書いてたらいつの間にか思ってたのと違う展開になって困った末にこのまま投稿するよ!
前に後2~3話で終わりたいとか言ったな。あれは嘘だ。
考える展開すべてが広がった末に収集をつけるのがつらくなってきたんだぜ…
試合開始の合図とともに画面に映る二人は同時に動き出して勢いよくぶつかり合っている。
「見たところ二人とも遠距離攻撃の手段はないみたいですわね」
隣に座っていたセシリアがぽつりと溢した。
確かに二人のメインは大鎌と鋭い爪のようでさっきからそれらを使った接近戦しかしていない。
黒い方のアリスちゃんは以前の鈴とセシリアとの模擬戦では使っていた鎖を使っていないのは何か理由があるのだろうか?
「今回は二人が最も得意としている接近戦をメインに戦うように指示をしている。もちろん無理に接近戦にこだわらなくてもいいと伝えてるからそのうちそれ以外の戦い方もするだろう。そして、オルコットの言う通り提出された資料によるとアヴィスが乗っているIS【チェシャ猫】には遠距離用の武装は搭載されていない」
アヴィスと呼ばれたアリスちゃんは先ほどから主に突きを主体とした格闘術で戦っている。
そうしていると、突然チェシャ猫の首元から伸びるマフラーの様な部分を鞭のようにアリスちゃんへと叩きつけている。
「アヴィスさんが中距離攻撃も加え始めたようですね。二人とも武装の特徴は似ていますし、これは長続きしそうですね」
「そうでもないだろう。恐らくだが、この模擬戦はすぐに決着がつくだろう。少なくともアヴィス君がそれに気づかなければすぐに終わる」
山田先生が予想した内容をデュノア先生があっさりと否定した。
「機体性能を考えれば制作者を考えればアヴィス君の方が有利だが、それでも埋められないものが両者の間には存在する」
「確かに…今回の課題だ。デュノア先生が言ったアヴィスに足りないものこれがわかる者がいるか?」
千冬姉が大広間に集まる生徒を見渡すが誰にもわからず困惑する。
かく言う俺にもわからない!
いや、この中で一番戦闘経験が多いラウラでもわかっていないようなのに俺にわかるわけないじゃないか。
…っていうか、山田先生もわかってないんじゃないか?
さっきからオロオロしながら画面を見てるけど二人を心配してと言うよりかは必死に間違いさがしをしているようにも見える。
教師でもわからないものを求められても絶対わからないだろ…
皆が困惑しながらも画面を見ているとそこには白いアリスちゃんの猛攻に耐えている黒いアリスちゃんだった。
アリスが素早く近づき音をも切り裂く手刀を繰り出す。
けれど、あることに気づいた私は今までのように鎌を使って受け流すのではなく、紙一重にそれを避けた。
その事が勘に障ったのかアリスはさらに速い動きをし始めるようになった。
……やはり、アリスには決定的に足りないものがある。
だが、その穴を塞ぐかのように彼女の動きは最適化されていく。
いつしか、アリスは肩にから伸びる装備も猛攻に加え始めた。
ほぼ無意識な行動だろう。または、本能とも呼ぶべきか…それは私の隙をついて爪と鈴をぶつけてくる。
私でも対処できない攻撃にはオズが鎖で援護してくれる。
アリスが距離を詰めながら左右から挟むように振るうマフラーを大鎌を必要最低限の動きで弾き返し、振るうとほぼ同時に突進をしてきたアリス自身の攻撃はオズが鎖巻き付けて投げ飛ばす。
「やはりな…面白いように隙に喰いついてくれるな」
「嫌な言い方ね…」
私の呟きにアリスが顔を歪めながら反論する。
ここまで戦えば私もオズはもちろん、あいつだってわかってる。
私とアリスの差。それは経験。
私が
けれどその中で多くの戦いを経験し私の糧となった。
