遊戯王GX ~もしもOCGプレイヤーがアカデミア教師になったら~   作:紫苑菊

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受験前に何やってるんだろ・・・俺・・・。

追記
ブンボーグ002の効果を勘違いしていたので訂正します。すいませんでした。
12/20
更に訂正しました、申し訳ありません。
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更に訂正、申し訳ございません。


第2話

ありえない。

 彼、万丈目準はそうつぶやいた。彼の場は完全に前のターンに整えられていた。切り札である高攻撃力のモンスター。それに加え迎撃のミラーフォース。この盤面で勝てない相手は今までにいなかった。

 だがどうだ、今の現状は。肝心の切り札も、迎撃の罠も通じない。もう負けしか見えないこの現状は。こんなことになるなんて思わなかった。彼の腕前がこんなにも凄まじいなんて思ってもいなかった。そもそも彼のデュエルは運任せか、それとも相手の切り札を阻害する、所謂妨害カードを多く積んでるからだと思っていた。だからこそ先行を選び、妨害される前に展開し切り札を出してしまえば激流葬も奈落の落とし穴も神の宣告も怖くない。彼が使うカードはローレベルモンスター、所謂雑魚ばかりだ。確かに厄介だが問題ないと、彼、万丈目は考えていた。

 

「行け、『○○○○○○○○。』」

 

 あの新任教師、沖田曽良の声で俺の敗北が決まる。

 畜生・・・。

 思わずつぶやいた彼のその声は、目の前の沖田にすら、聞こえなかった。

 

 時は、3日前の入学式にまで遡る。その時彼が入学式で全校生徒に向けてはなったスピーチは、敵対心に満ち溢れていた。その言葉が、この3日間彼が学校内の、それもオベリスク・ブルーの生徒ほぼ全員から挑まれている理由である。

 

 彼、沖田曽良はかなり注目されていた。それもそのはず、彼があの試験デュエルを行った後、SNSサイトを通じて学生の中ではかなり話題になり、更には彼の前職までもがさらされることになった。その前職がまた話題を誘った。なにせ、元インダストリアル・イリュージョン社、通称I2社の元社員だったのだから。

 だが、寄りにも寄ってこの注目される中、こんなスピーチが行われるとは、その時はだれも思わなかっただろう。

 

「この学校で教員を任されることになりました、沖田曽良です。今日から1年間よろしくお願いします。」

 

 ここで終わっていれば、学校中から敵対視されるようなことにはならなかっただろう。今となっては後の祭りだが。

 

「私が今回授業を担当するにあたってまず、貴方たち新入生のデュエルを全て見させてもらいました。一つ言えることがあるなら、酷いものですとしか言いようがありません。高火力で相手を倒すしかないデュエル、もっと妨害札もあるだろう、なぜそこでそのカードを使わない、中には効果を間違えて解釈している人までいました。間違えるならともかく、ブラッドヴォルスにデーモンの斧を装備しただけで勝ち誇る生徒がいる有様では、とてもじゃありませんが評価できません。」

 

 この時点でもはや大半の新入生を敵に回している。新入生からの視線が鋭いものに変わった。だが彼は続ける。

 

「デュエルモンスターズはそんなカードゲームじゃない。もっと戦略が練れるだろう。なぜ相手のカードを見くびる。これは教員にも言えることです。だから痛い目に合う。逆を言えば相手を見くびらず、きちんと戦略を練れば教員だろうがプロだろうが初心者でも倒せるのがこのゲームの筈なのです、実際トム少年とバンデット・キースの試合がそれでした。それがなんだ、あの有様は。ラーイエローの生徒はその辺はきっちり出来ている人もいました。新入生代表のスピーチをしてくれた生徒がまさにそれです。教員が用意した試験用デッキを見事打ち破りました。本来試験用デッキは結構簡単に倒せる難易度の筈なんですが、それはまあ置いておきましょう。」

 

 このあたりで褒められたラーイエローの生徒からの視線だけは少しだけ緩いものになった。だがしかし、彼の毒は止まらない。

 

「ここで断言します。今のままのオベリスク・ブルーならば、半分はラーイエローの生徒と代替わりするでしょう。なぜならば、今年の新入生の方が、私が見る限りしっかりとしたデュエルが出来ているからです。どうやら先ほどから私の発言に不満を感じている生徒がいるみたいですね。ならばあなたたち、オベリスク・ブルーの生徒に問います。あ、これは多分ラーイエローの生徒やオシリス・レッドのの生徒も心当たりがあるのではないかと思います。」

