Infinite Pandora   作:曾羅

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展開が思いつかないからとかソンナンジャナイヨ。
時間稼ぎトカジャナイヨ


幕間 とある少女の話

「今日はみたらし団子デス!」

 

 私が働くお店は一風変わっている。元々はただの雑貨店だったのが店主が気まぐれで始めた屋台が思いのほか好評だったのがきっかけで、雑貨兼屋台となったのだが店主が気分屋と言えばいいのか、飽きっぽいのか、数日置きに屋台の内容は変わっていった。

 時にはクレープ、又ある時は焼き鳥。真冬に金魚すくいなんてこともした。

 

「これって昔どこかで嗅いだことのある懐かしい匂いです」

「確か、以前ご家族で京都に行ったことがあるって言っていたでしょ。京都の神社だと年明けは毎年でますよ」

「あぁ。で、なんでまたこんな変り種を…」

「面白いでしょ」

 

 これだ。この見た目20代の癖に実は30後半どころかもうすぐ40歳を迎えるこのおっさんはこの一言で全てを決めてしまう。

 

「なにか言いましたか?エミリー」

「言ってませんよ。店長」

 

 改めまして、皆さん、初めましてです。

 私はエミリー。エミリー=シンクレアと申します。

 ザークシーズ=レグナードが経営する雑貨店【アルブスの帽子屋】で働く、ただの苦学生です。

 

 

 

 

 

 現在の私は苦学生。そんな私ですが、昔は結構裕福な家だったんですよ。

 あれは私がまだ11歳。日本でいえば中学生の頃でしょうか。

 まぁ、よくある不幸です。家族で旅行に出かけた先で乗っていた車が事故を起こして両親と姉が亡くなった。

 さらに不幸だったことは私の両親が駆け落ちからの企業して成功と言う、最近のドラマでもやらないような人生を生きていたことです。

 葬式で初めて出会った親戚たちがこれまた最悪な方々でした…。両親が遺してくれた遺産をすべて持っていこうとしたのです。

 幼いながらも両親が遺そうとしてくれたものを必死に守ろうとしましたが、所詮は大人と子供。あれよあれよと瞬く間に私の手元に残ったの家族の写真と私を施設に送るという書類、まさに雀の涙ほどの親の遺産だけです。

 あの時はこの世に神はいない!なんて本気で思ったものですよ。

 何故そんな私が極東のショッピングモールで働いているかと言いますと端的に言いますと運命の出会い(仮)をしたのです。

 施設にはいって1年ほどたってからの事です。

 いつも通り無気力に過ごしていた時なんですが一人の男性が施設にやってきたことが始まりです。

 彼が言うには昔両親にお世話になったことがあり、その恩を私に返したいとのことでした。

 驚く私と施設の人達を前に彼は次々と両親と知り合いであった証拠を突きつけていつの間にか私は彼の元に預けられることが決まりました。

 さらに、それと同じころに再び親戚たちが私の元にやってきたのです。

 彼ら曰く「もっと遺産を寄こせ!」とのことでした。

 詳しい話を聞くとこの人たちは急に湧いた大金に目が眩んで散財、さらには悪質な詐欺に引っかかったそうで数十年は遊んで暮らせるであろう大金を一年あまりで溶かしてしまったそうです。

 さすがにこの話を聞いた時は親戚の顔面に一発入れたことは許されると思っていますよ。えぇ、私は悪くないです。

 そんなこんなで疲れ切った私はふと昔を思い出して私を引き取りに来た男性につぶやいたのです。

 

「こんな国出て日本に行きたい」

 

 と。

 私の家族は海外旅行が好きでその中でも一番好きだったのが極東の島国、日本でした。

 1年の間で少なくとも2回は日本に旅行に行っていた私は祖国より家族の想い出が多い国に思いを寄せていたんです。

 そうしたら急に

 

「じゃ、ニホンに行きましょうか」

「は?」

 

 呟きを聞いた彼は1週間ほどなにかを準備をしていたと思ったらそんなことを言い出したのです。

 さすがに無理があるだろうと思ったのですが、彼は宣言通り日本での暮らしを整えてくれたのです。

 そんなわけで、不肖 エミリー=シンクレアの日本での生活が始まったのでした。

 

 

 

 

 

「今頃彼らは海を満喫してる頃ですかねー」

「彼らって誰の事ですか?」

「ホラ、前にお茶会の道具を用意してあげたおっさんがいたでしょう。彼とその連れですよ」

 

 以前は公爵家の当主なんて大物をしていた彼がこの世界でも世界的大企業の社長をしていたことは知っていたが、まさかあのガキたちもいるとは思いもしませんでした。

 彼らが店に来たときはとっさに顔を隠したので気づかれませんでしたがオスカー様には気づかれたようで、オズ君たちに黙ってもらう代わりにお茶会に必要な道具を要求されちゃいました。

 別にばれてもいいんですが、オスカー様から伝えられるって言うのは面白くありませんし?

