手がドローしたスキを狙って十代の引いたカードを盗み見、そして彼の手札と表情から思う存分展開するように促しただけなのだが。まあ、それは置いておこう。ここからは彼の全力(無慈悲)をご覧ください。

 

「融合を発動!手札のスパークマンとクレイマンを融合!E・HEROサンダー・ジャイアントを融合召喚!」

 

 十代

  手札5→3

 

 融合

 通常魔法

自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合デッキから融合召喚する。

 

 E・HERO サンダー・ジャイアント

 融合・効果モンスター

 星6/光属性/戦士族/攻2400/守1500

「E・HERO スパークマン」+「E・HERO クレイマン」このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。自分の手札を1枚捨てる事で、フィールド上に表側表示で存在する元々の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも低いモンスター1体を選択して破壊する。この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。

 

「さらに融合回収を発動。手札に融合とスパークマンを手札に戻す。HEROの遺産を発動!墓地には手札抹殺で行ったネクロダークマンとエッジマンがいる。よって3枚ドロー!」

 

 十代

  手札3→4→6

 

 融合回収

 通常魔法

自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。

 

 HEROの遺産(漫画オリカ)

 通常魔法

自分の墓地にレベル5以上の「HERO」と名のついたモンスターが2体以上存在する場合に発動する事ができる。自分のデッキからカードを3枚ドローする。

 

 融合回収とHEROの遺産。これらの効果により大幅に手札を増強した十代。だが、これでは終わらない。

 

「そしてもう一度融合を発動!手札のバーストレディとフェザーマンで融合!フレイム・ウィングマンを融合召喚!」

 

 E・HERO フレイム・ウィングマン

 融合・効果モンスター

 星6/風属性/戦士族/攻2100/守1200

「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 融合によって現れたのは炎を纏ったHERO。相手を絶対焼き殺すという意思を感じるモンスター。風貌はHEROよりも悪魔よりである。

 

 十代

  手札6→3

 

「さらに手札のキャプテン・ゴールドを捨てることでデッキから摩天楼 -スカイスクレイパー-を手札に加えるぜ。貪欲な壺を発動!墓地のエッジマン、バーストレディ、クレイマン、フェザーマン、キャプテン・ゴールドをデッキに戻して2枚ドロー!天使の施しを発動し、3枚ドローして2枚捨てる!」

 

 インチキドローもいい加減にしろ!と沖田とタイタンの心はシンクロした。まだタイタンには余裕がある。迅雷の魔王の攻撃力ならたやすく受けきれると考えていたからだ。スカイスクレイパーの効果を知らないタイタンだからこその考えだが、効果を知っている沖田はもう最初からこいつ一人でいいんじゃないかななんて現実逃避している有様だが。

 

 E・HERO キャプテン・ゴールド

 効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻2100/守 800

このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。

デッキから「摩天楼 -スカイスクレイパー-」1枚を手札に加える。

また、フィールド上に「摩天楼 -スカイスクレイパー-」が存在しない場合、

このカードを破壊する。

 

 貪欲な壺

 通常魔法

自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

 天使の施し

 通常魔法

自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後手札を2枚選択して捨てる。

 

 十代

  手札3→4

 

「HEROにはHEROの戦う舞台がある!フィールド魔法、摩天楼 -スカイスクレイパーを発動!よし、これでそのフィールド魔法もなくなったな。更に墓地のネクロダークマンの効果で生贄なしでHEROを召喚できる!エッジマンを通常召喚!」

 

 摩天楼 -スカイスクレイパー(アニメ効果)

 フィールド魔法

「E・HERO」と名のつくモンスターがバトルする時、モンスターの攻撃力が「E・HERO」と名のつくモンスターの攻撃力よりも低い場合、そのモンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。

 

 E・HERO エッジマン

 効果モンスター

星7/地属性/戦士族/攻2600/守1800

このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

 十代

  手札4→2

 

 えげつない。もはやそれしか言いようがない。場には融合モンスターのフレイムウィングマンとサンダージャイアント。そして最上級HEROモンスターエッジマン。ライフ8000を削りきるには少々足りないが、それでも問題ないほどに強力な布陣。おまけに手札は2枚残っている。

 

「・・・十代君。」

「なんだ?先生。」

「・・・いや、何でもありません。」

 

 沖田は見てしまった。残りの2枚が何なのかを。思わず声をかけてしまったが、相手が誘拐犯の不法侵入者であることを思い出し、言うのをやめた。

 

「バトルだ!フレイムウィングマンでスカルデーモンに攻撃!!」

「攻撃力の低いモンスターで攻撃だと?!浅はかだな!」 

 

 沖田はダメだ、それ以上はいけない!と叫んだがもう遅い。無慈悲にもフィールド魔法の効果が発動する。

 

「スカイスクレイパーは相手よりも攻撃力が低いHEROの戦闘時に攻撃力を1000アップする!これでフレイムウィングマンの攻撃力は3100!」

「なんだと?!」

「いけ、フレイムシュート!」

 

 タイタンの切り札が消滅する。ショギョウムッジョ!ライフが減少するがそれも些細なものだとタイタンは思い直すが、次の十代の言葉を聞いてそれが幻想であったことを知る。

 

「フレイムウィングマンは破壊したモンスターの攻撃力分だけダメージを与える。2500の大ダメージだぜ。」

「ぬおおぉぉぉ!!」

 

 タイタン 8000→4900

 

「そしてサンダー・ジャイアントでジェノサイドデーモンを攻撃!ウェイバースパーク!」

「食らおう!だが手札のデスルークデーモンの効果発動!ジェノサイドキングデーモンを守備表示で特殊召喚!」

 

