今日も今日とて砂漠を練り歩く。
新調したライフルを肩から吊り下げ、私たちはいつ訪れるやもしれない死と対峙しながら、ウェイストランドを旅するのだ。
これからボルダーシティへと向かう。
もうあのスーツの男はいないかもしれないが、それでも手がかりは欲しい。
まぁ、あんななりをしているのだからストリップ地区の住人であるというのは火を見るよりも明らかだが……いかんせんあそこは人が多い。しっかり調べ上げないと年単位で時間が掛かるかもしれない。
「はぁ……」
悩み事が多い。
最近ため息をつく回数が増えた気がする。
「あらクロエ、ため息ばっかりしてると幸せが逃げるわよ」
そう言うのはあの変態女、ベロニカ。
まるで昔からの友人や仲間のように振る舞う痴女……
なぜ彼女が私達と共にいるのか。
昨日の襲撃の後、私とブーンは彼女をNCRへ引き渡すか否かで話し合った。
結果、私の甘い部分が出て、何かと機械に強い彼女を、私への謝罪やら何やらで雇うことにしたのだ。
もちろん無償で。
NCRに突き出されないだけマシよ。
ただベロニカは何かを勘違いしているのか、この事について奴隷のようなプレイと言っていた。
プレイも何もない。
「悩みの種が何言うのかしら」
「あら冷たい。でもそういう所も好きよ」
「……はぁ」
またため息をつく。
後ろで周囲を警戒するブーンをちらっと見るが目をそらされる。
まるで俺では手に負えない、と言っているようだった。
「もうすぐボルダーシティよ~」
遠足気分で先頭を行くベロニカ。
その姿が年齢にそぐわない……なんて言ったらどうなるんだろう。
ちなみに、彼女はブーンよりも年上らしい。
と、その時だった。
野生のゲッコーが物陰から飛び出してきたのだ。
「わっ!」
個人的に可愛いと思うその動物は、先頭のベロニカへと真っ先に襲い掛かる。
私とブーンは銃を構えようとするが、その前にベロニカの拳が動いた。
「フンッ」
ドグシャァ、と。
まるでダンプカーに轢かれた人間のような音がした。
ベロニカが、目にもとまらぬ速さでゲッコーを殴り飛ばした音だった。
パワーフィストから放たれた重い一撃は、ゲッコーを肉片へと変える。
……そう言えば、今のメンバーの中で一番力が強いのは彼女だったりする。
ベロニカは鬼のような形相でゲッコーを数発殴っていたが、ふと我に返ったようにこちらを見た。
そしてにっこり笑って、
「もう安心よ!」
と。
顔に返り血が付いた状態で言ってみせた。
「ブーン、私選択を間違えたかもしれないわ」
「だから言っただろう。ほら、行くぞ」
ブーンもなんだか呆れ気味だ。
「Beep……」
ED-Eも震えて私から離れない。
いや、一番恐ろしいのは身体を狙われた私なんだけど……