 

 ここで彼は言葉を区切り、一息ついてから二の句を言い放った。

 

 『どうして、カードを捨てるのですか?どうして低ステータスだと分かった瞬間に効果を見ようともせずに屑だの雑魚だの言うのですか?』

 

 彼が言ったこの言葉に、ほとんどの生徒が心当たりがあるようだった。彼は続ける。

 

「先日、カードが良く捨てられるという古井戸に行きました。酷い有様でした。ここにそのいくつかの実物があります。たとえばジェスター・コンフィ。この優秀さも分からない生徒は正直言って落第物です。確かに攻守は0ですがそれを補って有り余る効果があるのに捨てられていました。スクラップ・コング。確かに召喚してしまえば自壊するモンスターですが他のカードと組み合わせることで多大な効果を生み出します。他にもエフェクト・ヴェーラー、セルリ、モリンフェン、ダーク・キメラ・・・」

 

 彼が並べていくのは使いづらかったりステータスが低くて使い物にならないと判断されたモンスターばかりだった。ここにOCGプレイヤーがいれば大歓喜だっただろう。なにせDDクロウやヴェーラー、増殖するGが捨てられている井戸だ。行かない方がおかしい。(まあ、捨てる方が大概なのだが。)

 

「だから私は宣言します。この世に使えないカードなんてない。それを実証するために、私は一つ提案があります。」

 

 そう言って彼は懐からデッキをいくつか取り出した。それを掲げてこう言い放つ。

 

「ここにあるのはほとんどが低ステータス、もしくは下級のみ、もしくは下級が軸になっているデッキです。私は今から学校の授業が本格的に始まる3日間の間、これらのデッキしか使いません。いつ、いかなる時に挑んでもらっても構いません。もし勝てたのなら、私のかなえる限りのことを実行いたしましょう。実は私、元I2社社員でして、プロへの推薦状だって書くことが出来ます。この学校を今すぐ辞めろでもかまいません。もしくはデッキやカードを渡せといった要求でもいいですよ。」

 

 それは破格の条件。ここにいるほとんどの生徒がプロを目指しているのだ。それを実現するには本来数多の条件が存在する、にもかかわらずそれがたった1回の勝利でいいというのは破格にもほどがあるだろう。全員の目がハイエナのようになる。

 

「さて、諸君、私は今から3日間、24時間デュエルを受け付ける。早い者勝ちだがまあ、生徒全員が負けるでしょう。ぜひとも、その敗北を糧に成長してもらいたいです。」

 

 こう締めくくった彼のスピーチの後。正確には入学式が終わった直後といえばいいのだろうか。

 アリーナが人であふれかえったのは言うまでもない。

 

 

 と、ここまでが3日前の出来事だ。

 

 彼はその間3日間デュエルを続けている。どうやら負けた相手にアドバイスも行っているらしく、それが絶妙に適切なせいか、最初の敵意は半分ほど薄れていた。まあ、まだコケにされたプライドの強いオベリスク・ブルーの生徒が若干の敵意をむき出しにしているが、それも長くは続くまい。ほとんどの生徒が彼を受け入れている現状、少数派が何をしたって無意味なのだから。それにしてもかなりぼろくそに言われていたのにもかかわらず、手のひらを返して慕っているあたり、人間とはある意味凄いのだなと思わざるを得ないものだ。

 まあ、そんな彼を快く思わない生徒の中に、万丈目準がいた。彼は中等部主席の生徒であり、オベリスク・ブルーの生徒で所謂エリート思想の持主とでもいえばいいのだろうか、まあそんな男だった。そんな彼があそこまでオベリスクブルーをコケにされたというのに、黙って見ているだろうか。あの男が皆に受けられている現実を受け入れることが出来るだろうか。

 大方予想道理だろう、彼に万丈目は食って掛かりに行った。なぜ彼が最初に挑みにいかなかったからというのは、彼がすぐに負けるからだと考えていたからだ。新入生の中には自分に迫る実力者もいる。彼は自分の取り巻きである取巻の実力を理解していた。あんなまぐれでクロノス教諭に勝った新任教師などすぐに負けてしまうだろう、と。現に入学式の夜に相手をしたあの遊城十代も大した奴ではないと彼は認識していた。実際には決着はついていないのだが、まあそれは彼の傲慢ゆえの持ち味とでも言えるかもしれない。