私と共に戦い、休んでいる間にもピエロに剣を教えられていたオズの経験もISを通して私に伝わってくる。
対して、アリスは生まれてからずっとアヴィスの最奥にいた。
ISを通じて送り込まれるチェシャの戦闘経験も多くはない。
たったそれだけの差。だが、明らかに大きな私たちの差。
ISに乗った模擬戦もタバネと言う者の元で何度かやっているだろうがそんな付け焼刃で倒せるほど私たちは甘くない。というかISに乗って戦闘ならば私だってシャル達と何度もしている。
むしろ、素人同然のアリスがここまで戦えるそのセンスを褒めるべきだろう。
私はわざと大振りでアリスの攻撃をはじく。
さぁ、おまえは絶対にこれに食らいつく。それしか勝てる道がないのだから…
あぁ。やはり敵わない。
私と違い戦い続けた彼女には。
アリスとオズのために人間を捨てた彼女には。
自信がなかったわけじゃない。束の元に流れ着き、ISとなったチェシャと共に空を駈け、束が持ってくる物言わぬ人形たちを相手に戦った。
それでも足りなかった。彼女は私の攻撃を見切り、私たちのシールドエネルギーを確実に減らしていく。
最初は削れていた彼女のシールドエネルギーはいつしか減ることはなくなった。
「やはりな…面白いように隙に喰いついてくれるな」
「嫌な言い方ね…」
彼女が呟いた言葉に思わず顔が歪むのがわかる。
言われなくてもわかってる。私はチェシャの事を理解しきれていない。
チェシャの装備、彼女との違いも知ってたけれど知識と経験は決定的に違うのだと嫌でも理解してしまう。
だから…私が勝つには喰いつくしかない。
私が放つ攻撃を彼女は大きく振りかぶってまとめてはじく。
誘ってきている。分かってはいるけど勝つには攻撃しかないから…
今までアリスと一緒にいたけれどずっと楽しそうにしていた。
初めて外を知ったアリスはいつも楽しそうに笑ってくれた。それはチェシャと一緒に空を駆ける時もだった。
だから、チェシャはずっとアリスを見守るだけだった。
「空を駆けるって気持ちがいいわね!」
初めて一緒に空を飛んだ時、アリスは笑顔だった。それは
けれど、今のアリスの顔は苦しそうだ。
今までの人形とは違うウサギたちとの戦い。大きく感じる差にアリスが苦しんでいる。
アリスが笑ってくれるにはどうしたらいい?チェシャはずっと笑顔のアリスを見るだけだったからわからない…
アリスがウサギへと近づいていく。
駄目だ!このまま行ってもアリスは笑ってくれない。それはチェシャにもわかる。
アリスの笑顔のためにチェシャがやらないといけない。振り下ろした鎌を反転させ切り上げようとするウサギの気づかない場所に!
「消えっ!?」
『アリス!後ろだ!』
こちらに飛んできたところに一撃を加えようと動きだした瞬間だった。
突然アリスの姿が消えて思わず動揺してしまった。そして聞こえたオズの言葉に反射的に後ろに振り替えると、目の前には本人も驚いているのか大きく目を見開きながらも私の左胸に爪を突き刺すアリスの姿だった。
「チェシャ?」
『チェシャも一緒に戦う!』
今まで見ているだけのチェシャが初めて手を出した。
ずっと、私が楽しそうだから自分はいいのだと言っていたチェシャが。
そのことが嬉しくて私は声を殺しながら笑いながらチェシャにだけ囁いた。
「そろそろソロにも飽きてきたわ。エスコートしてくれる?一緒に踊りましょう」
今ので私たちのシールドエネルギーの差は同じとは言えないが差は縮まった。
猫は刈る側の存在であると証明して見せましょう。
チェシャと一緒に…!
ちなみにアリスがドヤ顔で経験の差とか言ってるけど
先生が言ってるのはチェシャが全く協力してないことです。
アリス&チェシャ組は一緒にするという考えが全くなかったけど今回から初めて協力して戦うことを学んだのです。