Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第七十話 ボルダーシティ、カーンズ

 

 

 ボルダーシティは、はっきり言ってしまえば何も無いただの廃墟の町だ。

過去のフーバーダムをめぐる戦いで、逃走し、ここへ逃げ延びたNCR。

それを追っていたリージョンがここで衝突、町はNCRの仕掛けた爆弾によってリージョンごと吹き飛んだ。

今ではフーバーダムの補修と防御陣地構築のためのコンクリートを作る工場と、それを運ぶための駅があるだけだ。

町の手前には石碑があり、戦没者の名前が刻まれている。

 

 

「人が居ない町、ね」

 

 

ボソッと、呟く。

こういうのは珍しい事ではない。

事実、元々私がいた世界……それも中東ではそんなものが沢山あった。

正しさなんてありもしない戦争で捨てられ、壊された町が、あちらこちらに。

そのたびに、お兄ちゃんは疲れたような顔を見せた。

 

 

「……ここへ来るのも久しぶりだ」

 

 

「そうなの?」

 

 

「……なんでもない」

 

 

自分から言いだしたんじゃない……もう。

すっかり黙りこくってしまったブーンを他所に、私はボルダーシティ内部へと入ろうとする。

ここはNCRの管理している町なので、当然のように彼らが辺りをウロついている。

 

 

「おーい!ここは今封鎖中だ!」

 

 

と、ゲートにいるNCR兵が先頭を行くベロニカの前に立ちはだかった。

どうしてかNCRの事を良く思っていない様子のベロニカは、まるでヤンキーのように彼を睨む。

 

 

「あ?なんでよ」

 

 

その鋭い眼光にNCR兵は少したじろいだ。

 

 

「グレートカーンズの奴らがうちの隊員を人質に取って立てこもったんだよ。だからほら、あっちへ行った」

 

 

グレートカーンズ。

確かチェックのスーツ男と一緒にいたのもグレートカーンズだった。

単なる偶然だろうか?いや、ヤツが向かったのはボルダーシティ。

ならば偶然と考えるのは愚かだ。

もしかしたら、何かが起きて人質を取らざるを得なくなったのかもしれない。

 

ならば事の真相を確かめる必要がある。

ヤツが、いるかもしれない。

 

私はベロニカを手でどかし、NCR兵に面と向かう。

 

 

「私が交渉するわ」

 

 

「何を……」

 

 

「このままNCRが突入すれば人質が死ぬわ。私ならうまくやれる」

 

 

「何を根拠にそんな……」

 

 

中々どかないNCR兵。

と、そんな状況に介入してきたのはブーンだった。

 

 

「俺たちはNCRの味方だ」

 

 

そう言って彼は自慢の赤い帽子を指差す。

 

 

「第一偵察隊……?」

 

 

「元だがな。少なくともお前らよりこういった事態には慣れている」

 

 

NCR兵は悩む。

ベロニカが小声でやっちゃう?なんて言っているので手で口を塞いだ。

この人は少し気性が荒いわね。人の事言えないけど。

 

 

「分かった。確かに今俺たちが行けば最悪の事態になりかねんからな。普通なら民間人にこういうことは頼まないんだが……」

 

 

「分かったなら退きなさい」

 

 

目標を前にして私まで気性が荒くなる。

退いたNCR兵を背に、私はゲートを開ける。

 

 


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