 だが現状、彼は勝ち続け、この学校に受け入れられようとしている。これは万丈目にとって想定外だった。ならば自分が奴に膝をつかせ、学校から追い出そうと考えていた。

「お前が沖田曽良か?」

 

 ぶっきらぼうで高圧的な態度は彼の愛嬌とでも思ってほしい。現に彼の実力派その自信に見合うものなのだから。

 

「ええ、そうですよ、1年オベリスク・ブルーの万丈目君?」

「ほう、この俺を知っているか。」

「君のデュエルは見せてもらったよ、なるほど、流石は首席だというべきか。いいデュエルだった。まあ、私からすれば詰めが甘いとしか言いようがないがね。」

「何?」

 

 彼はその言葉を挑発ととらえた。実際には全く悪意のない彼の言葉(それがまた質が悪い)なのだが。まあ、彼の口調からして無理はない。

 

「ふん、ならばあんたの実力は相当なものなんだろうな?」

「・・・試してみるかい?今日はまだ3日目だ。歓迎するよ、盛大にね。」

「その余裕、いつまで続くかな?沖田教師!」

「その言葉使いはどうかと思うよ、俺は気にしないけどね。」

 

 万丈目が手にあるデュエルディスクを構え、懐からデッキを取り出してディスクに差し込む。それを見てまた沖田も手にあるデュエルディスクを構えた。

 

「先行後攻は君が決めても構わないよ。」

「ふん、なら遠慮なくいかせてもらう。俺のターン、ドロー!」

 

 勢いよく引いた彼のカードはデビルズ・サンクチュアリ、確認した万丈目は勝てる確信を持った。

 

「俺はデビルズ・サンクチュアリを発動!このカードは「このカードはメタルデビルトークンを生み出す、だろ?羊トークンとは違い生贄にすることの出来るトークンだ。ちなみにメタルデビルトークンは効果を持つから勘違いされやすいが効果を持つのは発動した魔法カードの方なので、扱いは通常モンスターだ。これについては授業で習うことになると思うよ?」どうやら知っているようだな。」

 

 被せて説明した沖田に、わずかに万丈目は感心したようだった。

 

 デビルズ・サンクチュアリ

 通常魔法

「メタルデビル・トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を自分のフィールド上に1体特殊召喚する。このトークンは攻撃をする事ができない。「メタルデビル・トークン」の戦闘によるコントローラーへの超過ダメージは、かわりに相手プレイヤーが受ける。自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。払わなければ、「メタルデビル・トークン」を破壊する。

 

 万丈目は続けてカードを手札から取り出す。

 

「地獄戦士を召喚し、二重召喚を発動!もう一度通常召喚を行う!俺はメタルデビルトークンと地獄戦士を生贄に・・・。」

 

 どうでもいいことだが、この時代はリリースではなく生贄と呼ばれていた。リリースに名前が変わるのはしばらく後のことである。

 

 地獄戦士

 効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1200/守1400

このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、この戦闘によって自分が受けた戦闘ダメージを相手ライフにも与える。

 

 二重召喚

 通常魔法

このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

 

「絶対服従魔神を召喚する!!」

 

 現れたのは悪魔族の中でも最強の攻撃力と守備力を持つモンスター。その代償は重いものだが、それも仕方のない事だろう。強い力には代償が必要であるのは当然である。

 余談だが、OCGではアンチホープやラビエルなどが登場することでただでさえあまり使われないこのカードの利用法が更に減り、ダークコーリングやダークフュージョンですら使われなくなった不遇なカードである。それでも通常召喚可能な悪魔族モンスターの中ではトップなのだが。

 

 絶対服従魔神

 効果モンスター

星10/炎属性/悪魔族/攻3500/守3000

自分フィールド上にこのカードだけしかなく、手札が0枚でなければこのカードは攻撃できない。このカードが破壊した効果モンスターの効果は無効化される。

 

「更に俺は愚鈍の斧を発動!装備モンスターの攻撃力を1000あげる代わりに、効果を無効にする!」

 

 愚鈍の斧

 装備魔法

装備モンスターの攻撃力は1000アップし、効果は無効化される。自分スタンバイフェイズに発動する。装備モンスターのコントローラーに500ダメージを与える。

 