 タイタン 4900→4500

  手札4→3

 

 追撃によるダメージを減らそうとするタイタン。だがその行為は無意味なのだと、エッジマンの効果を知る沖田は達観する。イ㌔タイタン。

 

「甘いぜタイタン!エッジマンは守備表示モンスターとのバトルで貫通ダメージを与える!パワー・エッジ・アタック!」

「貫通持ちだと?!クッ!!」

 

 タイタン 4500→3600

 

 もはや初期ライフの半分以上を削られてしまったタイタン。更に言うならタイタンのデッキにスカイスクレイパーの攻撃力アップを乗り越えて戦闘破壊できるモンスターは存在しない。スカルデーモンにデーモンの斧でもつければ話は違うだろうがそれでもエッジマンには程遠い。同じアングラデュエリストが攻撃力4500のモンスターとバトルして戦意を削がれ、自ら刑務所へ自首しに行ったという話をタイタンはふと思い出した。あの時は相手が悪かったのだろうと思っていたタイタンだったが、まさか自分がそんな状況になるなんて思ってもしなかった。いや、彼ほど状況は悪くないだろうが、それでも十二分にタイタンの戦意を削ぎ落すには十分。タイタンは半ばあきらめの境地に達していた。

 

「俺は悪夢の蜃気楼を発動。カードを1枚伏せてターンエンドだぜ。」

 

 悪夢の蜃気楼

 永続魔法

相手のスタンバイフェイズ時に1度、自分の手札が4枚になるまでデッキからカードをドローする。この効果でドローした場合、次の自分のスタンバイフェイズ時に1度、ドローした枚数分だけ自分の手札をランダムに捨てる。

 

 この期に及んでまだドローする気かとタイタンは思った。おまけに次は沖田の手番である。

 

 だが、負けたくない。デュエリストのプライドもあるが、ここで負ければ彼の仕事に支障が出るだろう。今思えば彼はこの島を出ていけと言っただけで警察に連絡しないとは言っていない。彼は今警察に捕まるのは御免だった。そしてその負けたくないという意思と、この廃屋という状況が、タイタンをさらに追い詰めることになる。

 

「な、なんだこれは?!」

 

 背後から渦巻く邪気。そしてそれに飲み込まれるタイタン。闇の中から出てきたのは蟲と悪霊を混ぜ合わせたようなナニカ。タイタンの目は虚ろになり、流石に様子がおかしいと十代も思った。

 

「どうしたよ、タイタン。何かあったのか?」

「いや、十代君。これは・・・。」

 

 沖田だけが気付いた。これは本物の闇の気配。まさかあのアイテムが本物だったのかと思ったが、すぐにそれは違うと判断した。

 なんせその闇の気配の出所が、この廃屋の地面から這い出すように出てきたのだから。何より本物ならいきなり暴走しだすようなことはないだろう。沖田は前に見た闇のアイテムや、周りの精霊の気配からそう察知した。

 だが、気がかりなこともある。なぜ、ただの廃屋からこのような気配が漏れ出しているのか。いくらここがかつて闇のゲームの研究をしていたからと言っても限度がある。まさか、千年アイテムの研究だけでなく、それ以上によからぬ何かをここでしていたんじゃないのか、沖田はそう考えた。

 

(とりあえず、無事に出れたら()に報告しよう。)

 

 沖田はここへ放り込んだ張本人に報告し、後日正式に調査することを決めた。そして、こんなことなら自分に協力してくれているあの精霊たちを連れてくるべきだったと思っていた、その瞬間。

 十代のデッキがわずかに光り、そこから精霊が飛び出してきた。

 

(あれは、ハネクリボーか?)

 

 どうやらハネクリボーは十代を、そして沖田を守るために出てきたらしい。十代や沖田の周りの闇を追い払う。そしてそれに話しかける十代を見て、まさかこの子が精霊が見えるようになるとは・・・と思いながら、ハネクリボーを観察する。沖田はこの精霊に見覚えがあった。

 

(・・・まさかこのハネクリボー、あの人(・・・)の・・・。)

 

 だが、その思考は長くは続かない。タイタンがデュエルの催促をしてきた。どうやら完全にあの闇に乗っ取られたらしい。

 

「十代君。」

「なんだよ、先生。」

「気を引き締めなさい。これはどうやら本物の闇のゲームのようだ。」

「なんだって?!」

 

 そう叫ぶ十代。沖田は続ける。

 

「今は君のハネクリボーが今は君を守ってくれている。だが、負ければどうなるかわからない。最悪死ぬかもしれない。その覚悟を、今のうちにしておきなさい。」

「ちょ、どういうことだよ先生!!それにハネクリボーって、まさか先生見えているのか?!」

「話はあと。先生はあいつにちょっと聞きたいことができたから、今から本気であの闇を潰しにかかります。そうしたらすいませんが十代君。止めを刺した瞬間にハネクリボーにタイタンを助けるようにお願いしてもらってもいいですか?」

「あ、ああ、先生。ハネクリボー、お前そんなことができるのか?」

 

 ハネクリボーは鳴き声を上げて肯定する。思わず可愛いと沖田は思ったが今はそれどころではないのを思い出し、タイタンに向かう。

 

 

 

 こうして、闇のゲームが始まった。いや、ある意味では再開されたといった方が正しいかもしれない。

 




次回、決着!!

・・・この時点で沖田がどんなデッキか分かった方は私と同じトラウマを乗り越えた人だと思う。まだ2枚しか出てないけど。

そして安定のチートドロー十代ェ・・・。もしこの時にシャイニング沼地ウィングマンが居ればきっと融合していたに違いない。

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