 バレたらバレたであの子たちは煩そうですからね。もう少しゆっくり暮らしても罰は当たらないでしょう。

 

「あぁ、あのIS学園の人たちですか。あの人たちが来てから店長楽しそうですね」

「…随分と変な事言いますね」

「いや、店長あの人たちがきたときはめっちゃ楽しそうじゃないですか。まるでイタズラがばれそうになってるのをドキドキしながら見守る子供みたいですよ」

 

 いやいやいやいや。確かに、いつバレルかなぁと彼らがきたときは思ってましたがそんなに楽しそうにしてました?

 

「嘘でしょ」

「嘘じゃないですよ」

 

 店長ってそういう所は子供みたいですよね。

 なんて随分と生意気な事を言いますね。前世のお嬢様はもっと御淑やかな子でしたが、まぁ彼女とおなじ存在ではないので当たり前ですかね。

 けれど、私が楽しそうですか…

 まぁ、彼らとはお茶会の約束を守れなかったという悔いがありますからね。絶対に言いませんが、言ったら絶対にオズ君におちょくられてしまいます。

 

「ホラ、店長すっごい楽しそう」

「…変なこと言ってないで仕事してくださいな」

 

 まぁ、いいです。どうせ彼らももうすぐ臨海学校から帰ってくるでしょうし、次に会った時には正体を明かして彼らの驚く顔で紅茶でも飲みましょうか。

 

「そういえば、エミリーは高校で友達はできましたか?」

「子供じゃないんだから、心配されなくともできましたよ」

 

 今年から藍越学園に入学したこの子ですがもうこの子と暮らして3年ですが随分と笑ってくれるようになりました。

 必死に私を笑顔にしようとしたシャロンお嬢様達はこんな気分だったのでしょうか…

 幼い頃に不幸の連続に会ったせいで少し人間不信になりかけた彼女に友人ができたというのも大きな進歩ですね。

 

「同じ海外出身な子がいまして、その縁でよく話すようになりましたよ」

 

 何でしょう…何故か嫌な予感がします。

 こう…面倒になりそうな感がありますね。

 

「一応聞きましょう。その子の名前は?」

「?、エリオット=ナイトレイですけど…」

 

 なんで皆さん日本に集まるんですかね…




エミリー=シンクレア
15歳。12歳から日本に住むイギリス人。
レゾナンスの一角の雑貨店で働く少女。
名前の由来はブレイクが大事にしてる人形の名前とブレイクが昔仕えていた家を混ぜました。
藍越学園に入学し、エリオットと五反田たちと仲良くなる。
家族が海外旅行好きだったのが幸いして日本に昔から来ていたので日本語は拙いがそこそこできる。
最近の悩みは、ザクスが自分に良くしてくれすぎて恩返しどうしようかと悩んでる。


ザークシーズ=レグナード
39歳。エミリーと一緒に日本に住んでる店主。
PandoraHeartsの記憶は持っており、シンクレア家とは懇意にしていた。エミリーは覚えてないけど…
シンクレア家が事故に遭ったときは仕事で海外に行っていたので情報が遅れた。そのことは今でも後悔している。
エミリーのちょっとした呟きから日本に住むことを決意しレゾナンスで雑貨兼屋台を切り盛りしている。
手品が得意で、一番得意なのは瞬間移動マジック。
よく雑貨店と屋台を瞬間移動してお客さんを驚かしている。
オズたちが初めてレゾナンスに来たときはクレープを売っていてオズたちに驚いてとっさに顔を隠して凌ごうとしたのがオスカーにバレてしまう。
本人曰く「もうちょっと平和を噛み締めたい」とのこと。
店の名前【アルブスの帽子屋】の由来はPandoraHeartsで契約していたチェイン アルブス とマッドハンター(イカレタ帽子屋)から

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