 これにより、攻撃力4500のデメリットすらない、究極のモンスターの完成である。社長究極の嫁と同等の攻撃力を持つモンスターを正面から殴り倒すのは厳しい。破壊したモンスターの効果を無効にする効果は消滅したが、問答無用で攻撃できる分その方が脅威であるともいえる。

 

「カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 万丈目

  手札0

 

 伏せたカードはミラーフォース。これで殴り倒すことも難しくなった。

 だが、お気づきだろうか。社長の究極の嫁(と同等)とミラーフォース、死亡フラグが乱立するにもほどがあるというものだ。

 

「俺のターン、ドロー。手札から古代の機械騎士を守備表示で召喚する。」

「『古代の機械』だと?!」

 

 出てきたのは、クロノスの使うカテゴリのモンスター。そのカードはこの学園で最も有名な教師のフェイバリットカードであるのだ。それがいきなり出てきたら、当然出てくるのは機械族の中でもトップクラスの攻撃力を持つ融合モンスターや、機械の巨人をを警戒する。それは万丈目も同じだった。

 

 出てくるのか、あれが・・・。そう思った万丈目。

 

 だが、結果は全く違った。

 

「機甲部隊の最前線を発動し、カードを2枚伏せてターンエンド。」

  

 古代の機械騎士

 デュアルモンスター

星4/地属性/機械族/攻1800/守 500

このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、

通常モンスターとして扱う。

フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、

このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

●このカードが攻撃する場合、

相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

 機甲部隊の最前線

 永続魔法

機械族モンスターが戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、そのモンスターより攻撃力の低い、同じ属性の機械族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する事ができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 沖田

  手札2

 

「融合しない?それにゴーレムも出ないだと?!」

「何か勘違いしているかもしれないが、このデッキに古代の機械巨人も、そいつを出すギミックも入っていないぞ。」

 

 それが指し示すのは、暗黒の中世デッキではないということ、ならば、恐れることはない。そう思って万丈目はカードを引く。

 

「スタンバイフェイズに愚鈍の斧の効果で500ポイントのダメージを受ける。」

 

 だが、そんなダメージはフィールドアドバンテージから見ると微々たるものだ。彼が引いたのは地獄詩人ヘルポエマー。召喚するメリットはない。バトルフェイズに入る。

 

「バトルだ、絶対服従魔神で古代の機械騎士に攻撃!!」

 

 だがこの一手が、この一手こそが彼の敗北の起点となった。発動された機甲部隊の最前線でモンスターを出すことこそが、沖田の狙いだったのだから。

 

「古代の機械騎士が破壊されたことにより、デッキから古代の機械騎士以下の攻撃力を持つモンスターを特殊召喚する。」

「それが狙いか!!」

「来い、ブンボーグ002!」

 

 だが、現れたのは攻撃力500ぽっちのモンスターだった。

 

「・・・貴様、やる気があるのか?攻撃力500の雑魚モンスターなど、召喚するだけ無意味だ!!」

「まだまだ、そんなわけないじゃないか。召喚成功時、002の効果が発動、デッキからブンボーグ003を手札に加える。」

 

 ブンボーグ002

 効果モンスター

星2/地属性/機械族/攻 500/守 500

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「ブンボーグ」カード1枚を手札に加える。(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカード以外の自分フィールドの機械族モンスターの攻撃力・守備力は500アップする。

 

 沖田

  手札2→3

 

「ターンエンドだ。」

 

 万丈目がターンを渡した。これにより手番が沖田に移る。

 

「さて俺のターン、ドロー。そしてメインフェイズ、ブンボーグ003を召喚する。」

 

 現れたのは先ほど002の効果でサーチしたモンスターだった。

 

 ブンボーグ003

 効果モンスター

星3/地属性/機械族/攻 500/守 500

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから「ブンボーグ003」以外の「ブンボーグ」モンスター1体を特殊召喚する。(2):1ターンに1度、自分フィールドの「ブンボーグ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、自分フィールドの「ブンボーグ」カードの数×500アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「こいつが召喚に成功した時の効果により、デッキのブンボーグ001を特殊召喚する。チェーンは?」

「ない。」

「なら、デッキから001を特殊召喚する。そして機械複製術を発動。002をデッキから2体特殊召喚。002の効果で001と003を手札に。」

 

 沖田

  手札3→5

 

 ブンボーグ001

 チューナー・効果モンスター

星1/地属性/機械族/攻 500/守 500

(1):このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールドの機械族モンスターの数×500アップする。(2):このカードが墓地に存在し、フィールドに機械族モンスターが2体以上同時に特殊召喚された場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。

 機械複製術

 通常魔法

自分フィールド上に表側表示で存在する

攻撃力500以下の機械族モンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターと同名モンスターを2体まで自分のデッキから特殊召喚する。

 

 これにより、沖田のフィールドが全て埋まった。そこで初めて、万丈目はおかしなことに気づく。

 

「何だと?!」

 

 フィールド上の、ブンボーグ001、002、003。その全ての攻撃力が上昇していたのだ。

 

「002の効果には、自身以外の機械族モンスターの攻撃力と守備力を500アップさせる。さらに001は自身の効果で自分フィールド上のモンスターの数×500アップさせる。よってさらに2500アップ。」

 

 001の攻撃力が5000まで上昇し、002は1500、003は2000という、もはや下級モンスターの攻撃力ではない表示となった。だが、001はまだインフレする。

 

「003の効果、1ターンに1度、ブンボーグモンスター1体を対象として発動する。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで自分フィールド上の「ブンボーグ」モンスターの数×500アップする。対象は001!効果によりさらにパワーアップ!!更に更に

一族の結束と団結の力を発動!!」

 

 団結の力

 装備魔法

装備モンスターの攻撃力・守備力は、

自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき

800ポイントアップする。

 一族の結束

 永続魔法

自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、

自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップする。

 

 沖田

  手札5→3

 

 001の攻撃力が13300となった。もはやOCGですら絶対服従魔神を攻撃しても一撃で終わる。だが、ブンボーグには破壊耐性がない。その事実が辛うじて万丈目を目の前の現実に戻させる。

 

「そして俺はこの罠カードを発動する。」

 

 だが、現実は非情である。彼が発動したカードは、このターン全ての罠を封じるカード。

 

「トラップ・スタン・・・。」

 

 万丈目もこのカードは知っている。優秀なカードだ。彼も1度使ったことがあるから、その効果は理解している。これで最後の砦は消え去った。

 

 トラップ・スタン

 通常罠

このターン、このカード以外のフィールド上の罠カードの効果を無効にする

 

 因みに、彼がこのタイミングで発動したのはカウンター罠である攻撃の無力化を警戒したからだ。今では入らないがこの時代ではいまだに攻撃の無力化が現役なのだ。そうでなければ基本的には相手の罠にチェーン発動させる、もしくはスタンバイフェイズの時点で打つのがプレイングとしては最適であったりする。

 

「バトルフェイズ、001で絶対服従魔神に攻撃。」

 

 この時点で万丈目に防ぐ手段はないのですでに敗北が決定している。だが、沖田は更に追い打ちをかけた。

 

「ダメージステップ時、リミッター解除を発動!攻撃力が倍になる!」

 

 やめたげてよぉ!!なんて声がアリーナの観客席から聞こえるが、すでに発動した以上外野がなんと言おうが止まらない。001の攻撃力は26600まで上昇した。

 

「ありえない・・・。この俺が・・・。この万丈目準が・・・。」

 

 そんな彼のつぶやきも空しく、絶対服従魔神の巨体に、もはや禍々しささえ感じる001の雷をまとった体が突き刺さり、光を放つ。

 その眩しい光はアリーナ全体を包み込み・・・。

 全員が光に慣れた数秒後、万丈目は膝をつき、沖田の勝利のブザーが鳴り響いた。

 勝者は沖田曽良。なんというべきか、いささかオーバーキルにもほどがあるとは思う。実際彼も若干後悔しているようだった。声をかけようにも万丈目は起き上がると無言でふらふらと立ち上がり、アリーナから立ち去る。

 その瞬間、めったに見れないほどの攻撃に感激したアリーナの生徒たちが、歓声を上げた。

 それはこの学校の生徒全員が、彼を受け入れた瞬間だった。

 

 

 

 まあ、当人は「やべぇ、やっちまった」と思っているのだが。

 

 

 

 

 

 




この小説ではチューナーが度々出現しますが、理由は後々説明していくつもりです。

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